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【2022年最新】いちご農家必見! 甘くておいしい人気品種&高収益を叶える選定のコツ

【2022年最新】いちご農家必見! 甘くておいしい人気品種&高収益を叶える選定のコツ
出典 : tsuppy/PIXTA(ピクスタ)

消費者の人気も高く、和洋菓子店の需要も絶えないイチゴは、品種による特徴の違いも明確です。自分のほ場や気候の特徴に合っているか、注意すべき病害には強いか、販売先の需要にふさわしいかなどのポイントを見極め、高く売れるおいしいイチゴ品種を選びましょう。

イチゴは品種改良が盛んで、例年人気品種がしのぎを削る中、新たな品種が登場し、注目を集めています。「群雄割拠」と表現できるようなイチゴ市場で、高収益を実現するために、必要な品種選びのポイントを解説します。それに併せて、最新の注目すべきおいしい品種も紹介します。

苺の断面図カタログ

出典:豊洲市場ドットコム 公式Twitter「苺の断面図カタログ Ver.04→05(2018年最新版)」

高収益化の第一歩! イチゴ品種を選定するポイント

高収益を実現するためには、イチゴの品種選びからスタートします。数多くの品種の中から選定する際の、重要なポイントを解説します。

食味良好で人気の高い品種を選ぶ

イチゴの糖度測定

イチゴの糖度測定
出典:ソーシャルワイヤー株式会(千代田電子工業株式会社 ニュースリリース 2020年6月30日)

品種の選定で最も重要なことは、「売れる品種かどうか」といえるでしょう。高収益を確保するためには、まず何より食味のよさで消費者や実需者に人気が高く、選ばれる品種を選定することが重要です。

人気品種であることも大切ですが、新しい品種や地域限定の品種などの中から、まだ知られていない優良品種を見つけ出し、差別化を図るのも単価を上げるよい方法です。

人気の高い品種は、なんといっても「おいしい」ことが重要です。主観的な評価である「おいしさ=食味のよさ」を客観的に示す指標には、糖度や酸度、硬度(歯ごたえ)などがあり、代表的なものは糖度を酸度で割った「糖酸比」でしょう。

福島県農業総合センターのイチゴの食味官能試験の結果によると、糖酸比が16~17の場合、「甘味と酸味のバランスがよくおいしい」と感じる人が多く、糖酸比が17以上になると、より甘味を強く感じて「甘くておいしい」と評価されます。

出典:福島県農業総合センター 生産環境部流通加工科「食味試験によるイチゴ品質評価」

一方で、糖酸比が低くても「濃厚でおいしい」と感じる品種があったり、糖度・酸度がともに低いために、糖酸比が16~17となっている場合は「味が薄い」と感じる品種があったりするので、数値だけで判断する必要はないともいえます。

数値は客観的に味を説明する際に便利ですが、参考程度に留めておき、市場における一般的な評価なども含めて、総合的に判断する方がよいといえます。

取引価格の推移と収穫時期を考慮する

イチゴは、年間を通して需要が安定していますが、高需要が見込めるクリスマスシーズンや、端境期に入ることで流通量が極端に少なくなる6~10月にかけては、高単価で販売できる傾向にあります。

農林水産統計の「青果物卸売市場調査結果」から、2020年の卸売価格を見ると、イチゴの旬である3月~5月には、1kg当たり1,000円前後で推移しています。

それに対し、6~12月はほぼ倍の2,000円前後の価格が続き、最も高い10月の卸売価格は、1kg当たり2,609円にも上がっています。

こうした傾向から、農研機構東北農業研究センターが青森県、岩手県、秋田県、山形県との共同研究により育成した、大粒イチゴの新品種「そよかの」のように、近年は端境期でも収穫できる品種の開発が進んでいます。

栽培地の気候と品種の早晩性を考慮し、取引価格が高くなる夏~秋の期間や11~12月に収穫できる品種を選べば、単価が上がり高収益が期待できます。

病害への抵抗性・耐病性にも注目

イチゴ栽培においては、株ごと枯死させる「炭疽病」「萎黄病」「疫病」などや、商品価値を著しく下げる「うどんこ病」「灰色かび病」など、深刻な病害が少なくありません。収穫間近にその被害を受けると、収益が大幅にダウンするだけではなく、精神的にも大きなダメージを受けます。

そこで、栽培地で発生しやすい病害に対して、抵抗性あるいは耐病性を持っている品種を選定することで、思わぬ被害を防ぎ、結果的に収益の確保につながります。

炭疽病と萎黄病に対する中程度~やや強程度の抵抗性と、うどんこ病と疫病に対する強度の抵抗性を示す「カレンベリー」や、炭疽病の抵抗性を持つ「かおり野」などを、以下でチェックしてみましょう。

甘くておいしい! 糖酸比が高いイチゴ品種5選

出荷前のイチゴ

Princess Anmitsu /PIXTA(ピクスタ)

上記を踏まえ、まずは甘さを表す指標である糖酸比が高いイチゴの中から、おすすめの5品種を紹介します。

なお、糖度や酸度、糖酸比については、統一基準で計測されたデータが存在しないため、ここに記載する数値は品種ごとの研究資料などをもとにした、minorasu調べの参考値です。

とちおとめ

栃木県産 とちおとめ

Tozawa / PIXTA(ピクスタ)

「とちおとめ」は、イチゴ生産量日本一を誇る、栃木県の主要品種です。全国的にも人気が高く、関東を中心に多くの産地で栽培されています。

大粒の果実は均整のとれた円錐形で、鮮やかな赤色を帯び、光沢に優れているため、業務用としても高い適性があります。

季節や栽培条件、個体差などによって同じ品種でも糖度や酸度は異なりますが、とちおとめは糖酸比が概ね15以上で、22.36といった高い数値を示すものもあるほど、甘みの強い品種です。

【糖酸比】約15.7(糖度10.2、酸度0.65)
【早晩性】早生
【抵抗性】特に抵抗性は持たない

章姫(あきひめ)

章姫

出典:ソーシャルワイヤー株式会社(株式会社近鉄百貨店 ニュースリリース 2022年2月22日)

「章姫」は静岡県で育成されましたが、現在ではイチゴ栽培が盛んな愛知県の主力品種です。果実は大粒でかなり長い円錐形をしており、艶やかな鮮紅色で果肉は柔らかめです。収量が多い点も特長です。

【糖酸比】18(糖度10.4/酸度0.57)
【早晩性】早生
【抵抗性】特に抵抗性は持たない。炭疽病にはやや弱いため注意が必要

かおり野

かおり野

a_katto / PIXTA(ピクスタ)

「かおり野」は炭疽病に抵抗性を持ち、イチゴの販売単価の高い12月中に多く収穫できる極早生品種です。円錐形の果実は明るい橙赤色で、章姫よりさらに大きく、食味も優れています。

ただし、萎黄病に対する抵抗性は低く、また灰色かび病の発生が多いので、これらが発生しやすい地域での栽培は注意しましょう。なお、栽培にあたっては三重県との許諾契約が必要です。

【糖酸比】23(糖度11.4/酸度0.51)
【早晩性】極早生
【抵抗性】炭疽病に抵抗性を示す

まりひめ

和歌山県産 まりひめ

和歌山県産 まりひめ
出典:株式会社PR TIMES(MARINE-Q ニュースリリース 2021年1月9日)

和歌山県で育成された「まりひめ」は、大粒でやや丸みのある円錐形をしており、低温・高温の条件下でも、光沢のある鮮やかな赤色を帯びます。

強い甘みと程よい酸味とのバランスがよい食味です。1月までの早期収量が多く、総収量で見ると多収といえます。ただし、まりひめの栽培は和歌山県に限られています。

【糖酸比】19(糖度9.2/酸度0.48)
【早晩性】早生
【抵抗性】特に抵抗性は持たない。十分な防除が必要

よつぼし

新品種 よつぼし

新品種 よつぼし
出典:株式会社PR TIMES(一般社団法人ナレッジキャピタル ニュースリリース 021年11月15日)

「よつぼし」は三重県、香川県、千葉県と国立研究開発法人農業・食品産業総合研究機構の共同育種によって、2017年に品種登録された、新しい種子繁殖型品種です。

名前には「甘味」「酸味」「風味」がそろって、よつぼし級に「美味」しい、という意味が込められています。

種から生育するため、ランナーで生育する一般的なイチゴに比べ、病害虫が全体に広がるリスクが低く、増殖効率が高いなどのメリットがあります。

やや小ぶりなものの鮮紅色で形状もよく、糖度が高く酸味とのバランスがよい品種です。

5月に播種、9月に定植、11月下旬から収穫する促成栽培作型が基本です。現時点では夏秋期の収量は安定しませんが、長日条件で花芽分化しやすい四季成り性であるため、長日処理によって、夏期に実をつけられると期待され、研究が進められています。

【糖酸比】20(糖度11/酸度0.56)
【早晩性】早生
【抵抗性】特に抵抗性は持たない

濃厚な味わいが人気。 食味に定評があるイチゴ品種5選

イチゴ 品種 人気

HIME&HINA /PIXTA(ピクスタ)

続いて、糖酸比は高くないものの糖度・酸味ともに高く、コクがあっておいしいと評されることの多い品種を紹介します。

あまおう

箱入り あまおう

遥花 / PIXTA(ピクスタ)

「あまおう」は、イチゴの国内生産量第2位の福岡県で育成され、今も主力品種です。「あまおう」の愛称には、「甘い」「丸い」「大きい」「うまい」の特長を表す頭文字と、「甘いイチゴの王様になるように」という意味が込められています。

甘みが強くて酸味とのバランスもよいため、食味に優れており、大粒で形の整った光沢のある鮮紅色の実が特長です。なお、栽培できるのは福岡県内の農家に限られています。

【糖酸比】13(糖度9.9/酸度0.765)
【早晩性】やや晩生
【抵抗性】特に抵抗性は持たない

紅ほっぺ

紅ほっぺ

mk / PIXTA(ピクスタ)

「紅ほっぺ」は、果皮だけでなく果心部まで鮮紅色を帯び、ほっぺが落ちるほどおいしい、という特長から名づけられた、イチゴ栽培が盛んな静岡県や愛媛県の主力品種です。名前の通り、糖度・酸度ともに高く、甘酸っぱくてコクのある食味です。

粒が大きく多収性にも優れていますが、収穫期が1月以降と、需要のピークに間に合わない点がネックです。春のイチゴ狩りシーズンの人気品種です。

【糖酸比】12.5(糖度9.7/酸度0.78)
【早晩性】章姫よりやや晩生
【抵抗性】特に抵抗性は持たない

スカイベリー

大きくきれいな円錐形が特徴の「スカイベリー」

大きくきれいな円錐形が特徴の「スカイベリー」
出典:株式会社PR TIMES(栃木県 ニュースリリース 2018年12月20日)

とちおとめの後継品種として、栃木県が長年の育成・選抜をかさねて開発した「スカイベリー」は、かなり大粒の円錐形の果実で、明るい赤色に光沢もあり、外観に優れています。糖度は低いものの酸度とのバランスがよく、まろやかな食味です。収量性が高く、促成作型に向き、生育が旺盛なため電照は不要です。

【糖酸比】15.8(糖度9.5/酸度0.6)
【早晩性】早生
【耐病性】炭疽病、萎黄病に対してはある程度の耐病性を示す。うどんこ病にも強い

カレンベリー

カレンベリー

happyphoto / PIXTA(ピクスタ)

「カレンベリー」は、イチゴの重要病害である炭疽病、うどんこ病、萎黄病および疫病に対して抵抗性を持つ新品種として、九州沖縄農業研究センターで育成されました。病害に強いだけではなく、大粒の円錐形で果実形状のそろいもよく、光沢のある明るい赤色で外観も優れています。

糖度・酸度は低いもののバランスがよく、食味は良好です。また、やや硬く大きさと形状がそろっているので、パック詰め作業の省力化につながります。やや晩生で、半促成栽培や露地栽培に向いています。

【糖酸比】11.5(糖度10.3/酸度0.89)
【早晩性】やや晩生
【抵抗性】炭疽病、萎黄病に対して中程度~やや強程度の抵抗性、うどんこ病、疫病に対して強度の抵抗性を示す

紅い雫

愛媛県産いちご「紅い雫」のケーキ

愛媛県産いちご「紅い雫」のケーキ
出典:株式会社PR TIMES(株式会社ファイブフォックス ニュースリリース 2018年2月26日)

愛媛県が育成した促成栽培用品種です。名前の通り、雫のような円錐形でそろいがよく、果実全体が明るい赤に色づいて、光沢があり外観に優れています。糖度・酸味ともに高く、食味はコクがあり濃厚です。

果実が硬いため、高温期でも安定した完熟出荷が可能と、魅力的な特長を持ちます。収量性がやや劣るとの評価があり、収量増へ向けて改良を進めつつ、消費者への認知度向上を図っています。

【糖酸比】15.6(糖度11.5/酸度 中程度)
【早晩性】早生
【抵抗性】萎黄病にやや抵抗性を示す

希少性で差別化! 登録されたばかりのイチゴ最新品種

イチゴたっぷり スイーツ 夏

Table-K /PIXTA(ピクスタ)

最後に、近年品種登録されたばかりで希少性が高く、食味も良好とされる、期待の最新品種を紹介します。

夏のしずく

農研機構が青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県との共同研究で育成した新品種です。寒冷地や高冷地における、夏秋どり栽培に適した四季成り性で、高単価が見込める夏~秋に出荷できる品種として、期待が高まっています。

既存の四季成り性品種の課題であった収量も、10a当たり3t以上の収量が見込め、これは既存品種の1.4~2.4倍となります。

円錐形で果皮は赤く、果肉は淡赤色で見た目も良好です。糖度・酸度ともに、既存の四季成り性品種並みに高く、濃厚な食味が特長です。しかも、果実が硬く輸送性に優れ、日持ちもするため、夏場のケーキや飲食店での業者需要を満たすと期待されています。

【糖酸比】糖度・酸度ともに高い
【早晩性】不明
【抵抗性】特に抵抗性は持たない

とちあいか

栃木県産とちあいか

Taisuke / PIXTA(ピクスタ)

近年の猛暑や集中豪雨の増加により、イチゴ栽培においては収量の低下や、炭疽病や萎黄病の発生増加が懸念されています。そこで、これらの病害に強く多収性もあり、かつ食味のよい品種として、新たに育成された品種が「とちあいか」です。

同じ栃木県で育成されたとちおとめと比較すると、とちおとめより早生で収量性にも優れ、現地適応性や作型適応性も劣りません。果実はとちおとめより大粒で、果皮は鮮やかな赤色に、とちおとめと同等の光沢を有します。

糖度が高く強い甘みが特長で、食味も良好です。酸度が低いので、とちおとめより甘味を強く感じます。人気品種であるとちおとめとほぼ同等の品質を持ちながら、萎黄病に対し耐病性を有する点で、今後の需要の増加が期待されます。

【糖酸比】19(糖度8.2/酸度0.43)
【早晩性】とちおとめより早生
【抵抗性】萎黄病に対して耐病性を示す

気候の変化に伴い、イチゴの生産現場では病害の発生増や収量減など、さまざまな問題が生じていながらも、それらを克服する新品種が毎年のように登場しています。

そのような新品種も視野に入れながら、複数の品種を組み合わせて、自身のほ場に最も適した栽培計画を立てましょう。

大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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