柑橘類のすす病に注意! 原因と防除方法を解説
みかんなどの柑橘類の葉や枝、果実に黒い粉状のものが付着している場合、すす病に感染している可能性があります。すす病が発生すると果実の生育不良や見た目の悪化につながるため、発病前の防除が大切です。この記事では、すす病が発生する原因から防除方法まで詳しく解説しますので、柑橘類を栽培する方は参考にしてください。
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すす病は、発生すると果実の生育不良や見た目の悪化につながり、まん延すると収入の減少につながります。みかんなどの主要産地で大規模栽培を営んでいる方は、特に注意が必要だといえます。
すす病が発生する原因はある程度究明されています。防除方法も確立されつつあるので、柑橘類を栽培する農家の方は知識として知っておきましょう。この記事では柑橘類のすす病が発生する原因や防除方法について紹介しますので、参考にしてください。
柑橘類のすす病の病徴と被害
ミカンコナジラミ 排泄物によるすす病
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
すす病に感染した樹木の特徴は、葉や枝、果実の表面が菌糸で覆われ、黒く変色することです。まるで物を燃やしたときに発生する「すす」をまいたようになります。
菌糸の色は、つやのない純粋な黒に近いといえます。腐敗性の病害によく見られる黒褐色とは違うため、ほかの病害と見分けることはそれほど難しくないでしょう。
黒く変色した部位は、こすれば多少は色が落ちるものの、完全にきれいにするのは困難です。そのため、葉全体が黒い菌糸で覆われると光合成が妨げられ、樹勢が低下し、果実の品質低下を起こす恐れがあります。
さらに、果実に菌糸が増殖すると、見た目が悪くなって商品価値がなくなるなど、経営に大きな打撃を与える事態も想定されます。
柑橘類のすす病 被害果
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
柑橘類のすす病の原因
すす病の原因は、Capnodium salicinumなどの「糸状菌」です。害虫による排泄物が原因で、空気中に含まれている菌が繁殖する腐生性での発病が多く見られます。一方で、菌自体が植物に寄生する形での発病は珍しいといえます。
発病のきっかけとなる害虫には、カイガラムシ類やアブラムシ類、コナジラミ類が挙げられ、それらの害虫が樹木や葉などに付いた排泄物にカビが生えることで発症するケースが一般的です。
イセリアカイガラムシ 成虫、幼虫と葉のすす病
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
害虫の排泄物は「甘露」とも呼ばれ、病原菌が好む栄養源がたくさん含まれています。害虫防除が手薄になり害虫が多発すると、すす病も発生しやすくなるので注意しましょう。
なお、すす病の病原菌である糸状菌はあくまでも樹木の表面だけで生息し、樹体まで侵入することはありません。そのため、防除の基本は、樹木の表面にいる害虫の防除となります。
柑橘類のすす病の発生時期
すす病は糸状菌原因で発生する病害なので、日照時間が少なく湿度が高い時期に進行しやすいのが特徴です。また、雑草が繁茂している時期も害虫が多発しやすいことから、発病のリスクは高まります。
発病の原因となる害虫の種類には、主に6~10月にかけて発生するコナジラミ類、降雨の多い時期に当たる4~6月、9~10月に多発するアブラムシ類が挙げられます。
発病が多いのは春から秋にかけてですが、カイガラムシ類は年中発生(5~7月に幼虫がふ化)するため、年間を通してリスクがあると考えて対処しましょう。
柑橘類のすす病の防除方法
toraya / PIXTA(ピクスタ)
すす病による被害が進行すると樹木全体が黒いすす状の粉で覆われ、除去するにはとても負担がかかります。
また、樹勢の低下や果実の品質低下によって収入が減少してしまう恐れもあるため、被害が発生する前に防除することが重要です。
柑橘類のすす病の防除方法は、主に耕種的防除と化学的防除の2種類があります。しっかりチェックしておきましょう。
耕種的防除
すす病はジメジメとした高温多湿の環境下で発生しやすいことから、耕種的防除では風通しや日当たりのよい環境を整えることが大切です。密植状態を避けることはもちろん、過繁茂を防ぐために適宜、摘葉を行うことで湿度と日当たり両方の改善に効果があります。
また、過剰な施肥も葉の過繁茂を助長することがあるため、常に適正な施肥量の維持を心がけましょう。
なお、すす病の発生原因となる害虫の中でも特にカイガラムシ類の成虫は殻が硬いため、農薬による化学的防除の効き目が薄いとされています。
そのため、カイガラムシ類に対してはフタホシテントウやヒメアカホシテントウなど、天敵を利用した防除が有効な場合もあることも覚えておくとよいでしょう。
ヒメアカホシテントウ 成虫(体長5mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
化学的防除
カイガラムシ類やコナジラミ類に対する化学的防除としては、冬季に30~45倍に希釈したマシン油乳剤の散布を実施することが効果的だといわれています。
▼ヤノネカイガラムシの防除、有効な農薬については下記記事をご覧ください
農林水産省農林水産技術会議から委託をうけた愛媛県農林水産研究所果樹研究センターが2013(平成25)年3月に公表した資料によると、冬季マシン油乳剤の散布によってカイガラムシ類やすす病の発生が抑えられたとするデータが示されました。
出典:農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室「カンキツ有機栽培実践園において問題となる病害虫の種類と抑制技術」
カイガラムシ類は害虫の中でも農薬が効きにくいため、発生するたびにこすり落としたり、葉や枝ごと取り除いたりして防除しなくてはならず、作業負担が重くなるケースも珍しくありません。できるだけ発生前の段階で防除しましょう。
イセリアカイガラムシ 成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
柑橘類のすす病は収入を激減させることのある病害です。発病すると樹勢が弱まり、果実が出荷できなくなることがあります。
一部ではなく全体的に黒いすすのような病斑が広がるといった、ほかの病害と異なる特徴もあるので、日頃から樹体をよく観察して早期発見に努めましょう。今回紹介した耕種的防除と化学的防除を参考に対策に役立ててください。
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中原尚樹
4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。