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【果樹&野菜苗】接ぎ木の仕方と種類を一覧解説! 成功率UPのポイントは?

【果樹&野菜苗】接ぎ木の仕方と種類を一覧解説! 成功率UPのポイントは?
出典 : Syndy - stock.adobe.com

接ぎ木は果菜の苗や果樹の栽培で行われます。目的により、実施する接ぎ木の種類は異なりますが、注意点は共通しています。この記事では、接ぎ木の仕方や手順、ポイントを紹介しますので、参考にしてください。

果菜類や果樹を栽培する農家にとって、接ぎ木は重要な技術です。なぜなら、作物の品質向上や収量増、病害虫や連作障害の回避に役立つからです。この記事では、作物ごとに適した接ぎ木の種類や手順、効果について解説します。

そもそも「接ぎ木」とは?

りんごの接ぎ木

akihiro / PIXTA(ピクスタ)

接ぎ木とは、2つ以上の植物を接着し、新たな個体にする技術です。具体的には、植物の枝や芽などの一部を切り取り、ほかの植物の枝や幹に切断面を作って接ぎ合わせます。

大地に根を持ち、土台にする植物を台木と呼び、土台に接着したい枝や芽を「穂木(または接穂)」と呼びます。

また、接ぎ木には、以下のような種類があります。

・枝接ぎ(切り接ぎ)
・芽接ぎ
・根接ぎ
・実生接ぎ(種子接ぎ)
・呼び接ぎ

接ぎ木する植物と目的により使い分けますので、植物の特性をよく知り、その原理を理解してから行うことが成功のカギです。まずは接ぎ木の原理と目的について詳しく解説します。

接ぎ木の原理と目的

接ぎ木は、植物のもつ癒合能力を利用した技術です。

植物は傷つけられると、傷の周囲にある細胞が分裂し、回復のために組織を再生・癒合します。このような癒合能力は、植物の表皮のすぐ内側にある薄い「形成層」で活発に行われています。

そのため、穂木と台木の形成層を合わせて密着させることで、傷口を癒合する組織「カルス」が形成され、傷ついた部分が再生されます。

その結果、穂木と台木が無事に繋がり、互いに養水分が流動して育成が始まります。これを「活着」と呼びます。もしも活着しなければ、接ぎ木は失敗で、穂木は枯れてしまいます。

なお、果樹・果菜類の栽培において、接ぎ木に期待される目的は以下のようにさまざまです。

接ぎ木で樹勢をコントロールしている梅の園地

himawari /PIXTA(ピクスタ)

・果樹の繁殖方法として活用

高品質な実を付ける優良な個体の特質を、確実に次世代に伝える

・新しい品種の環境適応性を高める

新しい品種を、ほ場の環境に適した台木に接ぎ木して、環境適応性を高める

・樹勢の調整

樹を矮化するなど樹勢の調整をする

・果実の結実量や品質の向上

育成に時間のかかる果樹を、短期間に多数増殖する

・樹勢の回復

老化して樹勢が衰えた樹木に、若く勢いのある根を接ぐことで、樹勢の回復や経済年齢の延長をする

・受粉の効率の向上

花粉を付ける枝を接ぎ木して、受粉の効率を良くする

・被害を回避、収量の増加

果菜類では、病害虫に耐性のある台木に接ぎ木することで、被害を回避する。また、丈夫な台木を用いて生育を早めたり、収量を上げたりする

スイカのぎ木苗

3desc - stock.adobe.com

挿し木(さしき)との違い

種子によらない接ぎ木のような繁殖方法を栄養繁殖と呼びます。中でも、よく知られた栄養繁殖の1つに、「挿し木」があります。

挿し木は、葉や茎、根など植物の一部分を採取し、用土に挿します。これにより不定根や不定芽を発生させ、新たな個体として育成する接ぎ木の仕方です。

挿し木のメリットは、台木を必要としない点です。接ぎ木同様に、同一の個体から、同じ形質を持つ個体を一度に多数繁殖できるのですが、台木が不要な分、手軽に行えます。

ただし、注意点もあります。実生苗や接ぎ木苗に比べて寿命が短い傾向にあること、挿し木が難しい植物が存在すること、斑入り植物の斑など挿し木では遺伝しない植物があることです。

接ぎ木の仕方は? 主な種類とそれぞれの作業手順

果菜や果樹栽培に活用できる接ぎ木の仕方について、作業手順を簡単に解説します。

なお、ここで紹介する接ぎ木は基本的なものです。同じ接ぎ木の種類でも、地域や作物、風土に適した独自のやり方があります。初めて接ぎ木を行う場合は、経験者から話を聞いたり、やり方を見せてもらったりするとよいでしょう。

りんごなど多くの果樹で使われる「枝接ぎ(切り接ぎ)」

果樹の切り接ぎ

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枝接ぎは、1~3つほどの芽が付いた枝を穂木として、台木に接ぎます。また、接ぎ木と台木の接着面の切り方や合わせ方によって、切り接ぎ、割り接ぎ、高接ぎに分けられます。

りんごや柿など多くの果樹で使われる基本的な接ぎ木の仕方は、切り接ぎです。

一般的な切り接ぎは、以下の手順で行います。

1. 穂木を準備する

まずは穂木を準備します。落葉樹は冬の剪定の際に穂木を取りましょう。乾燥を防ぐために濡れた新聞紙やビニールにくるんで、土中や冷蔵庫で保存します。

ただし、梅や常緑樹など、接ぎ木をする直前に穂木を取った方が、活着しやすい種類もあります。

2. 台木を準備する

台木を準備しましょう。台木は無病で、接ぎ木と活着しやすい、親和性の高い品種を選ぶのが基本です。一般的には同属か近縁の種類同士ほど、親和性が高いといわれます。ですが異種間を組み合わせた方がよいケースもあります。

3. 穂木を切る

穂木はナイフを使い、5cm前後の長さに1~3つの芽があるように切ります。次に芽より下の片側を3cm程度、形成層の内側の木質部が見えるように真っ直ぐ削り落とします。

さらに、その反対側を、下から0.5~0.7cmほど斜めに切り返し、台木に挿す部分を尖らせましょう。あとは台木と接ぐまで乾かないように保存します。

4. 台木を切り落とし、切込みを入れる

台木は、あらかじめ枝や幹を接ぐ位置で切り落としておきます。枝の場合は根元から数cmくらいの高さがよいでしょう。その切り口の一端に、木質部が少し入るくらいの厚さで2~3cmの切り込みを入れます。削ぎ落してしまわないように気を付けましょう。

5. 台木に穂木を挿し込む

台木の切り込みに穂木を挿し込みます。このとき、互いの形成層を合わせるように密着させるのがコツです。挿したら動かないように、接ぎ木用のテープで巻いて固定しましょう。


穂木と台木の切り口は、水分が逃げないように接ろうやパラフィンで塞ぎます。また、乾燥や雨を防ぐために、接ぎ木部分全体にビニールを被せましょう。テープは活着が完了した秋か翌春に除去します。


以上が一般的な切り接ぎの手順です。

最近は、「三角接ぎ」が多くの農家で取り入れられています。三角接ぎは、まず穂木の切り口を鋭い逆三角形にします。次は台木に、穂木と同じ角度でV字の切り込みを入れましょう。

このように密着させる三角接ぎはカルスを形成しやすく、活着しやすいのが特徴です。接ぎ後も目立たないので、ブドウや梅、ツバキの接ぎ木に向いています。

桃やみかんに適した「芽接ぎ」

芽接ぎ

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芽接ぎは、芽の周辺部のみを穂木にして行います。まずは穂木から芽を1つ選びます。芽接ぎナイフなどを使い、芽を中心として2cm程度の盾形(楕円形)に削ぎ取ります。あまり薄くなりすぎないように、少し木質部にかかるように削ぐのがコツです。このとき、葉は葉柄を残して切り落としましょう。

次に台木の表皮に、芽が入る大きさでT字形に切り込みを入れます。木質部が少し出る程度に表皮を剥がして開きましょう。

最後に開いた表皮の中に削いだ芽を挿入し、木質部に密着させます。接ぎ木テープで芽だけを出して巻き付けます。梨や桃、みかん、りんごなどの果樹に向いている接ぎ木の仕方です。

梨やブドウに適した「根接ぎ」

根接ぎはほかの接ぎ木とは目的が異なります。老木で根張りが弱ったり、一部がなくなってしまったりした場合に、根張りを強くし、樹勢を回復するために行います。

台木の根に近い主幹に太い根の付いた穂木をついで、土を被せ、新たな根として生長させます。

栗などに適した「実生接ぎ(種子接ぎ)」

実生接ぎは栗やツバキなど、比較的大きな種子を用いて行います。発根し始めた実生を台木として枝接ぎします。ほかの接ぎ木の仕方と比較すると特殊ですので、一般的とはいえません。

きゅうりなど野菜苗に使える「呼び接ぎ」

スイカの接ぎ木苗

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呼び接ぎとは、穂木を母体となる植物体から切り離さないように行います。台木、穂木とも根を張ったまま、接ぐ部分を削り、削った部分を密着させましょう。活着後、穂木の根側と台木の上部を切り離し、1つの個体とします。

樹木ではモミジやカエデ、ツバキなど、野菜ではきゅうりやスイカ、メロンなどウリ科の苗で主に用いられます。かぼちゃの台木にきゅうりを接ぐなど、異種間での呼び接ぎも効果的です。

トマト農家の主流「チューブを用いた幼苗接ぎ木」

トマトの幼苗接ぎ木

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幼苗接ぎ木は、チューブ式支持具を用いて行います。子葉と第一本葉の間が10mmほどになった頃に行います。

斜めに切り込みを入れた台木にチューブをはめ、そのチューブに穂木を差し込んで台木と切断面を合わせます。

例えば、トマトは呼び接ぎをできますが、大量の苗が必要になるプロ農家では負担が大きくなります。また、苗床のスペースもかなり必要となるため非効率です。そこで幼苗接ぎ木が、現在主流となっています。

接ぎ木の成功率を高めよう! 作業のポイント&失敗しやすい注意点

果樹の接ぎ木

Niko_Cingaryuk / PIXTA(ピクスタ)

最後に、接ぎ木の成功率を高めるためのポイントと、注意すべき点について解説します。

接ぎ木はやり方に合った時期に実施を

どの種類の接ぎ木でも、適した時期は植物の種類によって異なります。果樹の場合、落葉樹は芽が動き始める3~4月、常緑樹は芽が伸びてきた5~6月に行うとよいでしょう。ただし芽接ぎの場合は8~9月の夏期に行います。

野菜類の接ぎ木は12~3月の時期に、作目や品種、地域の気候に合わせて行いましょう。一般的に播種後、本葉が出始めた頃に割り接ぎや呼び接ぎをします。

決め手になるのは「切り口の密着度」

接ぎ木の原理で解説したように、活着を成功させるためには、速やかなカルスの形成が必要です。そのために重要なのが、台木と穂木の切り口がぴったりと密着することです。切り口が歪んでいたり、でこぼこがあったりすると隙間ができて、カルスが形成されず、切り口が癒合しません。

穂木の整形や台木の切り込みには、細胞をつぶしてしまうハサミは使わず、切れ味のよいナイフで斜めに切り込みを入れるのがポイントです。

ナイフでの穂木の整形

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台木と穂木の「親和性」にも注目

穂木と台木が活着しやすいことを「親和性が高い」といいます。どれほどうまく接ぎ木をしても、親和性が低ければ穂木はうまく活着できません。一般的には、同一種や同属、近縁の種類ほど親和性が高いとされますが、かぼちゃときゅうり、カラタチとみかんなど、異種間でも相性のよい組み合わせもあるので一概にはいえません。

接ぎ木する品種がどのような種類に親和性があるのか、調べてから行うのがおすすめです。なお、接ぎ木に成功すれば、平均的に3日後くらいには切り口の癒合が始まり、1週間ほどで完全に癒着するといわれています。

「乾燥」は接ぎ木が失敗する大きな要因の1つ

断面の形成層が乾燥するとカルスが形成されず接ぎ木は失敗してしまいます。そのため接ぎ木用テープをしっかり巻いて乾燥を防ぐことが大切です。同時に、雨水が傷口に入り込むのを防ぐことも重要です。

現在では、密着性がよく、接ぎ木部分の固定と切り口の乾燥防止、外部からの防水が可能な接ぎ木用テープがあります。活着後は自然分解して芽の生長も妨げないすぐれたテープですので利用するとよいでしょう。また、乾燥を招く直射日光が当たらないように、遮光したり日陰に置いたりする配慮も成功率を上げるポイントです。

これらのほかに、重要な注意点として、台木の根元や幹から徒長枝が株状に発生する「台芽」の処理があります。この台芽は繰り返し発生し、放置すると栄養を取られてしまいます。接ぎ木部分の生長を妨げますので、頻繁に根元をチェックして早急に防除しましょう。

接ぎ木テープとビニールで乾燥を防ぐ

akihiro /PIXTA(ピクスタ)

接ぎ木はいくつかのポイントを押さえれば、比較的簡単にでき、高い効果が得られる技術です。また、穂木と台木の組み合わせ次第で新たな発見がある点も、接ぎ木の大きな魅力といえます。

栽培が安定して新たな品種に挑戦したいときや、収量を増やしたいとき、非常に優良な個体の特質を保ち増殖させたい場合などには、ぜひ挑戦してみましょう。

大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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