新規会員登録
BASF We create chemistry

【キャベツ育苗】セルトレイ育苗と地床育苗のメリット・デメリットや温度管理のポイントを解説

【キャベツ育苗】セルトレイ育苗と地床育苗のメリット・デメリットや温度管理のポイントを解説
出典 : 四季写彩 / PIXTA(ピクスタ)

キャベツの育苗には、セルトレイ育苗と地床育苗という2つの方法があります。それぞれメリット・デメリットがあり、地域やほ場の条件に合わせた適切な育苗を行うことで収量や品質の向上が期待できます。本記事では、キャベツの代表的な作型や播種から定植までの栽培方法、栽培管理のポイントなどを解説します。

  • 公開日:

記事をお気に入り登録する

キャベツの栽培方法にはセルトレイ育苗と地床育苗の2種類があり、適切な栽培方法を採用することで、収量や品質の向上が期待できます。

この記事では、キャベツの作型やセルトレイ育苗、地床育苗の特徴や手順、注意点などを解説します。

キャベツの代表的な作型・栽培暦

キャベツ ほ場

Yoshitaka / PIXTA(ピクスタ)

まず、キャベツの代表的な作型・栽培暦を紹介します。寒冷地や一般地、暖地など地域によって栽培歴は異なります。下記は例として温暖地~暖地の栽培歴を紹介します。

温暖地~暖地の作型と栽培暦

播種定植収穫
春播き
(保温育苗)
2月上旬~2月下旬3月中旬~3月下旬6月上旬~6月下旬
春播き
(露地)
3月下旬~4月上旬4月下旬~5月中旬6月下旬~7月下旬
夏播き
(年内どり)
7月上旬~8月中旬8月上旬~9月上旬10月上旬~12月上旬
夏播き8月中旬~8月下旬9月中旬~9月下旬1月中旬~3月下旬
秋播き10月下旬~12月中旬1月下旬~3月上旬4月下旬~6月上旬

出典:タキイ種苗株式会社「タキイ最前線」連載「野菜の作型と品種生態 栽培の幅を広げるために11 アブラナ科各論3 キャベツ・ブロッコリー(カリフラワー)」(タキイ最前線 2012年秋号)、タキイ種苗株式会社「品種カタログ あさしお」カネコ種苗株式会社「サワー感の強い年内どりキャベツ いろどり」よりminorasu編集部まとめ

キャベツの主な作型には、「春播き栽培」「夏播き栽培」「秋播き栽培」の3種類があります。春播き栽培は、低温による不時抽台が発生する可能性があるため、地域に応じて対策が必要です。

夏播き栽培は、播種の時期が高温になるため、防虫ネットを活用するなど徹底した病害虫対策をすることがポイントです。秋播き栽培は、低温期に栽培を行うため害虫の発生が少なく、ほかの作型より栽培管理はしやすいといえるでしょう。

省力化や安定生産で注目! セルトレイ育苗の特徴・注意点

セルトレイ育苗とは、小さいポットが連結して並んだ容器「セルトレイ」を使って、キャベツの苗を生長させる育苗方法のことです。アメリカで開発された育苗方法で、昭和50年代に日本でも導入され、花苗や野菜苗などさまざまな作物で採用されています。

キャベツのセルトレイ育苗

キャベツのセルトレイ育苗 発芽直後

t.kawada / PIXTA(ピクスタ)

キャベツのセルトレイ育苗は、以下の流れで行います。

育苗ハウスの準備

育苗は換気ができ灌水設備があるハウスで行います。アブラムシ類やコナガ、モンシロチョウなどの侵入を防ぐため、防虫ネットを施します。

培土の準備と播種

キャベツ専用培土を用意したセルトレイに充填し、水をたっぷり含ませます。その後、播種穴を開け、播種を行います。コート種子は1穴につき1粒、裸種子の場合は3粒程度播き、双葉が出揃ったときにハサミを使って間引きます。

発芽までの管理

高温期は、気温が下がる夕方ごろに播種し、発芽するまで涼しい場所に置いておきます。低温期は、播種後20℃前後を保つように加温します。発芽までは基本的に灌水しないので、新聞紙などをかけて培土の乾燥を防ぎます。

移植までの管理

発芽が揃ったら新聞紙を取り除き、低温期は15~20℃を保てるよう管理します。高温期の場合は、通気をよくし必要に応じて遮光資材などを使って高温になりすぎないよう留意します。

いずれの場合も、移植前に順化を行います。低温期は2葉期以降に少しずつ外気にあてるようにし、高温期の場合は移植の1週間前には遮光資材を外し、強い日射に馴れさせます。

黒腐病、べと病、苗立枯病などの病害は、過湿になると発生しやすくなるため、育苗期間を通じて、ハウス内が過湿にならないよう注意します。

セルトレイ育苗のメリット

移植機によるキャベツ苗の定植

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

キャベツの栽培で、セルトレイ育苗を採用するメリットは主に以下の4つです。

・小さい面積で大量の良質な苗を育成できる
・持ち運びが楽
・移植などの作業を自動化できる
・移植後の活着がよい

セルトレイ育苗は、小面積で大量の良質な苗を育成でき、収益性向上が期待できます。小さなほ場での栽培にも向いており、不良苗が発生しても良質な苗と容易に植え替えができるため、良品率を落とさないですみます。

また、セルトレイは軽量であることから持ち運びが楽なこともメリットです。さらに、寸法設計が規格化されていることから、播種や移植などの作業を機械で自動化することができ、作業効率を高められます。移植時には根を切らないため、移植後の活着も良好です。

セルトレイ育苗のデメリット・注意点

キャベツのセルトレイ育苗

折茂宏明 / PIXTA(ピクスタ)

セルトレイ育苗のデメリットとして、キャベツの育苗中に灌水や温度などの徹底した管理が必要なことが挙げられます。

基本的に夏期の灌水は午前中に行います。夜間、培土に水分が残った状態だと徒長してしまうため、夕方には培土の表面が乾いている状態をめざしましょう。

また、前述したように、育苗中の温度管理では低温期と高温期で注意すべき点が異なります。肥切れの兆候がみられたら、移植を早めるか、一旦、ポリポットに鉢上げするなどの対策が必要になります。

地床育苗の特徴・注意点

地床育苗とは、ほ場に育苗スペースを設け、直接播種する方法のことです。育苗できる期間は限られますが、セルトレイ育苗より低コストで行えます。

群馬県の夏秋どり栽培や神奈川県の秋播き冬どり栽培などで用いられています。

キャベツの地床育苗

キャベツの地床育苗

四季写彩 / PIXTA(ピクスタ)

キャベツの地床育苗は以下の手順で行います。

育苗ほ場の選定・準備

育苗ほ場は、本圃の作付面積10a当たり30平方mを目安とし、アブラナ科の作物との連作にならず、根こぶ病や萎黄病などの病害が発生していないほ場を選びます。また、排水性・保水性ともによいことも条件の1つです。

育苗ほ場が決まったら、播種30日前に発酵鶏糞などの分解がすすみやすい有機質肥料をすき込み、幅1.2m、高さ10cm程度の畝を立てます。病害虫対策のため、土壌消毒を行い、可能であれば雨除け設備を設置します。

播種から発芽まで

キャベツの地床育苗 発芽直後

四季写彩 / PIXTA(ピクスタ)

条間10cm・株間4cm、深さ10~15mm程度で条播きし、軽く押さえたあと寒冷紗などを直がけし、たっぷり灌水します。

発芽が揃ったら直がけ資材を取り除き、トンネルがけします。トンネル資材は、低温期は保温のため穴あきポリ、高温期は害虫の飛来を防ぐために防虫ネットなどを用います。

採苗までの管理

本葉1~2枚までは土壌が乾燥しないように必要に応じて灌水し、本葉2葉以降は灌水を控えます。採苗の7~10日前に、移植後の発根を促すために根切りを行います。

移植適期は一般に、本葉4~5枚・茎の径3~4mm程度といわれていますが、産地や作型によって異なるので自治体の農政部署やJAなどに確認しましょう。

採苗前日に灌水し、育苗床を湿らせておきますが、採苗自体は、苗から水分が下がった日中に行います。

地床育苗のキャベツ苗の移植

四季写彩 / PIXTA(ピクスタ)

地床育苗のメリット

地床育苗には以下のようなメリットがあります。

・セルトレイ育苗と比べると 低コストで行える
・毎日灌水する必要がない

地床育苗はセルトレイ育苗と比べると、換気設備・灌水設備のあるハウスなどの設備や、セルトレイや専用培土など特別な資材が必要ないためコストは抑えられます。

また、毎日の灌水する必要がないため、業務負担が軽減できる点もメリットです。高温期の育苗では、ハウス内で作業するセルトレイ育苗よりも、自然の風が吹く屋外のほうが作業環境もよいといえるでしょう。

地床育苗のデメリット・注意点

地床育苗にも以下のデメリット・注意点があります。

・育苗可能な時期は限定される
・根切り作業・採苗作業が必要になる
・天候や病害虫の影響を受けやすい

そのほか、地床育苗のデメリットとしては、採用可能な作型が限られることと、、根切り作業・採苗作業が必要なことが挙げられます。また、天候や病害虫の被害に注意が必要で、台風などで大幅な欠株につながることがあります。

定植直後のキャベツ苗

四季写彩 / PIXTA(ピクスタ)

キャベツの育苗管理|水管理と肥培管理で徒長を抑えよう

キャベツの育苗で特に重要なポイントとして、徒長させないための水管理や肥培管理が挙げられます。徒長してしまうと、倒状したり曲がり苗やになったりし、元には戻らないため注意が必要です。

灌水は生育ムラにならないよう均一に行い、徒長や病気の原因となる夕方の灌水は避けるようにします。

セルトレイ育苗の場合は、トレイを地面から浮かせて置くように工夫することで、排水速度を速められます。また、換気をしっかり行い、風通しのよい環境をつくることも大切です。

肥料の多い培土では徒長しやすいため、培土選びは慎重に行い、適宜追肥で調整をしましょう。そのほか、光不足も徒長の原因となるため、過剰な遮光は避けるようにします。

キャベツのセルトレイ育苗 トレイは地面から浮かせる

四季写彩 / PIXTA(ピクスタ)

キャベツの代表的な育苗方法として、セルトレイ育苗と地床育苗について解説しました。それぞれメリットや注意点があり、作型はもちろん、本圃への移植で使う移植機や育苗管理に充てられる時間なども考えて、育苗方法を選択する必要があります。本記事で紹介した基礎知識を参考に検討してください。

記事をお気に入り登録する

minorasuをご覧いただきありがとうございます。

簡単なアンケートにご協力ください。(全1問)

あなたの農業に対しての関わり方を教えてください。

※法人農家の従業員は専業/兼業農家の項目をお選びください。

ご回答ありがとうございました。

お客様のご回答をminorasuのサービス向上のためにご利用させていただきます。

大矢隼平

大矢隼平

フリーランスのWebメディア編集者・ライター、コピーライターとして活動中。ITや通信、農業など多数メディアの編集・執筆業務から企業HPのコンテンツライティングまで幅広い業務を手掛けています。読者の方にとって有益な情報を発信します。

おすすめ