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「わさび」を「WASABI」に!販路拡大と、グローバルにわさびの魅力を伝える広報戦略

「わさび」を「WASABI」に!販路拡大と、グローバルにわさびの魅力を伝える広報戦略
出典 : 藤屋わさび農園Facebook

前編では、藤屋わさび農園有限会社 専務 望月啓市(もちづき けいいち)さんに、SNSの拡散効果を最大限に活用した広報戦略を伺いました。後編では、メディアでも注目されている、安曇野わさびの国際展開について伺います。

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藤屋わさび農園有限会社 専務 望月 啓市(もちづき けいいち)さんプロフィール

藤屋わさび農園有限会社 専務 望月 啓市さん

藤屋わさび農園有限会社 専務 望月 啓市さん
写真提供:藤屋わさび農園Facebook

藤屋わさび農園の4代目として生まれ、現在は同社専務を務める。藤屋わさび農園のわさびは、長野県で行われた品評会で長野県知事賞を受賞するなど、高い評価を得ている。望月さんは、その魅力を国内外に発信するためにさまざまな取り組みを実践している。

国内の次は世界。「安曇野わさびで世界を獲りたい」と海外進出に挑む

安曇野わさびを国内に広めた望月さんは、国内での活動を継続しながらも、「安曇野わさびで世界を獲りたい」と海外進出に挑みます。

海外でのわさび需要の高まりを捉えたい

農林水産省によると、海外において日本食は「ヘルシー」「安全」「おいしい」「高品質」というイメージがあるとされています。欧米を中心とした健康志向の高まりにより日本食が注目されるのと同時に、海外でのわさびの知名度も上がっていきました。

現在は日本食レストランだけではなく、スーパーでチューブわさびが販売されている国もあります。今やわさびは世界中で愛されているのです。そこで望月さんは、海外のわさび需要の高まりを捉えて、「安曇野わさびで世界を獲りたい」と海外進出に挑みました。

世界進出の課題は「海外輸出販路の開拓」

世界進出を考えるに当たり、最初に出てきた課題は「海外への輸出販路をどう開拓するか」だったそうです。

望月 海外でのわさび需要の高さはよく耳にしていたので、かねてからどうにか海外展開できないかと考えていました。しかし、大企業でもない一農家の力だけで輸出販路を開拓するのは困難でした。

イギリスでのプロモーションイベントを足掛かりに海外輸出を本格化

望月 そんな折に、取引先の1つであるハウス食品株式会社から、ロンドンでのプロモーションイベントへの参加を打診されました。

このイベントへの参加が海外進出への足掛かりになりました。イギリスは日本食の人気が高く、わさび需要も高まっています。イギリス国内での栽培も行われていますが、日本からの輸出でもマーケットには十分参入可能です。

プロモーションイベントは「Discover wasabi Project」でした。ハウス食品と安曇野市、イギリスの食品卸売会社がコラボして開催されました。イベントのために撮影した動画では、イギリスを中心に活動するシェフ、「アレックス・クラチゥン氏」を藤屋わさび農園へ招待し、わさびのほ場や収穫・加工の様子を紹介しました。

その映像は、後日アレックス氏が総料理長を務めるレストラン「Sosharu London」内で公開され、日本産わさびを使用したメニューのデモンストレーションも行われました。

プロモーション映像を撮影する望月さんとアレックス氏

プロモーション映像を撮影する望月さんとアレックス氏
写真提供:藤屋わさび農園ホームページ

香港のプロモーションイベントに参加し、アジア圏の販路を獲得

藤屋わさび農園は、イギリスでのプロモーションイベントのあと、2018年に安曇野市主導の海外プロモーション事業「香港・シンガポール サプライヤーキャラバン」に参加しました。現地の業者に直接商品説明し、試食してもらうことで、アジア圏の販路を獲得したそうです。

望月 自分の営業力だけで海外輸出ができる農家は多くありません。行政やJETRO(独立行政法人 日本貿易振興機構)、関連企業と力を合わせることで、海外進出を可能にすることができました。

ヨーロッパでの販路開拓プロジェクト「et WASABI」に参加

自治体や関連企業と力を合わせることで海外への販路を広げてきた藤屋わさび農園は、現在も安曇野市とともに行うプロモーション企画「et WASABI」に参加しています。

「et WASABI」は、フランスをはじめとしたヨーロッパでの販路開拓を目的としています。BSフジなどの国内企業とも協力し、安曇野わさびの魅力を伝えるために、番組の制作や現地での営業活動を進めています。

こうしたプロモーションのきっかけとなったのは、安曇野市が2020年に公開した「安曇野わさびプロモーション動画」です。この動画は2016年より行われている、安曇野産農産物・特産品の海外プロモーション事業の一貫として、コロナ禍の影響で消費が落ちたわさびの需要喚起のために制作されました。

Youtube 安曇野市公式チャンネル 【Azumino City】「Real Wasabi」

こうした「etWASABI」プロモーションは着実に成果を出しているそうです。

望月 「et WASABI」によって、モナコ国内にある高級日本食レストラン「NOBU」で提供される料理に藤屋わさび農園のわさびを使用していただけました。

海外向けの事業以外にも、映像によるプロモーションとして渋谷の街頭ビジョンに広告映像を流したこともあります。農家として初めて渋谷の街頭ビジョンで広告を流したという話題性もあり、より多くの人にわさび農家について興味を持っていただくことができました。

「et WASABI」には藤屋わさび農園以外にも安曇野市内のわさび農家が参加している

「et WASABI」には藤屋わさび農園以外にも安曇野市内のわさび農家が参加している
写真提供:藤屋わさび農園Facebook

海外進出のハードルは地元機械メーカーとの協力で乗り越えた

順調に海外進出を成功させているように見えますが、大きな課題もありました。

輸出わさびの鮮度低下は、「真空パック包装」と「急速冷凍」の導入で解決

海外進出の最初の課題は、わさびの鮮度低下でした。輸出時、運搬にかかる時間が長いため、鮮度を維持するのは困難を極めます。そこには大きな試行錯誤が必要だったといいます。

望月 当然のことですが、海外へ生わさびを輸出して顧客の元へ届くまでには、長い時間がかかります。わさびは乾燥に弱く、常温保存だと数日で変色や腐敗が進んでしまう作物です。

国内のお客様はもちろん、海の向こうのお客様にもより鮮度が高くおいしいわさびを味わっていただけるよう、真空パックでの袋詰めや急速冷凍機を活用し、商品の品質保持を徹底しています。

藤屋わさび農園は栽培だけでなく加工や梱包まで自社で行っている

藤屋わさび農園は栽培だけでなく加工や梱包まで自社で行っている
写真提供:藤屋わさび農園Facebook

海外に売っていない調理器具「わさびおろし」を長野県の半導体メーカーと共同開発

もう一つの課題はわさびを摩りおろすためのおろし金です。海外のサプライヤーへプレゼンテーションを行った際、望月さんは「ペースト状にするためにはミキサーを使えばいいの?」と質問されたといいます。

望月 その当時は、そんな質問が出ることに驚きました。しかし、よく考えて見れば「おろし金」という調理器具は海外にはないのです。わさびを摩りおろすなら、金属製のおろし金より鮫皮おろしを使う方がより辛味が増すという話をする以前の問題です。

海外にもチーズや柑橘類の皮を削る「グレーター」はありますが、鮫皮おろしの代用品にはなり得ません。

日本で既に販売されている鮫皮おろしを輸出することも不可能ではありませんが、わさびを摩りおろす際に使われる鮫皮おろしは、手入れを怠ると鮫皮が痛んで変色したり、かびが発生して使えなくなってしまいます。

国内であれば代わりの鮫皮おろしも簡単に手に入りますし、手入れや修理が可能な業者へのアクセスも簡単ですが、海外から依頼しようとすると一気にハードルは上がります。

そこで、手入れが簡単で、わさびのおいしさを引き出すことができる鮫皮おろしを作ることができないかと考えたのです。

その後、望月さんは長野県の半導体メーカーと共同開発し、オリジナルのステンレス製わさびおろし「鬼泪(おになみだ)」を開発し、販売を開始しました。

「鬼泪」はわさびを摩りおろすのに最も適した刃の高さ、角度、密度にこだわって開発された

「鬼泪」はわさびを摩りおろすのに最も適した刃の高さ、角度、密度にこだわって開発された
写真提供:藤屋わさび農園Facebook

信州わさびという安定した枠から飛び出し、「安曇野わさび」の知名度をあげる決意を胸に、国内では思い切ったインフルエンサー・マーケティングなどを敢行。さらにアジア、ヨーロッパに「安曇野わさび」の販路を拡げようと東奔西走する望月さんの行動力に感嘆するインタビューでした。

地域ブランドの知名度を上げる方法論は多々ありますが、ほかの人がまだ着手していない、果敢なアプローチにトライすることが突破口になる可能性があるのではないでしょうか。

安曇野わさびのインフルエンサー・マーケティングについて伺った前編も是非ご覧ください。

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福馬ネキ

福馬ネキ

株式会社ジオコス所属。「人の心を動かす情報発信」という理念のもと、採用広告を中心にさまざまな媒体で情報発信を手がける株式会社ジオコスにてライターを務める。

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