ほうれん草の病害はこうして防ぐ! 原因と対策方法を徹底解説
ほうれん草は、カビや害虫が原因でべと病や炭疽病、モザイク病などの病害にかかりやすい 作物です。病害が発生したときには、早期に対策をして、被害を最小限に抑える必要があります。また、温度や湿度、pH調整などの徹底した防除管理が必要です。本記事では、ほうれん草の主な病害と対処方法を解説します。
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ほうれん草の代表的な病害には、べと病やモザイク病、炭疽病があります。原因はカビや害虫で、症状は葉や茎に現れます。ほうれん草の主な病害6種類と症状、防除対策について解説していきましょう。
JackF/ PIXTA(ピクスタ)
ほうれん草は病害にかかりやすい?
ほうれん草は、暑さには弱く、気温が25℃以上になると生育が悪くなり、病害の発生が多くなります。他の葉物野菜と同じく、カビや病害虫がつきやすいため、定期的な消毒が欠かせません。
また、酸性に弱く、土壌のpHを適正に調整することも必要です。適正pHは6.2〜7.0が目安で、5.0以下になると生育不良になり、枯れてしまいます。
ほうれん草の主な病害
Yoshi/ PIXTA(ピクスタ)
ほうれん草の主要病害としては以下の6つが挙げられます。いずれも葉に現れる病斑や萎縮症状が商品価値を著しく低下させ、収益に大きな影響を及ぼします。
・べと病
糸状菌(カビ)が原因の病害で、主に葉に発病します。
・モザイク病
アブラムシ類によるウイルスが原因の病害で、葉の萎縮や縮れが起きます。
・炭疽病(たんそびょう)
糸状菌を原因とする病害で、進行すると病斑部分は腐り、乾くともろくなって穴が空きます。
・立枯病
ピシウム菌やリゾクトニア菌などにより発生する病害で、葉の変色、茎のくびれや腐敗がみられます。
・斑点病
糸状菌を原因とする病害で、主な症状として、小さな斑点が葉に多数発生します。
・萎凋病
糸状菌を原因とする病害で、成熟した葉から黄化し、萎凋、落葉します。
症状と対策に関して、詳しくは以下より解説していきます。
ほうれん草の主な病害の症状と対策
ほうれん草の主な病害の症状と対策について見ていきましょう。
べと病
ほうれん草 べと病 発病葉(葉表)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
症状
ほうれん草のべと病は、糸状菌(カビ)が原因の病害で、主に葉に発病します。平均気温が8~18℃で過湿状態が続くときや、葉が3、4枚以上混み合っているときに発生リスクが高まります。
初めは黄色っぽく、ぼんやりとした小斑点が現れ、拡大すると淡黄色の病斑となります。葉裏には灰色、または灰紫色のカビを密生させるのが特徴です。さらに悪化すると、葉の大部分が淡黄色になり、枯死します。
対策
病害の発生前~発生初期は、農薬防除が効果的です。例えば、播種時に農薬を使用したり、ほうれん草の生長後、茎葉に散布するなどがあげられます 。
ほかにも予防対策としては、べと病にかからないように開発された「抵抗性品種」を栽培すること、葉を間引くことなどが有効です。もし病害が発生したときは、すぐに病葉を取り除いたり、全身病斑を示す株は、株ごと防除しましょう。
※ほうれん草のべと病は、「抵抗性品種」であっても、新たな病原菌で感染することがあります。その点は考慮して栽培しましょう 。
▼ほうれん草のべと病についてはこちらの記事もご覧ください。
モザイク病
ほうれん草 モザイク病 発病株(6月)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
症状
ほうれん草のモザイク病は、アブラムシ類によるウイルスが原因の病害です。葉に濃淡のモザイク模様が現れ、ひどくなると葉が萎縮し、縁が波状になって縮れます。
対策
原因菌を媒介するアブラムシ類の飛来防止を徹底します。例えば、防虫ネットのトンネルを掛けたり、マルチを敷いたりして対策します。
治療する農薬はないため、感染症状が出た株は、抜き取って防除し、ほかの株へ伝染しないように焼却処分します。防除作業に使ったハサミなどもウイルスに汚染されている可能性があるため、確実に消毒しましょう。
炭疽病(たんそびょう)
症状
ほうれん草の炭疽病は、糸状菌が原因の病害です。発生が多い時期は晩秋と春で、過繁茂、密植、土壌の過湿、肥料の使い過ぎなどにより発病リスクが高まります。
症状は葉と茎に発生します。葉に円形の小斑点が生じるのが特徴で、次第に直径2~10mmに拡大します。次に輪郭がはっきりした灰色~淡黄色の病斑に変化します。進行すると互いに融合して、不規則な大型の同心輪紋状となり、その上に小さな黒い粒状の点が多く発生します。
その後、病斑部分は腐り、乾くともろくなって穴が空きます。
対策
間引きを徹底し、過繁茂を避け、風通しをよくすることです。肥料の使用も控えめにするのが大事です。また、散水方式の灌水も原因のため使用を避けましょう。
立枯病
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
症状
ほうれん草の立枯病は、ピシウム菌やリゾクトニア菌などにより発生する病害です。多湿状態で発生リスクが高まるため、梅雨や秋雨の時期には特に注意が必要です。
感染すると葉が黄色く変色する、株部分が褐色化する、茎のくびれや腐敗などの症状がみられます。
対策
土壌消毒が有効です。ハウス栽培では、7~8月に太陽熱処理することで被害を防止できます。連作を避け、高畝にするなど、ほ場の排水対策も効果的です。
斑点病
症状
ほうれん草の斑点病は、糸状菌を原因とする病害です。葉に傷ができたときや衰弱した際に発生しやすくなります。
小さな斑点が、葉に多数発生するのが主な症状です。多くの斑点は直径1㎜ほどですが、中には6㎜以上の病斑も見られます。色は灰白色で、周辺は淡黄色、後に黄褐色となります。
多数の病斑が融合して大きな病斑となったり、病斑部が崩れ落ちて穴が空いたりすることもあります。
対策
厚まきを避け、適正な施肥管理を行うことが重要です。防除農薬はないので、病害を発見したときは、発生株を抜き取り、ほ場外に出して処分します。被害の拡大を防ぐために、早期に対策しましょう。
また、雨による土のはね上げによっても伝染するため、畝の肩や畝間に、敷きわらやポリフィルムを設置するのも効果的です。
萎凋(いちょう)病
症状
ほうれん草の萎凋病は、糸状菌が原因の病害です。属菌の中でも、フザリウム属菌の一種に種特異性があり、ほうれん草に強い病原性を示します。夏場の高温期や酸性土壌で発生リスクが高まります。
症状としては、まずは下の方の葉から黄化やしおれがみられ、しだいに新しい葉に伝染します。また、発生した株は著しく生育不良となり枯死します。病状が激しいと、被害根は白色のカビでおおわれていることもあります。
対策
種子伝染の可能性があるため、まず消毒をした加工種子を使用します。また、有機質肥料を使うなどして、腐植の多い土を作ることも重要です。
予防や発生が多いほ場では、土壌消毒剤の使用が効果的とされています。また、極端な酸性土壌の場合は、苦土石灰などを施用し、pH6.0~6.5に改善します。
ドローンを使ったスマート農業で病害対策!
葉色解析サービス「いろは」
出典:PR TIMES(株式会社スカイマティクス ニュースリリース 2019年6月5日)
日々観察してどれだけ防除対策をしても、さまざまな要因によって病害が発生する可能性は否めません。病害初期の病斑は小さなものも多いため、見落としてしまうこともあります。
その解決に役立つものとして、早期に病害を発見し、被害を最小限に食い止めることに役立つ、葉色解析サービスがあります。
それはドローンを使った技術で、作物の状態を記録し、日々の生長データを蓄積していきます。そのデータに基づき、雑草、害虫、病気など、ほ場の異常をピンポイントで抽出可能になります。
以上のことから防除だけでなく、作業の効率化・省力化も期待できるため、ドローンを使った葉色解析サービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
高温や酸性の土壌に弱く、カビやウイルスなどが原因で病害が発生することも多いほうれん草ですが、病害の種類や症状を知ることで、早期に発見し、効果的な防除対策を実施できます。病害の影響を最低限に抑え、品質のよいほうれん草の効率的な収穫を実現しましょう。
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酒井恭子
テレビ番組制作会社、タウン情報誌出版社での取材・編集・ライティング業務などを経て、2018年からライターとして活動。農業、グルメ、教育、ビジネス、子育て情報など、幅広いジャンルの記事を執筆している。特に、食べることに興味があり、グルメ情報を自身のメディアでも発信中。美味しい料理の素材となる野菜や果物についても関心を持ち、農家とつながる飲食店で取材するなど、日々知識を深めている。「自分の文章で感動を多くの人と共有したい」が信条。