【ほうれん草の品種一覧】定番品種&栽培しやすい新品種まとめ

ほうれん草の品種は多岐にわたり、それぞれ適する作型や耐病性が異なります。本記事では、ほうれん草の主要産地で栽培されている定番品種をはじめ、作型別におすすめの品種を紹介します。近年発売された注目の新品種も参考にしてください。
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目次
【ほうれん草】主要産地で栽培されている主な品種一覧

収穫間近のほうれん草
KY / PIXTA(ピクスタ)
ほうれん草の主要産地は、群馬県・茨城県・埼玉県・千葉県・岐阜県・福岡県・宮崎県の7県です。これら主要産地で収穫されている、ほうれん草の主な品種は以下の通りです。
産地名 | 品種名 |
---|---|
群馬県 | スクープ、トラッド、クロノス、ハイドン、ジャスティス |
茨城県 | ミラージュ、常気元 |
埼玉県 | ジャスティス、オシリス、ハンター、ディープサマー、福兵衛 |
千葉県 | ミラージュ、クロノス、オシリス、ドンキー、ジャスティス、ゴードン、ハイドン、ピンドン、アステアブラック、伸兵衛、寒兵衛、バートン、アグレッシブ、トラッド、アクティブ |
岐阜県 | 晩抽サマーホープ、サマークイーン |
福岡県 | プログレス、クロノス、ミラージュ、ジャスティス、福兵衛 |
宮崎県 | クロノス、サプライズ7、スーパーアリーナ7 |
出典:
農林水産省「令和5年(2023年)産指定野菜(秋冬野菜等)及び指定野菜に準ずる野菜の作付面積、収穫量及び出荷量 併載:令和5年(2023年)産野菜(41品目)の作付面積、収穫量及び出荷量(年間計)」
農林水産省「各都道府県において主に栽培されている品種について(令和5年(2023年)3月末現在)」
主要産地では、それぞれの気候条件に適した品種を選択することで安定生産を実現しています。
ほうれん草の品種を選ぶ2つのポイント
ほうれん草は作期が短いものの、春から冬の各作型に適した品種を組み合わせることで周年栽培が可能です。
ほうれん草の作型は、主に早春播き、春播き、夏播き、秋播き、晩秋播きがあり、それぞれの作型に適した品種を選ぶことが、ほうれん草栽培の基本になります。
そのうえで、病害に強い品種を選ぶことも重要です。ほうれん草はべと病や萎凋病などの病害にかかりやすく、初めてほうれん草を栽培するなら抵抗性・耐病性を持たない品種は避けましょう。
特に品種の特徴をチェックするときは、「べと病レース」の抵抗性や耐病性に注目してください。例えば、ほうれん草の定番品種である「ジャスティス」は、べと病レース1〜9・11〜15に抵抗性があり、萎凋病にも耐性を持ちます。
作型に適しているか耐病性があるか確かめながら、栽培環境に適した品種を選んでください。
▼ほうれん草のべと病レースの詳細は、下記の記事をご参照ください。
全国で人気! ほうれん草の主な定番品種

収穫直後のほうれん草
トマト大好き / PIXTA(ピクスタ)
主要産地で広く栽培されているほうれん草の定番品種では、次の3つが挙げられます。
- ミラージュ
- クロノス
- ジャスティス
ミラージュ
ミラージュは、耐暑性に優れ、高温期にも育てやすい春・夏播き用のほうれん草です。べと病レース1〜7・9・11・13・15・16へ抵抗性を持ち、生育遅延などの障害が起こりにくいという特徴を持ちます。
播種適期は、冷涼地で8月中旬〜9月上旬、一般地・暖地では8月下旬〜9月下旬になります。
萎凋病へも強い耐病性を持つことから、防除の省力化に貢献する品種です。
出典:株式会社サカタのタネ ホウレンソウ「ミラージュ」
クロノス
クロノスは、耐寒性・耐湿性が高く、露地栽培でも越冬できる秋播き用の品種です。生育旺盛で収量が多く、初めて栽培する農家からベテラン農家にまで扱いやすい品種として人気があります。
特徴を活かせる播種適期は、冷涼地で9月中旬〜10月上旬、暖地で10月中旬〜12月中旬になります。
暖冬の年は生育が早まり、収穫適期を逃がしてしまう可能性があるため、生育速度を見越した作付計画を立てることがポイントです。
出典:株式会社サカタのタネ ホウレンソウ「クロノス」
ジャスティス
ジャスティスは、萎凋病に強い耐性を持つ春・夏播き用のほうれん草です。晩抽性が安定していることから作型が幅広く、播種は3月下旬〜8月中旬まで行うことが可能です。
それにより、一般的にほうれん草の栽培ハードルが高い6〜7月の播種でも、安定した収穫が期待できます。
一方で、緯度が高く日照時間の長い北海道では抽苔を促してしまうため、5月中旬〜7月中旬の播種は避けることが推奨されています。
出典:株式会社サカタのタネ ホウレンソウ「ジャスティス」
春播き~夏播きに適したほうれん草品種4選

ほうれん草の収穫
KY / PIXTA(ピクスタ)
主要産地で栽培される春・夏播き用ほうれん草のうち、次の4品種は晩抽性と耐暑性に優れています。
- ハンター
- 晩抽サンホープ
- スクープ
- ディープサマー
ハンター
ハンターは、べと病レース1〜7・9・11・13・15・16への抵抗性を備えた春播きのほうれん草です。草姿は立性で作業性に優れ、葉数が多く収量にも期待できます。
播種適期は、冷涼地で3月上旬〜4月下旬、一般地なら2月末〜4月下旬です。
独特の光沢を持つ外観により商品性が高く、収益向上をめざす農家にもおすすめの品種です。
出典:カネコ種苗株式会社 ホウレンソウ「ハンター」
晩抽サンホープ
晩抽サンホープは、抽苔がゆっくりで長期間の収穫に適した春・夏播きの品種です。萎凋病に耐性を持つことから高温期でも品質を損ないにくく、生産体制を安定させやすくなっています。
特性を引き出すのに適した播種期は、冷涼地は4月上旬〜8月中旬、一般地では3月中旬〜6月中旬です。
葉面が滑らかでツヤのある晩抽サンホープは、品質重視の農家に好まれるほうれん草です。
出典:カネコ種苗株式会社 ホウレンソウ「晩抽サンホープ」
スクープ
スクープは、極立性で生育旺盛な早春播き・夏播きのほうれん草です。気温30℃の中でも栽培できる耐暑性を持ち、葉のちぢみや巻きがなくキレイな草姿で収穫できます。
夏播きの場合は、冷涼地で8月上旬〜9月下旬、一般地だと1月下旬〜4月中旬と8月上旬〜10月下旬、暖地なら8月中旬〜3月末まで播種することが可能です。
株同士の絡みが少なく、収穫時の負担や調整作業の省力化を叶える品種です。
ディープサマー
ディープサマーは、葉枚数が豊富で株張りも良好な収量性に優れた品種です。べと病レース1〜14への抵抗性を持ち、さらに萎凋病にも強い耐性があります。
播種適期は、冷涼地で4月上旬〜8月上旬、一般地・暖地は3月上旬〜6月中旬です。
葉が極濃緑色で光沢感のある見た目から、市場性の向上にも期待できます。
出典:株式会社 武蔵野種苗園 ディープサマー
秋播き~晩秋播きに適したほうれん草品種4選

霜が降りたほうれん草畑
GLP / PIXTA(ピクスタ)
主要産地で栽培されているほうれん草のうち、低温伸長性・耐寒性を持つ秋・晩秋播きに適した品種は、次の4つです。
- トラッド
- オシリス
- 寒兵衛
- ハイドン
トラッド
トラッドは、立性かつ軸が強いことから収穫しやすく、作業負担の軽減を図れるほうれん草です。葉は濃緑色で平らな広葉型に育ち、根には赤みを帯びるため見た目がよく商品性に優れます。
播種適期は、冷涼地で2月下旬〜3月下旬と8月中旬〜10月上旬、一般地・暖地では8月下旬〜3月末になります。
大きなサイズで収穫できることから、加工用を出荷する農家にもおすすめできる品種です。
出典:株式会社サカタのタネ ホウレンソウ「トラッド」
オシリス
オシリスは、耐湿性に優れ、水田の裏作としても栽培できるほうれん草です。寒さに強く、暖地であれば無被覆の露地栽培で越冬することも可能です。
播種適期は、冷涼地で9月中旬〜10月中旬と3月上旬〜下旬、一般地・暖地で9月中旬〜3月下旬となります。
耐湿性・耐寒性を兼ね備えており、厳寒期にも安定して栽培したいときにおすすめです。
出典:株式会社サカタのタネ ホウレンソウ「オシリス」
寒兵衛
寒兵衛は、収穫適期が幅広く、在ほ性に優れた品種です。寒さに強く軸割れが起こりにくいことから、品質を損なわずに収穫できます。
冬播きの適期は、冷涼地で9月中旬〜10月上旬と2月中旬〜3月末、一般地は9月末〜2月末、暖地では10月上旬〜2月下旬となります。
葉柄は柔らかくも丈夫なため、収穫・調整作業がスムーズになり、労働負担が比較的少なくできるのも特徴です。
出典:タキイ種苗株式会社 ホウレンソウ「寒兵衛」
ハイドン
ハイドンは、極立性で収穫しやすく収量が期待できるほうれん草です。
抽苔がやや早い傾向にある一方、ゆっくり生育するため、播種は年明けが推奨されます。具体的には、冷涼地で3月上旬〜3月下旬と9月上旬、一般地・暖地で9月中旬〜3月下旬になります。
作業性と収量性を併せ持つ特徴から、収益を担う主力商品として栽培している農家もいます。
また、ハイドンは、サカタのタネ「ドンドンシリーズ」の1種であり、他の品種(ドンキー・ゴードン・ピンドン)も併用することで、安定した周年栽培を築けます。
出典:株式会社サカタのタネ ホウレンソウ「ハイドン」
これから栽培するなら?今注目のほうれん草新品種3選

ほうれん草畑の風景
mochi / PIXTA(ピクスタ)
近年発売された新品種には、従来の品種よりも安定生産が期待できるほうれん草が登場しています。次に注目の新品種を3つ紹介します。
- ヴァンガード19
- スーパーセーブ
- 晩抽サマーヒット
ヴァンガード19
ヴァンガード19は、耐暑性・耐寒性を兼ね備えた秋・冬播きの品種です。
べと病レース1〜19への抵抗性を持つため、べと病対策に効果的なほうれん草です。秋から春どりの播種適期は、冷涼地で2月上旬〜3月上旬と8月上旬〜10月上旬、一般地・暖地で8月下旬〜3月下旬となります。
根痛みによる葉色むらが出にくく商品性が高いことに加え、立性の草姿により作業効率の向上にも期待できます。
出典:トキタ種苗会社 ホウレンソウ「ヴァンガード19」
スーパーセーブ
スーパーセーブは、低温伸長性があり寒さに強く、火山灰土から水田の裏作にまで適応を持つ秋播き用のほうれん草です。
2023年7月に発売された品種で、べと病レース1〜19に対する抵抗性を持ち合わせています。
播種適期は、冷涼地で9月下旬〜10月上旬と2月下旬〜3月中旬、一般地・暖地で10月中旬〜12月上旬と3月下旬です。
市場価値が高まる年末年始に合わせて栽培できる品種になります。
出典:株式会社サカタのタネ「べと病R–1~19抵抗性、ホウレンソウ『スーパーセーブ』の種子発売」
晩抽サマーヒット
晩抽サマーヒットは、気温が高く安定した栽培が困難な夏に適応した新品種です。ほうれん草は気温上昇により生育が不揃いになりやすい一方、晩抽サマーヒットは均一な生育を実現します。
播種の最適期は、冷涼地で3月末〜8月中旬、一般地・暖地で2月末〜6月中旬です。
曇天による日照不足や高温の条件下でも作りやすく、周年栽培にも選ばれる品種となるでしょう。
出典:タキイ種苗株式会社 ホウレンソウ「晩抽サマーヒット」
ほうれん草の品種を選ぶ際は、作型や早晩性、耐病性などの特性を総合的にチェックすることが重要です。これらの特性は、栽培地域の気候条件と組み合わせることで最大限に発揮されます。
また、気候変動に対応した新品種を採用することで、より安定した生産体制の構築が実現できるでしょう。
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相馬はじめ
農業×SEOに特化した専業Webライター。農業法人に正社員として8年間勤めた経歴を持つ。これまでに携わった作物は「キャベツ・白菜・レタス・長ネギ・馬鈴薯・米・麦・そば」。得意な執筆ジャンルは農業・音楽・転職など多岐にわたる。強みはコミュニケーション力の高さと、誰とでも打ち解けられること。minorasuでの執筆以外では、農業初心者に向けたブログ『農業はじめるなら見るブログ』を運営中。https://hajimete-hirogaru.com/