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【ナスハモグリバエ対策】害虫の生態や被害の特徴、防除方法、利用可能な農薬とは

【ナスハモグリバエ対策】害虫の生態や被害の特徴、防除方法、利用可能な農薬とは
出典 : himawari / PIXTA(ピクスタ)

ナスハモグリバエの幼虫は、ナスの葉に潜伏し、葉への食害によって作物の生育を妨げます。寄生範囲が広いため、ナスハモグリバエの被害を防ぐには、農薬散布やほ場の除草など早期の防除が重要です。この記事では、ナスハモグリバエの生態や被害の特徴、防除方法、利用できる農薬について解説します。

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ハモグリバエはナスだけでなく、トマトやキュウリなどにも寄生します。食害が進むにつれて葉の全面に食害痕が広がり、作物の収量減少を招きます。早期発見・早期防除につなげられるよう、ハモグリバエの生態や葉に及ぼす被害の概要を確認しておきましょう。

ハモグリバエとは?

マメハモグリバエ成虫(体長2mm)

マメハモグリバエ成虫(体長2mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ハモグリバエ類とは、ナス科をはじめ、アブラナ科やウリ科など多くの植物に寄生する害虫です。幼虫が葉の内部に入り込み、葉面に線状の食害痕を作るため「絵描き虫」と呼ばれることもあります。ナスハモグリバエをはじめ、マメハモグリバエ・トマトハモグリバエなど種類も多様です。

ハモグリバエ類の成虫は、体長2~3mm、頭部や脚・体の側面が黄色です。ナスハモグリバエの場合は背中に黒斑があり、中胸の背面黒色部にツヤがみられます。葉の裏面の表皮下に長径0.3mm、白色の円筒型の卵を産卵しますが、作物そのものには害を及ぼしません。

一方、幼虫は濃黄色~淡褐色で、体長は3mm前後、頭部は鋭く尖っており、黒色で針状の口鈎を持っているのが特徴です。幼虫は葉に潜ったまま、下葉から上葉にかけてジグザグに食害し、食害が進むにつれて白いスジ状の食害痕が広がります。老齢幼虫になると葉の外に脱出して蛹となり、土壌の表面や地表下1~2cmで越冬します。

マメハモグリバエ幼虫(体長2mm)

マメハモグリバエ幼虫(体長2mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

マメハモグリバエ幼虫による被害葉(絵描き虫と呼ばれる)

マメハモグリバエ幼虫による被害葉(絵描き虫と呼ばれる)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ナスハモグリバエの発生原因と多発時期、症状

ナスハモグリバエは、国内全域で古くから発生が知られている害虫です。ほ場外部から成虫が飛来して、展開葉に産卵することによって増殖します。成虫1匹あたりの産卵数は、寄生する作物によって異なりますが、インゲンマメの場合だと90匹前後といわれています。


葉の表面や土中で越冬した蛹の羽化によっても発生するため、ほ場の衛生状態や栽培する作物の組み合わせによっては、ナスハモグリバエが多発する恐れがあるので注意が必要です。蛹や幼虫が寄生した苗も、ナスハモグリバエの発生源となります。また、ナスハモグリバエは黄色に誘引される習性をもっています。

ナスの露地栽培

スミレ / PIXTA(ピクスタ)

発生適温は20~30℃で、乾燥した環境は、成虫の産卵活動や幼虫の発育には好適な条件です。施設栽培の場合は、3月以降に多発する傾向にあります。しかし、温度条件によっては、年間を通じてナスハモグリバエが発生する可能性があります。

ナスの露地栽培の場合は、5月~6月頃に発生数が増加する傾向があります。卵から成虫になるまでの期間は約16~21日ほどですが、年間で10回以上発生するといわれています。

ナスハモグリバエの成虫は、産卵管で葉面に穴を開けて吸汁し、葉の内部に産卵します。産卵後、葉に1mm前後の白い斑点が残りますが、その時点では実害がほとんど生じません。

ナス マメハモグリバエ成虫 吸汁痕 及び 産卵痕

ナス マメハモグリバエ成虫 吸汁痕 及び 産卵痕
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

しかし、幼虫は葉の組織に沿って、葉に食害を及ぼします。被害が進むにつれて、白い食害痕が絵を描いたように広がり、数日後に枯れて褐色に変色します。その結果、葉の光合成が阻害されて作物の生育が遅れ、収量や品質の低下につながるのです。さらに、複数の幼虫が寄生すると、短期間で葉の全体に被害が及び、枯死・落葉によって作物の生育が止まってしまいます。

マメハモグリバエ幼虫による被害をうけたナスの株

マメハモグリバエ幼虫による被害をうけたナスの株
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ナスハモグリバエ|耕種的防除のポイント

ナスハモグリバエの被害を防ぐには、ほ場の衛生管理や成虫の侵入防止といった基本的な対策が重要です。ここでは、ナスハモグリバエの発生・侵入を防ぐ効果がある耕種的防除方法について解説します。

ナスハモグリバエを侵入させない

ナス 施設栽培

hamahiro / PIXTA(ピクスタ)

除草を徹底する

ナスハモグリバエの寄主植物は多岐にわたり、雑草にも寄生します。そのため、ほかの作物との混植を避け、ほ場内外の除草を徹底するなど、ナスハモグリバエの成虫が産卵しにくい環境作りが大切です。

残さを確実に処分する

除草後の雑草類は、ほ場外に持ち出して土中深くに埋める、または焼却して早めに処分しましょう。収穫後の残さもナスハモグリバエの潜伏場所となるため、同様に処分します。

黄色粘着トラップを設置する

ナスハモグリバエの成虫は黄色に誘引される習性があるので、ほ場に黄色粘着トラップを設置すると成虫を捕獲でき、発生状況を把握できます。

防虫ネットを張る

防虫ネットを張る
物理的にナスハモグリバエが侵入できない環境づくりも、防除には有効です。育苗の段階から目合い1mm以下の防虫ネットまたは寒冷紗を張ります。定植する前に葉面を慎重に確認し、白い斑点や食害痕が発生している株を定植しないように注意しましょう。

ハウス栽培の場合は、出入口や換気口といった開口部に防虫ネットを張ると、ナスハモグリバエの侵入防止効果が高まります。

近紫外線除去フィルムの使用

近紫外線除去フィルムの展張もハモグリバエ類の侵入防止に有効です。しかし、ナス栽培では果実の発色が悪くなりますので、JAや普及団体などの指導を受けて使用するようにしましょう。

発生を認めたらすぐに処分と消毒を行う

葉に白い斑点や食害痕が見つかった場合は、葉ごと摘み取って処分した上で、後述する農薬による防除を行います。

また、ナスハモグリバエの幼虫・蛹をほかのほ場に拡散しないように、作業終了後に支柱などの資材や農機具・靴などの消毒を実施することも大切です。

前作でナスハモグリバエの発生したほ場の予防策

ビニールハウスの太陽熱消毒

ビニールハウスの太陽熱消毒
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ナスのハウス栽培中に、ナスハモグリバエが発生した場合は、次回以降の被害拡大を防ぐために、収穫後の土壌消毒が必須です。土壌消毒は、残渣や雑草の根を抜いたあとに、太陽熱を利用した蒸し込みによって行います。ナスハモグリバエの被害を受けた残渣は、蒸し込み後に、ビニール袋に入れてからハウス外に撤去して処分します。

ハモグリバエ類は、45℃以上の環境を1時間以上保つと死滅するといわれています。しかし、蒸し込みによってほかの病害虫も同時に防除できます。そのため、1週間~10日程度ハウスを締め切ると効果的です。地元のJAや普及指導員からの指導がある場合は、その内容に従うようにします。蒸し込み後に、土中に残存したハモグリバエ類の蛹が羽化し、成虫が死滅する期間を考慮して、次回の定植まで2~3週間程度あけるとよいでしょう。

露地栽培の場合は、収穫後に土壌表面をビニールやマルチで被覆すると、蒸し込みと同様の効果が得られます。しかし、気温が低い時期は十分な効果が得られない場合がある点にご留意ください。また、土壌に蒸気や熱水を送り込んで、熱消毒することも可能です。土壌消毒後は翌年の連作を控え、水稲や別の作物の栽培に切り替えてナスハモグリバエの密度を下げるようにします。

ナスハモグリバエで利用できる農薬

ナスハモグリバエの葉に白い斑点や食害痕が見つかった場合は、収量への影響を最小限にとどめるために、早い段階で農薬での防除を行いましょう。ナスハモグリバエの防除に有効な、主な農薬を紹介します。

農薬の使用に当たっては、必ず使用時点で登録があるかどうかを確認し、ラベルをよく読んで用法・用量を守って正しく使用してください。地域に農薬使用の決まりがある場合はそれにも従いましょう。

プレバソンフロアブル5
有効成分:クロラントラニリプロール5.0%
散布時期と回数:育苗期後半~定植当日に1回、定植後~収穫前日まで2回以内

ハモグリバエ類だけでなく、ネキリムシ類やオオタバコガなどの防除にも効果を発揮します。浸透性に優れており、生育期の散布では約2週間効果が持続するのが特徴です。農薬の抵抗性を回避するため、別系統の殺虫剤とのローテーション防除が推奨されています。

ダントツ水溶剤
有効成分:クロチアニジン16.0%
散布時期:収穫前日まで
散布回数:3回以内

ハモグリバエ類に加えて、アブラムシ類やカメムシ類など幅広く防除が可能です。ナスだけでなく、野菜類や水稲・柑橘などにも効果を発揮します。ミツバチやマルハナバチに影響があるため、使用する際は注意しましょう。

アファーム乳剤
有効成分:エマメクチン安息香酸塩1.0%
散布時期:収穫前日まで
散布回数:2回以内

自然物に由来した成分で、効果の出現と散布後の分解速度のどちらも速いのが特徴です。浸透性も高く、葉に潜伏した害虫にも効果を発揮します。

上記の農薬以外にも、「ディアナSC」や「コロマイト乳剤」も利用できます。

なお、生物農薬(天敵)を利用した防除方法として、マイネックスやヒメトップ・ミドリヒメなどの天敵寄生バチの放飼も有効です。例えば、ミドリヒメの場合は、ハモグリバエ類の幼虫を探し出して寄生し、防除効果を発揮します。ハモグリバエ類の発生初期から、7~10日間隔で2~3回放飼します。

農薬 散布作業

u.yoshifusa / PIXTA(ピクスタ)

ナスハモグリバエは、葉の食害によって光合成を妨げ、ナスの収量低下を引き起こします。黄色粘着トラップでも捕獲できますが、ナスハモグリバエの成虫をほ場に侵入させないよう、除草や防虫ネットの活用といった耕種的防除を実践することが大切です。葉に食害痕が見つかった場合は、早い段階で農薬による防除を実施しましょう。

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舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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