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ナスのモザイク病は発病前の対策が必須!具体的な防除方法を紹介

ナスのモザイク病は発病前の対策が必須!具体的な防除方法を紹介
出典 : Sushanta - stock.adobe.com

高温・多湿な環境を好むナスは、日本の夏の気候に適した作物です。しかし、ナスはモザイク病にかかると、収量が減少するので注意が必要です。この記事では主にナスの露地栽培を営んでいる方に向けて、モザイク病の病徴や発病する原因、防除方法を解説していきますので、参考にしてください。

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ナスの露地栽培

スミレ / PIXTA(ピクスタ)

インドが原産地であるナスは、高温・多湿の環境を好むことから、夏を中心にして日本でも盛んに栽培されている作物です。特に露地栽培は施設栽培と比べて手軽に始められることから、主に温暖な地域で行われています。

しかし、ナスはモザイク病により大きな被害を受けるケースがあります。この記事では、モザイク病の病徴から防除方法まで幅広く紹介しますので、参考にしてください。

ナスのモザイク病とは?

モザイク病に罹病したナスは、株全体が生育不良となり、果実が付かない場合もあり、収量減少につながります。安定した栽培を営むためにも、モザイク病にかかるとどのような症状が出るのかを知っておきましょう。まずは、ナスのモザイク病における病徴や発生原因について解説します。

主な病徴と作物への被害

モザイク病はウイルスが原因で発症する病害です。ナス以外にも、イチゴやウリ科、サトイモなどの作物が被害を受けることがあります。罹病すると葉に黄斑モザイク症状が発生し、光合成が妨げられることから生育に悪影響を及ぼします。

ナス モザイク病 葉の濃淡モザイク

ナス モザイク病 葉の濃淡モザイク
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ナス モザイク病 葉のモザイク拡大

ナス モザイク病 葉のモザイク拡大
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

また、株の萎縮はあまり見られないものの、果実については硬くなったり、凹凸ができたりして、商品価値が低下する恐れもあるので注意が必要です。

感染拡大の要因となるのは、「感染した苗からのウイルスの持ち込み」と「ウイルスを媒介するアブラムシ類」の2つです。特に露地栽培ではアブラムシ類の被害が増加する春~秋頃にかけて、モザイク病が発生しやすい傾向です。

ナス ワタアブラムシの寄生

ナス ワタアブラムシの寄生
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

アブラムシ類は繁殖力がとても強く、短期間でも葉や茎などにびっしりと群がるほど個体数が増大するケースも珍しくありません。モザイク病の発病後は農薬による防除ができないため、事前の対策が重要です。

原因となるのは2種類のウイルス

モザイク病の原因となるウイルスには主に「キュウリモザイクウイルス(CMV)」と「タバコモザイクウイルス(TMV)」の2種類です。それぞれのウイルスに感染した株の病徴による区別は難しいですが、若干異なる部分もあるので理解しておきましょう。

キュウリモザイクウイルス(CMV)

キュウリモザイクウイルス(CMV)は、生長点に近い葉ほど、黄斑モザイク症状が強く出やすいのが特徴です。一方で、下位葉にはっきりとした病徴が出るケースは少なく、株の萎凋はほとんどみられません。

果実については硬く凹凸状になることがあるうえ、果肉の一部が褐変する場合もあります。主にアブラムシ類が媒介して蔓延させる病害であり、活動が活発になる4~11月頃に発生することが多い傾向です。

そのほかでは、周辺で栽培されている野菜類および雑草などの罹病植物から伝染するケースや、発病株を芽かきした際に生じる汁液から伝染することもあります。

タバコモザイクウイルス(TMV)

タバコモザイクウイルス(TMV)に罹病した株でよく見られる症状は、軽いモザイク症状と新葉の若干の黄化です。キュウリモザイクウイルス(CMV)と同様に株の萎凋はほとんど見られないものの、成葉に円形状の暗緑色斑紋が生じることがあります。

キュウリモザイクウイルス(CMV)と大きく異なるのは、アブラムシ類による伝染はしないことです。タバコモザイクウイルス(TMV)は、主に汁液伝染、種子伝染、土壌伝染の3つが原因で発病します。

ただし、土壌伝染性であることから、一度発生したほ場では発病を繰り返す可能性が高くなります。そのため、適切な対策が必要です。

ナスのモザイク病の防除方法

ナスのモザイク病はアブラムシ類だけでなく、汁液伝染、種子伝染など感染経路が多く、特に露地栽培では防除が難しい病害です。しかし、有効な対策がないわけではありません。ここからはナスのモザイク病における防除方法を3つ紹介します。

1.病原体を媒介するアブラムシ類対策が基本

シルバーマルチを使用したナスの露地栽培

ももぞう / PIXTA(ピクスタ)

キュウリモザイクウイルス(CMV)は、ウイルスを媒介するアブラムシ類が原因で感染が広がります。しかも、モモアカアブラムシやワタアブラムシ、ジャガイモヒゲナガアブラムシなど、多種類のアブラムシがウイルスを媒介するので、アブラムシ類全般の防除が大切です。

アブラムシ類はキラキラとした光が苦手です。シルバーポリやムシコンなどを使用したマルチ栽培に飛来抑制効果があるとされているので、試してみるとよいでしょう。そのほかでは、育苗期や定植後まもない株の背丈が低い時期に、不織布や寒冷紗をかぶせて物理的にアブラムシ類を寄せ付けない対策も有効です。

そうした対策に加え、必要に応じて「サンクリスタル乳剤」や「アクタラ粒剤5」といった農薬を用いた化学的防除を行うと、より大きな防除効果が期待できます。また、キュウリモザイクウイルス(CMV)は、アブラムシ類が増殖しなくなる冬にほ場周辺の雑草で越年していることから、除草も有効な防除対策になります。

ここで紹介した農薬は、2022年4月14日現在、ナスのアブラムシ類に登録のあるものです。農薬を使用する前にラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく散布してください。また、地域によって農薬の使用について決まりが定められている場合があります。確認の上で使用ましょう。

2.汁液による接触伝染の防止

夏秋ナスの摘葉

田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)

タバコモザイクウイルス(TMV)はアブラムシ類が媒介することはありませんが、汁液による接触伝染リスクが高い病害です。発病株と知らずに作業を行っていると、健康な株にも感染を拡大させてしまう恐れがあります。

そのため、発病株の早期発見はとても大切なポイントです。発病株を発見したら、芽かきや誘引、収穫などの作業時に触れないように、すぐに除去しましょう。

また、作業の際に使用した道具をそのまま次の作業で使うと、感染拡大の要因になることがあります。感染を防ぐという観点からは、作業の都度、手指やはさみなどの道具を消毒しておくことはとても大切です。一見すると発病株が見られないほ場であっても、念のためこまめな消毒を行うことをおすすめします。

なお、ほ場周辺の保毒植物も、知らない間にほ場内の作物にウイルスを伝染させてしまうリスク要因の1つです。栽培の際はほ場周辺もよく確認しておき、保毒植物と思われる植物を見かけたら、できるだけ早期に取り除きしましょう。

3.種子伝染・土壌伝染の防止

タバコモザイクウイルス(TMV)は接触伝染以外にも、種子伝染や土壌伝染で病害が広がる恐れもあるのが特徴です。自家育苗する場合に種子伝染を避けるには、そもそも汚染されている種子を使わないことがポイントで、具体的には乾熱消毒や薬剤消毒を行った種子を用いて播種を行うとよいでしょう。

ただし、乾熱消毒を行った種子に対しては農薬による消毒を行わないように注意してください。

一方、土壌伝染の防止には、連作の回避や土壌消毒が有効です。かつては臭化メチルくん蒸剤を使用した土壌消毒が主流でしたが、オゾン層の破壊を促進する恐れがあるとして、2005年以降は原則禁止となっています。

近年では高温の蒸気で10~20分間の蒸気消毒を行う方法が、有効な代替案として普及しつつあるので、必要に応じて実施してみるとよいでしょう。

参考サイト:株式会社丸文製作所「蒸気土壌消毒」

ナスのモザイク病を引き起こす原因は、キュウリモザイクウイルス(CMV)とタバコモザイクウイルス(TMV)という2つのウイルスです。それぞれ病徴は若干異なりますが、感染が拡大すると果実の品質低下が起こり、収量減につながる恐れがあるという点に変わりはありません。

感染経路はアブラムシ類による吸汁感染から、汁液伝染、種子伝染、土壌伝染など、非常に幅広いのが特徴です。そのため、防除においても生育ステージによって、耕種的防除と化学的防除の両方を使い分ける必要があります。

ほ場の土壌消毒から、種子の殺菌、作業後のこまめな手指や道具の消毒など、防除にはそれなりの負担がかかります。しかし、どれも安定した収量をキープするためには必要な作業です。ナス栽培を行っている方は、この記事を参考にしっかりとした防除対策を講じて、安定経営の実現につなげてください。

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中原尚樹

中原尚樹

4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。

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