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小松菜農家として年収を上げるには?作型と栽培手法の工夫例

小松菜農家として年収を上げるには?作型と栽培手法の工夫例
出典 : bee / PIXTA(ピクスタ)

新しく小松菜農家になろうとしている方にとっては、収入の目安や収益を上げる工夫や経営事例が気になるところでしょう。この記事では、小松菜農家の実態と、より高収益をめざすためのポイントについて解説します。

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小松菜 農家

Carbondale / PIXTA(ピクスタ)

小松菜は、栽培期間が短く複数回作付けできるので、周年栽培が前提となっています。そのため、新規に就農して小松菜農家になることを検討している方も多いでしょう。

その際に気になるのは、小松菜農家の年収や労働時間といった小松菜農家の実態や、収益を上げるための方法です。

この記事では、小松菜農家の年収の目安や実際の経営事例、単収を上げるポイントや工夫について解説します。新規就農を検討している方や、新たに小松菜の作付けを検討している方はぜひ参考にしてください。

周年栽培が大前提? 小松菜農家の営農タイプ別年収目安

小松菜は販売単価が安い作物ですが、栽培期間が短いため1年のうちに複数回作付けが可能で、小松菜専作での周年栽培、あるいは、ほかの軟弱野菜を組み合わせた周年栽培での営農が一般的です。

まずは、小松菜農家の営農タイプ別に、年収や所得率などの目安を紹介します。

作期の短い小松菜は、周年栽培やほかの軟弱野菜との多品目栽培による収益化が基本

青果店の店先の小松菜

Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)

小松菜は、夏に播種する場合は、そこから21〜24日程度で収穫でき、1年に最大8回ほど作付けが可能です。

小松菜の1kg当たり卸売価格を、同じ軟弱野菜であるほうれん草、水菜、チンゲンサイと比較してみましょう。
データを見ると、ほかの軟弱野菜に比べて、小松菜の1kg当たり卸売価格が低いことがわかります。

軟弱野菜の卸売価格(2020年)

1kg当たり
卸売価格
小松菜294円
ほうれん草525円
水菜337円
チンゲンサイ298円

出典:農林水産省「青果物卸売市場調査」所収「令和2年青果物卸売市場調査報告」よりminorasu編集部作成

販売単価が低い小松菜で収益を上げるには、小松菜専作で周年栽培のスピードをあげて販売量を増やすか、同じ設備や機械を使用できるほかの軟弱野菜との多品目栽培で売り上げを安定させるか、のいずれかの戦略がとられます。

以下では、小松菜専作で高回転の周年栽培を行っている場合と、露地で小松菜とほうれん草あわせて3作で営農している場合の経営収支について解説します。

【参考1】 ハウスで小松菜7作、人を雇って営農するケース

パイプハウスでの小松菜栽培

ノア / PIXTA(ピクスタ)

広島県が公表している経営指標をもとに、パイプハウスで小松菜の周年栽培を行った場合の簡単な栽培スケジュールと、経営収支の目安を解説します。

【栽培スケジュールと労働時間の目安】

年7作という高回転の周年栽培では、収獲出荷作業が総労働時間の実に9割を占めています。そのため、農地の規模が小さくても、収獲・調整のために人を雇用するのが前提になります。

小松菜 年7作 10a当たりの作業時間

作業時期・頻度作業時間構成比
耕起・整地周年35.0時間1.8%
施肥年3回23.4時間1.2%
播種周年23.4時間1.2%
灌水・追肥周年36.0時間1.9%
防除夏期11.6時間0.6%
収穫出荷周年1,750.0時間90.4%
ハウス管理夏期23.3時間1.2%
ほ場後片付け周年23.4時間1.2%
土づくり3~4月
9~10月
8.8時間0.5%
合計1,934.8時間100.0%

出典:広島県「経営指標【野菜】」所収「こまつな 0.5ha(中部)」よりminorasu編集部まとめ

【経営指標】

次に、売上や経営費・所得などの経営指標を見ていきましょう。作付け面積は0.5ha(50a)です。

小松菜 専作 周年栽培の経営モデル例

営農タイプパイプハウス
小松菜 7作 50a
労力家族2.5人
+雇用労力
販売量56,500kg
1kg単価341.1円
売上高1,927.3万円
経営費1,401.2万円
所得526.1万円
所得率27.30%
自営労働時間5,000時間
雇用労働時間4,674時間
自営労働時間
当たり所得
1,052.3円

出典:広島県「経営指標【野菜】」所収「こまつな 0.5ha(中部)」よりminorasu編集部まとめ

小松菜専作50aで年7作の場合、年間売上高は1,900万円を超えますが、雇用労賃や販売費、施設の修繕や減価償却費が大きくなり、所得率は約27%、農業所得は526万円です。

人を雇用しての営農のため、自営労働時間は販売量に対して少なくてすみ、自営労働時間当たりの所得は1,052円と高めです。

【参考2】 露地で小松菜とほうれん草の3作、家族で営農するケース

小松菜の露地栽培

kita / PIXTA(ピクスタ)

千葉県が公表しているデータをもとに、露地栽培で小松菜とほうれん草を年3作で営農しているケースの経営収支について見ていきます。

【経営指標】

ほ場面積は60a、露地栽培で、春どりほうれん草を30a、夏どり小松菜を30a、秋冬どりほうれん草を60a作付けた場合の経営指標です。

小松菜・ほうれん草の露地栽培 経営モデル例

営農タイプ露地栽培
春どりほうれん草 30a
夏どり小松菜 30a
秋冬どりほうれん草 60a
家族 2人
販売量(合計)15,420kg
1kg単価(合計)321.7円
売上高496.0万円
経営費245.0万円
所得251.0万円
所得率50.60%
所要労働時間3,279時間
雇用労働時間
自営労働時間
当たり所得
765.5円

出典:千葉県「ちばで農業を始めるための新規就農ガイド」所収「ちばの大地で農業を始めたい人の手引き書 令和4年版(18ページ)」よりminorasu編集部まとめ

ほうれん草と小松菜あわせて年3作であり、前述の小松菜年7作のケースよりも、経営収支の規模自体が小さくなります。

売上高は約1/4ですが、雇用労賃がなく、施設の修繕、減価償却の負担も小さいため、所得率は51%と高くなります。

自営労働時間は、小松菜7作の施設栽培の65%ですみますが、家族だけのため自営労働時間当たりの所得は766円と低めです。

小松菜専作で年7作か? 露地の軟弱野菜で3作か?

2つのケースをみてきましたが、どちらがよいというわけではありません。

同程度の農地面積なら、人を雇い入れて、高回転の周年栽培を実現すれば農業所得の額は高くなります。ただし、販路の確保や生産管理、労務管理など経営管理をしっかりしていかなければなりません・

家族だけで営農するなら、小松菜専作ではなく、販売単価が高めのほかの軟弱野菜と組み合わせることで所得をあげていけますが、高回転の周年栽培ほどの農業所得にはなりません。

どういう営農形態を選択するのがよいかは、地域に実需先があるかなどの経営環境と、その中で自身がどういう農業経営をしたいか、という点にかかっているのではないでしょうか。

大規模ハウスで年間7回作付け! 実在の小松菜農家の経営事例

小松菜 連棟ビニールハウス

kita / PIXTA(ピクスタ)

約80棟の大規模なハウスで小松菜と水菜の複合栽培を行っている農家の事例を紹介します。

福岡県久留米市で軟弱野菜を生産しているエイチアイ株式会社(代表・稲吉久徳さん)では、83棟・計2.4haの大規模なハウスで小松菜と水菜を栽培しています。

小松菜の年間作付け回数は6~7回で、1日の平均出荷量は約300ケース。生育スピードが遅くなる寒い季節は、収穫したその日にほ場整備と播種を行っています。

この規模とスピード感での経営を実現している背景には、雇用形態があります。収穫を手伝うパートや研修生、事務員など、農業部門以外も含め、10人以上の従業員を抱えています。

さらに、農福連携で障がい者の方に調整作業をサポートしてもらうことで、円滑な経営を可能にしています。

この経営事例から、小松菜農家で成功するためには、栽培から収穫までの高速化と大規模化、そして十分な人員体制がポイントであることがわかります。特に人員体制については、農福連携を上手に活用し、調整作業を効率化して大規模化を実現しているのが特徴です。

▼稲吉さんの農業経営については、以下のインタビュー記事をぜひご覧ください。

小松菜でより高収益をめざすには? 農家ができる“3つの工夫”

前述の通り、小松菜は周年栽培が可能ですが、単価が低いため、売り上げを増やすには、生産技術面での工夫や、給食用など安定した実需先を確保しての大規模化が有効です。

早晩性など品種特性を考慮し、作期に応じた品種選定を行う

夏の小松菜栽培

スミレ / PIXTA(ピクスタ)

小松菜は、品種によって早晩性のほか、多収性、高温耐性などの特性が異なります。早晩性の品種を組み合わせた出荷時期の分散や、栽培時期に合わせて適切な特性の品種を選定することで、安定した収量の周年栽培の実現が可能になります。

例えば、播種期が同じでも、「春のセンバツ」(トキタ種苗株式会社)などの早生品種と、中・晩生品種の「いなむら」(株式会社サカタのタネ)などを組み合わせることで、出荷時期と作業負担の分散を図れます。

また、栽培時期によって適切な特性の品種を選定することも大切です。

旭川市農業センターでは、低温期、高温期の適性に着目して、年4回の作期別に10品種以上での栽培試験を行いました。その結果、高温期の生育速度、日持ち性、作業性、多収性の観点から、「R8-008」(商品名:真夏の四番打者、トキタ種苗株式会社)、「里まつり」(株式会社武蔵野種苗園)が有望品種として報告されています。

出典:旭川市「野菜・花きの栽培試験」所収「06(概要版)コマツナ品種比較」

出荷時期にあわせて、適した特性の品種を選ぶことで、品質向上や年間通しての安定した収量を実現できます。新しい品種について常に情報を集めておくことも大切です。

品種の製品ページ:

トキタ種苗株式会社「春のセンバツ」
株式会社サカタのタネ「いなむら」
トキタ種苗株式会社「真夏の四番打者(R8-008)」
株式会社武蔵野種苗園「コマツナ「里のなつ」「里まつり」 1等・2等受賞」

負担の大きい出荷調整作業の省力化を図る

小松菜の収穫作業

kita / PIXTA(ピクスタ)

大規模化を進めれば、それだけ多収が見込めます。しかし、小松菜栽培においては出荷調整作業にかかる負担が大きく、これが大規模化を阻む大きな原因の1つです。

出荷調整作業の省力化のためには、2つの方法が挙げられます。

1. 収穫作業性に優れた品種の導入
2. 軟弱野菜調整機の導入による機械化

収穫作業性に優れた品種を選ぶ

小松菜の収穫作業性は、草姿立性に左右されます。立性が強い品種を選ぶことで、収穫にかかる負担を軽減できます。

作業性に優れた新品種の例として「さくらぎ」(株式会社サカタのタネ)を紹介します。

「さくらぎ」は、茎葉が上に成長する性質が強く(立性)、細根も少ないので、ほ場で葉や土が絡みにくく、収穫を円滑に行うことができます。また、萎黄病、白さび病に耐病性があり、耐寒性・晩抽性にも優れていることから、安定して栽培できる品種です。

製品ページ:株式会社サカタのタネ「コマツナ 「さくらぎ」|草姿立性で、収穫作業性に優れる秋・春用品種」

軟弱野菜調整機の導入

小松菜などの軟弱野菜は、出荷前に、根の切断や土・下葉の除去が必要です。これらの調整作業を自動で行える「軟弱野菜調整機」を導入することで、出荷調整作業を省力化できます。

参考に、株式会社クボタの軟弱野菜調整機を紹介します。根切り・土払い・下葉取りの一連の調整作業を自動化でき、同社調べでは、手作業の2~3倍の高効率とのことです。

株式会社クボタ Youtube公式チャンネル「軟弱野菜調整機 NC301」

製品ページ:株式会社クボタ「クボタ軟弱野菜調整機」

収獲の省力化にもつながる「給食用」などの業務向け販路

小松菜の特産地、東京都江戸川区の「小松菜特別給食」

小松菜の特産地、東京都江戸川区の「小松菜特別給食」
出典:PR TIMES株式会社(ソシオークグループ プレスリリース 2021年12月15日)

小松菜で高収益化をめざすには、安定した出荷量の確保と出荷調整の省力化が重要です。その両方を叶える方法として、業務用の実需先を開拓することが挙げられます。

例えば、学校給食用の場合は、安定した需要が見込まれるだけでなく、収穫の省力化にもつながるというメリットがあります。

学校給食の現場では、手早く扱えることから、軟弱野菜は大きいサイズが好まれます。また、市場出荷のように細かく結束する必要もありません。そのため収穫作業、調整作業を大幅に省力化できます。

学校給食用の販路を開拓するためには、各自治体の情報を確認することをおすすめします。農協などを通して栽培農家を募集している場合や、自治体が農家を募集している場合もあります。

学校給食の調理場

IYO / PIXTA(ピクスタ)

▼小松菜の販路拡大や地域ブランド化に取り組んでいる「西船橋ひらの農園」園主の平野代一さんのインタビュー記事もぜひご覧ください。

この記事では、これから新規に就農して小松菜農家になろうとしている方に、営農タイプ別の経営モデルと高収益をめざすためのポイントについて解説しました。

小松菜は周年栽培が可能ですが、単価が安いため、周年栽培の回転速度をあげたり、複合経営が重要です。また、収穫時にかかる労力を軽減することで、大規模化をめざすこともできます。

小松菜農家として成功するためには、品種や省力化技術の最新情報に常にアンテナを張っていることも大切です。

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小谷美乃里

小谷美乃里

ビジネス、介護、受験など多分野の記事執筆に携わるwebライター。これまで10以上のメディアで記事執筆や校正に携わり、現在は毎月20本以上を執筆中。大学時代に農業経営を学んだ経験も持つ。趣味は、ウォーキングと日本の豊かな自然を写真に収めること。美しい海と緑のためなら何万歩でも歩けるほど自然が好き。

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