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肥沃な土地の条件とは? 地力アップを叶える効果的な土づくりの方法

肥沃な土地の条件とは? 地力アップを叶える効果的な土づくりの方法
出典 : karashi / PIXTA(ピクスタ)

日本では、気候や地形の影響を受けてさまざまな土壌が分布している一方、農業生産力を阻害する土壌も多いといわれています。作物の増収を実現するためには、土壌の肥沃度を把握して効果的な土作りに取り組むことが重要です。この記事では日本の土壌の特徴や肥沃な土地の条件、土壌診断の最新技術を紹介します。

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肥沃な土地とは、作物を生産するために必要な水・酸素と養分を供給する力が高い土壌を持つ土地のことです。「地力の高い土地」と呼ばれることもあります。土壌がどのような要素で構成されているか、そして肥沃な土壌はどのような特徴を持っているのかを解説します。

肥沃な土壌の条件とは?

土壌の化学性・物理性・生物性の3つの要素がバランスよく整っていることが、肥沃な土壌と呼ばれる条件です。ほ場の環境や栽培する作物の種類によって、適正な土壌条件は変化します。化学性・物理性・生物性それぞれの特徴を紹介します。

化学性

土壌のpH、養分バランス

Deemerwha studio - stock.adobe.com

土壌の化学性とは、作物の生育や土壌微生物の活動に必要な養分を保持して、適切に供給する機能です。土壌pHをはじめ、陽イオン・陰イオンの組成や交換容量、土壌の酸化還元性などの特性を総称しています。

肥料・養分の吸着力・緩衝作用が高く過不足が生じにくいことや、土壌pHが作物ごとの適正範囲内に保たれていることも化学性の中に含まれます。

物理性

土壌の団粒構造 土壌粒子のすき間が通気性・排水性・保水性をもたらす

ヒトネコデザイン研究所 / PIXTA(ピクスタ)

土壌の物理性とは、水はけや保水性・通気性といった土壌そのものが持つ機能です。土壌の厚みや柔らかさも物理性に含まれます。

土壌の密度は根や作物の生育はもちろん、ほ場での作業効率にも影響します。水はけが良ければ通気性もよいといえますが、農業機械の走行などの人為的な要因で土壌の物理性が変化する可能性もあります。

生物性

微生物によって有機物が分解され腐植土ができてい

sasanuma masato / PIXTA(ピクスタ)

土壌の生物性とは有機物の分解や細菌の増殖といった、土壌内の動物・微生物の働きによってもたらされる機能です。有機物の分解には土壌内の微生物構成だけでなく、化学性・物理性も関連しています。

窒素の形態変化や酸化還元など、土壌が果たす最も重要な役割を担っています。一方、作物に養分を供給する性質と、病害により作物の生育を阻害する性質の両方を持ち合わせているのも特徴です。

土壌を構成する3つの要素

土壌は、無機物である鉱物と有機物である生物・腐植が混ざり合って構成されています。土壌のすき間は、水分や空気で埋められています。鉱物・生物・腐植それぞれの機能や役割について解説します。

鉱物

土壌は岩石が風化して生成される

Tartila / PIXTA(ピクスタ)

鉱物とは岩石の構成要素である無機質の固体で、一次鉱物と二次鉱物に分類されます。英語ではミネラルと呼ばれ、作物・家畜の生理活性にかかわる窒素・炭素・水素・酸素以外の物質です。

粒径が20μ(0.02mm)以上の粗砂・細砂が一次鉱物、0.2μ以下の細粘土が二次鉱物という判定も可能です。また、粒径20~0.2μのシルト・細粘土には一次鉱物と二次鉱物が混在しています。

一次鉱物は、大気や水・熱などの作用で岩石が崩壊して細粒化された鉱物で、石英や長石類・雲母類・磁鉄鋼などが代表的です。物理的な作用で形状が変化しているため、化学組成や結晶構造は細粒化される前の岩石と変わりません。

カリウムやマグネシウムといった、植物や生物が正常な生活機能を営むために必須な元素の供給源として機能しています。

二次鉱物は、砂やシルトの成分が炭酸ガスを含む酸性の水にさらされ、酸化・分解などの化学変化によって新たに生成された鉱物です。層状粘土鉱物をはじめ酸化・水酸化鉱物やリン酸塩・硫酸塩鉱物などで構成されています。

中でも粘土は、アルミニウムとケイ素が溶け出してできた物質です。そのため、二次鉱物を粘土鉱物と呼ぶこともあります。

生物

土壌中の菌糸

hhelene - stock.adobe.com

土壌を構成する生物は、土壌微生物と土壌動物に分類されます。有機物として、絶えず土壌内に供給されているのが特徴です。

土壌微生物は、有機物の分解や窒素固定・脱窒作用など農業上重要な作用を担っています。細菌(バクテリア)や放線菌・糸状菌(かび)・藻類が1gの土壌に8~40億ほど存在するといわれており、土壌動物よりもはるかに多い量となっています。

肥沃な土壌でも荒野でも大差ない量の微生物が存在しており、環境の変化に速やかに順応しながら土壌を作り出しています。

土壌動物も物質の循環や植物遺体の分解に関与しています。ミミズ・ダンゴムシなどの大型動物やダニ・線虫・クマムシといった中型動物、アメーバなどの微小動物に分類されています。

摂食・排泄・運動を通じて土壌微生物に影響を与え、前述した肥沃な土壌となる条件(物理性・化学性・生物性)を生み出しているのです。

腐植

土壌に存在する有機物

出典:帯広畜産大学「有機物の分類と役割とは?:腐植物質も土の化学性や物理性に大きく影響」、タキイ種苗株式会社「2018 タキイ最前線 春種特集号 最近よく耳にする腐植酸について教えてください」よりminorasu編集部作成

腐植とは、動植物の遺体が分解される途中で土壌にとどまった高分子化合物で、団粒の形成に必要不可欠な成分です。団粒は、土壌の粒子が陽イオンや粘土鉱物(二次鉱物)・有機物などの働きによって結合して形成されます。

団粒構造ができることで、土壌の通気性や透水性といった物理性が良好になり、根の伸長を助ける役割を果たします。

化学性の面では腐植の分解によって、窒素・リン・カリウム・マグネシウムなど作物の生育に欠かせない成分を放出します。養分の保持能力は粘土の数十倍といわれているほか、水素イオンの吸収・放出によって土壌pHを安定化させているのが特徴です。

また、腐植に含まれるキレート化合物が土壌内の活性アルミニウムと結合し、リン酸の肥効を高めるとともに重金属を可溶化して養分の有効化を促進します。

さらに、生物性の面では土壌動物や微生物に栄養源・エネルギー源を供給して、窒素固定菌をはじめとする有用生物の増殖を助けています。

つまり、腐植は肥沃な土壌づくりに欠かせない要素なのです。

日本の土壌の種類と特徴

日本の気候は温暖多雨で四季の変化もはっきりしているため、多様な植生が育まれています。加えて、降雨による岩石・火山噴出物の浸食や地形の影響によってさまざまな土壌が生成されているのが特徴です。日本の土壌の主な種類や特徴について解説します。

黒ボク土

黒ボク土

北上 雷 / PIXTA(ピクスタ)

黒ボク土とは腐植の集積によって生成された、火山噴出物に由来する土壌です。北海道や東北・関東・九州に広く分布しており、分布面積は国土面積の約31%に当たります。また、黒ボク土の約50%が畑地として利用されています。

黒ボク土は容積重が低いため透水性・保水性が良く、養分の供給が持続的しやすいのが特徴です。

一方、黒ボク土に含まれる火山ガラスから放出されるアルミニウムの量によっては、強酸性の土壌になる可能性があります。また、リン酸の吸着力が高いため、施肥設計に当ってはリン酸の欠乏を防ぐ工夫が重要です。

褐色森林土

褐色森林土

taka1828 / PIXTA(ピクスタ)

褐色森林土とは、ブナ林・ナラ林などの森林帯の下で発達しており、有機物の含有量が少ない土壌です。全国の山地・丘陵地に広く分布しており、北海道・東北地方では洪積台地にも分布しています。

分布面積は国土面積の約30%に当たり、普通ほ場や果樹園地として利用されています。

褐色森林土は温暖湿潤気候下で生成され、母材が非石灰質なので土壌pHが4~6と低めです。塩基飽和度も低いため、粘土や鉄の移動・集積は不明確といわれています。近年では山地・丘陵地の開発が進んでいる関係で、褐色森林土が減少する傾向も見られます。

黄色土

黄色土とは、赤黄色土のうち鉱質土層(B層)が黄色みを帯びている土壌です。本州の中位・高位段丘や西南日本・南西諸島に広く分布しており、分布面積は国土面積の約10%に当ります。多くは水田として利用されますが、普通ほ場や果樹園地としても利用されています。

黄色土は赤色土と同様に有機物の蓄積が少なく、塩基溶脱作用を受けているため、土壌pHは4.5~5.5と低めです。粘土の含有量・密度が多いので透水性・保水力が低く、多雨・乾燥時には収量低下を招く懸念もあります。

土壌の肥沃度を高めるためには、土壌pHの矯正や有機物の補給・排水対策が必須です。

灰色低地土

灰色低地土とは、地下水の上昇や灌漑水によって土層が水で飽和された結果、還元状態になって灰色に変色した土壌です。

河川の周辺をはじめ、扇状地や海岸・河岸・谷底平野などに広く分布しており、分布面積は国土面積の約14%に当ります。河川氾濫により堆積した土砂などが母材のため、土壌の肥沃度が高いのが特徴です。

灰色低地土は低地土の一種で、主に水田として利用されています。地下水の影響で発達した膜状の斑鉄層が、地表下50cm以内の部分に現われます。透水性がやや悪いので、水田の転作の際には排水対策が必要です。

土壌診断の方法と最新技術

土壌 データ分析

megaflopp / PIXTA(ピクスタ)

実際に土壌を採取して診断する方法のほか、衛星写真から土壌を診断する最新技術を紹介します。

JAの土壌診断:高度な化学分析

JAに土壌診断を申し込むことで、最新機器を用いた化学分析が可能です。JAの土壌診断では、以下のような項目を測定できます。

  • pH
  • EC
  • りん酸吸収係数
  • 可給態リン酸
  • CEC
  • 塩基飽和度(石灰・苦土・加里)
  • 有効態ケイ酸
  • 腐植
  • 鉄含有量

分析が終わると、結果が記載された診断処方箋を受け取れます。結果に基づいたアドバイスや推奨される肥料の種類などを受け取ることができ、肥沃な土地づくりに役立てられます。

簡易土壌診断キット:手軽にできる化学分析

簡易的な土壌診断キットを利用すれば、ご自身で手軽に土壌診断することが可能です。

代表的な簡易土壌診断キットに「みどりくん」があります。みどりくんの試験紙は、pHと硝酸態窒素を測定できる「みどりくんN」と、水溶性リン酸と水溶性カリを測定できる「みどりくんPK」の2種類あります。

みどりくんNとみどりくんPK

みどりくんを使えば手軽に土壌診断を実施できる
出典:全国土の会「農大式簡易土壌診断キット「みどりくん」」

手軽さが特徴であり、「みどりくんN」ではたった5分で測定が完了します。簡易的な分析ではありますが、すぐに結果が知れるため、硝酸態窒素やpHなどの変化が激しい項目の測定や、追肥の判断などに活用できます。

SOFIX分析:生物性・化学性・物理性を総合的に評価

従来の土壌診断では、土壌pHや可給態リン酸の割合といった化学性は明らかになる反面、有機物の状態など土壌の生物性の確認は困難でした。

そこで、土壌の生物性を見える化して、客観的な指標をもとに肥沃な土壌づくりにつなげるために開発されたのが「SOFIX(Soil Fertile Index)」という技術です。

SOFIXは立命館大学生命科学部の久保幹教授らによって開発された土壌診断技術で、「土壌肥沃度指標」と呼ばれています。

SOFIXでは土壌中の生物の活性に着目し、総細菌数や窒素循環活性・リン循環活性などによって土壌の生物性・化学性・物理性を総合的に評価します。

測定項目に対する相対的な位置や不適正な値が出た場合の原因も示されるので、現状の課題を把握した上で土壌改善に取り組めるのが特徴です。

SOFIX農業推進機構

栽培管理ツール:AIによる高度かつ手軽な地力分析

栽培管理ツールを使えば、実際に土壌を採取しなくても地力を把握できます。

例えば、大手化学メーカーのBASFが開発した「xarvio(ザルビオ)フィールドマネージャー」では、過去の衛星写真データをAIで分析することにより、地力を推定します。

地力は以下のようにマップとして示され、地力の高低が一目でわかります。

ザルビオの地力マップ

ザルビオの地力マップではほ場全体の地力を把握できる
出典:BASFジャパン株式会社

土を採取する土壌診断では採取した地点の分析しかできませんが、ザルビオでは登録したほ場全体の地力を把握することが可能です。

地力がわかれば、施肥量を増やすべき場所や、土づくりに注力すべきほ場がわかるようになります。地力の変動もデータとして捉えられるため、土づくりの効果も検証できます。

ほ場全体の地力がわかる!ザルビオの機能と使い方を見る

ここからは、栽培支援管理ツールを利用して地力を上げる具体的な方法を紹介します。

設備投資は不要!栽培管理ツールを活用して地力を上げる方法

地力を上げるには、土壌改良資材の施用が効果的です。栽培管理ツールで把握した地力を基に施用することで、地力を効果的に高められます。

土壌改良資材には、例えば以下のようなものがあります。

  • 腐植酸
  • 堆肥
  • 泥炭
  • 木炭
  • 石灰

栽培管理ツールで地力が低い場所を把握し、その地点の化学性を分析すれば、地力が低い原因を明らかにできます。そのうえで土壌改良資材を選択すれば、効果的な地力アップが図れます。

また、地力をすぐに上げることは難しいですが、地力によって施肥量を変えることで、生育ムラを抑えることは可能です。

実際に、地力マップで地力を把握し、施肥を最適化することで収量増加や品質向上を実現している方がいます。次章では、ザルビオを活用して可変施肥を実施し、品質向上を実現した事例を紹介します。

地力を掴んで食味値アップ!高付加価値米の農家が実践する戦略とは

ほ場の前に立つ大森さん

ほ場の前に立つ大森さん

栃木県那須烏山市で水稲を栽培する大森さんは、ザルビオの地力マップで地力を把握し、土づくりや施肥に活かしています。

大森さんは、ザルビオ導入前からサタケの「米の品質診断 コメドック」で金賞を受賞するほど高品質な米を栽培していましたが、全国レベルで戦うにはもっと付加価値を上げることが必要だと考えたそうです。

「金賞を実績とできればよかったのですが、全国レベルで戦うにはさらに上をめざす必要があります。実績で差別化するには、さらに食味スコアを上げなければなりませんでした。」

そこで大森さんは、地力マップを活用した可変施肥を実施しました。肥料散布を最適化するため、ほ場全体に肥料を均一に撒いたあと、地力の低い場所のみ追加で施肥したそうです。

「地力が低い場所は施肥量を多く、高い場所は少なく施肥することで、生育ムラが解消されて食味アップにつながったんです。」

その結果、79点だった食味スコアが、89点まで上がりました。また、食味スコアが上がったことにより、1kg当たり300~400円で販売していた米が、2倍の800円/1kgで売り切ることもできているようです。

このように、ザルビオの地力マップを活用すれば、ほ場に適した施肥が可能になり、品質向上や収量増加の効果を期待できます。


肥沃な土壌は鉱物や微生物・生物の作用によって構成されます。化学性・物理性・生物性のバランスが取れていれば、作物の生育に必要な養分が適切に供給され、水分や土壌pHも適正に保たれます。

近年では土壌分析によって土壌の肥沃度をデータ化して、施肥管理や土壌改善に活用できるシステムも登場しています。土壌分析の結果を踏まえて、肥沃度の高い土壌に改善していくことが増収のポイントです。

また、日常的に地力を確認できるツールを導入することで、効果を可視化できます。例えば、ザルビオの地力マップを活用すれば、土を採取することなくリアルタイムで総合的な地力を測ることができます。

地力が分かれば化学分析すべきポイントがわかるため、土壌診断の効果を高めることもできます。

ザルビオは会員登録無料です。まずは一度、最先端の栽培管理ツールをお試しください。

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舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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