管理機と耕運機の違いとは? 失敗しない選び方と、おすすめの最新機種
管理機と耕運機は、どちらも土を耕すための歩行型の農機です。以前は耕運機能のみを備えたものが耕運機、アタッチメントを装着することによってさまざまな用途に使えるものが管理機と呼ばれていましたが、近年は耕運機の多機能化で両者の違いはあいまいになっています。
- 公開日:
記事をお気に入り登録する
目次
管理機と耕運機は、どちらも耕うん作業を行うための農機です。両者には明確な違いがあるわけではないため、購入時にはほ場の規模や土質などに応じて適切な製品を選ぶことが重要です。本記事では、耕運機と管理機の違いや機種選びのポイント、おすすめの機種を紹介します。
管理機と耕運機は何が違う? 農業におけるそれぞれの役割
hamayakko/PIXTA(ピクスタ)
管理機や耕運機は、どちらも主に畑の土を掘り起こして空気を含ませる耕うん作業を行うための農機です。耕うんを行う農機としてはトラクターも使われますが、一般的には手押しの歩行型のものを管理機および耕運機、乗用型の大型農機をトラクターと呼びます。
管理機や耕運機は小回りが利くため小規模のほ場で活躍するほか、トラクターでは耕せない部分の補完にも使えるなど、使い勝手がよいのが特徴です。
一昔前までの耕運機は基本的に耕うん・畝立て作業に特化しており、管理機との住み分けが明確でした。しかし、開発が進むにつれて高機能・多機能な耕運機が登場し、現在では両者の区別はあいまいになっています。
そこで、まずは一般的な管理機・耕運機それぞれの特徴と違いについて解説します。
管理機とは
sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)
管理機とは、耕うんだけでなくさまざまなほ場での管理作業が行える農機です。アタッチメントと呼ばれる各種の作業機を装着すれば、畝立てや中耕、整地、除草、播種、マルチ張り、農薬散布、収穫作業など、ほとんどの農作業に活用できます。
汎用性が高く、一台で多くの作業をこなせるメリットがある反面、農機本体に加えて作業ごとに必要なアタッチメントを用意する必要があるため、より多くの費用がかかるのが難点です。
耕運機(テーラー)とは
hamayakko/PIXTA(ピクスタ)
耕運機とは、主に耕うん・畝立て作業に特化した農機で、テーラーとも呼ばれます。基本的に管理機のような汎用性はなく、比較的安価です。
一般的に、耕運機とテーラーは日本語と英語の違いだけで同じものを指しますが、中には付加機能のある耕運機のことを「テーラー」という定義で取り扱っているメーカーもあります。
管理機と耕運機の違いは「役割の多様性」
改めて管理機と耕運機の違いをまとめると、管理機はアタッチメントを付けることでほ場の管理作業全般に活用できる汎用性の高い農機、耕運機は耕うんに特化した農機であるということです。
ただし、現在では耕運機が多機能化し、管理機と耕運機を区別していないメーカーや、どちらか一方しか扱っていないメーカーもあります。
製品を購入する際は、管理機と耕運機のどちらがいいのかということではなく、求める機能と予算を明確にして、条件に見合った製品を選ぶとよいでしょう。
ロータリーの位置でも違いが! 管理機・耕運機の主な種類
管理機・耕運機の機種を選ぶ際は、ロータリーの位置の違いも要チェックポイントです。ロータリーとは、回転して土を耕す部分のことです。この章ではロータリーの位置ごとに、各種耕運機の特徴とメリット・デメリットについて解説します。
車軸ロータリー式
ヤンマーの車軸式ミニ耕うん機「YK301QTシリーズ」
出典:株式会社PR TIMES(ヤンマーホールディングス株式会社 プレスリリース 2022年6月15日)
車軸に直接ロータリーが付いているオーソドックスなタイプです。コンパクトで収納しやすく、小回りが利くのが特徴です。必要最小限の構造で作られているため比較的安価で購入できます。
ただし、移動用の車輪が付いていないため、移動時にはロータリーが車輪代わりになり、移動しづらいのが欠点です。それを補うため、後部に移動用の車輪が付いたタイプもあります。
フロントロータリー式
コメリのオリジナル耕うん機「KALTIVA フロントロータリー4サイクル耕運機 F55」
出典:株式会社PR TIMES(株式会社コメリ プレスリリース 2021年8月27日)
移動用の車輪があり、ロータリーが車輪の前方に付いているタイプです。持ち上げて方向転換しやすいほか、足が刃に巻き込まれる危険性が少なく、安全性が高いのもメリットです。
ただし、重いエンジンよりも前にロータリーがあることで重心が後ろに来てしまい、リアロータリー式に比べると土に押し付けた際の刃の食い込みが弱いのが難点です。
リアロータリー式
comugi / PIXTA(ピクスタ)
車輪の後ろにロータリーがあるタイプです。前方の車輪がロータリーを引っ張ってくれるため直進性に優れるうえ、車体の重さがロータリーに伝わりやすいことから安定感があり、刃が深く土に食い込むのでしっかりと耕せるのがメリットです。
一方で、ロータリーが操縦者の足の前に位置するため、巻き込まれる危険性があり注意が必要です。製品を選ぶ際は、巻き込み防止のロータリーカバーが付いているものや、バックするときにロータリーが回らないようになっているものなど、安全対策を施されている機種を選びましょう。
管理機・耕運機を買うならどれ? 失敗しない選び方
種類や機能が豊富で選択肢が多すぎると、かえってどれを選べばよいか悩んでしまう人も少なくないでしょう。そこでこの章では、購入時の判断基準とすべき5つのポイントを紹介します。
1. ほ場の規模や土質に合っているか
管理機・耕運機の馬力を選ぶ際には、ほ場の面積や土質が1つの目安となります。面積が広い場合は馬力が大きく、耕幅が広い製品がおすすめです。馬力が大きいほど価格も高くなりますが、その分作業時間や労力を削減でき、効率性も高まります。
反対に、小規模なほ場や複雑な形状のほ場であれば、馬力は小さくともコンパクトで小回りの利く製品が向いています。
ほ場の大きさに合わせた馬力は、100平方m程度までであれば2~3馬力、100~330平方mでは3~4馬力、330平方m以上では4馬力以上が目安です。
ただし、土質が粘土質で重く硬い場合はより強い力が必要になるため、面積にかかわらず馬力の大きい製品を選ぶとよいでしょう。
また、粘土質の土は機体が軽いと操作しにくいので、重量のある製品が適しています。30kg以上の重みのある機体であれば、粘土質でもしっかり耕せます。
2. 効率化したい主な作業は何か
Princess Anmitsu/PIXTA(ピクスタ)
耕うんだけでなくほかの作業にも活用したいのであれば、アタッチメントを交換できる管理機や耕運機を選びましょう。
製品によっては使いたいアタッチメントを連結できない場合もあるので、事前にどの作業に使いたいのかを決めておき、それに対応した機種を購入しましょう。
3. 1輪と2輪、どちらが作業性を高められそうか
管理機・耕運機には1輪のものと2輪のものがあります。1輪のタイプは小回りが利きますが、安定性に欠ける側面があります。反対に2輪タイプのものは安定感があるものの、畝間が狭いと走行や旋回がしにくいのが難点です。
中には1台で1輪と2輪を切り替えられる製品もあるため、どちらも使い分けたい場合は、このタイプがおすすめです。
4. 動力には何を使用するか
sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)
管理機・耕運機の動力タイプには、主にガソリン式、バッテリー式、ガス式の3種類があります。
ガソリンは最もパワーがあり、馬力の大きい管理機・耕運機でも安定的に利用できるのがメリットです。冬場はどうしてもエンジンが始動しにくくなりますが、ガソリン式のものは一発でエンジンがかかりやすいのも特徴です。
なお、ガソリン式タイプにはガソリンのみを使用する4サイクルエンジンと、ガソリンと専用オイルの混合燃料を使用する2サイクルエンジンの2種類があります。
4サイクルエンジンの場合、ガソリンスタンドに携行缶を持参して購入する方法が一般的です。混合ガソリンと比べると故障が起きやすく、長期間使用しない場合はガソリンを抜くなどメンテナンスの負担がかかります。
混合ガソリンはチェーンソーなどでも使われる燃料です。あらかじめ混合されたものを購入するか、自分でガソリンと専用オイルを混ぜて使用します。混合ガソリンは普通のガソリンよりも故障が少なく、燃料を入れっぱなしにしておけるためメンテナンス作業が少なくて済みます。
電気で動くバッテリー式は、動作音が静かで、家庭用の電源から充電できる扱いやすさがメリットです。燃料交換も不要なため、メンテナンスがほとんど必要ありません。
ガス式は家庭用のカセットボンベを装着して手軽に使えるのが特徴です。ただし、バッテリーやカセットボンベではパワーも持続時間も不足するため、どちらかといえば家庭菜園向きで、プロの農家ではガソリン式が主流です。
5. 価格が予算内に収まるか
機能の充実も大切ですが、価格が予算内に収まるかどうかも重要なポイントです。ほ場の規模や土質、使用頻度、メンテナンスの負担、燃料費などをもとに費用対効果を踏まえ、適正な価格帯の製品を選びましょう。
基本的に馬力が高いほどパワフルで作業効率向上が期待できますが、その分値段も高く、燃料費も多くかかります。
ロータリーの位置も価格に大きく影響します。一般的に「車軸ロータリー式<リアロータリー式<フロントロータリー式」の順で値段が上がります。
馬力とロータリーの位置については、妥協して選ぶと作業効率や生産性を損ねかねません。限られた予算の中で価格を抑える場合でも、この2点の条件を満たした製品を選び、そのうえで予算の範囲で追加機能を絞っていくことがポイントです。
プロ農家向け! メーカー別、おすすめの管理機・耕運機4選
最後に、おすすめの管理機・耕運機4機種を紹介します。馬力、重量、価格、対応している作業、ロータリー位置などのスペックをまとめているので、製品選びの参考にしてください。
リーズナブルでも馬力十分! 「三菱 ミニ耕運機 MMRシリーズ(4.2-6.3馬力)」
三菱マヒンドラ農機株式会社 Youtube公式チャンネル「耕耘から畝立てまで充実の本格機能【リアロータリー式ミニ耕うん機 MMR600A】」
三菱マヒンドラ農機株式会社の「MMRシリーズ」は、「三菱マイボーイ」の通称で知られる同社の主力製品です。ラインナップは耕幅や輪距によって7機種あり、カラーリングは赤と白で統一されています。
見た目は小型ながら、4サイクルガソリンエンジン、リアロータリー式で重量は86~89kg、4.2~6.3馬力と、パワーは十分です。耕幅は550mmのものと、264mmと550mmが選べるものがあります。
メーカー希望小売価格は21万5,710~26万1,140円(税込み)と比較的リーズナブルです。アタッチメントを替えればさまざまな形の畝を立てられるほか、マルチ作業や整地、除草など、さまざまな用途に活用できます。
同社は同じカラーリングで、管理機でも6シリーズを展開しているほか、7.2~9.3馬力の耕運機もシリーズ展開しています。
製品ページ:三菱マヒンドラ農機株式会社「Minnie Tiller MMR400A/MMR600A」
出典:三菱マヒンドラ農機株式会社「Minnie Tiller MMR400A/MMR600A」 所収「カタログ」「主要諸元表」
1輪にも2輪にも組み換え可能 「ヤンマー 1輪管理機 YK-SKシリーズ(3.0-6.3馬力)
ヤンマーホールディングス株式会社 Youtube公式チャンネル「ヤンマー管理機幅広うね立てマルチ仕様 YK650SK-D,S-SKRK」
1輪・2輪どちらも使い分けたい人におすすめなのが、ヤンマーホールディングス株式会社の「YK-SKシリーズ」です。左右のタイヤを入れ替えるだけで、アタッチメント不要で1輪と2輪を使い分けられます。
商品展開は、重量58kgで3馬力のシンプルタイプや、75kg前後で4.2〜6.3馬力のデラックスタイプなど10種類あり、いずれもリアロータリー式で安定性および操作性に優れるのが特徴です。
アタッチメントは各種の畝立てやマルチ作業、施肥、除草のほか、ネギの植え付けから揚土、埋め戻し、掘り取りなど、多彩に取り揃えています。希望小売価格は23万5,400~33万3,300円(税込み)です。
製品ページ:ヤンマーホールディングス株式会社「YK-SKシリーズ」
出典:ヤンマーホールディングス株式会社「YK-SKシリーズ」の各ページ
「スペック」
「作業性」
「操作性」
「うね立て」
「施肥・あぜ際片上げ・除草」
「溝上げ・土掛け」
「ネギ作業」
土質を問わない高出力! 「クボタ 管理機 ニューベジマスター(6.3-7.0馬力)」
株式会社クボタ Youtube公式チャンネル「クボタ管理機 ニューベジマスター スペシャルムービー【short ver.】」
株式会社クボタの「ニューベジマスター」は、耕うんから畝立て、マルチ作業、播種まで多彩な作業をこなせる管理機シリーズです。
重量は76~77kg、出力は6.3~7.0馬力、ガソリン式のエンジンで硬いほ場や湿った土でもパワフルに作業を進められます。
畝立てと同時にマルチ作業ができる機能や、作業内容や土壌の条件によってきめ細かく速度設定ができる多段変速機能などがあり、作業効率性に優れているのも特徴です。2.8Lの大容量燃料タンクは残量が一目で確認できます。
作業中に足が巻き込まれにくいフロントロータリー式で、ハンドル回転時には自動で高速走行をけん制するため、後進時に動くことがなく、安全性が考慮されている点もポイントです。
アタッチメントもかなり豊富で、中耕・培土、除草、播種、施肥、土壌消毒など、1台でほとんどの管理作業をこなせます。
価格は27万270〜61万8,310円(税込み)です。
製品ページ:株式会社クボタ「ニューベジマスター」
出典:株式会社クボタ
「ニューベジマスター」 所収「カタログ」「主要諸元」
「製品ラインアップ」
畝立てから収穫まで。アタッチメントが豊富な 「イセキ 汎用耕運機 KLC3シリーズ(6.3-7.0馬力)
2022年6月に新発売した井関農機株式会社の「KLC3シリーズ」は、2型式で6種類を展開しています。いずれも4サイクルのガソリンエンジンで、重量は97〜213kg、馬力は6.3~7.0です。
リアロータリー式で安定感があり、操作性も高いほか、レバーが体に触れると自動停止する緊急停止機能、ロータリーの後進をけん制する機能など、高い安全性も備えています。
耕運機として力強く耕うんできる一方、畝立てや鎮圧、播種や収穫、代かき、土壌消毒など、アタッチメントも豊富です。
希望小売価格は35万7,500~56万2,650円(税込み)です。
製品ページ:井関農機株式会社「KLC3 シリーズ」
出典:井関農機株式会社
「新着情報」 所収「新商品を発表しました」(2022年6月14日)
「KLC3 シリーズ」 所収「主要諸元」
「管理機・耕うん機」所収「KLC3シリーズ カタログ」
管理機や耕運機はトラクターに比べて比較的コストの負担が小さく、ほ場管理作業を大幅に省力化・効率化できる農機です。ほ場の面積や土壌環境、省力化したい作業内容などを考慮し、優先すべき条件を決めること、適切な予算を立てることが購入時のポイントです。
記事をお気に入り登録する
minorasuをご覧いただきありがとうございます。
簡単なアンケートにご協力ください。(全1問)
あなたの農業に対しての関わり方を教えてください。
ご回答ありがとうございました。
お客様のご回答をminorasuのサービス向上のためにご利用させていただきます。
大曾根三緒
ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。