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「新規就農者育成総合対策」とは? 目的と対象者、要件、期間について解説

「新規就農者育成総合対策」とは? 目的と対象者、要件、期間について解説
出典 : Fast&Slow /PIXTA(ピクスタ)

「新規就農者育成総合対策」では、次世代の農業を担う新規就農者に対し、就農準備の段階から就農直後の経営まで、多様な支援を行います。本記事では、実施要綱に掲げられた事業のうち、農業者向けの支援について、目的や金額などの概要、手続きなどを解説します。

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これまで新規就農者を支援していた「農業次世代人材投資事業(経営開始型)」に代わり、2022年に新たに設けられた制度が「新規就農者育成総合対策」です。国・都道府県・市町村それぞれが、資金面・技術面で従来の制度以上に手厚く新規就農者を支援します。

「新規就農者育成総合対策」の目的

若者 農作業 新規就農者

Fast&Slow /PIXTA(ピクスタ)

農林水産省が推し進める新規就農者育成総合対策の目的は、次世代を担う農業者を確保・育成して、深刻な担い手不足を解消し、力強く持続可能な農業を実現するというものです。細やかにサポートするため、次の6つの事業を設け、それぞれに事業実施主体を定めています。

(1)経営発展支援事業
新規就農者の経営発展のために、機械・施設などの導入を支援します。事業主体は市町村です。

(2)就農準備資金・経営開始資金
「就農準備資金」は就農に向けて準備する者を支援する資金、「経営開始資金」は経営を開始した新規就農者を支援する資金です。事業主体は全国農業委員会ネットワーク機構、都道府県、市町村などです。

(3)雇用就農資金
農業法人などが新規就農者を雇用するため、または職員の研修を実施するための資金を支援します。事業主体は全国農業委員会ネットワーク機構です。

(4)サポート体制構築事業
地域に対し、新規就農者へのサポート体制づくりなどを支援します。事業主体は市町村、協議会、民間団体などです。

(5)農業教育高度化事業
農業大学校や農業高校などの農業教育機関での教育の高度化を支援します。全国事業、都道府県事業があり、事業主体はそれぞれ公募選定団体など、そして都道府県、市町村、民間団体などです。

(6)農業人材確保推進事業
新規就農相談・情報発信事業と就農相談会実施事業、農業インターンシップ支援事業の3つの事業を支援します。事業主体は新規就農相談・情報発信事業が全国農業委員会ネットワーク機構、そのほかは公募選定団体です。

出典:農林水産省「新規就農の促進」「令和4年度当初予算実施要綱」の項 所収「新規就農者育成総合対策実施要綱」

上記の(1)と(2)は新規就農者に対する支援で、(3)は新規就農者を雇用する農業法人、(4)~(6)は新規就農者をサポートする自治体や機関に対する支援です。

この新たな対策では、資金面だけでなく周囲のサポート体制を充実させることで、経営・技術面でも新規就農者を援助します。

手厚い援助で国と地方が連携し、親元就農も含めて就農志望者を呼び込み、定着させることをめざします。

新規就農者育成総合対策の内容

若者 農作業 技術指導

Fast&Slow /PIXTA(ピクスタ)

以下では、前項で挙げた6つの事業について、国が制定した実施要綱にある具体的な対策の内容を解説します。

新規就農者の経営発展の支援

新規就農者育成総合対策のうちの「経営発展支援事業」による支援です。次世代を担う意欲のある新規就農者が、経営を発展させるために機械・施設などの設備を導入する取り組みを支援します。

都道府県が新規就農者の設備導入を支援する場合、その支援の2倍を国が支援し、補助率は国が2分の1、都道府県が4分の1で、本人負担が4分の1となります。

出典:農林水産省「新規就農の促進」「令和4年度当初予算実施要綱」の項 所収「別記1_経営発展支援事業」

新規就農者への資金交付

新規就農者育成総合対策のうち、「就農準備資金」「経営開始資金」が該当します。

就農準備資金は、新規就農者が研修を受けるための資金を交付するもので、これまでの「農業次世代人材投資事業(準備型)」に当たるものです。

ただし、農業大学校など農業経営者を育成する教育機関や、研修者を受け入れている先進農家・先進農業法人が行う研修で、都道府県が有効と認めるものを対象とします。

一方、経営開始資金は、経営が安定するまでの資金を毎月定額交付するもので、これまでの「農業次世代人材投資事業(経営開始型)」に相当します。両者の具体的な期間や金額については、のちほど詳しく解説します。

出典:農林水産省「就農準備資金・経営開始資金(農業次世代人材投資資金)」

雇用・サポート体制の充実・人材呼び込みへの支援

新規就農者育成総合対策のうち、「雇用就農資金」「サポート体制構築事業」「農業教育高度化事業」「農業人材確保推進事業」の4つのことです。

これらは、新規就農者を直接支援するものではなく、新規就農者を雇用したりサポートしたりする周囲の取り組みや活動に対する支援ですが、実質的には新規就農者の経営面や技術面の支援につながります。

雇用就農資金は、農業法人などが新規就農者を雇用するための資金を交付したり、研修のために職員をほかの法人に派遣する費用を助成したりして、雇用就農を促進させます。

サポート体制構築事業は、地域に対し就農相談体制の整備や研修農場の整備、先輩農業者から新規就農者への技術面のサポート体制構築などを支援します。

農業教育高度化事業では、全国の農業教育機関に対して、指導者・学生を対象とした研修やオンライン研修の実施を支援したり、各都道府県が作成する「農業教育高度化プラン」の実現に向けた取り組みを支援したりすることで、農業教育の高度化を図ります。

農業人材確保推進事業では、インターネットを活用した新規就農に関する情報発信や、農業就業体験の実施、就農相談会の実施など、多様な人材を確保するための事業を推進します。

出典:農林水産省「経営局予算」「令和4年度予算の概要」の項 所収「新規就農者育成総合対策」

新規就農者育成総合対策の対象要件と支援金額、期間

若者 農業研修

Fast&Slow /PIXTA(ピクスタ)

以下では新規就農者育成総合対策のうち、新規就農者が直接受けられる経営発展支援事業と就農準備資金・経営開始資金にフォーカスを当て、それぞれの対象要件や金額、期間などについて解説していきます。

経営発展支援事業

交付対象者の主な要件は、次のようなものが挙げられます。2022年度中に独立・自営就農すること、認定新規就農者であること、独立・自営就農時点で50歳未満であること、次世代を担う農業者として強い意欲を示すことなどです。

このほか、青年等就農計画などが基準を満たしていること、人・農地プランに位置付けられていること、ほかに類似の助成金や補助金を受けていないこと、本人負担分の経費については青年等収納資金を活用するなど融資機関から融資を受けることなどがあります。

これ以外にも要件が細かく指定されており、すべてを満たす必要があるので、農林水産省が公表している実施要項によく目を通し、すべての条件を確認しておいてください。

具体的な支援額は都道府県によって異なりますが、経営発展のための設備導入にかかる経費の上限は1,000万円としています。ただし、経営開始資金の交付対象者は、補助対象事業費の上限は500万円です。支援に期間はありません。

▼詳しくは以下の農林水産省サイトを確認してください。
農林水産省「経営発展支援事業」

就農準備資金・経営開始資金

就農準備資金の対象者の主な要件は、次世代を担う農業者となる意欲を持つ研修期間中の研修生であること、就農予定時に50歳未満であること、研修計画が基準を満たしていることなどです。

ほかにも以下のような要件があります。
・常勤の雇用契約を締結していない
・ほかの事業により生活費となるような国の給付金などを受けていない
・研修終了後に親元就農する場合は5年以内に農業経営を継承する
・独立・自営就農の場合は5年以内に農業経営改善計画または青年等就農計画の認定を受ける

一方、経営開始資金の対象者の主な要件には以下のようなものがあります。

・2021年4月以降に農業経営を開始した者で、独立・自営就農時点で50歳未満である
・次世代を担う農業者となる意欲をもっている
・農地の所有権または利用権を所有する
・主な農業機械・施設を所有または借りている
・経営収支を本人名義の通帳や帳簿で管理している

そのほか、経営開始資金申請追加資料を添付した青年等就農計画が定められた要件を満たしていること、経営を継承する場合は農業経営に従事してから5年以内に継承し、新規参入者と同等のリスクを負って経営を行うこと、人・農地プランに位置付けられていることなどが必要です。

どちらも経営発展支援事業と同様に、上記のほかにも要件が細かく指定されており、すべてを満たす必要があります。農林水産省が公表している実施要項によく目を通し、すべての条件を確認しておいてください。

なお、就農準備資金と経営開始資金の交付期間と金額は、それぞれ以下の通りです。

<就農準備資金>
交付期間:最長2年間
交付金額:期間中1月につき1人当たり12.5万円(1年につき最大150万円)

<経営開始資金>
交付期間:最長3年間(経営開始後3年度目分まで)
交付金額:期間中1月につき1人当たり12.5万円(1年につき150万円)

ただし、経営開始資金には以下のような特例があります。

・夫婦がともに就農し、共同経営者であることが明確である場合には、夫婦あわせて1.5人分が交付されます。

・新規就農者が複数で法人を新設し、共同経営を行う場合は、条件を満たす新規就農者全員に、それぞれ最大150万円が交付されます。


▼詳しくは以下の資料を確認してください。
農林水産省「就農準備資金・経営開始資金(農業次世代人材投資資金)」所収「別記2_就農準備資金・経営開始資金」

2022年に、それまでの農業次世代人材投資事業に代わって新たに制定された新規就農者育成総合対策は、国や地域が連携して次世代を担う意欲のある新規就農者を手厚く支援する制度です。まだ制定したばかりであるため、成果のほどはこれから明らかになってくると思われます。

本制度では一定要件を満たすことで、就農準備や就農初期の段階から資金面・技術面で多大な支援を受けられます。新規就農後の安定経営のためにも、本制度の積極的な活用を検討してみてください。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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