「雇用就農資金」の応募申請方法や条件、タイプ別の支援期間
「雇用就農資金」は、農業従事者の育成および新規就農者の定着促進を目的に農林水産省が実施している助成事業です。本記事では雇用就農資金の概要やタイプ、各タイプにおける助成金額や支援期間、応募方法、注意点などについて解説します。
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「雇用就農資金」は、国内の農業を持続可能な産業とするため、新規就農者の確保や農業への定着、農業法人での次世代の幹部候補の育成などを目的とする助成事業です。本記事では、雇用就農資金への応募要件や応募方法、支援金額、支援期間などを紹介します。
「雇用就農資金」とは
cba / PIXTA(ピクスタ)
雇用就農資金とは、雇用就農者の確保・育成を目的に2022年度から始まった農林水産省による助成事業です。
49歳以下の新規就農者を雇用し、農業従事者として育成する農業法人や、経営幹部候補および事業統括責任者候補の育成に取り組む農業法人などに対して資金を助成するというものです。令和3年度まで実施されていた農の雇用事業の後継となる事業に当たります。
従来の農の雇用事業では、雇用就農者育成・独立支援タイプでの助成期間が最長2年、研修指導者1人で受け持てる研修生が3人まで、農業部門の従業員数に応じて申請可能な人数に制限があったのに対して、雇用就農資金ではこれらの条件が変更されました。
雇用就農資金では、雇用就農者育成・独立支援タイプの助成期間が最長4年に延長され、1人の研修指導者が受け持てる研修生の人数制限が撤廃されたほか、従業員数に応じた応募人数の制限も撤廃されました。
なお、雇用就農資金には、雇用就農者育成・独立支援タイプ、新法人設立支援タイプ、次世代経営者育成タイプの3種類があります。
雇用就農者育成・独立支援タイプは、就農を希望する人を新たに雇用し、農業および農家として独立するために必要な技術・ノウハウの習得を目的とした実践研修を実施する際に受けられる助成金です。
新法人設立支援タイプは、新たな農業法人の設立と独立を目指す就農希望者を雇用したうえで、独立就農に必要な研修を実施する際に受けられる助成金です。
次世代経営者育成タイプは、農業法人などが自組織における職員や従業員を次世代の経営者として育成するために、国内外の先進的な農業法人や異業種の法人に派遣して研修を実施する際に受けられる助成金です。
参考:農業をはじめる.JP「令和4年度新事業 雇用就農資金」
雇用就農資金の目的
日本では農業従事者の高齢化と農業従事者数の減少が顕著です。2016年時点で、主として農業を仕事とする基幹的農業事業者数は約158万人を数えましたが、2019年時点で約140万人、2022年時点では約122万人と減少の一途を辿っています。
この状況下において、持続可能な農業の実現のためプロ農家の育成が重要であり、雇用就農資金は49歳以下の就農希望者を募って育成し、農業従事者として定着を図ることを目的として実施されています。
タイプ別の支援額・助成内容
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雇用就農資金はタイプによって支援額と助成内容が異なります。以下、それらの違いを解説します。
雇用就農者育成・独立支援タイプ
農業経験5年以内の人を新規に雇用して育成後、雇用を継続するか、または独立するために必要な実践研修を3ヵ月以上実施することなどを条件に助成金が支給されます。
支援期間は最⾧4年、助成金額は年間最大60万円です。
新法人設立支援タイプ
新しく農業法人を設立して独立することを目指す就農希望者を一定の期間にわたって雇用し、農業法人の経営に必要な知識や技術を身につけさせることを目的として3ヵ月以上の研修を実施する際の費用が助成されます。
支援期間は最⾧4年で、1〜2年目は年間最大120万円、3〜4年目は年間最大60万円の助成金を受けられます。
次世代経営者育成タイプ
農業法人などが後継となる経営者を育成するため、先進的な農業法人や異業種の法人に職員・従業員を3ヵ月以上派遣する際にかかる経費と、派遣された研修生の代わりとなる職員・従業員を新たに雇用した場合の人件費に対して助成されます。
研修内容は財務管理や人材育成、労務管理、マーケティングなど、経営ノウハウに関するものが中心です。
支援期間は最⾧2年、助成額は月最大10万円です。複数の法人で研修を受けられるほか、農閑期のみ研修を受けることも可能です。
参考:農業をはじめる.JP「雇用就農資金(雇用就農者育成・独立支援タイプ、新法人設立支援タイプ)」
参考:農業をはじめる.JP「雇用就農資金(次世代経営者育成タイプ)」
募集期間はいつからいつまで?
Yotsuba / PIXTA(ピクスタ)
雇用就農資金の募集期間はタイプによって異なります。
雇用就農者育成・独立支援タイプおよび新法人設立支援タイプは、令和4年度には全3回にわたって募集が行われましたが、最後となる第3回の応募が2022年12月1日までで締め切られています。
次世代経営者育成タイプは、2022年度については2023年1月31日まで随時募集を行っています。
参考:農業をはじめる.JP「雇用就農資金(雇用就農者育成・独立支援タイプ、新法人設立支援タイプ)」
参考:農業をはじめる.JP「雇用就農資金(次世代経営者育成タイプ)」
雇用就農資金を受けるための主な条件
旅人 / PIXTA(ピクスタ)
雇用就農資金はタイプによって助成を受けるための条件が異なります。以下では、タイプごとに条件を紹介します。
雇用就農者育成・独立支援タイプと新法人設立支援タイプの要件
雇用就農者育成・独立支援タイプおよび新法人設立支援タイプの受給に必要な要件を、法人側と新規就農者側に分けて解説します。
農業法人
農業法人側では、5年以上の農業経験を持つ役員または従業員を研修指導者として置かなければなりません。
また、新規就農者との間で期間の定めのない正社員契約(独立就農希望は有期雇用契約でも可)を結ぶこと、新規就農者を雇用保険と労働保険に加入させること、法人の場合は社会保険にも加入させることなどが要件として定められています。
新規就農者の要件
新規就農者の要件としては、支援の終了後も農業を続ける強い意志があること、採用日時点で年齢が50歳未満であること、採用日時点で農業経験が5年以内であることなどが挙げられます。
次世代経営者育成タイプの要件
次世代経営者育成タイプは、新規就農者ではなくすでに農業経験のある農業従事者が対象であることから、上記の2タイプとは応募要件が異なります。
農業法人
派遣元の農業法人などでは、研修終了後1年以内に、研修生を経営の中核を担う役職に登用することを確約している必要があるほか、派遣を受け入れる法人と人材育成を目的とした契約を結び、研修生を雇用保険に加入させなければなりません。
また、派遣受け入れ先の法人では、研修生を労働保険に加入させる必要があります。
派遣研修生の要件
派遣研修生側の要件としては、派遣元となる農業法人の役員もしくは正社員であるか家族経営の後継者ですでに就農していること、受け入れ先となる法人との契約日時点で55歳未満であることなどが挙げられます。
応募方法
buritora / PIXTA(ピクスタ)
雇用就農資金への応募方法は各タイプによって異なります。
雇用就農者育成・独立支援タイプは、専用の応募申請フォームから申請します。募集要領を確認して必要な情報を入力し、添付書類一式をアップロードしてください。
もしくは事業申請書を作成し、必要書類とともに各都道府県の農業会議などにメールで送付する方法もあります。
参考:一般社団法人全国農業会議所「雇用就農資金 令和4年度第3回募集 応募申請フォーム」
新法人設立支援タイプおよび次世代経営者育成タイプは、専用の応募申請フォームが用意されていません。そのため必要書類を各都道府県の農業会議などにメールで送付することで申請します。
新法人設立支援タイプは、事業申請書や雇用就農者の履歴書、研修指導者の履歴書、耕作証明書などの写しが必要です。
次世代経営者育成タイプの応募に必要な書類は、研修実施計画書や研修指導者の履歴書、派遣研修生の履歴書、契約内容確認書、耕作証明書などがあります。
また、派遣先の法人が海外にある場合は、海外派遣研修実施計画書、受け入れ先の法人の事業概要が分かる資料なども必要です。
なお、必要書類の提出と併せて、いずれのタイプも研修内容を就農に関するポータルサイト「農業をはじめる.JP」に掲載することが要件として定められています。
雇用就農資金の注意点
Hanna / PIXTA(ピクスタ)
応募申請に必要な書類は各タイプによって異なるため、チェックリストを確認して提出漏れがないようにし、事業実施後も全ての関連書類を保管しておく必要があります。
なお、応募申請については事業推進委員会によって総合的な審査が行われ、予算の範囲内で採択者が決定されるため、必ずしも助成を受けられるわけではありません。
また、研修が計画通りに行われていない場合や、本事業の規定に違反したときなどは、助成金の支払いが中止される可能性もある点に注意してください。
雇用就農資金には、雇用就農者育成・独立支援タイプ、新法人設立支援タイプ、次世代経営者育成タイプの3種類があります。
雇用就農者育成・独立支援タイプでは最長4年間・年間最大60万円、新法人設立支援タイプでは最長4年間・年間最大120万円、次世代経営者育成タイプでは最長2年間・月最大10万円が助成されます。
助成を受ける農業法人および新規就農者にはそれぞれ満たすべき要件があり、タイプによって提出書類が異なるため、応募要件をしっかりチェックして不備のないように注意しましょう。
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大森雄貴
三重県伊賀市生まれ。京都を拠点に企業・団体の組織運営支援に携わった後、2020年に家業の米農家を継ぐためにUターン。現在は米農家とライターの二足の草鞋を履きつつ、人と自然が共に豊かになる未来を願いながら、耕作放棄地の再生、農家体験プログラムの実施、暮らしを大切にする経営支援などに取り組んでいる。