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【令和5年度最新】飼料用米の補助金制度が見直しに! 変更点と今後の動向

【令和5年度最新】飼料用米の補助金制度が見直しに! 変更点と今後の動向
出典 : masy/ PIXTA(ピクスタ)

米余りの状況が続き、主食用米の価格が低迷する一方で、飼料原料の輸入量が激減して価格が高騰し、国産飼料の増産が求められています。水田を活用して飼料用米を栽培することは、この2つの課題の解決につながる有効な対策として、国は交付金制度を設けて推進しています。

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飼料用米生産に対する国の交付金制度は、毎年のように変更されています。制度を有効に活用するには、毎年の変更点を把握し、計画的に飼料用米を栽培する必要があります。そこで本記事では、飼料用米に関する補助金制度の最新事情と、飼料用米生産の展望について解説します。

飼料用米に使える補助金「水田活用の直接支払交付金」

飼料用米 水田

田舎の写真屋さん/ PIXTA(ピクスタ)

飼料用米の栽培に当たって活用できる補助金に、「水田活用の直接支払交付金」があります。まずはこの制度について、目的や支援対象、補助額などの概要を解説します。

出典:農林水産省「経営所得安定対策」所収「令和5年度 経営所得安定対策等の概要 ―農業者の皆様へ―」(P18)

支援制度の概要

水田活用の直接支払交付金制度は、水田を持ち、飼料用米や飼料作物、麦や大豆などの戦略作物を生産したり、地域の特産などの高収益作物を生産する農家を支援する制度です。

制度の目的は、水田を主食用米の生産以外に活用することで、主食用米の価格安定を図ると同時に、食料自給率・自給力の向上と水稲農家の収益向上をめざすものです。また、日本の農業の特徴的な生産資源である、水田の機能を最大限に活用・維持することも目的の1つです。

交付対象者は、交付対象となる水田において、対象作物を販売目的で生産する販売農家または集落営農としています。対象となる水田については、のちほど解説します。

▼水田活用の直接支払交付金制度について、詳細はこちらの記事をご参考ください

飼料用米の補助金額

対象となる水田を活用して飼料用米を栽培した場合、水田活用の直接支払交付金の「戦略作物助成」として交付金を受け取れます。国からの交付金額は、令和5(2023)年度予算では、数量に応じて10a当たり5.5~10.5万円が支給され、標準単価は8万円です。

飼料用米 水田活用交付金 支援内容

出典:農林水産省「経営所得安定対策」所収「経営所得安定対策等の概要(令和5年度版)」、minorasu「“水田活用の直接支払交付金”が厳格化! 改正のポイントと農家がすべき対応」よりminorasu編集部作成

これに、「産地交付金」として、都道府県設定分の助成が加算される場合もあります。

例えば、茨城県では、令和5(2023)年度に水田活用の直接支払交付金の対象となる飼料用米生産については、「生産性向上等の取組」を行った場合、2つ以上なら10a当たり5,000円以内、1つなら10a当たり2,000円以内の交付金が加算されます。

飼料用米以外では、米粉用米の生産に対して10a当たり3,000円以内の加算があります。

出典:茨城県農業再生協議会「令和5年度 水田での需要に応じた生産を支援します」

都道府県設定は、国が都道府県に配分する資金枠の中で独自に取り決めるものです。自身の地域にどのような交付金があるのか、都道府県または市町村に問い合わせて確認しましょう。

【変更点一覧】 飼料用米に対する補助金制度の見直し内容

飼料用米 稲わら

ライダー写真家はじめ/ PIXTA(ピクスタ)

水田活用の直接支払交付金制度の内容は、米の需給の動向などに応じて毎年細かく見直されています。飼料用米に関係する近年の見直しについて、知っておきたい変更点は次の3つです。

1.交付対象水田の要件を厳格化
2.「飼料用米の複数年契約の取組」に対する支援廃止
3.令和6(2024)年産以降、飼料用米の一般品種への交付額引き下げ


以下の項で、それぞれ詳しく解説します。

1.交付対象となる水田の要件が厳格化(令和4年度)

令和4(2022)年度の制度見直し以降、交付対象となる水田の要件が厳格化しています。具体的には、5年間で一度も水張りが行われない農地については、交付対象から外すという方針が加えられました。例えば、令和4(2022)年から令和8(2026)年で一度も水張りされていない場合、令和9(2027)年度以降は交付対象となりません。

また、それ以前からあった定義として、「畦畔などの湛水設備や用水供給設備がない農地」または「土地改良区内にあって賦課金が支払われていない農地」を対象外とする、という基準も再徹底されました。

この改定には、転換作物の作付けが固定化した農地はそのまま畑地化を進め、水田機能を維持した農地では、大規模化とブロックローテーション化を促す目的があります。畑地化する農地については、令和5(2023)年には「畑地化促進事業(畑地化促進助成)」として区別し、特に高収益作物の作付けを促進しています。

飼料用米の場合は、水田を畑地化するのではなく、そのまま水田として活用するため、この厳格化による影響はありません。ただし、水田の一部を畑地化して生産していた場合、6年以上水張りがないと交付対象外となってしまうため、5年に一度は田畑転換をして水張りをするように、作付け計画を立て直す必要があります。

出典:農林水産省「経営所得安定対策」所収「令和5年度 経営所得安定対策等の概要 ―農業者の皆様へ―」

2.「飼料用米の複数年契約の取組への支援」が廃止(令和4年度)

令和3(2021)年度まで、本制度には「飼料用米・米粉用米の複数年契約の取組への支援」がありました。これは、飼料用米と米粉用米について、より安定的・継続的に生産供給体制を整えるべく、実需者との複数年契約に基づいて生産される分については「複数年契約加算」として助成されるものです。

この追加配分は、令和3(2021)年までの新規取組みが対象で、10a当たり1.2万円でした。令和4(2020)年は、経過措置として、令和2・3年からの継続分のみを対象として、10a当たり6,000円となり、令和5(2023)年度で廃止されました。

出典:茨城県農業再生協議会「令和4年度から飼料用米等への助成制度が変わります」

3.一般品種への補助金額が引き下げ(令和6年産以降)

例年、本制度は見直しが進められてきましたが、その中でも飼料用米の生産に取り組む農家にとって厳しい改定が、令和5(2023)年にありました。それが、令和6(2024)年産から、飼料用米のうち一般品種への支援水準が段階的に引き下げられるというものです。

一般品種も引き続き助成の対象にはなりますが、令和6(2024)年産からは以下のように年々引き下げられます。

・令和5(2023)年産:数量に応じて10a当たり5.5~10.5万円(標準単価8万円)
・令和6(2024)年産:数量に応じて10a当たり5.5~9.5万円(標準単価7.5万円)
・令和7(2025)年産:数量に応じて10a当たり5.5~8.5万円(標準単価7万円)
・令和8(2026)年産:数量に応じて10a当たり5.5~7.5万円(標準単価6.5万円)

なお、多収品種については現行のまま変更はありません。

この見直しには、飼料用米の生産について、多収な専用品種への転換を促進したい狙いがあります。

出典:農林水産省「経営所得安定対策」所収「令和5年度 経営所得安定対策等の概要 ―農業者の皆様へ―」(以下共通)

補助金制度の見直しを受けた、飼料用米農家の今後

飼料用とうもろこしのほ場

kikisorasido/ PIXTA(ピクスタ)

飼料用米の生産においては、主食用水稲栽培の生産体系を活かしながら需給調整へ柔軟に対応するために、一般品種を作付けしたあとで飼料用米へと仕向転換をする「深堀り」が各産地で行われてきました。

しかし、今後は一般品種への助成が引き下げられることで、これまでの方法では十分な収入が得られなくなる可能性があります。一方で、主食用米の価格低迷が今後も続くと考えられる中、主食用米の生産だけに頼るのもリスクがあります。

そこで、これまで本制度の交付金を活用しながら収入を維持してきた飼料用米農家には、次のような方針転換が求められます。

・飼料用米専用品種の生産にシフトする
・飼料用米以外の戦略作物や高収益作物との輪作体系に取り組む


いずれも、転向に当たって栽培体系の見直しや新たな農機・設備の導入など、多大な負担を伴いますが、実際に取り組み成果を上げている産地も多くあります。以下、それぞれの展望について、概要を解説します。

飼料用米専用品種へ転換する

これまで一般品種を飼料用米に仕向けてきた農家が、今後も補助金を最大限に受け取るためには、方針を変え、多収かつ需要・価格の安定した飼料用米専用品種への転換が必要になります。

主食用米の需要が減る一方で、国産の飼料用米への需要は高まる傾向にある今、飼料用の多収品種への切り替えは前向きな選択ともいえます。地域の畜産農家と連携し、販路を確保する例もあります。

例えば、鹿児島県日置市で主食用米を生産していたある農家は、水田の多くを飼料用米に切り替えました。県内で国産飼料を作る会社と、その水田で生産された米やわらを、品質や収量に関わらず一定価格で全量買い取るという契約を結び、経営の安定化を図っています。

出典:NHK鹿児島放送局「かごしまWEB特集|飼料高騰で苦境 鹿児島の畜産 脱輸入依存の動きコメにも波及(2022年7月6日)」

多収品種に切り替える際には、種子の確保が必要で、すぐに安定して収穫できるわけではありませんが、円滑な種子転用や発芽試験に必要な経費などについても、話し合いや支援を検討するとしています。

地域ぐるみで畜産業とも連携し、飼料用米の生産に大きく舵を切れば、リスクを軽減しながら円滑な転向を実現しやすいでしょう。

▼飼料用米専用品種(多収品種)への転換はこちらの記事もご参考ください

高収益作物等との輪作体系を組む

水田活用の直接支払交付金のうち「畑地化促進事業」では、飼料用米よりも高い単価で交付金を受けられるケースがあります。

例えば、令和5(2023)年度までの時限単価ではありますが、高収益作物には10a当たり17万5,000円もの支援が受けられ、高収益作物以外の畑作物にも10a当たり14万円の支援があります。

出典:農林水産省「経営所得安定対策」所収「令和5年度 経営所得安定対策等の概要 ―農業者の皆様へ―」(24ページ)

なお高収益作物とは、野菜や花き、果樹など、主食用米と比べて収益性の高い作物のことをいいます。特に、産地において積極的に取り組んでいる野菜などが含まれます。

5年に一度水張りするように田畑輪換をすれば、水田活用の直接支払交付金の対象となることから、飼料用米の栽培をやめ、高収益作物や子実用とうもろこしなど、できるだけ高額な助成金が受け取れる作物との輪作体系を組むのも1つの方法です。

水田活用の直接支払交付金を活用し、主食用米の価格安定のため需給調整へ柔軟に対応してきた農家にとって、一般品種の水稲に対する交付金を段階的に引き下げるという令和5(2023)年の見直しは、主食用米の生産を諦めるという辛い選択を迫るものとなりました。

しかし、高品質な国産の飼料用米への需要は高く、この機会に飼料用米に転向すれば交付金をこれまでと同様に受け取れるため、収入アップのチャンスと捉えることが可能です。思い切って田畑輪換に取り組み、高収益作物を導入するのもよいでしょう。

転換後、安定した収量が得られるまでは、交付金を十分に活用することが重要です。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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