【令和7年度】飼料用米の補助金制度を解説!最新の変更点と今後の見通し

輸入飼料の高騰を背景に、国産飼料用米の生産拡大が注目されています。飼料用米の生産には交付金による支援制度が設けられ、地域や収量に応じた補助金が交付されます。本記事では、飼料用米に関する補助金制度と、飼料用米生産の展望について解説します。
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飼料用米に使える補助金「水田活用の直接支払交付金」

田舎の写真屋さん/ PIXTA(ピクスタ)
飼料用米の栽培に当たって活用できる補助金に、「水田活用の直接支払交付金」があります。まずはこの制度について、目的や支援対象、補助額などの概要を解説します。
出典:
農林水産省「水田活用の直接支払交付金」
農林水産省「水田活用の直接支払交付金」所収「水田活用の直接支払交付金等(令和7年度予算概算決定額)」
支援制度の概要
水田活用の直接支払交付金制度は、水田を持ち、飼料用米や飼料作物、麦や大豆などの戦略作物を生産したり、地域の特産などの高収益作物を生産する農家を支援する制度です。
制度の目的は、水田を主食用米の生産以外に活用することで、主食用米の価格安定を図ると同時に、食料自給率・自給力の向上と水稲農家の収益向上をめざすものです。また、日本の農業の特徴的な生産資源である、水田の機能を最大限に活用・維持することも目的の1つです。
交付対象者は、交付対象となる水田において、対象作物を販売目的で生産する販売農家または集落営農としています。対象となる水田については、のちほど解説します。
▼水田活用の直接支払交付金制度について、詳細はこちらの記事をご参考ください
飼料用米の補助金額

出典:農林水産省「経営所得安定対策」所収「経営所得安定対策等の概要(令和7年度版)」、minorasu「“水田活用の直接支払交付金”が厳格化! 改正のポイントと農家がすべき対応」よりminorasu編集部作成
出典:農林水産省の以下資料よりminorasu編集部作成
「予算、決算、財務書類等」掲載の各年度「農林水産概算決定の概要」
対象となる水田を活用して飼料用米を栽培した場合、水田活用の直接支払交付金の「戦略作物助成」として交付金を受け取れます。国からの交付金額は、2025年度予算では、数量に応じて10a当たり5.5~10.5万円が支給され、標準単価は8万円です。(後述の章でも紹介しますが、飼料用米の一般品種については、2025年度は10a当たり5.5~8.5万円(標準単価7.0万円)、2026年度は10a当たり5.5~7.5万円(標準単価6.5万円)のように、段階的に引き下げられていますので、ご注意ください。)
これに、「産地交付金」として、都道府県設定分の助成が加算される場合もあります。
例えば、茨城県では、2023年度に水田活用の直接支払交付金の対象となる飼料用米生産については、「生産性向上等の取組」を行った場合、2つ以上なら10a当たり5,000円以内、1つなら10a当たり2,000円以内の交付金が加算されます。
飼料用米以外では、米粉用米の生産に対して10a当たり3,000円以内の加算があります。
出典:関東農政局「令和6年度関東農政局管内の水田収益力強化ビジョンについて」所収「関東農政局管内の県並びに地域農業再生協議会別の水田収益力強化ビジョンについて 茨城県」
都道府県設定は、国が都道府県に配分する資金枠の中で独自に取り決めるものです。自身の地域にどのような交付金があるのか、都道府県または市町村に問い合わせて確認しましょう。
【変更点一覧】 飼料用米に対する補助金制度の見直し内容

ライダー写真家はじめ/ PIXTA(ピクスタ)
水田活用の直接支払交付金制度の内容は、米の需給の動向などに応じて毎年細かく見直されています。飼料用米に関係する近年の見直しについて、知っておきたい変更点は次の3つです。
- 交付対象水田の要件変更
- 「飼料用米の複数年契約の取組」に対する支援廃止
- 2024年産以降、飼料用米の一般品種への交付額引き下げ
以下の項で、それぞれ詳しく解説します。
1.交付対象となる水田の要件変更(令和6年度)
2024年度の制度見直し以降、交付対象となる水田の要件が変更されました。
今までは、5年間で一度も水張りが行われない農地について、交付対象から外すという要件がありました。いわゆる、5年水張りルールです。これには、転換作物の作付けが固定化した農地はそのまま畑地化を進め、水田機能を維持した農地では、大規模化とブロックローテーション化を促すという目的がありました。
しかし、2027年以降はこの5年水張りの要件は求められなくなります。また、2025年度、2026年度の対応として、水稲を作付け可能な水田に対して、連作障害を回避する取組を行った場合、水張りしなくても交付対象となりました。
出典:農林水産省「水田活用の直接支払交付金における5年水張りルールの変更について」
また「畦畔などの湛水設備や用水供給設備がない農地」または「土地改良区内にあって賦課金が支払われていない農地」を対象外とする、という基準は現行維持となっています。
なお、畑地化する農地については、2023年には「畑地化促進事業(畑地化促進助成)」として区別し、特に高収益作物の作付けを促進しています。
飼料用米の場合は、水田を畑地化するのではなく、そのまま水田として活用するため、この要件変更による直接的な影響はありません。ただし、水田の一部を畑地化して生産していた場合は、水張りの要件が廃止されたことで作付け計画の自由度が高まり、生産の効率化や経営判断の柔軟性という点でメリットが生じる可能性があります。
出典:農林水産省「経営所得安定対策」所収「令和7年度 経営所得安定対策等の概要 ―農業者の皆様へ―」
2.「飼料用米の複数年契約の取組への支援」が廃止(令和4年度)
2021年度まで、本制度には「飼料用米・米粉用米の複数年契約の取組への支援」がありました。これは、飼料用米と米粉用米について、より安定的・継続的に生産供給体制を整えるべく、実需者との複数年契約に基づいて生産される分については「複数年契約加算」として助成されるものです。
この追加配分は、2021年までの新規取組みが対象で、10a当たり1.2万円でした。2022年は、経過措置として、2020・2021年からの継続分のみを対象として、10a当たり6,000円となり、2023年度で廃止されました。
出典:茨城県農業再生協議会「令和4年度から飼料用米等への助成制度が変わります」
3.一般品種への補助金額が引き下げ(令和6年産以降)
例年、本制度は見直しが進められてきましたが、その中でも飼料用米の生産に取り組む農家にとって厳しい改定が、2023年にありました。それが、2024年産から、飼料用米のうち一般品種への支援水準が段階的に引き下げられるというものです。
一般品種も引き続き助成の対象にはなりますが、2024年産からは以下のように年々引き下げられます。
- 2023年産:数量に応じて10a当たり5.5~10.5万円(標準単価8万円)
- 2024年産:数量に応じて10a当たり5.5~9.5万円(標準単価7.5万円)
- 2025年産:数量に応じて10a当たり5.5~8.5万円(標準単価7万円)
- 2026年産:数量に応じて10a当たり5.5~7.5万円(標準単価6.5万円)
なお、多収品種については現行のまま変更はありません。
この見直しには、飼料用米の生産について、多収な専用品種への転換を促進したい狙いがあります。
出典:農林水産省「経営所得安定対策」所収「令和7年度 経営所得安定対策等の概要 ―農業者の皆様へ―」(以下共通)
補助金制度の見直しを受けた、飼料用米農家の今後

kikisorasido/ PIXTA(ピクスタ)
飼料用米の生産においては、主食用水稲栽培の生産体系を活かしながら需給調整へ柔軟に対応するために、一般品種を作付けしたあとで飼料用米へと仕向転換をする「深堀り」が各産地で行われてきました。
しかし、今後は一般品種への助成が引き下げられることで、これまでの方法では十分な収入が得られなくなる可能性があります。
そこで、これまで本制度の交付金を活用しながら収入を維持してきた飼料用米農家には、次のような方針転換が求められます。
- 飼料用米専用品種の生産にシフトする
- 飼料用米以外の戦略作物や高収益作物との輪作体系に取り組む
いずれも、転向に当たって栽培体系の見直しや新たな農機・設備の導入など、多大な負担を伴いますが、実際に取り組み成果を上げている産地も多くあります。以下、それぞれの展望について、概要を解説します。
飼料用米専用品種へ転換する
一般品種を飼料用米として作付けしてきた農家が、今後も安定的に支援を受けるには、多収で需要の見込まれる飼料用米専用品種への切り替えが現実的な選択肢といえます。
ただ、飼料用米の需要が一律に伸びているわけではありません。2024年産の飼料用米の作付面積は約9.9万haで、前年の13.4万haから約26%減少しました。一般品種への交付金の減額や在庫の積み上がり、飼料価格の下落など複合的な要因によるものと考えられます。
出典:農林水産省「飼料用米関連情報」所収「飼料用米をめぐる情勢について(令和7年7月)8ページ」
とはいえ、多収品種を活用し、地域の畜産業と連携することで、飼料用米の安定供給と経営の持続可能性を両立している事例もあります。例えば、鹿児島県日置市では、主食用米を生産していた農家が水田の大部分を飼料用米に転換し、県内の飼料製造企業と「米や稲わらを一定価格で全量買い取る」契約を結ぶことで、経営の安定化を図りました。
多収専用品種への切り替えを検討する場合、種子確保や播種時期、発芽率の管理など新たな対応が必要となります。品種によっては発芽性や栽培適性に地域差があるため、導入に際しては自治体やJAなどと連携して情報を得ることが重要です。
今後も、飼料用米を取り巻く市場や政策は変化していくことが予想されます。地域の農業情勢や畜産業との関係性、販売契約の見通しなどを総合的に判断しつつ、長期的な視点での方針転換が求められています。
▼飼料用米専用品種(多収品種)への転換はこちらの記事もご参考ください
高収益作物などとの輪作体系を組む
水田活用の直接支払交付金のうち「畑地化促進事業」では、飼料用米よりも高い単価で交付金を受けられるケースがあります。
例えば、高収益作物には10a当たり10万5,000円もの支援が受けられます。さらに、定着促進支援として最初の5年間は、10a当たり2万円または3万円の上乗せされます。
出典:農林水産省「水田活用の直接支払交付金」所収「令和7年度 経営所得安定対策等の概要 ―農業者の皆様へ―」(24ページ)
さらに、水田活用の直接支払交付金のなることから、高収益作物や子実用とうもろこしなど、できるだけ高額な助成金が受け取れる作物との輪作体系を組むのも1つの方法です。
水田活用の直接支払交付金を活用し、主食用米の価格安定のため需給調整へ柔軟に対応してきた農家にとって、一般品種の水稲に対する交付金を段階的に引き下げるという2023年の見直しは、主食用米の生産を諦めるという辛い選択を迫るものとなりました。
しかし、高品質な国産の飼料用米への需要は高く、この機会に飼料用米に転向すれば交付金をこれまでと同様に受け取ることが可能です。特に多収品種の補助金額は比較的高く、収入アップのチャンスと捉えることも可能です。思い切って田畑輪換に取り組み、高収益作物を導入するのもよいでしょう。
転換後、安定した収量が得られるまでは、交付金を十分に活用することが重要です。
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大曾根三緒
ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。