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【トマトの黄化葉巻病対策】被害を拡大させない! タバココナジラミの防除と封じ込め対策

【トマトの黄化葉巻病対策】被害を拡大させない! タバココナジラミの防除と封じ込め対策
出典 : 写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

トマト黄化葉巻病はタバココナジラミによって媒介されるウイルス病で、葉の黄化・萎縮によって生育が阻害されます。発病初期は生理障害と判別しにくい一方でウイルスの蔓延が速いため、減収を回避するには早期の対策が重要です。この記事では、トマト黄化葉巻病の症状の特徴・発生状況や防除対策について解説します。

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タバココナジラミは、トマトだけでなくナス・ピーマンなど多くの植物に寄生します。そのため、トマト黄化葉巻病の防除に当たっては、タバココナジラミの侵入防止対策やほ場周辺の環境保全についても検討が必要です。適切な防除対策に向けて、タバココナジラミの生態や伝染経路を解説します。

トマト黄化葉巻病の正体・発生状況

タバココナジラミ 成虫

写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

トマト黄化葉巻病は、トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)によって​​発生するウイルス病です。国内では1996年に静岡県・愛知県・長崎県で初めて発見され、2022年11月時点では41都府県でトマト黄化葉巻病の発生が確認されています。

出典:一般社団法人農協協会「農業協同組合新聞|【特殊報】トマト黄化葉巻病 県内で初めて発生を確認 宮城県(2022年11月8日)」

トマト黄化葉巻ウイルスは、タバココナジラミのバイオタイプB・Qの幼虫・成虫によって伝搬されます。ウイルスに感染した株の葉裏から吸汁するため、多発するとすす病を併発するのが特徴です。

感染株を接木した場合も伝染しますが、接触伝染や種子・土壌を介した伝染は起こりません。一方、寄主植物が多岐にわたるため、ほ場外から侵入したタバココナジラミによってトマト黄化葉巻ウイルスの感染が拡大する可能性があります。

タバココナジラミは産卵から3週間程度で成虫となりますが、気温25℃前後の環境であれば年間を通じて発生します。

バイオタイプB・Qともに成虫の体長は約0.8mm、体色は淡黄色なので見た目で区別することは難しく、近年では、バイオタイプBからバイオタイプQに置き換わる傾向も見られます。

トマト黄化葉巻病の症状の特徴

黄化葉巻病 上位葉の黄化

写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

トマト黄化葉巻病に発病すると葉の黄化や縮葉が発生するだけでなく、開花したとしても結実しないことが多く、大幅な減収につながってしまいます。

夏季の高温期に感染した場合は感染から1~2週間で発病する一方、低温期の場合は感染から発病まで3ヵ月以上かかる事例も見られるのが特徴です。

発病初期は、新葉が黄化しながら表側に向かって巻き込まれていき、葉脈の間も黄化して縮れる症状が発生します。生育初期に感染すると株の生育が停滞し、多数のわき芽が現れます。トマト黄化萎縮病とよく似た症状なので、病徴だけでトマト黄化葉巻病だと識別することは困難です。

また、葉の黄化は養分の過不足などによる生理障害でも発生するため、トマト黄化葉巻病葉の診断キットを活用すれば早期発見につなげることができます。

黄化葉巻病 株全体の萎縮

写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

症状が進むと葉がちりめん状になるほか、生長点付近で節間が短縮して株全体が萎縮します。開花数は減少し、多くの場合、開花しても結実しなくなります。ウイルスの感染力が強いため、周辺株へも蔓延しやすい点にも注意が必要です。

タバココナジラミを「入れない」「増やさない」トマト黄化葉巻病の防除対策

ハウス 防虫ネット

mamime / PIXTA(ピクスタ)

タバココナジラミのバイオタイプQは薬剤への抵抗性が発達しているため、ほ場にタバココナジラミを侵入させないよう防除対策を検討する必要があります。

ほ場内に侵入したタバココナジラミを増やさず、外部へ脱出させない対策も効果的です。引き続き、トマト黄化葉巻病の防除対策について解説します。

農薬を使用する場合はラベルに記載された使用方法を十分に確認し、不明な点はメーカーや普及指導センターなどに問い合わせるなどして適切に使用してください。

また、地域によっては農薬使用の決まりが設けられている場合もあるため、事前に確認しておいてください。農薬の登録は、以下のサイトで検索できます。

農薬登録情報提供システム
https://pesticide.maff.go.jp/

ハウス周辺の環境改善

タバココナジラミの寄主植物は、キク科やナス科・ウリ科など、少なくとも30科以上にわたります。トルコギキョウや雑草へのトマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)感染も確認されているため、防除に当たっては除草をはじめとするハウス周辺の環境改善が重要です。

ハウス周辺の雑草はタバココナジラミの潜伏先になるため、定植の10日前までに完全に除去します。特に、野良生えトマトはウイルスの感染源になる可能性が高いので、確実に処分することが重要です。

定植後も、収穫を終えるまで定期的に除草するようにします。ハウス内にタバココナジラミが侵入しないよう、黄色粘着板・黄色粘着テープや光反射マルチをハウス周辺に設置するのも効果的です。

さらに、地域の農家と作型と栽培終了時期を統一したうえで、トマトを栽培しない期間を60日以上設定できれば、ほ場からタバココナジラミを一掃できます。次年度以降の感染防止にも有効です。

育苗期の対策

育苗ハウスにタバココナジラミが侵入しないよう、ハウスの開口部には目合い0.4mm以下の防虫ネットを張ります。ハウスの出入口を二重にしておけば、侵入防止効果が高まります。

一方、目合いが細かいネットを使用するとハウス内の温度が高くなりやすいので、トマトの高温障害を防ぐためにも必要に応じて換気するのがポイントです。

購入苗を利用する場合は、わき芽や葉の黄化、タバココナジラミの寄生を確認することが重要です。育苗期にトマト黄化葉巻病が発病すると、定植できる苗が減って収量低下を招くので注意しましょう。

育苗後期から定植時までの間に、「プリロッソ粒剤」や「協友ダントツ粒剤」といったコナジラミ類に適用がある粒剤を施用します。

・プリロッソ粒剤(シアントラニリプロール粒剤)
根から吸収された薬剤が地上部に移行することで、施用後3~4週間の残効を示すのが特徴です。天敵等への安全性が高く、IPMプログラムにも組み込めます。

・協友ダントツ粒剤(クロチアニジン粒剤)
定植時の植穴処理または生育期の株元処理によって、長期にわたって防除効果が持続します。合成ピレスロイド系薬剤への感受性が低下した害虫にも効果的です。

ハウス内の防除対策

黄色粘着板 捕虫

Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)

タバココナジラミがトマトに寄生しないよう、株の上部に黄色粘着板や黄色粘着テープを取り付けて捕殺します。黄色粘着板を利用する場合は10a当たり100枚を目安に取り付けます。

黄色粘着テープを利用する場合はハウス外のタバココナジラミを誘引しないよう、ハウスの端から2m程度離して設置するのがポイントです。

ハウスの被覆資材として紫外線カットフィルムを使用するのも効果的ですが、受粉でミツバチやマルハナバチを使用する場合は活動性が落ちるので注意します。

タバココナジラミが寄生した場合の密度を下げるために、生育に応じて葉かきを実施します。葉の裏に寄生したタバココナジラミの幼虫・蛹も除去できるので、トマト黄化葉巻病のまん延防止にも有効です。

除去した葉はビニール袋等で密封して速やかにハウス外に運び出し、蒸し込み処理をするなどして、完全に枯死・死滅させることが大切です。

栽培終了後のTYLCV封じ込め対策

ハウス 蒸し込み

田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)

栽培が終了したタイミングで、トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)の封じ込め対策を行うことも、トマト黄化葉巻病の防除には有効です。

収穫を終えたら株を枯死させるために、根を引き抜いてからハウスを密閉して蒸し込みます。タバココナジラミは44℃以上の環境であれば短時間で死滅しますが、株を完全に枯死させるため10日~2週間ほど密閉した状態にします。

株を倒して積んだ状態にすると、土壌の温度が上がりきらず、防除効果が下がるので注意しましょう。

蒸し込みを始める前に、ハウス内や周辺の雑草、野良生えトマトを除去しておきます。茎がパキッと折れる状態まで乾燥した後、残さを施設外に持ち出して焼却するなど適切に処分します。ハウス内のタバココナジラミを死滅させることでトマト黄化葉巻ウイルスの飛散を防止できます。

トマト黄化葉巻病の初期症状は葉の黄化や縮葉ですが、トマト黄化萎縮病や生理障害の症状と似ています。トマト黄化葉巻病を早期に発見するためには、診断キットの活用が有効です。

タバココナジラミがトマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)を伝搬するため、ほ場内外の環境整備によってタバココナジラミが侵入できない環境づくりが重要です。

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舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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