ブロッコリーの生産量ランキング! 上位の生産地から学ぶ栽培安定化技術
ブロッコリーは消費者の人気が高く、需要も堅調に推移しているのが特徴です。栄養価が高く、さまざまな食べ方ができる野菜として知られています。この記事では、ブロッコリーの生産が盛んな地域を紹介したうえで、収量安定のために実践しているブロッコリーの栽培安定化技術について解説します。
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ブロッコリーの作付面積は年々拡大傾向にあり、香川県のように行政と営農団体による生産支援のもとで出荷量を倍増させている地域もみられます。2021年時点のブロッコリー生産量都道府県別ランキングを紹介します。
【2021年産】ブロッコリー生産量都道府県別ランキングTOP10
2021年産の全国のブロッコリー生産量は155,000tです。2020年産より3,200t減少しているものの、1991年産と比べると生産量は2倍に拡大しています。生産量の上位5地域で全国の生産量の半数を生産しているのが特徴です。
2021年産の、ブロッコリーの生産量の上位10地域は次のとおりでした。
2021年産 ブロッコリーの出荷量ランキング
順位 | 地域 | 2021年産出荷量(t) |
---|---|---|
1位 | 北海道 | 26,500 |
2位 | 埼玉県 | 13,700 |
3位 | 愛知県 | 13,600 |
4位 | 香川県 | 12,700 |
5位 | 長野県 | 10,900 |
6位 | 徳島県 | 10,800 |
7位 | 長崎県 | 9,160 |
8位 | 鳥取県 | 6,280 |
9位 | 熊本県 | 6,200 |
10位 | 群馬県 | 5,420 |
全国計 | 155,000 |
出典:農林水産省「令和3年産作物統計調査 作況調査(野菜) ブロッコリー」
東京都中央卸売市場の入荷実績では、6~10月は主に北海道産・長野産、11~5月は主に香川産・愛知産のブロッコリーを入荷し、周年供給体制が確立しています。
また、消費者1人当たりのブロッコリー消費量は2019年時点で1,590g、2012年時点と比較すると増加傾向です。
出典:独立行政法人農畜産業振興機構「月報野菜情報2020年9月号 ブロッコリーの需給動向」
なお、2021年産の作付面積は以下のとおりでした。
2021年産 ブロッコリーの作付面積ランキング
順位 | 地域 | 2021年産作付面積(ha) |
---|---|---|
1位 | 北海道 | 3,030 |
2位 | 香川県 | 1,330 |
3位 | 埼玉県 | 1,200 |
4位 | 長野県 | 1,090 |
5位 | 長崎県 | 999 |
6位 | 徳島県 | 974 |
7位 | 愛知県 | 945 |
8位 | 鳥取県 | 796 |
9位 | 熊本県 | 680 |
10位 | 群馬県 | 615 |
全国計 | 16,900 |
出典:農林水産省「令和3年産作物統計調査 作況調査(野菜) ブロッコリー」
ブロッコリー生産の盛んな地域から学ぶ栽培安定化技術
ブロッコリーの消費量が年々増加していることから、生産地では収量拡大に向けた取り組みが進んでいます。ブロッコリーの主要生産地で実践している栽培安定化技術を解説します。
【北海道】排水改良によりブロッコリーの生産拡大を実現
川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)
ブロッコリーの生産量が全国一を誇る北海道では、ほ場の排水改良やかんがい施設の整備によりブロッコリーの安定生産を実現し、同時に農家の収益性向上にも寄与しています。
空知地方北部に位置する秩父別町では水稲を主体とした営農が展開されていますが、泥炭土壌や粘性土などが地域内に広く分布しており、ほ場の排水面で課題がある環境でした。地域の排水路の老朽化に伴い湛水・過湿被害がたびたび発生し、作物の収量にも影響が及んでいました。
そこで、1984年度から1996年度にかけて、区画整理と併せて排水路や暗渠(あんきょ)排水を集中的に整備することで湛水・過湿被害が解消し、作物生産の安定性が向上しました。
その結果、水田の汎用化の一環として野菜の生産が可能になり、ブロッコリーの生産量も拡大しています。品質向上によって収益性が高まる効果も生まれており、地域の第6次産業化にも寄与しています。
【埼玉県】水田作ブロッコリーにスーパーセル苗を活用
cozy / PIXTA(ピクスタ)
埼玉県では水稲の二毛作として冬期のブロッコリー栽培を推進していますが、水稲の収穫が遅れた場合でもブロッコリー栽培に影響が及ばないようスーパーセル苗を活用しています。
スーパーセル苗とは育苗期間中に追肥せずに灌水のみで育苗した苗で、慣行苗と比べて乾燥・病害に強く、常温でも長期貯蔵ができるのが特徴です。
スーパーセル苗の導入により定植に適した期間が拡大し、水稲栽培の状況に合わせて柔軟にブロッコリーの定植時期を変更できるようになりました。徒長苗になりにくい特性もあり、収量の安定化にも寄与しています。
また、埼玉県農業技術研究センターの研究でも、初期生育や収穫時期が遅れる場合があるものの、収量・品質が慣行苗と遜色ないという結果が出ています。
出典:埼玉県農業技術研究センター「新技術情報2」所収「水田作ブロッコリーにはスーパーセル苗の利用が有効」
【香川県】ICTを活用した出荷予測システムの導入
「あい作®」で農作物の出荷予測システムの提供を開始~産地一体で進める出荷予測の取り組みを支援~
出典:株式会社PR TIMES(株式会社NTTデータ ニュースリリース 2020年10月13日)
香川県では、株式会社NTTデータの営農支援プラットフォーム「あい作」を導入し、過去の栽培実績をもとに出荷量の予測を立てて農家の収益力強化につなげています。
「あい作」の導入前はJAの営農指導員の知見をもとに出荷量を予測して、卸売業者等と出荷量と価格について契約を取り交わして農家の収益増に取り組んでいました。しかし、異常気象や気候変動の影響で出荷予測にブレが生じ、供給の不安定さの解消が課題として浮上しました。
そこで、2週間前の取引先との交渉で提示する予定出荷量の精度を高めるため、ICTを活用した出荷予測を開始しました。
「あい作」の導入により、栽培実績や出荷実績はもちろん、気象・品種などのデータや生育状態の画像データなどの分析結果を踏まえた出荷予測が可能になり、収穫時期・出荷時期の最適化が可能になりました。
作業計画も調整しやすくなり、農業経営の効率化にも効果を発揮しています。
出典:株式会社NTTデータ「ブロッコリーの出荷予測システムを活用 生産者の収益拡大を目指すJA香川県の取り組み」
【長野県】集合研修による担い手の育成
長野県諏訪地区では、ブロッコリー栽培を開始して5年未満の担い手を重点対象者と位置づけ、作柄の安定や増収を目指せるよう担い手の育成に取り組んでいます。
普及センターの担当者が重点対象者のほ場を毎月巡回し、生育状況をもとに解決すべき課題と目標を設定したうえで個別支援を実施しています。
併せて、集合研修として春・秋に重点対象者のほ場やベテラン生産者のほ場を見学する機会を設けています。ほ場見学では、ベテラン生産者から豊富な知見に基づくアドバイスも受けられるのも特徴です。
さらに、冬期の栽培講習会や育成最終年度の成果検討会も実施して、情報共有や仲間作りにもつなげています。重点対象者どうしの情報交換の一環として、ブロッコリーの病害虫の診断・防除のポイントをPDFファイルで確認できる仕組みも取り入れられています。
出典:農林水産省「取組成果(令和元年度)」所収 「安定生産できるブロッコリー産地の構築(長野県)」
2021年産のブロッコリー生産量は1991年産の2倍に達しており、消費者ニーズも高いことから今後も生産量は堅調に推移すると考えられます。安定した栽培を通じて増収を実現するには、ほ場の排水管理や育苗技術の向上、システムによる出荷予測といった営農管理を実践するのがポイントです。
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舟根大
医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。