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【プロ向け】ブロッコリーの主な品種|栽培地別おすすめ一覧

【プロ向け】ブロッコリーの主な品種|栽培地別おすすめ一覧
出典 : KY / PIXTA(ピクスタ)

2026年度から「指定野菜」に追加されるブロッコリーは、市場価格安定制度の対象となり、栽培農家の経営の安定化が期待されています。この記事では、プロ農家におすすめのブロッコリー品種を地域別に紹介します。耐病性、作型適応性、収量性などのポイントを品種選択の参考にしてください。

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ブロッコリーは栄養価に優れていると評価が高く、1世帯当たりの年間支出金額も増加傾向にあって、国内需要は安定しているといえます。加工業務用ブロッコリーの需要も増えており、収益源を確保できる作物として期待されています。

新たにブロッコリー栽培を検討する場合は、需要のある品種を考慮するとともに、地域の気候に合った最適な品種を選ぶことが大切です。

ブロッコリーの品種選び、ポイントは「気候と作型」

北海道のブロッコリー畑

ノア / PIXTA(ピクスタ)

冷涼な気候を好むブロッコリーは、耐暑性や早晩性の違いなど、さまざまな特性をもつ品種が開発されてきました。そのため、まず栽培地域の気候と作型に合った品種を選ぶ必要があります。

ブロッコリーの作型は、主に「夏まき秋冬どり」「春まき初夏どり」の2つに分類されます。

「夏まき秋冬どり」に適したブロッコリー品種

夏まき秋冬どりは、ブロッコリーの生育特性に適した作型で、多くの品種があります。早生や中生では「おはよう」や「こんにちは」、晩生なら「クリア」といった品種が代表的です。

夏まき秋冬どりの作型では、早晩性の品種を組み合わせて出荷時期を分散させることができます。
一例は以下のとおりです。

  • 早生品種:年内どり
  • 中生品種:年内〜年明けどり
  • 晩生品種:年明けどり

また、冷涼地では、早生品種を栽培して温暖地の収穫期からずらすことで、市場価値を高めることも可能です。

「春まき初夏どり」に適したブロッコリー品種

春まき初夏どりの場合は、播種から生育初期が2~3月と低温期であり、花蕾形成から収穫時期にかけて気温が上昇するため、ブロッコリーの生育特性上、栽培難度が高くなります。

この作型に適したブロッコリーは、早生・中生品種となっています。低温に敏感な早生品種ほど、花蕾が小さくなる「ボトニング」が発生するリスクがあるため、細心の注意が必要です。

冷涼地・中間地・暖地のそれぞれに適した播種期と収穫期の目安は以下のとおりです。

▼ブロッコリーの播種後の育苗管理については、以下の記事も参照してください。

全国で栽培される、代表的なブロッコリー品種一覧

ブロッコリー品種のおはよう

日本で広く栽培されている「おはよう」
画像提供:株式会社サカタのタネ

全国で栽培される主なブロッコリー品種

品種早晩性播種期栽培特性
おはよう中早生・冷涼地:3月中旬〜7月下旬
・中間地:8上旬〜中下旬、1月下旬〜2月下旬
・暖地:8中旬〜下旬、1月中旬〜2月中旬
・播種後95日前後で収穫できる
・作型が幅広く栽培しやすい品種
ピクセル早生・冷涼地:3月中旬〜7月中旬
・中間地:1月中旬〜2月下旬、8月上旬〜8月中旬
・暖地:1〜2月上旬、8月上旬〜8月中旬
・環境変化に強い早生品種
・花蕾の粒が細かく食味がよい
サマードーム中早生・冷涼地:4月中旬〜6月上旬
・中間地:2月上中旬~3月上旬
・暖地:2月上旬~下旬、7月下旬~8月上旬
・根が強く他品種に比べ湿害に強い
・耐暑性に優れ、ブラウンビーズが少ない

おはよう

「おはよう」は、全国各地のブロッコリー生産地で広く普及している品種です。草姿は立性、草勢はやや強めで、花蕾の位置が低い傾向にあります。花蕾は濃緑色できれいなドーム形になりやすく、花蕾形状の安定性が高いのも特徴です。

栽培適応性や播種期、収穫期が幅広く、栽培しやすいことから、初めてブロッコリーを手掛ける農家にも「おはよう」は候補の1つとして検討しやすいでしょう。

出典:株式会社 サカタのタネ「ブロッコリー 「おはよう®」」

ピクセル

「ピクセル」は、北海道や長野県などの冷涼地をはじめ、東京都や長崎県などの中間地・暖地でも広く栽培されている品種です。環境変化に強いだけではなく、生育が早いことから、病気や害虫、台風などのリスクも軽減できます。

また、収穫期がそろいやすく、一斉収穫に適しています。収穫後も日持ちするため、取り回しのよい品種を探している農家におすすめです。

出典:株式会社 サカタのタネ「ブロッコリー 「ピクセル」」

サマードーム

「サマードーム」は耐暑性に優れた特徴を持ち、主に埼玉県や香川県などの中間地・暖地で栽培されているブロッコリーです。冷涼地の長野県でも生産されています。

根が強く、湿害に耐性を持つ一方、黒腐病などの細菌を病原とする症状に弱いことから防除は必須です。死花(ブラウンビーズ)が少なく棚持ちもよいため、安心して収穫・出荷することができます。

出典:株式会社 サカタのタネ「ブロッコリー 「サマードーム」」

冷涼地で栽培される主なブロッコリー品種

ブロッコリーの成長

東北の山親父 / PIXTA(ピクスタ)

冷涼地で栽培される主なブロッコリー品種

品種早晩性播種期栽培特性
スターラウンド早生冷涼地:4月下旬〜7月中旬・花蕾がきれいなドーム型に生長する
・高温時においても不整形花蕾の発生が少ない
ジェットドーム極早生冷涼地:4月上旬〜6月中旬
中間地:2月中旬~下旬、8月上旬~中旬
・耐暑性を持つ極早生品種
・草姿は立性でありながらスマート
ファイター早生冷涼地:3月中旬〜4月中旬・6月中旬〜7月中旬
中間地:1月上旬~下旬、8月上旬~下旬
暖地:1月上旬~下旬、8月中旬~下旬
・茎が太く、収量性が高い
・着蕾の位置が高いため収穫作業の負担を減らせる

スターラウンド

「スターラウンド」は、主に北海道で生産されているブロッコリーで、ホクレンのオリジナル品種です。キャッツアイやリーフィーなど生理障害の発生が少ない品種として開発されました。

花蕾がきれいなドーム型になりやすく、アントシアンレス品種で紫色の着色の心配もありません。不揃いのリスクが低いブロッコリーの品種を探している農家におすすめです。

出典:ホクレン農業協同組合連合会「ホクレン 営農情報誌 アグリポート」所収「ホクレンの営農情報誌 アグリポート VOL.3 2016年10-11月号」

ジェットドーム

「ジェットドーム」は、北海道で栽培されているブロッコリーの品種の1つです。耐暑性を持つ極早生品種であり、花蕾が乱れにくい特性を持ちます。

花蕾の形状は凹凸が少なく、まんまるのドーム型に生育しやすいことから、秀品率の高さが期待できます。耐暑性に優れ、作型の広い極早生品種を求めている農家にも取り入れやすいでしょう。

出典:ヴィルモランみかど株式会社「ジェットドーム」

ファイター

「ファイター」は、主に長野県で栽培され、冬春播きの作型に適したブロッコリー品種です。
茎は太く、収量性が高いことに加え、花蕾は濃緑色の豊円形で締まりがよいのが特徴です。

アントシアンフリーの品種であり、花蕾への着色もありません。定植後は活着を促し、草勢を維持することで秀品率の向上に繋がります。

出典:株式会社ブロリード「ファイター」

中間地で栽培される主なブロッコリー品種

ブロッコリー品種のこんにちは

第66回全日本野菜品種審査会で一等特別賞を受賞した「こんにちは」
画像提供:株式会社サカタのタネ

中間地で栽培される主なブロッコリー品種

品種早晩性播種期栽培特性
グランドーム中晩生中間地:7月中旬〜8月上旬・耐湿性を持つ品種
・均一に生長しやすく秀品率に期待できる
こんにちは中生冷涼地:6月中旬〜7月中旬
中間地:1月下旬〜2月下旬、7月下旬〜8月上旬
暖地:1月上旬〜下旬、8月中旬~下旬
・花蕾が小粒で極ドーム型に生長する
・アントシアンフリーで花蕾の着色に悩まない
クリア晩生中間地:8月中旬〜下旬
暖地:8月中旬~9月中旬
・アントシアンフリーの晩生品種
・葉の包葉性が強く厳寒期の寒さに耐える
ウインタードーム晩生中間地:8月上旬〜中旬
暖地:8月中旬〜下旬
・葉のべと病に耐性を持つ
・組織内べと病の発生も非常に少ない
・暖冬の影響を受けても高い秀品率に期待できる

グランドーム

「グランドーム」は、埼玉県や香川県で主に生産されています。草勢とともに根張りが強く、耐湿性を持ち、中間地や暖地で栽培しやすい品種です。

花蕾は大きなドーム型に育ちやすく、ボリュームのある青果の収穫が期待できます。低温時の生育初期に起こりやすい「ボトニング」に耐性を持つことから、冬春播きに適した品種を探している農家にもおすすめです。

出典:株式会社 サカタのタネ「ブロッコリー 「グランドーム」」

こんにちは

「こんにちは」は、第66回全日本野菜品種審査会で一等特別賞を受賞したブロッコリーの品種で、埼玉県や香川県などの主要産地で栽培されています。

特性は、中早生品種の1つである「おはよう」と似ており、アントシアンフリーで着色の心配もありません。

また、「こんにちは」と「おはよう」を同タイミングで播種すると、「おはよう」の収穫が終盤になる頃に「こんにちは」の収穫を始められるという作付計画が可能です。

出典:株式会社 サカタのタネ「ブロッコリー 「こんにちは®」」

クリア

「クリア」は、香川県や愛知県などの暖地で栽培され、播種後約145日で収穫できる晩生品種のブロッコリーです。低温肥大性に優れていることから、1〜3月にかけての収穫に向いています。

上部の葉が花蕾を包み込む形で生育することから、寒害への耐性を持ちます。花蕾はボリュームのあるドーム型に生育しやすいため、歩留まりのよさにも期待できるでしょう。

出典:株式会社ブロリード「クリア」

ウインタードーム

「ウインタードーム」は、中間地から暖地での冬どりに適し、主に香川県で栽培されているブロッコリーの品種です。温度への適応性に優れていることから、暖冬により収穫期が前倒しになっても、高い秀品率が期待できます。

作付計画では、播種期を前半と後半に分けることで、1〜2月の厳寒期にも安定した収穫が可能です。収量低下の原因となる「べと病」への耐性を持つため、病害リスクの低減を図りたい農家におすすめです。

出典:株式会社 サカタのタネ「ブロッコリー 「ウインタードーム」」

暖地で栽培される主なブロッコリー品種

ブロッコリー品種はつみらい

草姿立性、コンパクトで栽培管理がしやすい「はつみらい」
画像提供:株式会社野崎採種場

暖地で栽培される主なブロッコリー品種

品種早晩性播種期栽培特性
ベルネ中早生冷涼地:6月下旬~7月下旬
中間地:8月上旬~中旬
暖地:8月中旬〜9月上旬
・側枝の発生が少なく管理しやすい
・耐寒性とともに低温伸長性に優れている
ボルト極早生中間地:7月下旬~8月上旬
暖地:8月上旬〜中旬
・耐暑性に優れた極早生品種
・秋どり栽培に特化している
はつみらい中早生暖地:8月中旬〜下旬・草姿立性、コンパクトで管理しやすい
・茎は太すぎず柔らかいため収穫時の作業性に優れる
むつみ中生中間地:8月中旬
暖地:8月中旬〜9月上旬
・茎が太く、花蕾も豊円形でボリュームがある
・根張りが強く秀品率にも期待できる

ベルネ

「ベルネ」は、主に愛知県で栽培されており、側枝の発生が少なく管理しやすいブロッコリーです。

濃緑色のドーム型に生長し、花蕾粒も小さく揃いがよいため、高い市場性があります。耐寒性にも優れていることから、アントシアンが発生しにくいという特徴もあります。

出典:トヨタネ株式会社「ベルネ」

ボルト

「ボルト」は、耐暑性を持ち、暖地である愛知県で栽培されているブロッコリーの品種です。極早生品種であることから、播種後約85日ほどで収穫が可能です。

耐寒性を持たないため、収穫は11月上旬から遅くても12月上旬までに完了する作付計画を立てる必要があります。暖地で秋どり栽培に適したブロッコリーを探しているなら、「ボルト」を新たな栽培品目として検討してみてください。

出典:トヨタネ株式会社「ボルト【地域限定販売】」

はつみらい

「はつみらい」は、ブロッコリーの主要産地である、愛知県や香川県の暖地で栽培されている品種です。コンパクトに生育するため栽培管理しやすく、収穫時の作業性にも優れているというメリットを持ちます。

アントシアンが発生しないことから、厳寒期に見られる花蕾の色抜けは比較的少なく、低温期にも高い適応性を発揮します。

出典:株式会社野崎採種場「はつみらい」

むつみ

「むつみ」は、長崎県で主に栽培されているブロッコリー品種です。根張りが強いため栽培しやすく、花蕾はボリュームのある豊円形に育ちやすいので、収量性の向上に期待できます。

厳寒期の収穫や花蕾肥大期の肥料切れ時に起こりやすいアントシアンの着色に注意する必要があります。収穫期が年明けになる場合は、年内にしっかりとした株を栽培することが高品質・多収量のポイントです。

出典:株式会社ブロリード「むつみ」

今後は定番に? ブロッコリーの気になる新品種

株式会社サカタのタネ 公式YouTubeチャンネル SakataSeedmovie「サカタのタネ【ブロッコリー】「アーリーキャノン」品種紹介」

2023年に発売された新品種のうち、プロ農家におすすめの品種は以下の2つです。

プロ農家におすすめのブロッコリー新品種

品種早晩性播種期栽培特性
アーリーキャノン早生・冷涼地:4月上旬〜下旬、6月上旬〜下旬
・中間地:7月下旬〜8月上旬
・暖地:7月下旬〜8月上旬
・根こぶ病と暑さへの耐性に優れる
・高温期においても安定した秀品率の高さに期待できる
快緑(かいりょく)中生・冷涼地:3月下旬、6月下旬〜7月上旬
・中間地:1月中旬、8月初旬
・暖地:1月下旬、8月下旬
・花蕾の形状バランスや栽培しやすさにフォーカスした新品種
・花蕾の粒揃いがよくボリュームのあるドーム型

アーリーキャノン

「アーリーキャノン」は、2023年6月から販売されている新品種です。根こぶ病耐性と早生性を兼ね備えており、加えて耐暑性にも優れているため、高温期でも高品質な青果の収穫が期待できます。

高温期に栽培テストを行った産地からは、秀品率のほか、収穫・調整作業性のよさについても高い評価を得ています。

出典:株式会社 サカタのタネ「根こぶ病耐病性ブロッコリー『アーリーキャノン』の種子発売」

快緑(かいりょく)

「快緑(かいりょく)」は、2023年5月に発売されたブロッコリーの新品種で、花蕾の形状や秀品率の高さ、耐病性、栽培管理のしやすさにフォーカスして開発されました。

アントシアンフリー品種であることから、低温期でも花蕾着色の心配がなく、年内から年明けまで栽培が可能です。草姿は立性かつ草勢は中程度のため、畝間に入りやすく栽培管理が容易です。

締まりのよいドーム型をした濃緑の花蕾が特徴で、ボリュームのある青果に生長しやすいことから、今後のスタンダード品種として期待できます。

出典:朝日アグリア株式会社「野菜の種」所収「快緑(かいりょく)」

ブロッコリーの栽培は、地域ごとの気候や作型に適した品種を選ぶことが重要です。本記事で紹介したブロッコリーの代表的な品種や、冷涼地・中間地・暖地ごとのおすすめ品種を参考にしながら検討してみてください。

▼ほかの記事でも「ブロッコリーの定植方法」や「病害への対策法」も解説しているので、ブロッコリーの栽培に取り組む際には、あわせてご覧ください。

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相馬はじめ

相馬はじめ

農業×SEOに特化した専業Webライター。農業法人に正社員として8年間勤めた経歴を持つ。これまでに携わった作物は「キャベツ・白菜・レタス・長ネギ・馬鈴薯・米・麦・そば」。得意な執筆ジャンルは農業・音楽・転職など多岐にわたる。強みはコミュニケーション力の高さと、誰とでも打ち解けられること。minorasuでの執筆以外では、農業初心者に向けたブログ『農業はじめるなら見るブログ』を運営中。https://hajimete-hirogaru.com/

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