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ブロッコリーの収穫方法|時期の目安と、増収がかなう栽培技術

ブロッコリーの収穫方法|時期の目安と、増収がかなう栽培技術
出典 : 藤 / PIXTA(ピクスタ)

2026年度から、ブロッコリーが農林水産省の「指定野菜」に加わることになりました。年々ブロッコリーの出荷量が増加傾向にあることが理由とされています。本記事では、ブロッコリーの収穫タイミングの見極め方や収穫方法とともに、収穫専用の農機や単収増が見込める栽培技術を紹介します。

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花蕾(からい)を収穫するブロッコリーは、蕾が開花してしまわないように収穫の適期を見極めることが重要です。また、収穫工程では花蕾を傷つけることがないように手作業・機械にかかわらず、細心の注意が必要です。まずは、作型や品種ごとの栽培時期と収穫方法について解説します。

収穫時期は? ブロッコリーの主な作型と栽培暦

ブロッコリー畑

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

ブロッコリーは冷涼な気候を好み、最適な生育温度は15~20℃とされています。25℃以上で花蕾が育ちづらくなるため、春と秋が栽培適期です。作型は「夏まき秋冬どり」と「春まき初夏どり」の2種類があり、主流は「夏まき秋冬どり」での栽培です。

夏まき秋冬どり

「夏まき秋冬どり」の栽培暦

早晩性播種定植収穫
早生種7月下旬~8月下旬8月下旬~9月中旬11~12月頃
中生種8月上旬〜9月中旬9月上旬〜10月上旬12〜2月頃
晩生種8月中旬〜9月下旬9月中旬〜10月下旬1~3月頃

出典:株式会社ブロリード「ブロッコリーの栽培」よりminorasu編集部作成

中間地におけるブロッコリーの夏まき秋冬どりは、早生種では7月下旬から播種を始め、収穫は11〜12月にかけて行います。中生種では8月上旬から播種を始め、収穫は12〜2月頃です。晩生種では8月中旬から播種を始め、収穫は翌年1〜3月頃です。

生産地別の特徴として、関東や東海地方では夏まきをして、晩秋から翌春まで収穫することが多く、栽培期間の長い中生種などを栽培しています。

四国や九州地方の暖地では、夏季の高温期間が長いため、主に冬から春まで収穫可能な品種を栽培しています。

春まき初夏どり

「春まき初夏どり」の栽培暦

早晩性播種定植収穫
早生種3月上旬〜4月上旬4月中旬〜5月中旬6〜7月頃

出典:株式会社ブロリード「ブロッコリーの栽培」よりminorasu編集部作成

「春まき初夏どり」は、3月上旬から播種を始め、収穫は6〜7月頃です。

春まきのブロッコリーの主な生産地は、北海道や東北地方といった寒冷地域や、標高が高い高冷地です。生産量は「夏まき秋冬どり」と比較して少なめです。

【手順解説】ブロッコリーの収穫方法と作業のポイント

「夏まき秋冬どり」を例に、ブロッコリーの収穫タイミングの見極め方、手作業での収穫の手順、出荷するための調整の仕方を解説します。

 1. 収穫タイミングの見極め

ブロッコリー

shimanto / PIXTA(ピクスタ)

ブロッコリーは、主な可食部である花蕾を収穫します。定植からの日数と、花蕾の大きさを目安に、収穫の適期を判断します。夏まきの収穫適期は以下の通りです。

「夏まき秋冬どり」の収穫適期

早晩性定植からの日数花蕾の直径
極早生〜早生種70~90日後10~12cm程度
中生種90~130日後15cm程度
晩生種130~145日後15cm以上

出典:BSI生物科学研究所「作物の栽培方法」よりminorasu編集部作成

花蕾の直径が目安の大きさに達していなくても、蕾の表面に花弁の黄緑色が見られる場合は、早めに収穫することが大切です。蕾が開花してしまうと、商品価値は損なわれてしまいます。

実際の収穫適期は品種によっても異なり、一般的に早生種は花蕾全体が平らな状態で、小花の1つひとつがやや粗い状態が適期とされています。

また、中・晩成種では花蕾全体に凹凸があり、小花1つひとつが小さく引き締まった状態で、花蕾にすき間ができる前に収穫することが目安になります。

収穫期が遅れた場合は、花蕾の肥大期に発生する「軟腐病」に注意が必要です。細菌が原因で発生し、蕾が軟化・腐敗して悪臭を放ちます。被害の拡大を防ぐには、早めに抜き取って適切に処分します。

▼ブロッコリーの軟腐病について、詳細は以下の記事をご覧ください。

2. 手作業による収穫

ブロッコリーの収穫

田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)

ブロッコリーの収穫は、花蕾を傷つけないよう、1つずつ手作業で行います。ナイフや包丁などで株の根元から茎を切り、側枝と葉を落とします。

茎は斜めに切ることがポイントです。水平に切ると、残った茎の切り口に水分が溜まって腐りやすくなるためです。切り口を乾きやすくするには、晴れた日の収穫がおすすめです。また、花蕾はしおれやすいため、日中を避けて気温の低い朝に収穫することが一般的です。

株の先端にできる頂花蕾の収穫は、1株につき1回ですが、品種によっては頂花蕾の収穫後にわき芽から側花蕾が成長し、1株から花蕾を2回以上収穫することができます。

3. 収穫後の処理(調整・出荷)

ブロッコリー

momo / PIXTA(ピクスタ)

ブロッコリーは収穫後に鮮度が落ちやすい野菜のため、収穫後はできるだけ早く日陰の涼しい場所に移し、風の当たらない場所で調整します。また、多くの産地では出荷後すぐに冷蔵庫で予冷をすることで、品質低下を防ぐ対策をしています。

ブロッコリーの調整方法は産地によってさまざまですが、多くの産地では、花蕾の頂部から15〜16cmになるように茎を切って長さを調整します。外葉は花蕾の高さに揃えて切り取ります。

病害虫の被害を受けた部分や、さし葉(リーフィー)、花蕾の不ぞろい(キャッツアイ)といった生理障害がないか、目視で確認しながら選別します。

出荷時にも高温・多湿で鮮度が落ちないよう、品質保持対策として氷を詰めた段ボールや発泡スチロール箱に入れて冷温流通を行います。

省力化を実現! 加工用ブロッコリーには収穫機の活用を

大規模なほ場がある場合は、加工業務用ブロッコリーの栽培を考えてみてもよいかもしれません。買取価格は青果用より安価ですが、加工業務用は価格が一定で、安定しているというメリットがあります。

さらに、加工業務用は見た目やサイズの品質が青果用ほど厳しくないため、ブロッコリー収穫専用の農機を導入することで、農家の収穫作業の負担を減らすことができます。

例えば、ヤンマーアグリ株式会社の「ブロッコリー収穫機HB1250,A」では、​​ブロッコリーを畑から引き抜いて搬送し、上葉と茎のカット工程までを機械化することができます。

2020年に農水省が実施した「労働力不足の解消に向けたスマート農業実証」プロジェクトで、ブロッコリー栽培の機械化に取り組んだ農家があります。

その報告によると、手作業での収穫と比較して、収穫機を導入したことにより収穫作業時間を10a当たり17.5時間減らすことができ、58%の工数削減につながったという結果が示されています。

ヤンマーアグリ株式会社「ブロッコリー収穫機 HB1250 プロモーション動画(動画は旧型機を使用)」

出典:
ヤンマーアグリ株式会社「ブロッコリー収穫機HB1250,A」

ヤンマーアグリ株式会社「お客様事例紹介 株式会社鈴生 鈴木 貴博様〈ブロッコリー収穫機HB1250〉」
※旧型機HB1250の事例です

増収に期待!? ブロッコリーの収穫量を増やす栽培技術

最後に、設備投資をせずにブロッコリーの収量増が期待できる栽培技術を4つ紹介します。単収・収益アップをめざして新技術の導入を検討してみてください。

収穫時期を伸ばす「リレー栽培」

ブロッコリーは品種により収穫適期が異なるため、早生種、中生種、晩生種とリレー式に栽培することで長い期間収穫することができ、収量増につながります。

「夏まき秋冬どり」の作型のみでも、リレー栽培を採用することにより、10月から翌年2月まで連続的に収穫することが可能です。

一例として、夏まき秋冬どりでリレー栽培に適した品種を紹介します。

リレー栽培では、以下の順で播種します。

(1)7月「サマードーム」を播種 
 ▼
(2)7月中旬〜8月中旬「グランドーム」を播種
 ▼
(3)8月「ウィンタードーム」を播種

それぞれの品種の特性は次の通りです。早晩性によって気温・病害への耐性が異なるため、違う品種を選ぶ場合も早晩性の目安として参考にしてみてください。

サマードーム

播種後95~105日で収穫できる中早生種。耐暑性に非常に優れ、根が強いため雨などの湿害にも比較的強いのが特徴です。高温条件での栽培となるため病害虫対策を徹底します。

グランドーム

播種後115~120日で収穫できる中晩生種。秋冬どりでは低温によりアントシアンが発生することがあるため、適期収穫が重要です。

ウインタードーム

播種後150日前後で収穫できる晩生種。アントシアンや組織内べと病の発生が少なく、厳寒期に安心して栽培できる品種です。

出典:
株式会社 サカタのタネ「10月から翌年2月まで収穫が続く!一歩上をいくブロッコリーリレー栽培」
株式会社 サカタのタネ「野菜を探す(プロ向け)- ブロッコリー」

1株から2個を収穫「2花蕾どり収穫技術」

前述したように、ブロッコリーは品種によって花蕾を2回以上収穫できるものがあります。一方で、品種に依存することなく確実に2回収穫できる「2花蕾どり収穫技術」の開発も行われています。

農研機構では「初夏どり」「秋冬どり」のそれぞれで2花蕾どり収穫技術を開発し、その栽培手順が公開されています。

初夏どり向け:L字仕立て2花蕾どり

側枝を1本だけ残した形状がLの文字に似ている「L字仕立て2花蕾どり」は、冬まき春どりに適しています。国内産ブロッコリーの生産量が減る端境期、4~5月の高価格期間に収穫個数を増やすことができるのが強みです。

L字仕立てにするには、頂花蕾を収穫する1~2週間前に側枝を1本選び、それ以外の側枝は取り除きます。光合成産物を1つの側花蕾に集中させることなどで、12 cm径 (Lサイズ相当)の頂花蕾に対して、10cm径 (Mサイズ相当)の側花蕾を収穫することが可能です。

L字仕立ての栽培方法により、4~5月の収穫個数が平均約70%増加したという調査結果も見られます。

秋冬どり向け:V字仕立て2花蕾どり

収穫時の形状が、Vの文字に似ている「V字仕立て2花蕾どり」は、夏まき秋冬どりの作型での導入が推奨されています。

定植から約1ヵ月後、本葉が7~11枚程度になった時点で頂芽を摘心します。さらに約1週間後に、伸長した複数の側枝から、太く生育が旺盛で逆向きに伸びている2本を選び、残りはすべて取り除きます。

2本の側枝を同時に成⾧させ、直径12cm(Lサイズ相当)の側花蕾を、1株から2個収穫することができます。これによりLサイズ相当の花蕾の収穫個数が平均約60%増加したという結果が示されています。

L字・V字仕立てのいずれも、特殊な道具や資材は不要です。栽培の手順書を参考に導入を検討してみてください。

出典:農研機構「刊行物」所収「ブロッコリー2花蕾どり収穫技術標準作業手順書」

夏まきブロッコリーを増収「1穴2粒まきセル苗の2本植え栽培」

播種・育苗段階から栽培方法を工夫し、収量アップをめざす技術も開発されています。

新潟県農業総合研究所は、ブロッコリーの夏まき栽培において、ほ場に2本植えして栽植密度を高めることで収量の向上が図れることを実証しています。

72穴または128穴セルトレイを使用し、1穴に2粒まきすると、通常の1粒まきと同様に約4週間で定植適期の苗が得られます。その後、2粒まきの苗を株間を通常より広く取って2本植えします。

この方法により、平成30年(2018年)から令和2年(2020年)まで3年間の収穫調査を行ったところ、慣行の1粒まき・1本植えの栽培と同等の花蕾の重さが確保でき、単収が15~30%程度向上するという結果が示されました。

2本植えすることにより、1本植えと比較して収穫までの日数は3~5日程度長くなりますが、2本のうち一方の株が極端に小さくなることはないことも明らかになっています。

ただし、この栽培方法は2本の密植を基本とするため、通常よりも病害の危険性は高まります。防除をしっかり行うことが重要です。

出典:新潟県「研究成果詳細解説 夏まきブロッコリーの1穴2粒まきセル苗の2本植え栽培による増収技術」

消費者ニーズの高いブロッコリーが指定野菜に加わることで、今後いっそうの安定供給が求められます。

本記事では、ブロッコリーの収穫タイミング・収穫方法を中心に、増収につながる新しい栽培技術を紹介しました。地域・環境に適した品種を選び、新技術も導入することで、反収を増やし、収益を向上させる参考にしてください。

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高山めぐみ

高山めぐみ

ライター・編集者。東京から長野県の農村地帯に移住したことで、農業がぐっと身近な存在に。さまざまなかたちで、地域の情報発信のお手伝いをしています。

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