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みかんのカメムシ対策!果樹カメムシ類の生態と農薬防除のポイント

みかんのカメムシ対策!果樹カメムシ類の生態と農薬防除のポイント
出典 : ヨコケン / PIXTA(ピクスタ)

みかんにカメムシが飛来すると、果実や新梢などの吸汁に伴い落果や不稔といった被害が生じます。果樹カメムシ類の防除では、早期発見と発生初期の農薬散布の実践が重要です。この記事では、みかんなどの果樹に発生するカメムシの生態・被害の実態や果樹カメムシの防除に使える農薬について解説します。

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果樹カメムシ類はみかん、ブドウ、桃、梅などの果樹・果実に吸汁して加害します。気温が高くなると果樹カメムシ類の活動は活発化し、柑橘類では5月頃から被害が出始まるため注意が必要です。

果樹カメムシは、ほ場外から連続的・断続的に侵入してくるため、ほ場内を十分に観察したうえで防除のタイミングを見極めることが大切です。

みかん農家の天敵、“果樹カメムシ類”の被害と生態

果実への吸汁によって収量・品質の低下を余儀なくされるため、果樹カメムシ類はみかん農家の天敵といわれています。ここでは果樹カメムシ類の種類・生態や、みかん果実被害の実態について解説します。

カメムシによるみかん果実被害の特徴

ユスのクサギカメムシ加害果実 吸汁された箇所がくぼんでいる

ユスのクサギカメムシ加害果実 吸汁された箇所がくぼんでいる
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

果樹カメムシ類の柑橘類への加害時期は、概ね、5月の開花期から10月下旬頃までです。最高気温が20℃以上の場合は11月まで加害活動が続きます。吸汁加害によって落花・落果や果実の変形がおき、減収につながる被害が生じます。

越冬した成虫が動き出す春は、新梢・蕾・幼果を吸汁加害しますが、発生程度が平年並ならば実害は生じないといわれています。しかし、越冬した成虫が多い年は、落花・落果がおきます。(後述しますが、発生程度については自治体の予察情報をよくチェックしてください。)

気温が高い時期に加害されると、著色ムラがでて、やがて落果していきます。収穫期近くに加害された場合は、落果は少ないものの、果皮に褐色斑や斑点状のくぼみができ、その部分の果肉が果皮にくっついたり、スポンジ状にたったりします。

果樹カメムシ類の生態

果樹カメムシ類の餌となるヒノキの毬果

果樹カメムシ類の餌となるヒノキの毬果
Khun Ta / PIXTA(ピクスタ)

果樹を加害するカメムシは約30種類といわれており、主要種はチャバネアオカメムシ・ツヤアオカメムシ・クサギカメムシの3種です。

これら果樹カメムシ類は、特独の生活史を持っていて、春に活動を始めるといろいろな樹木を放浪し(放浪期)、夏から秋にかけてヒノキやスギの毬果を餌に産卵・繁殖しては園地に飛来(増殖期)、冬には落葉下や常緑広葉樹の樹冠で越冬します(越冬期)。

放浪期
越冬した成虫は、春に動き出し、柑橘類のほか、桜や梅、桑、桃、ヤマモモ、梨などに寄生し、新梢や花、幼花を吸汁します。

増殖期
6月頃になると、ヒノキやスギに移動し、毬果を餌に産卵・繁殖します。産卵から成虫までの生育期間は約1ヵ月で、種類にもよりますが、年に1~3回成虫が発生するといわれています。

増殖した成虫は、強い風に煽られたり、餌となるヒノキやスギの毬果が足りなくなったりすると、果樹園地へ飛来して、10月頃まで加害が続きます。

越冬期
チャバネアオカメムシは落葉下で越冬しますが、ツヤアオカメムシは、柑橘類の樹上でも越冬するため、気づかないと次の年に収穫まで発生に悩まされることになります。クサギカメムシの越冬場所は大木の樹皮下や家屋で越冬します。

果樹カメムシ類の種類【写真付き】

果樹カメムシ類の主要3種の特徴や越冬場所を紹介します。

▼チャバネアオカメムシ

チャバネアオカメムシ成虫

チャバネアオカメムシ成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

チャバネアオカメムシは光沢のある緑色で翅は茶褐色、体長は10~12mmです。山林周縁部や常緑広葉樹林の落葉下で越冬しますが、越冬時には体色全体が周りの落葉と同じ暗褐色に変わります。

▼ツヤアオカメムシ

ツヤアオカメムシ成虫

ツヤアオカメムシ成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ツヤアオカメムシは体全体が光沢のある緑色で、体長は14~17mmです。常緑広葉樹(柑橘類を含む)の葉裏や樹冠内で越冬します。

▼クサギカメムシ

クサギカメムシ成虫

クサギカメムシ成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

クサギカメムシは茶褐色の地に暗褐色の斑紋があり、体長は13~18mmです。大木の樹皮下や家屋の板と板の隙間で越冬します。

【カメムシ対策】 みかんに使える農薬と、散布の実施時期

果樹カメムシ類の防除は、園地への飛来を一定程度認めたときに直ちに農薬散布するのが基本です。みかんのカメムシ防除に使える農薬の種類や散布時期・防除に適した時期を見極めるポイントについて解説します。

みかんのカメムシ防除に使える農薬例

みかんのカメムシ類防除では、合成ピレスロイド系殺虫剤またはネオニコチノイド系殺虫剤などが使用できます。散布後の降雨が予想される場合には、農薬の耐雨性が高い合成ピレスロイド系を選ぶようにします。

ただし、合成ピレスロイド系殺虫剤やネオニコチノイド系殺虫剤を繰り返し散布した場合、ハダニ類やカイガラムシ類が急増することがあるので注意が必要です。カメムシの防除と並行してハダニ類・カイガラムシ類の防除も検討しましょう。

みかんのカメムシ類防除に使える主な農薬を4つ紹介します。

※ここで紹介する農薬は2023年8月16日現在、「かんきつ」に対して登録のあるものです。実際に使用する際には、ラベルをよく読み、使用方法と使用量を守ってください。農薬の登録内容は、農薬登録情報で確認できます。

・スタークル顆粒水溶剤
ネオニコチノイド系の殺虫剤でジノテフランが有効成分です。果樹カメムシ類の吸汁を阻止する効果があり、収穫前日まで使用できます。「コナカイガラムシ類」「アブラムシ類」「コナジラミ類」にも効果があります。

・テルスターフロアブル
ピレスロイド系の殺虫剤でビフェントリンが有効成分です。作物表面の汚れが少ない一方で浸透性がないので、使用する際は葉裏まで丁寧に散布するようにします。収穫前日まで使用できます。「アブラムシ類」にも効果があります。

・アルバリン顆粒水溶剤
ジノテフランが有効成分で、速効性・残効性に優れているのが特徴です。収穫前日まで使用でき、「コナカイガラムシ類」「コナジラミ類」「ハモグリガ」「アブラムシ類」にも効果があります。

・アクタラ顆粒水溶剤
ネオニコチノイド系の殺虫剤でチアメトキサムが有効成分です。浸透移行性と耐雨性に優れており、アザミウマ類やアブラムシなどの害虫も同時に防除できます。収穫14日前まで使用でき、「コナカイガラムシ類」「アブラムシ類」などにも効果があります。

防除のタイミングは“発生したタイミング”

開花期のみかん 越冬したカメムシ類が園地に飛来し始める

開花期のみかん 越冬したカメムシ類が園地に飛来し始める
5x5x2 / PIXTA(ピクスタ)

前述したように、果樹カメムシ類はスギやヒノキの毬果を餌に産卵・増殖しては、園地に飛来します。そのタイミングは、天候やスギやヒノキの毬果の状況によって変わり、時期を特定することはできません。

そこで重要になるのが、園地を巡回して目視でよく観察することと、自治体や営農団体の病害虫予察情報をチェックすることです。

目視での観察は、果樹カメムシ類の活動が活発になる夕方に園地の隅々まで行います。特に、前年8月以降にカメムシが多発した翌年は、越冬成虫が多く、被害が拡大する傾向があるので、慎重に飛来状況を確認する必要があります。

飛来した果樹カメムシ類の雄が園地に定着すると集合フェロモンを放出して同種の仲間を呼び寄せてしまうので、飛来を確認したら直ちに、出来たら密度がまだ低いタイミングを狙うことが重要です。

そのため、予察情報でリスクが高いと分かっているときは、特に念入りに目視チェックをし、早め早めに防除を行います。

夏季のみかん園地

夏季のみかん園地
Yumi / PIXTA(ピクスタ)

飛来・加害を確認したら、農薬の再散布を

農薬の散布後に果樹カメムシ類の飛来や加害を再確認した場合には農薬の残効性がなくなったと判断して、園地全体に農薬の再散布を実施します。農薬の散布後に降雨が続いた場合も同様です。

ほかの園地に移動して生き残らないよう、できる限り広範囲を一括して農薬散布を行うようにします。

ただし、合成ピレスロイド系殺虫剤やネオニコチノイド系殺虫剤は天敵類への影響も大きく、連用するとハダニ類やカイガラムシ類が増加する恐れがあります。なるべく連用を避けたうえで、散布後の発生状況をきめ細かく観察することが大切です。

一部のカメムシには、黄色灯の物理的防除も有効

チャバネアオカメムシは波長580nm付近の黄色の光を忌避する習性があります。そこで、園地内に40wの黄色蛍光灯を10a当たり7~8本程度設置すると、高温期のチャバネアオカメムシの飛来防止に効果を発揮します。

ただし、チャバネアオカメムシ以外の果樹カメムシ類には効果がないので注意してください。夜間の気温が低い場合や秋に果樹カメムシ類の飛来が多い場合には、農薬による防除も並行して実施するようにします。

出典:和歌山県「環境保全型農業栽培技術指針(改訂版)」所収「果樹|病害虫防除」

秋のみかん園地

秋のみかん園地
Yumi / PIXTA(ピクスタ)

みかんが果樹カメムシ類に吸汁されると果実に着色ムラや褐色斑が現れ、品質・収量の低下につながります。カメムシ類の飛来時期は5~10月ですが、飛来を確認できた時点で迅速に農薬で防除することが重要です。

農薬には合成ピレスロイド系またはネオニコチノイド系殺虫剤を使用できますが、カメムシ類の飛来が長期間続く場合や農薬の散布後に降雨があった場合には改めて散布する必要があります。また、黄色灯での物理的防除はチャバネアオカメムシに限り有効です。

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舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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