【2023最新】大根の生産量ランキング! 有名産地の作型・戦略とは
大根の国内生産量は、作付面積とともに減少傾向にありますが、10a当たりの収量は増加しています。夏の大根需要に出荷のタイミングを合わせたり、各地の気候に向く品種と作型を取り入れることで、出荷量を伸ばす主要産地もあります。本記事では、こうした事例から生産量アップのヒントに迫ります。
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この記事では、大根の国内生産量の推移と、2023年時点の最新データによる都道府県別の生産量ランキングを紹介します。上位産地がどのように生産量を伸ばしてきたのかを、作型と戦略の具体例を挙げながら解説します。
大根の国内生産量および作付面積の推移
yama / PIXTA(ピクスタ)
国内における大根の生産量、作付面積、10a当たりの収量を見ていきます。
日本の大根生産量は減少傾向に
出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)|長期累年」よりminorasu編集部作成
大根生産量の推移を見ると、生産量は減少傾向にあります。2021年産の大根生産量(全国)は125万tで、1987年以前と比べて半分以下に減少しています。
生産量が減少している要因としては、漬物需要の減退や労働力不足から作物転換が図られたことなどが挙げられます。
作付面積は減っても反収は増加している
出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)|長期累年」よりminorasu編集部作成
生産量と同様に、作付面積も減少しています。作付面積は、1970年代は約7万ha以上あったのに対し、2021年は約3万haまで縮小しています。
一方、10a当たりの収量は増加しており、1970年代は3,500〜3,800kgだったことに対し、2021年では4,200kgまで増えています。
これは、栽培技術が向上したことで、少ない面積でも効率的に生産できるようになったためと考えられます。
【最新ランキング】 大根の生産量が多い都道府県TOP10
2021年の都道府県別の大根生産量(出荷量)ランキングは、以下の通りです。
大根の生産量ランキング(2021年産)
順位 | 都 道 府 県 | 生産量(万t) | 作付面積(ha) | 10a当たり収量(kg) |
---|---|---|---|---|
1 | 千葉 | 14.8 | 2,570 | 5,740 |
2 | 北海道 | 14.3 | 2,980 | 4,810 |
3 | 青森 | 11.4 | 2,770 | 4,130 |
4 | 鹿児島 | 9.3 | 1,970 | 4,700 |
5 | 神奈川 | 7.4 | 1,070 | 6,930 |
6 | 宮崎 | 7.0 | 1,730 | 4,060 |
7 | 茨城 | 5.5 | 1,160 | 4,780 |
8 | 新潟 | 4.9 | 1,310 | 3,740 |
9 | 長崎 | 4.6 | 663 | 6,890 |
10 | 群馬 | 3.3 | 781 | 4,200 |
出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)|確報|令和3年産野菜生産出荷統計」
生産量なぜ多い? 大根主要産地の作型と特長
生産量の多い都道府県は、地域の組織的な取り組みで栽培環境を整えたり、冷涼な気候を利用して夏どり大根の作付けを増やしたりと、生産量を増やす工夫をしています。
そこで、大根の主要産地より、各地域での生産の特徴や戦略を紹介していきます。
1.千葉県
写真提供:千葉県農林総合研究センター「べたがけ栽培の様子」
生産量1位の千葉県では、生産体制の整備とトンネル栽培などの栽培方法が普及したことで、高い反収を誇っています。
①栽培されている主な品種と作型
写真提供:千葉県農林総合研究センター「トンネル栽培の様子」
千葉県では、「福誉」「冬自慢」「春宴」「豊誉」をはじめ、数十種類の品種を栽培しています。
作型は10~6月どりが多く取り入れられ、県内最大産地の銚子市では、青首大根を8~3月に播種を行い、10~6月にかけて出荷します。
千葉県では、昭和50年代から行われている「トンネル栽培」の春どりや、5月どりが盛んに行われてきました。トンネル栽培とは、生育停滞を防ぐためにビニールをかぶせる栽培方法です。
近年はこれに加えて、晩抽性品種の登場で省力化が実現したため、5月どりでは不織布やビニールを用いた「べたがけ栽培」も増えています。べたがけ栽培に適した品種としては、「豊誉」「C8-658」「春かなで」などが挙げられます。
➁生産量が多い理由
千葉県の生産量が多い理由は、50年以上前から生産体制が整備されてきたためです。
主産地の銚子市をはじめとした千葉県の大根は、自家漬物用として昭和初期に栽培が始まったといわれています。1955年には秋系品種の栽培が始まり、商用として売られ始めたとされています。
その後、1966年に「秋冬大根」の産地指定を受けたため、栽培面積が拡大しました。これに伴い用水施設や農道が整備され、機械や資材の運搬体制が整備されていきました。
こうした動きも支えとなり、トンネル栽培が普及したことで、1986年に「春大根」の指定産地を受けることになりました。
また、トンネル栽培普及のおかげで、6~9月の高温期以外の出荷が可能になりました。無被覆栽培よりも労力がかかるため、1人が担当できる栽培面積は30aほどが限界ですが、気温が低い環境でも栽培ができます。
2.北海道
川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)
生産量2位の北海道では、大規模な農地と冷涼な気候を生かした夏期の栽培で、高い出荷量を維持しています。
①栽培されている主な品種と作型
北海道で栽培されている大根は、やや小型で太めの「青首大根」です。春夏まきでは「YR桜坂」「晩抽喜太一」「KSP-32」「貴宮」「夏番長」「夏つかさ」などの品種が栽培されています。晩夏まきは「かつみ」が多く採用されています。
播種は5~8月、収穫は7~10月に行われることが多い主流です。品種と地域に合わせて4期に作型が分かれます。
北海道における大根栽培の暦
作型 | 播種 | 収穫 |
---|---|---|
春まき | 5月上旬〜6月中旬 | 6月下旬〜8月中旬 |
晩春まき | 6月中旬〜7月上旬 | 8月上旬〜9月中旬 |
夏まき | 7月上旬〜8月上旬 | 9月中旬〜10月中旬 |
晩夏まき | 8月中旬〜8月上旬 | 10月上旬〜10月下旬 |
出典:北海道農業協同組合中央会「主要野菜の具体的な栽培管理」
➁生産量が多い理由
北海道の生産量が多い理由は、全国最大の作付面積と、冷涼な気候のためです。
大根の作付面積は2,980haと全国1位で、豊かで広大な土地を生かして大規模な作付けが行われています。北海道では多くの品種が栽培されているため、春から秋の長い期間に出荷体制を取ることができます。
大根は冷涼な気候を好むため、暖かい地方では夏期の栽培が難しくなります。北海道は、涼しい気候を生かして7~10月頃に出荷体制を取れることが強みといえます。ほかの温暖な産地と出荷時期をずらすことで販路を獲得し、高い出荷量をキープしています。
3. 青森県
生産量3位の青森県では、大根は作付面積と出荷量が最も多い野菜となっています。予冷施設の導入や高速道路の整備など、ハード面の強化によって出荷先が広範囲になり、遠くは九州まで出荷されています。
①栽培されている主な品種と作型
青森県で栽培される大根は青首大根が主流で、品種は「トップランナー」「春輝」「夏力」「夏の守」「夏つかさ旬」「秋街道」「秋師匠」「つや風パワー」など多種にわたります。
播種は3~8月ごろ、5~11月までが収穫期となり、最盛期は8~9月です。北海道と同様、夏場に出荷のピークを迎えます。
➁生産量が多い理由
青森県の大根生産量が多い理由は、冷涼な気候と環境に適した栽培技術を持つためです。
青森県では、北海道と同じく冷涼な気候を生かした栽培・出荷を行っています。ほかの温暖な生産地では栽培が難しい春夏大根を生産・出荷することで、出荷量を確保しています。
また、気候に応じた栽培技術も確立しています。
春先の気温が低い時期には、トンネル栽培を行います。一方、気温が上がる夏場には、涼しい高冷地で栽培を行っています。
栽培する場所や時期に適した品種と作型を採用しながら、高品質な大根を安定的に生産しています。
本記事では、2023年大根生産量ランキングと、上位の都道府県の品種や作型、生産量が多い理由を解説しました。主要産地では、作型を組み合わせて安定出荷を実現しています。
下記の記事では、大根農家の規模拡大と収益性向上について解説しています。収益アップのヒントになれば幸いです。
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田中翔
かつて経営情報誌の取材ライターを経験し、ここ数年は求人・不動産・企業経営メディアをはじめ複数ジャンルでライティングを担当。最近は経営者のインタビュー記事や経済系メディアで時事的なテーマを取り上げながら、「書いて伝える充実感」を日々かみしめている。「食」を生み出す農業に、微力ながら書くことで少しでも貢献できれば、というのが現在の心境。