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【プロ向け】大根のおすすめ品種は? 作型・特徴別の品種一覧

【プロ向け】大根のおすすめ品種は? 作型・特徴別の品種一覧
出典 : 天空のジュピター / PIXTA(ピクスタ)

国内の大根品種は数百種にも及ぶといわれており、栽培のしやすさや収益性が異なります。この記事では、秋どり・冬どり・春どり・初夏どりの栽培におすすめな大根品種のほか、注目の新品種や伝統野菜としてブランド力を持つ「聖護院だいこん」「源助だいこん」についても解説します。

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大根栽培における品種選定のポイント

大根の品種は、地域の特性や作型ごとの耐病性・抽だい性、収穫時の秀品率のよさを考慮して選定する必要があります。

大根の生産量・出荷量上位の県が栽培する主な品種は表のとおりです。

大根の主要産地と主な作付品種

都道府県品種名
北海道夏つかさ
貴宮
夏つかさ旬
晩々G
蒼春
青森県つや風パワー
トップランナー
春輝
千葉県福誉
冬自慢
春宴
鹿児島県役者奉行
冬侍
春の砦
宮崎県T-734
漬誉
YR日向理想
耐病総太り
耐病千切り

出典:エーリック農畜産機構「2022年9月号 だいこんの需給動向」よりminorasu編集部作成

大根栽培で収益を上げるには、栽培しやすく安定した収量が見込める品種を選ぶことが重要です。
大根を主力作物とする農家・農業法人は、作型別に複数の品種を栽培し、長期的に収穫できるよう作付けしていることがほとんどです。
加えて、消費者を引き込む要素として、食味のよさやブランド力のある品種を選ぶことも必要になります。

▼大根の主要産地の戦略や作型については、以下の記事をご覧ください。

【作型別】プロ向け! 大根のおすすめ品種一覧

大根の収穫

四季写彩 / PIXTA(ピクスタ)

大根生産量日本一の千葉県の情報をもとに、「秋どり」「冬どり」「春どり」「初夏どり」の作型に適したおすすめの大根品種を紹介します。

千葉県(温暖地) 大根の作型と品種一覧

作型播種時期
収穫時期
おすすめ品種
秋どり播種7〜8月
収穫10〜11月
福誉
夏の翼1
夏つかさ
冬どり播種8〜9月
収穫11〜2月
冬自慢
冬馬力
冬神楽
青誉
春どり播種1〜3月
収穫4〜6月
春宴
春かなで
豊誉
蒼の砦
初夏どり播種4〜5月
収穫6〜7月
喜太一
トップランナー

※おすすめ品種は主に露地での栽培品種を参考にしています

出典:
農林水産省「各都道府県において主に栽培されている品種」所収「千葉県で主に栽培されている品種」
公益社団法人 千葉県園芸協会 「広報誌「千葉の園芸」」所収「令和4年(2022年)7月号|千葉県野菜品種審査会について」
JA全農ちば「JAちばみどり銚子野菜連合会(だいこん/初夏)」
千葉県「令和3年(2021年)度試験研究成果普及情報課題一覧」所収「試験研究成果普及情報 |5月どりダイコンの優良品種」
千葉県「技術指導資料」所収「べたがけによる春どり露地野菜の栽培法」

1.「秋どり」に適した大根品種

秋どり大根は、中間地で播種を8〜9月頃に行い、10〜11月頃にかけて収穫します。秋から冬にかけての需要が増える時期に収穫されるため、高値かつ安定した取引が期待できます。

福誉(ふくほまれ)

福誉は萎黄病やモザイク病、軟腐病に耐性を持つ秋どり大根です。外観は、側根が細く、なめらかでツヤがあり、青首部分は根長の約1/3を占め、収穫時は根端まで肥大する総太り型です。

小葉なので密植でき、多肥栽培でも葉勝ちせず、均一性のよい大根の収穫が期待できます。

夏の翼

夏の翼は、軟腐病に強く、耐暑性に優れた夏秋どり大根です。外観の青首部分は色合いが鮮明で、全体的にほどよいツヤがあります。

全量基肥がベースとなる一方、肥効が弱いと肥大しないため、追肥は生育や播種期に応じて、最終間引き直後に施用してください。高温による生育不良が起こりにくく、曲がり根の発生も少ないことから秀品率の高さが期待できる品種です。

夏つかさ

夏つかさは、千葉県以外にも、北海道や鹿児島県、東京都などで栽培されている秋どり大根の一種です。耐暑性を持ち、萎黄病やウイルス病、生理障害に強いことが特徴です。

公益財団法人 東京都農林水産振興財団の資料「夏まき10月中下旬どりダイコンの品種比較」では、根の大きさや形状の揃い、肌質、内部の白さなど良好であることが報告されています。

出典:
ヴィルモランみかど株式会社「福誉」
タキイ種苗株式会社「品種カタログ|夏の翼ダイコン」
公益財団法人東京都農林水産振興財団「単年度成果(令和4年度(2022年))」所収「 夏まき10月中下旬どりダイコンの品種比較」

2. 「冬どり」に適した大根品種

雪が積もった大根畑

PRock / PIXTA(ピクスタ)

冬どり大根は、9月頃に播種が行われ、収穫は11〜1月頃になります。冬どり大根の栽培に取り組むなら、寒害に強い品種を選ぶことが必須です。

冬自慢

冬自慢は、収穫適期を過ぎてもす入りの心配が少ない、冬どりに適した大根です。天候不順の影響を受けにくく、火山灰土や砂壌土、粘土質土壌など、土質を選ばずに栽培できます。

中間地・暖地の栽培では、播種を9月中にできれば、年内どりを実現することが可能です。冷涼地では、とう立ちの発生を防ぐために、7月下旬〜8月中旬の播種が推奨されます。ゆっくりと肉がついていくため、肥大しすぎることなく長期間にわたる収穫を実現できます。

冬馬力

冬馬力は、晩抽性があり、中間地では露地栽培やマルチ栽培の越冬どりに加え、早春どりのトンネル栽培にも順応できることから、2作型での栽培に適した大根です。

肥大性がよく、早期収穫できることも特性の1つです。厳寒期の収穫時には、肩こけが起こりにくいため、秀品率のよさが期待できます。

冬神楽(ふゆかぐら)

冬神楽は、在ほ性・晩抽性に優れ、曲がり根の発生が少なく、均等な形状で収穫できる冬どり大根です。早播きすると葉勝ちになる傾向があるため、播種するタイミングには注意してください。

土作りでは、堆肥などの有機物を用いて、保水性・排水性のバランスをよくすることが重要です。

青誉(あおほまれ)

青誉は、葉の耐寒性が高く、厳寒期においても葉枯れの症状が軽微であり、安定した根長で収穫できます。総太り型の品種となり、横縞症やワッカ症が起こりにくく、曲根も少ない特徴を持ちます。

十分な根長を得るには、生育終盤に追肥し、抽根部の生育を促すことがポイントです。中間地の冬どり栽培では、短根化を抑制するためにマルチ被覆をすることで、秀品率が向上します。

出典:
株式会社 サカタのタネ 「ダイコン 冬自慢」
株式会社 サカタのタネ 「ダイコン 冬馬力」
タキイ種苗株式会社「品種カタログ|冬神楽」
ヴィルモランみかど株式会社「青誉」

3. 「春どり」に適した大根品種

春どり大根の播種時期は、10月〜2月が目安となり、収穫は3〜5月頃にかけて行います。晩抽性の強い品種を選べば、べたがけのみで栽培できるため、資材コストをかけずに取り組むことが可能です。

春宴(はるうたげ)

春宴は、極晩抽性で根部のひげ根黒変症やしみ症状の発生が少なく、根部障害が起こりにくい春どり大根です。適応作型が幅広く、冬播きのトンネルからべたがけマルチ、秋播きトンネル、露地越冬栽培まで適応している品種です。

根の肥大・肌ツヤがよく、す入りも遅いため、バランスのよい総太り大根が収穫できます。葉の生育が旺盛なため、冬播きトンネルの場合は換気を早めに行い、施肥をやや控えめにすることが栽培するポイントになります。

春かなで

春かなでは、尻づまりがよく、低温伸長性に優れ、秀品率の高さが期待できる春どり大根です。

ほかの春どり品種と比べて生育がゆるやかであることから、肥料は基肥を主体とし、生育初期から肥料を効かせるように施肥することがおすすめです。

播種のタイミングでは、中間地・暖地およびハウス栽培の場合11〜12月。トンネル・マルチ・べたがけ栽培では、1月中旬〜3月中旬が適しています。寒高冷地であれば4〜5月に播種することも可能です。

豊誉(とよほまれ)

豊誉は、「第71回全日本野菜品種審査会」にて、1等特に選ばれている春どり大根です。腐敗病に耐性を持ち、収穫時の根重も期待できることに加え、肌ツヤがよく、曲根など少なく見た目も優れた品種となっています。

気候の変化に鈍感であることから、気温や地温に影響されず、栽培しやすいことも特徴です。晩抽性と耐暑性を兼ね備えていながらも、秋冬品種に匹敵する品質の高さを持つ大根です。

蒼の砦(あおのとりで)

蒼の砦は、極晩抽性であり、尻づまりがよく、肥大してくれる春どり大根です。春どりの品種の中でも耐暑性に優れ、収穫期に高温であってもバランスの取れた形状での収穫が期待できます。

耐暑性を持つ一方、無理な遅播きは生理障害が起こるリスクがあるので注意してください。播種時期は中間地なら2〜3月、冷涼地なら4〜5月になります。

出典:
雪印種苗株式会社「商品情報|春宴」
丸種株式会社「ダイコン」所収「春かなで」
千葉県「試験研究成果普及情報」所収「5月どりダイコンの優良品種(第 71 回全日本野菜品種審査会)」
ヴィルモランみかど株式会社「豊誉」
ナント種苗株式会社「金色羅王」P135

4. 「初夏どり」に適した大根品種

土から顔を出した収穫間近の大根

CaptainT / PIXTA(ピクスタ)

初夏どり大根は1〜4月頃に播種を行い、5〜6月頃に収穫します。初夏どり大根を栽培するなら、晩抽性とともに耐暑性に優れた品種を選ぶことが欠かせません。

喜太一(きたいち)

喜太一(きたいち)は、赤芯症や空洞症、萎黄病が起こりにくい、初夏どり大根です。す入りとともにとう立ちが遅く、均一性のよい大根を収穫できることが期待できます。

冷涼地の播種時期は、3〜6月です。中間地・暖地では、2月中旬〜4月初旬にかけての播種が推奨されます。ひげ根が細く、洗浄・出荷調整しやすいことから、扱いやすい初夏どり大根となっています。

トップランナー

トップランナーは、晩抽性で揃いがよいことから秀品率の高さに期待できる初夏どり大根です。

年内播きのトンネル栽培は短根になりやすい傾向があるので、地域ごとに適した時期に播種することが重要です。不織布を2重被覆することでとう立ちが防げます。萎黄病などの病害へ高い耐性を持ち、吸肥力も安定しており、土壌を選ばずに栽培できます。

出典:
雪印種苗株式会社「商品情報|喜太一」
タキイ種苗株式会社「品種カタログ|トップランナー」

高付加価値で差別化も? 大根の新品種&伝統品種

大根の収穫 青首大根の収穫

CHAI / PIXTA(ピクスタ)

大根を新たに栽培するうえで欠かせないのが、ほかの農家・農業法人と差別化できるポイントを作ることです。一般に流通している品種を選んでしまうと、薄利多売の要因になりかねません。

差別化を図る施策としては、新品種や伝統品種の栽培を検討することも1つです。ここでは、収益性を高めたい農家・農業法人におすすめの新品種・伝統品種の大根を紹介します。

育てやすく食味も良好!? 注目したい大根の新品種

近年開発された大根の新品種では、生理障害や病害に耐性を持ちながら、肥大性に優れ、食味もよいものが登場しています。注目されている大根の新品種を3つ紹介します。

夏秋自慢(かしゅうじまん)

夏秋自慢は、高温期の栽培においても高い秀品率が期待できる、サカタのタネが開発した新品種の大根です。高温期に起こりやすい黒芯症やコブ症、萎黄病などの生理障害・病害に耐性があります。

従来の夏品種に比べ、温度に鈍感かつ低温伸長性や肥大性に優れていることから、初秋播きの大根としても栽培可能です。収穫後に起こりやすい青変症を発症しにくいため、生産者から流通事業者、加工業者まで取り扱いやすい品種です。

早生涼太(わせりょうた)

早生涼太は、秋型で肥大が早く、低温期の栽培で播種後65日程度で収穫できる秋どり大根の新品種です。生育が旺盛なため、適期播きでは過度な施肥は避けるようにしてください。

冷涼地では、マルチ・露地のどちらでも栽培できる一方、中間地・暖地は地温の上がりすぎを防ぐために、露地栽培が推奨されます。気温の変化が激しい秋にも安定した収穫が期待できます。

悠白(ゆうはく)

悠白は、加工用の品種として開発された秋・冬どり大根です。たくあんに適した品種で、大根独特の風味や辛味成分(グルコラファサチン)を含まないことが特徴です。

黒斑病や黒斑細菌病などの病害に強く、耐寒性にも優れています。また、悠白と似た新品種では、おろしやつまなどの生食加工に適した品種「サラホワイト」があります。

出典:
株式会社 サカタのタネ 「ダイコン 夏秋自慢」
雪印種苗株式会社「商品情報|早生涼太」
農研機構「品種詳細|悠白」
農研機構「品種詳細|サラホワイト」

伝統野菜で地元農業を活性化! 再注目される在来品種の例

聖護院大根

masa / PIXTA(ピクスタ)

地域に根付く伝統野菜を栽培し、地元農業の活性化を図ることで収益を上げている農家・農業法人も存在します。新たに大根を栽培するなら、京野菜や加賀野菜などのブランド力を持つ品種を選ぶことも1つの手段です。

ここでは在来品種の大根を3つ紹介します。

練馬大根

練馬大根は、江戸時代から練馬周辺で栽培されてきた伝統野菜の1つです。現在主流となっている青首大根とは違い、白首大根であることから地中深くに根を張る特性を持ちます。

練馬大根の生産量は、昭和以降に激減しました。しかし、練馬大根の流通を復活させるべく、練馬区が主体となり活動しており、2019年時点では年間1万4千本が生産されています。

▼練馬大根の事例については、以下の記事もご覧ください。

聖護院だいこん

聖護院(しょうごいん)だいこんは、京野菜の中でも栽培が盛んに行われている秋冬どり大根です。実の詰まりのよさが特徴である一方、収穫時には割れやすいため、丁寧に扱うことが欠かせません。

丸々とした美しい形に栽培するには、ほ場の天地返しから土寄せ、定期的な施肥が重要です。京都府内のほぼ全域で栽培されており、京野菜の顔として京阪神から首都圏へも出荷しています。

源助だいこん

源助だいこんは、石川県金沢市を代表する加賀野菜の一種に認定されている大根です。播種に適した時期は、8月下旬〜9月上旬にかけてと短いスパンです。

病気に強い特徴がある一方、すが入りやすいことに加え、栽培しやすい青首総太大根の登場により、生産量は激減しました。品質は気象条件に大きく左右されることから、天候をチェックしながら施肥のタイミングや回数、収穫する時期を見極めることが重要です。

出典:
独立行政法人農畜産業振興機構「【まめ知識】野菜のいろいろ「練馬大根」」
東京都農業協同組合中央会「江戸東京野菜について|練馬ダイコン」
独立行政法人農畜産業振興機構「京都の伝統野菜を活かしたブランド野菜の振興と現状」
京都農業共同組合「京の産品図鑑|聖護院だいこん」
京都市役所「聖護院だいこん」
独立行政法人農畜産業振興機構「【第一線から】三代目に受け継がれた伝統野菜「源助だいこん」~石川県金沢市 松本充明さん~」
金沢市農産物ブランド協会「加賀野菜|品目紹介|源助だいこん 松本 充明さん」

湘南三浦半島の冬の風物詩名産大根畑

Tony / PIXTA(ピクスタ)

売上を増やすために大根を栽培する場合は、作型や地域性を加味して品種を選ぶことが基本です。加えて、新品種を扱ったり、独自のブランドを確立したりすることで、差別化が図れ、収益性の向上につながります。

新たな主力作物として大根を検討する際には、販売価格や消費者ニーズにも着目してみてください。

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相馬はじめ

相馬はじめ

農業×SEOに特化した専業Webライター。農業法人に正社員として8年間勤めた経歴を持つ。これまでに携わった作物は「キャベツ・白菜・レタス・長ネギ・馬鈴薯・米・麦・そば」。得意な執筆ジャンルは農業・音楽・転職など多岐にわたる。強みはコミュニケーション力の高さと、誰とでも打ち解けられること。minorasuでの執筆以外では、農業初心者に向けたブログ『農業はじめるなら見るブログ』を運営中。https://hajimete-hirogaru.com/

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