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飼料自給率向上へ! 飼料用作物を導入する農家・地域のメリット

飼料自給率向上へ! 飼料用作物を導入する農家・地域のメリット
出典 : マハロ / PIXTA(ピクスタ)

世界的な穀物価格高騰・円安・海上運賃上昇などの影響で、輸入飼料に頼っていた日本の畜産は大きな打撃を受け「飼料自給率」の低さが問題となっています。国は支援策として、飼料用作物の作付けや転換を推進しています。本記事では、飼料自給率の向上が求められる背景、飼料作物の導入メリットや栽培の注意点を解説します。

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経営規模拡大や新規作物の導入を検討している農家にとって、需要の高い飼料用作物は、新規に取り組む作物として重要な選択肢の1つです。飼料自給率の現状や飼料用作物の種類・特長を把握した上で取り組みを進めてください。

【2024年最新】 日本の飼料自給率の現状

日本における飼料自給率の推移を示します。

出典:農林水産省 「飼料:基本情報」所収「飼料をめぐる情勢 令和6年(2024年)3月」よりminorasu編集部作成

飼料自給率は、2000年度から2022年度まで25〜28%と低水準で横ばい状態です。内訳をみると、乾草・サイレージ・稲わらなどが含まれる「粗飼料」の自給率は76〜79%、とうもろこし・大豆油かす・こうりゃん・大麦などの「濃厚飼料」の自給率は11〜14%です。

そもそも、日本の飼料自給率が大幅に低下した原因としては、1980年代に入って酪農で高泌乳牛の多頭化が進んだことにより、濃厚飼料の輸入依存度が高まったことが挙げられます。

また、同時期にロールベーラの出現によりとうもろこし栽培面積の減少に拍車がかかったことも考えられています。

浮き彫りになった“輸入依存”のリスク

出典:農畜産業振興機構 「畜産物の需給関係の諸統計データ」所収「配合飼料の価格動向|工場渡価格」よりminorasu編集部作成

このように日本の畜産経営では、1980年代から粗飼料の自給率が低下し、濃厚飼料の原料となる穀物への輸入依存が続き、その不安定な飼料供給構造が長年問題視されてきました。

特に、2008年の原油価格の高騰を契機とした穀物価格の高騰により、自給飼料生産の重要性が再認識されることになりました。

さらに2020年以降、ウクライナ情勢に伴う穀物流通量の減少、中国などでの穀物の需要増、ロシアや中国による輸出規制などの世界情勢の変化に、深刻な円安が重なったことで、配合飼料価格は急激に上昇しています。

こうした状況から、輸入飼料への過度な依存が畜産経営を不安定にすること、ひいては食料の安定供給を脅かすリスクが改めて浮き彫りになりました。

飼料自給率の向上をめざす日本

畜産物の持続的な生産を実現するために、国は2030年度までに国産飼料の割合を粗飼料で100%、濃厚飼料で15%、飼料全体で34%まで上げることを目標に掲げ、さまざまな対策を講じています。

例えば、粗飼料においては草地の生産性向上や飼料生産組織の運営強化など、濃厚飼料においてはエコフィードや飼料用米の利用拡大などを推進しています。

飼料用作物を導入すべき? 農家・地域のメリット

飼料用作物を導入することで農家にとってもさまざまなメリットが期待できます。例えば飼料用米であれば、水田をそのまま利用できて取扱いしやすいこと、耕作放棄地の解消になること、また水稲栽培に戻すことが容易であることなどが挙げられます。

また、支援対象の作物であれば、国や自治体による補助金を活用できる点も、飼料用作物導入の大きなメリットです。

さらに、地域ぐるみで耕畜連携を進めれば、耕種農家は安定的な収入確保・堆肥の受給というメリットを、畜産農家は安定的な飼料の受給や地域内での堆肥供給というメリットを享受でき、地域全体の活性化につながることも期待できます。

ただし、耕種農家自身で販売先となる畜産農家を探さなければならない場合があることや、多収・低コスト生産を実現しなければ収益が上がらない可能性があります。

飼料用作物の例とそれぞれの特徴

主に国内で生産される代表的な飼料用作物である「稲発酵粗飼料(稲WCS)」「飼料用米」「青刈りとうもろこし(デントコーン)」「子実とうもろこし」について、それぞれの導入メリットや栽培時の注意点を解説します。

稲発酵粗飼料(稲WCS)

稲藁ロール

ライダー写真家はじめ / PIXTA(ピクスタ)

稲発酵粗飼料は、稲の穂と茎葉を丸ごと刈り取り乳酸発酵させた、乳用牛や肉用牛
の飼料です。稲ホールクロップサイレージ(Whole Crop Silage)ともいい、稲WCSと略されます。

北海道から九州まで、各地域での栽培に適した稲発酵粗飼料用品種(WCS用稲品種)が育成されており、食用稲品種と比較した場合、稲株全体の乾物収量と可消化養分総量(TDN)※が高いという特徴があります。
※飼料のエネルギー含量を示す単位のひとつで、飼料中に含まれる家畜家禽によって消化吸収される養分量を合計したもの

<導入メリット>
補助金の交付が受けられる
「水田活用の直接支払交付金」が活用できます。交付単価は10a当たり8万円です。

対象となる条件を満たせば、「畜産クラスター事業」や「強い農業づくり総合支援交付金」も受けられます。いずれも補助率は、稲WCSの収穫に必要な機械導入や、調製・保管施設整備などに要した費用の1/2以内です。

主食用稲の栽培技術・機械を流用できる
稲WCSの基本的な栽培技術は、主食用稲とほぼ同じで、機械を新たに購入することなく、そのまま使用可能です。

<栽培体系の例>
米の品質を気にする必要のないWCS用稲の作期・作型は、主食用稲に比べると柔軟な設定が可能です。ただし、収穫期が主食用稲や他の作物と重ならないようにすること、収穫期が多雨時期に重ならないようにすることなどに注意が必要です。

「きたげんき」「夢あおば」「モグモグあおば」「ルリアオバ」など、北海道から九州まで、各地域に適したWCS用稲品種があります。
※上記の品種はいずれも登録品種です。生産・販売(譲渡)などを行うには育成者権者の許諾が必要です

出典:一般社団法人日本草地畜産種子協会「技術情報」所収「稲発酵粗飼料生産・給与技術マニュアル第7版(R2.3)」

<栽培のポイント・注意点>
WCS用稲栽培の基本は主食用稲と同様ですが、TDNの収量を増やすことと飼料栄養価・サイレージ品質を高めることが栽培目標となる点が異なります。多肥栽培・直播栽培などを積極的に取り入れ、多収・栽培コスト削減に向けて努力することが求められます。

飼料用米

飼料用米の水田

田舎の写真屋/ PIXTA(ピクスタ)

飼料用米とは、水田で栽培できる飼料用の米のことです。とうもろこしと同等の栄養価がある優れた家畜飼料として増産が推進されています。

<導入メリット>
補助金の交付が受けられる
「水田活用の直接支払交付金」が活用できます。交付単価は10a当たり8万円(標準単収値の場合、2024年産から段階的に引き下げ)です。

対象となる条件を満たせば、「畜産クラスター事業」や「強い農業づくり総合支援交付金」も受けられます。いずれも補助率は、飼料用米の保管・加工・給餌などに必要な機械導入や、調製・保管施設整備などに要した費用の1/2以内です。


主食用米の栽培体系と同じで取り組みやすい
田植えから収穫まで、主食用米の栽培体系と同じため、新たな農機具を準備する必要がなく容易に取り組むことが可能です。また、排水不良田・未整備田でも作付け可能なため、農地の有効活用にもつながることが期待できます。

<栽培体系の例>
各地域の栽培時期は主食用米と同様です。ただし、飼料用米を主食用米と同時に作付けする場合は、主食用米の栽培作業と重ならないように品種や作期・作型を選定する必要があります。

<栽培のポイント・注意点>
直播栽培・乳苗栽培・疎植栽培など、低コスト栽培技術を導入することにより、生産費をできる限り引き下げるのが収益化のポイントです。また、多収品種の多肥栽培によって収量を増やし生産費を削減する工夫も必要です。

▼飼料用米について、詳しくは以下の記事も参照してください。

青刈りとうもろこし

デントコーン

kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)

青刈りとうもろこしは、飼料用とうもろこし(主にデントコーン)を完熟前に収穫し、茎・葉・実のすべてをサイレージ化した、主に乳牛用の粗飼料です。粗飼料でありながら栄養価が高く、濃厚飼料の使用量低減にもつながることから、酪農経営においてとても重要な飼料です。

<導入メリット>
補助金の交付が受けられる
戦略作物助成として、「水田活用の直接支払交付金」の対象であり、交付単価は10a当たり3.5万円です。そのほか、青刈りとうもろこしは「飼料自給率向上緊急対策事業」や「畜産クラスター事業」の対象になっており、条件を満たせば各種補助を受けることが可能です。

酪農家からのニーズが高い
酪農経営が大規模になるほど飼料生産に手が回らず、輸入飼料を購入して需要を満たしています。しかし、輸入飼料の価格が継続的に上昇していることから、青刈りとうもろこしを含む国産飼料に注目が集まっており、酪農家のニーズが高い現状があります。


栽培労力削減・土壌改善が期待できる
青刈りとうもろこし栽培は水管理が不要で多くの作業を機械化できることなどから、大幅な栽培労力の削減が期待できます。また、栽培時にはとうもろこしが根を深く張るため、ほ場の物理性を改善し、連作障害を防止することも期待できます。

<栽培体系の例>
主な栽培体系は以下の通りです。
・青刈りとうもろこし単作
・冬作飼料作物(イタリアンライグラス・ライ麦など)との二毛作
・青刈りとうもろこしとソルガムとの混播
・水稲や大豆・麦との輪作・西日本などの温暖な地域では二期作も可能

<栽培のポイント・注意点>
2023年以降、「水田活用の直接支払交付金」を受けるためには、少なくとも5年に一度は水張りをする必要があります。とうもろこしは湿害に弱いため、交付金を受け取りながら収量を確保するためには、十分な排水対策を施してください。

▼飼料用とうもろこしについて、詳しくは以下の記事も参照してください。

子実とうもろこし

子実とうもろこしとは、とうもろこしを収穫後、子実のみを取り出し乾燥させて作る代表的な濃厚飼料であり、牛だけではなく豚・鶏などにもエサとして与えることが可能です。

<導入メリット>
補助金の交付が受けられる
戦略作物助成として、10a当たり3.5万円の「水田活用の直接支払交付金」の対象となります。ただし、2023年以降、この交付金を受けるには5年に一度以上の頻度で水張りをしなければなりません。

また、 「水田農業高収益化推進計画」に位置付けられた産地においては、「畑地化促進助成」として、10a当たり1.0万円の「子実用とうもろこし支援」を受けられます。

このほか、子実とうもろこしは「 飼料自給率向上緊急対策事業」や「畑作物産地形成促進事業(旧・水田リノベーション事業)」の対象作物にもなっており、条件を満たせば所定の補助を受けることが可能です。

低労力栽培・土壌改善が期待できる
子実とうもろこし栽培に必要な労働時間は、水稲の約1/20と非常に少なく、限られた労力で栽培規模を拡大することに適した作物です。

また、子実とうもろこしを水稲や小麦との輪作体系に組み込むことで、連作障害の防止はもちろん、ほ場の排水性・土壌環境の改善による、後作の収量増も期待できます。

<栽培体系の例>
水稲や大豆・麦との輪作体系を組むのが一般的です。国内における子実とうもろこしの主な産地は北海道と東北地方で、北海道の栽培時期の目安は、播種が4月下旬~5月上旬、収穫が10月上旬~10月下旬です。

東北地方の栽培時期の目安は、北部の播種が5月上旬~中旬、収穫が9月下旬~10月中旬、南部の播種が4月中旬~5月中旬、収穫が9月中旬~10月下旬となります。

<栽培のポイント・注意点>
青刈りとうもろこしと同様に子実とうもろこしも湿害に弱いため、「水田活用の直接支払交付金」を受けるために水張りを行う場合は十分な排水対策が必要です。

▼子実とうもろこしの栽培で期待できるメリットについては、以下の記事を参照してください。

世界的に飼料穀物の生産量や価格が不安定な状況の中、将来にわたって畜産経営を安定させるには、国産飼料の増産によって飼料自給率を向上させる必要があります。

そのためには水田転作などを利用して、「稲発酵粗飼料(稲WCS)」「飼料用米」「青刈りとうもろこし」「子実とうもろこし」などの生産量を増やすことが求められています。

国による交付金などの支援も活用して、地域で協力し合って、積極的に飼料作物の導入に取り組みましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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