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飼料用とうもろこし栽培に使える補助金・助成金一覧【令和5年度最新】

飼料用とうもろこし栽培に使える補助金・助成金一覧【令和5年度最新】
出典 : kikisorasido/ PIXTA(ピクスタ)

国産飼料への需要の高まりと、水田活用の推進という2つの局面から、田畑輪換または畑地化による飼料用とうもろこしの生産が推進されています。国や都道府県では支援金制度などを設けて、飼料用とうもろこしの生産に取り組む農家をサポートしています。

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飼料用とうもろこし栽培への取り組みは、複数の補助金制度の対象となる場合があります。本記事では、飼料用とうもろこし栽培を対象とする補助金制度の一覧を紹介するとともに、栽培を始めるに当たって注意すべきポイントについて解説します。

世界的に需要が高まる「飼料用とうもろこし」

飼料用とうもろこし ほ場

kikisorasido/ PIXTA(ピクスタ)

世界的に穀物価格の高騰が続く状況の中、輸入に頼っていた飼料原料の値上がりが畜産農家の経営を直撃しています。さらに、とうもろこしの主要生産地であるウクライナが、ロシア侵攻の影響で生産・輸出ともに困難になっており、事態は悪化する一方です。

配合飼料工場渡価格の推移

出典:農畜産業振興機構 「畜産物の需給関係の諸統計データ」所収「配合飼料の価格動向|工場渡価格」よりminorasu編集部作成

こうした世界情勢が今後も続くと考えられることから、現在、国産飼料の需要が急増しています。また、国内の酪農経営も大規模化が進んでおり、飼料生産まで手が回らない畜産農家も少なくありません。そこで、水田を活用した飼料用作物の生産が推進されています。

国産飼料は、粗飼料と濃厚飼料に分けられます。

▼粗飼料

  • 乾草
  • サイレージ:牧草、青刈りとうもろこし、稲発酵粗飼料
  • 放牧利用
  • 稲わら
  • 野草

▼濃厚飼料

  • 穀物:子実とうもろこし、飼料用米など
  • エコフィード:パンくず、豆腐粕・糟糠類・かす類:ふすま、ビートパルプ、大豆油かす、菜種油かすなど
  • そのほか:動物性飼料、油脂など

中でも、飼料用とうもろこしは、牛が好み、栄養価も高いため、高い需要があります。

農家にとっては、水田輪換畑として作付けすれば、根を深く張って土壌物理性の改善や連作障害の防止に役立つ、水管理が不要で労働力・労働時間が大幅に削減できるなど、多くのメリットが期待できます。

そのうえ、交付金を活用することで、飼料用米などの転作作物とほぼ同等の所得が見込めます。

▼10a当たり収入比較例

  • 主食用米:3.3万円
  • 大豆:4.3万円(戦略作物助成10a3.5万円含む)
  • 子実トウモロコシ:3.5万円(戦略作物助成と子実用トウモロコシ支援4.5万円含む)

出典:一般社団法人 農協協会「子実用トウモロコシ 労働時間当たり所得 主食用の20倍 農水省試算(2022年2月7日)」

国も積極的に推進しており、飼料用とうもろこし栽培の導入に活用できる補助金は複数あるので、それらも加味して作付けを検討してみてください。補助金・助成金を活用するためのポイントは最後に紹介します。

飼料用とうもろこしに使える補助金・助成金一覧(令和5年度)

飼料用とうもろこし 補助金 一覧

出典:
農林水産省「令和5年度畜産生産力・生産体制強化対策事業の公募について」所収「別紙7 飼料生産利用体系高効率化対策のうち国産濃厚飼料生産・利用拡大対策の事業細目及び具体的な手続き等について」
農林水産省「経営所得安定対策」 所収「令和5年度 経営所得安定対策等の概要 ―農業者の皆様へ―」よりminorasu編集部作成

飼料用とうもろこし栽培を対象とする補助金や事業には、主に次の4つがあります。

  1. 水田活用の直接支払交付金
  2. 畑地化促進事業
  3. 畑作物産地形成促進事業(旧・水田リノベーション事業)
  4. 畜産生産力・生産体制強化対策事業

それぞれの事業について解説します。

1.水田活用の直接支払交付金

水田転作の飼料用とうもろこし

田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)

支援の概要

水田の持つ優れた機能を最大限に活用することが重要であるとして、主に以下のような取り組みを支援する事業です。

・戦略作物助成:食料自給率・自給力の向上に寄与する麦、大豆、飼料作物、加工・米粉用米などの戦略作物の生産を支援
・畑地化促進助成:水田を畑地化して、高収益作物などの畑作物の栽培を定着させる取り組みを支援
・産地交付金:魅力的な産地づくりに関する取り組みを支援


これらの事業のうち、飼料用とうもろこしが対象となるのは、「戦略作物助成」と「畑地化促進助成」です。この2つの助成について、支給要件と交付額を次項で解説します。

出典:農林水産省「経営所得安定対策」所収「令和5年度 経営所得安定対策等の概要 ―農業者の皆様へ―」(P18~22ページ)

支給要件

水田活用の直接支払交付金の対象者は、販売目的で対象作物を交付対象水田で生産する販売農家・集落営農です。

ただし、令和5(2023)年から交付対象の水田の要件が厳格化されました。具体的には、令和9(2027)年までの5年間で一度も水張りをしない水田は助成対象外となります。

これには、転換作物が長期間定着している場合は畑地化として固定させ、田畑転換が機能している場合は5年以内のブロックローテーション構築を促す、という目的があります。

対象となる作物は以下の通りです。
・戦略作物助成:麦・大豆・飼料作物、加工用米、米粉用米、飼料用米など
・畑地化促進助成:高収益作物または麦、大豆、牧草などの飼料作物、子実用とうもろこし、そばなど
※産地交付金:対象作物は各都道府県でそれぞれ設定

産地交付金の対象作物は、ほ場のある市町村に問い合わせましょう。

飼料用とうもろこしは国設定の戦略作物に該当するため、対象となる水田の要件を満たしていれば、地域の差なく助成を受けられます。

5年以上水張りをしない場合は、畑地として固定し「畑地化促進助成」を受けるという選択肢もありますが、その場合は子実用とうもろこしのみが対象となります。

なお、「畑作物産地形成促進事業/コメ新市場開拓等促進事業(旧・水田リノベーション事業)」の対象となった面積は、この制度の対象面積から外れるので、併用はできません。

出典:農林水産省「経営所得安定対策」所収「令和5年度 経営所得安定対策等の概要 ―農業者の皆様へ―」(25ページ)

交付・補助金額

令和5(2023)年度予算では、飼料用とうもろこしが該当する「戦力作物助成」の「飼料作物」に対しては、10a当たり3.5万円が交付されます。「畑地化促進助成」の「子実用とうもろこし支援」では、10a当たり1万円の交付です。

畑地化促進助成には、子実とうもろこしを対象に含む「畑地化支援」と「定着促進支援」もありますが、趣旨は「畑地化促進事業」と同じため、次項で詳しく解説します。

▼水田活用の直接支払交付金制度について、詳細はこちらの記事をご参考ください

2.畑地化促進事業

支援の概要

「畑地化促進事業」は、「水田活用の直接支払交付金」の「畑地化促進助成」と併せて実施される事業です。水田を畑地化して、畑作物の作付けを定着させる取り組みを行う農家に対し、生産が安定するまで継続的に一定期間支援する事業です。

同時に、畑作物の産地づくりに取り組む地域に対し、畑地化に要する費用の一部を支援します。

出典:農林水産省「経営所得安定対策」所収「令和5年度 経営所得安定対策等の概要 ―農業者の皆様へ―」(24ページ)

支給要件

畑地化促進事業の対象者は、水田を畑地化して畑作物の本作化に取り組む農業者です。

対象作物は、「高収益作物」と「畑作物」に分けられ、支援内容はそれぞれ異なります。
・高収益作物:野菜、果樹、花きなど
・畑作物:麦・大豆・牧草などの飼料作物、子実用とうもろこし

※子実用とうもろこし以外の飼料用とうもろこしは対象外なので注意しましょう。

交付・補助金額

令和5(2023)年度予算では、子実用とうもろこしを対象に、「畑地化支援」として10a当たり14万円、「定着促進支援」として10a当たり2万円を5年間、または10万円を一括で交付します。

子実とうもろこしの播種

E&W / PIXTA(ピクスタ)

3.畑作物産地形成促進事業(旧・水田リノベーション事業)

支援の概要

「畑作物産地形成促進事業」は「コメ新市場開拓等促進事業」と併せて、産地と実需者が連携して、対象となる作物を低コスト生産する取り組みを支援する制度です。旧・水田リノベーション事業に当たります。

このうち畑作物産地形成促進事業は、飼料用とうもろこしのうち、子実用とうもろこしを対象としています。

出典:農林水産省「経営所得安定対策」所収「令和5年度 経営所得安定対策等の概要 ―農業者の皆様へ―」(25ページ)

支給要件

畑作物産地形成促進事業の対象者は、産地・実需協働プランに参画し、対象作物を作付けしている農家です。

子実用とうもろこしを栽培する場合、対象となる取り組みメニューには、次のようなものが挙げられます。
・排水対策
・傾斜均平作業
・堆肥の利用
・効果的な施肥
・生物農薬の活用など、化学農薬によらない病害虫対策
・難防除雑草対策
・化学肥料の使用量削減など

交付・補助金額

子実用とうもろこしを対象作物とする交付単価は、10a当たり4万円です。さらに、令和6(2024)年度に畑地化に取り組む場合は、10a当たり5,000円が加算されます。

4.畜産生産力・生産体制強化対策事業

子実とうもろこしの収穫機

Baloncici / PIXTA(ピクスタ)

支援の概要

「畜産生産力・生産体制強化対策事業」は、日本の畜産の生産基盤を強化することを目的とする事業です。

事業内容は「家畜能力等向上強化推進」や「繁殖肥育一貫経営等育成支援」など、畜産農家に向けたものがほとんどですが、そのうち「国産濃厚飼料生産・利用拡大対策」は、子実用とうもろこしなどの国産濃厚飼料の栽培を対象にしています。

国産濃厚飼料生産・利用拡大対策では、飼料作物として有望な子実用とうもろこしを含む国産濃厚飼料の生産拡大を目的としています。

そのため、新たな地域で子実用とうもろこしなどの生産体系の実証をしたり、先進地域において生産モデルを確立したり、子実用とうもろこしの種子を確保するための調査・検証といった取り組みを支援します。

出典:農林水産省「令和5年度畜産生産力・生産体制強化対策事業の公募について」所収「別紙7 飼料生産利用体系高効率化対策のうち国産濃厚飼料生産・利用拡大対策の 事業細目及び具体的な手続き等について 」

支給要件

国産濃厚飼料生産・利用拡大対策では「生産実証支援」、「生産モデル支援」、「子実用とうもろこしの種子確保に向けた調査」の3つに分けられて実施されます。

生産実証支援と生産モデル支援は、子実用とうもろこしなどの国産濃厚飼料を生産するに当たって必要な実証や、モデル確立への取り組みを支援対象としています。

子実用とうもろこしの種子確保に向けた調査は、子実用とうもろこしの国産種子を安定的に確保するために、種子生産について行う調査や検討、種子を生産するほ場の調査などを支援対象としています。

生産実証支援と生産モデル支援の事業実施主体は、農家個人ではなく、農協や公社などの生産者集団を対象としています。農事組合法人や、それ以外の農地所有適格法人なども該当します。

ただし、農家自身が組織する団体の場合は、3戸以上の農家によって構成されるものに限られます。

子実用とうもろこしの種子確保に向けた調査では、自給飼料の生産や施策について十分な知見がある民間団体などを事業実施主体の対象としています。

交付・補助金額

子実とうもろこしの生産・利用拡大を目的とした実証や生産モデルについて、事業実施主体候補者が申請書類を提出し、審査に通った場合に交付されます。

実証や生産モデルの推進に必要な推進会議や研修会の開催などにかかる費用のほか、生産・利用体制の構築や生産モデル推進に必要な費用などに定額が交付されます。

また、農機や設備のレンタルや導入、調整・保管に要する整備など、実証や生産モデル確率に必要な土壌分析の経費、必要な農機類の改修や整備にかかる経費、機器のレンタルや導入、資材購入にかかる経費などについては、1/2以内の補助率で交付されます。

出典:農林水産省「令和5年度畜産生産力・生産体制強化対策事業の公募について」所収「令和5年度畜産生産力・生産体制強化対策事業 実施主体 公募要領」(28~30ページ)

飼料用とうもろこし栽培に補助金を活用する際の注意点

最後に、飼料用とうもろこしの栽培に補助金・助成金を活用するうえで知っておきたいポイントを3つ紹介します。

「青刈り」と「子実用」で使える補助金が異なる

青刈りとうもろこし(サイレージ) 子実用とうもろこし

青刈りとうもろこし(サイレージ) 子実用とうもろこし
shankoubo / PIXTA(ピクスタ)・OlenaMykhaylova / PIXTA(ピクスタ)

飼料用とうもろこしには、「青刈りとうもろこし」と「子実用とうもろこし」の2種類あり、交付対象としての扱いが異なる場合があります。

青刈りとうもろこしは、黄熟期に収穫し、葉・茎・実のすべてを飼料として利用します。高栄養価な粗飼料として需要が高く、水稲に比べて作業負担が少なく大幅に省力化できるため、普及が進んでいます。

一方、子実用とうもろこしは子実の部分のみを収穫し、濃厚飼料の原料とします。青刈り同様に、水稲に比べると作業負担が少なく省力化できるうえ、適用される補助金も多いので、近年、栽培に取り組む農家が増えています。

交付金・補助金のうち、対象作物に「子実用とうもろこし」と明記してある場合は、青刈りとうもろこしは対象になりません。

現状、子実用とうもろこしが対象の場合は「飼料作物」または「子実用とうもろこし」、青刈りとうもろこしが対象の場合は「飼料作物」と記載されていますので、注意してください。

水田転換畑での飼料用とうもろこし栽培は湿害対策が重要

本州の飼料用とうもろこし ほ場

kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)

飼料用とうもろこしは湿害に弱いため、特に湿害が出やすい水田転作の初年度は、収量が落ちる場合が多く見られます。湿害を軽減するためには、作付け前にほ場に十分な明きょ・暗きょを整備する、高畝にするなど、排水対策をしっかり行うことが欠かせません。

特に「水田活用の直接支払い交付金」では、5年間水張りをしないほ場が交付対象外となるため、補助金を受け取るには、5年に1回は水稲を作付けする必要があります。転作する年には早めに排水対策を行いましょう。

飼料を使ってくれる酪農家を事前に探す

交付金を活用して飼料用とうもろこしを栽培しても、収量に見合う出荷先がなければ収入増にはつながりません。

飼料用とうもろこし栽培を導入する前に、まずは飼料を使ってくれる酪農家を探し、連絡を取ってニーズを聞き取りましょう。実需者のニーズに合う品質・収量に応えることで、安定した収入増が期待できます。

自治体の畜産担当や農政局に問い合わせ、地域で飼料用とうもろこしを必要としている酪農家を紹介してもらうとよいでしょう。また、農林水産省のホームページでは、全国の青刈りとうもろこしの需要者一覧表を掲載しているので、そちらもチェックすることをおすすめします。

参考:農林水産省「青刈りとうもろこし生産の推進について(生産をお考えの皆様へ)」所収「青刈りとうもろこしの需要者一覧表(令和5年6月26日時点)」

畜産農家

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

国産の飼料用とうもろこしは近年、需要が高まっており、国も生産増を促進しています。水稲栽培に比べて水の管理が不要で大幅な省力化が見込めるうえに、交付金制度も複数あるので、活用すればほかの戦略作物などと変わらない収益を得られます。

出荷先の確保や排水対策など、注意すべきポイントを押さえて、積極的に飼料用とうもろこしの栽培に取り組んでみましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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