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茨城県農業の特徴は? 現状の強みと課題、就農支援の例

茨城県農業の特徴は? 現状の強みと課題、就農支援の例
出典 : hirophoto / PIXTA(ピクスタ)

茨城県は、温暖な気候と広大な農地を活かし、首都圏はじめ全国の食料供給基地としての役割を果たしています。本記事では、茨城県の農業の特徴や強み、農業産出額、主な特産品について解説します。また、茨城県農業の課題や解決に向けた取り組み、新規就農者が活用できる支援制度についても紹介します。

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農業産出額は全国3位! 農と食の王国・茨城県の特徴

茨城県の水田

茨城県の山の麓に広がる水田
おひさま / PIXTA(ピクスタ)

茨城県の年平均気温は13〜14.5℃で、1年を通して温暖な気候に恵まれています。県内の耕地面積は約16万ha(全国第3位)と広大で、各地域の自然環境を生かした特色のある農業を展開しています。

水に恵まれた利根川、那珂川、霞ヶ浦地域は、その豊かな水源を生かした水田地帯となっており、那珂、行方、稲敷、石岡といった台地は畑作地帯、さらに県北の中山間地帯では観光と結びついた農業が行われています。

茨城県の令和4年(2022年)の農業産出額は4,409億円で、北海道、鹿児島県に続いて全国第3位です。内訳は園芸(野菜、果実、花きなど)が52%、畜産が30%、米が14%で、多様な農産物が生産されていることがわかります。

出典:農林水産省「令和4年(2022年) 農業産出額及び生産農業所得(都道府県別)」
農林水産省 「令和4年(2022年) 耕地及び作付面積統計」

生産量日本一の品目も多数。茨城県の主な特産品

一面に広がる霞ヶ浦のハス田

霞ヶ浦周辺ではれんこんが栽培されている
Milvus / PIXTA(ピクスタ)

農業が盛んな茨城県では、生産量(収穫量)全国1位の農産物が数多くあります。令和5年(2023年)の生産量(収穫量)1位にはれんこん、水菜、加工用トマト、白菜、春レタス、チンゲンサイ、メロン、栗などがあります。

出典:茨城県「茨城の日本一(農(林)水産物、製造品)| 1.農(林)産物」

茨城県は県央、県北、鹿行、県西、県南の大きく5つの区域に分かれており、それぞれの地域性を生かした農産物を栽培しています。

県央は全国一の干し芋の産地で、ほかにもメロンやれんこん、栗、ニラ、ネギなどの栽培を行っています。

県北は中山間地域に位置し、観光果樹産地としてブドウや梨、りんごの栽培が有名です。

鹿行は全国レベルの産出額を誇る園芸主体の農業地帯で、メロンや小松菜、水菜、ピーマン、サツマイモ(甘藷)などが栽培されています。

県西では大規模な農地で水稲や麦が栽培されています。葉物類の露地野菜の産地でもあり、白菜やレタス、ネギなどを栽培しています。

県南は、生産量日本一を誇るれんこんの主要産地であり、果樹栽培も盛んです。

出典:茨城県「茨城県の農業|茨城県の農業(各地域の特徴)」

農業が盛んな理由は? 茨城県の2つの強み

東京都中央卸売市場の大田市場

東京都中央卸売市場の大田市場の様子
Shie0924 / PIXTA(ピクスタ)

茨城県農業の強みは「広大で肥沃な農地」と「首都圏に位置する地理的優位性」の2つです。

全国3位の耕地面積を誇る平坦で広大な農地は、利根川や霞ヶ浦などの豊富な水資源に恵まれています。さらに、1年を通して温暖な気候条件から、幅広い作物の栽培が可能です。

また、大消費地である東京の中心から北東に約40kmから160kmに位置する立地条件も大きな強みです。大消費地への短時間での出荷が可能なため、鮮度が重要な野菜や花きの生産に適しています。

東京都中央卸売市場での青果物の取扱高は、20年連続で茨城県が第1位となっています。

出典:茨城県農業改良協会 「2023年の東京都中央卸売市場青果物の取扱高」

茨城県の農業が抱える課題と“これから”のビジョン

茨城県のサツマイモ(甘藷)畑

6月中旬の茨城県のサツマイモ(甘藷)畑
ヨシヒロ / PIXTA(ピクスタ)

茨城県の農業は多くの強みを持つ一方で、「農家の高齢化・担い手不足」や「国内市場の縮小」などの課題も抱えています。

農家の高齢化・担い手不足

茨城県では、農業経営体数の減少が顕著です。2010年の茨城県の農業経営体数は71,542経営体でしたが、2020年には44,852経営体と、約3分の2程度まで減少しました。

一方で、農業経営者の65歳以上の割合は2010年の46.5%から2020年には65.0%に増加し、2020年の平均年齢は67.5歳となっています。

これらの傾向から、茨城県は農家の高齢化と後継者不足が進行していると考えられ、今後の農業の持続可能性に懸念を投げかけています。

出典:農林水産省 「2020年農林業センサス報告書 第1巻 都道府県別統計書」
茨城県「2020年農林業センサス結果の概要(確定値):調査結果の概要1」
茨城県「2020年農林業センサス結果の概要(確定値):調査結果の概要4」

茨城県ではこうした課題に対し、経営者マインドを備えた意欲ある担い手の育成・確保、農業経営の法人化の推進、収益性の高い営農を行う県内外の農業法人や高い資本能力を備える異業種からの農業参入促進などの取り組みを行っています。

人口減少とライフスタイルの変化による国内市場の縮小

少子高齢化や食生活の多様化などにより、全国的に米や青果物の消費量が減少傾向にあり、農業において課題となっています。

この状況に対応するため、茨城県では持続可能な農業経営の実現を目指し、収益性を高める構造改革を進めています。

例えば、以下のような取り組みをしています。

  • 特色ある米作りや高収益作物への転換といった米の生産構造の改革
  • 輸出を意識した産地の形成
  • 干し芋や焼き栗など農産物の加工による茨城ブランドの確立と付加価値の向上

取り組みの詳細は以下のページをご覧ください。
茨城県「茨城農業の将来ビジョン」

茨城県で農家になるには? 活用できる就農支援の例

新規就農者

茨城県は次世代の農業経営者の育成に力を入れている
cba / PIXTA(ピクスタ)

茨城県では、次世代の農業経営者の育成に注力しており、就農希望者や新規就農者向けにさまざまな支援を行っています。

就農相談

就農相談では、農業を始めるまでの道筋の確認や基礎知識の習得、イメージの具現化をサポートします。

筑西地域農業改良推進協議会では、筑西市、桜川市、下妻市での就農希望者に向けて、作物の栽培技術や認定新規就農者制度、農業制度資金などに関する相談に対応しています。

出典:茨城県「就農支援情報について」


茨城県新規就農相談センターでは、オンライン就農相談会や農場見学、就農相談会を開催しています。

また、茨城県農林振興公社が運営する「茨城就農コンシェル」のホームページでは、オンラインでの就農相談も受け付けています。

公益社団法人 茨城県農林振興公社「茨城就農コンシェル」

農業体験・技術習得

農業体験や技術習得の機会も豊富に用意されています。就農準備校などの体験研修講座や農家での体験研修、農業インターンシップなどが活用できます。

特に注目すべきは「いばらき農業アカデミー」です。

経営者マインドの向上に必要なノウハウを学ぶ「経営高度化講座群」、先進農業技術や土壌、病害虫、農業機械、食品衛生、畜産などを学ぶ「生産技術講座群」、幅広い知識の補強が可能な「特別講座群」が用意されています。

笠間市にある農業総合センターや茨城県立農業大学校で各種講座が受講でき、実際の農家での実習も予定されています。また、一部の講座はオンラインでも開催されており、自宅からの受講も可能です。

茨城県「いばらき農業アカデミー」

補助金・助成金

国が実施している新規就農者育成総合対策の支援金や青年等就農資金貸付制度などのほかに、茨城県独自の支援事業として「ニューファーマー育成研修助成事業」が利用できます。

・新規就農者育成総合対策
新規就農者育成総合対策は、農業をめざす49歳以下の希望者に対して、就農前の研修期間(最長2年間)の生活安定を支援し、就農直後(最長3年間)の経営確立を支援することを目的としています。3つの支援制度が用意されています。

就農準備資金:就農前の研修期間中の生活を支援

支援制度就農準備資金
対象者就農予定時の年齢が49歳以下の研修中の研修生で、要件を全て満たす者
助成額月12.5万円(150万円/年)
最長24か月(2年間)
主な要件・研修終了後、独立・自営就農、雇用就農又は親元就農すること
・前年の世帯所得が原則600万円以下の者
・茨城県認定の研修機関で研修をすること
申請先

経営開始資金:就農直後の経営確立を支援

支援制度経営開始資金
対象者就農時49歳以下の認定新規就農者
助成額月12.5万円(150万円/年)
最長36か月(3年間:経営開始後、3年度目分まで)
主な要件・新規参入者、もしくは親元就農者(就農5年以内に経営継承した者)のうち、リスクのある取組と市町村に認められる者
・前年の世帯所得が原則600万円以下の者
申請先市町村

経営発展支援事業:必要な機械・施設などの導入を支援

支援制度経営発展支援事業
対象者就農時49歳以下の認定新規就農者で、要件を全て満たす者
助成額補助対象事業費上限額1,000万円(補助率:国1/2、県1/4)
主な要件・自己負担分について融資を受けていること
・青年等就農計画等の達成に必要な機械・施設などであること
申請先市町村

・ニューファーマー育成研修助成事業
ニューファーマー育成研修助成事業は、茨城県農林振興公社が実施している助成事業で、認定新規就農者又は公社理事長が研修計画を承認した就農希望者の長期研修(おおむね1年以上)を受け入れる農業者などに対して助成を行います。

研修生は、月額10万円以内の研修手当を受けながら、農業技術や経営感覚を習得できます。

青年等就農資金貸付制度

支援制度青年等就農資金貸付制度
対象者認定新規就農者
※市町村から青年等就農計画の認定を受けた個人・法人
資金の使途・施設・機械の取得、改良
・果樹などの新植・改植費
・家畜の購入費及び育成費
・農地の借地料や施設・機械のリース料などの一括支払い
・経営開始で必要となる資材費など
借入利率無利子
借入限度額3,700万円
償還期間17年以内
据置期間5年以内
申請先日本政策金融公庫

青年等就農資金貸付制度は、新たに農業経営をめざす個人・法人に対して、事業開始のために必要な資金を長期、無利子で貸し付ける制度です。

・各市町村の支援制度
さらに、県内の各市町村においても独自の支援制度を設けているところが多くあります。農機具の購入支援や就農者の家賃助成など、地域ごとに特色ある支援が用意されています。就農を考えている地域の窓口に直接問い合わせてみることをおすすめします。

公益社団法人 茨城県農林振興公社「茨城就農コンシェル 収納支援情報」


茨城県は、多くの農産物で日本一の収穫量を誇り、持続可能な農業経営の実現に向けて積極的に取り組んでいます。新規就農を考えている方にとっては、充実した支援制度を活用できる魅力的な地域といえるでしょう。

就農相談や農業体験、技術習得の機会、そして各種の補助金や助成金を上手に活用し、茨城県で農業の新たな一歩を踏み出してみてはいかがでしょう。

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