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【施設栽培】ハウスできゅうり栽培!促成栽培・抑制栽培の時期やポイント

【施設栽培】ハウスできゅうり栽培!促成栽培・抑制栽培の時期やポイント
出典 : kotoru / PIXTA(ピクスタ)

きゅうりのハウス栽培についての解説記事です。ハウス栽培におけるメリット・デメリットや促成栽培・抑制栽培について、きゅうり栽培の流れ・気を付けたい病害虫などを、きゅうりを初めて育てる方のためにわかりやすく解説しています。

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きゅうりは日本の夏野菜の代表格ですが、ハウス栽培を導入すれば、気温や気候に左右されずいつでもきゅうりを安定して収穫することができます。

この記事では、きゅうりをハウス栽培する際に知っておきたい情報をご紹介します。ハウス栽培には相応の手順があるので、しっかり調べてから挑みましょう。

野菜のハウス栽培(施設栽培)について

「ハウス栽培(施設栽培)」とは、ビニールハウスやガラスハウスなどの施設中で農作物を栽培する手法で、「施設園芸」とも呼ばれます。

農林水産省の『施設園芸をめぐる情勢』によると、きゅうりは施設園芸によるものが生産量シェアの60%を占める野菜です。ただし、日本の施設園芸農家数は高齢化などに伴い、年々減少傾向にあります。
出典:農林水産省「施設園芸をめぐる情勢」(2020年5月)

作物の促成栽培・抑制栽培とは

ハウス栽培は「促成栽培」と「抑制栽培」の2種類に分けられます。

促成栽培の目的は作物の成長スピードを速めることにあります。ハウス内では温度や湿度の調整が可能です。作物が育ちやすい環境を人工的に整え、本来の出荷時期よりも早く収穫することができます。ただし、冬場はボイラーなどが必要になり、高コスト傾向にあります。

一方、抑制栽培の目的は成長速度を遅らせることで、通常の収穫時期のあとに出荷ができます。抑制栽培に比べると冬場のコストはかかりませんが、夏場は高温対策が必要な場合があります。

収穫を早くする促成栽培、遅くする抑制栽培を組み合わることで、長期間の安定した出荷が可能になります。

きゅうりをハウスで育てるメリット・デメリット

きゅうりの雌花

yukiotoko / PIXTA(ピクスタ)

きゅうりをハウス栽培することの最大のメリットは、天候に関係なく、安定してきゅうりを出荷できることです。促成栽培や抑制栽培を上手にコントロールすれば、旬の夏季に関係なく、収穫時期を早くも遅くも調整することができます。

しかも、風雨にさらされる心配がなく、好ましい温度、湿度を保てるので、味や大きさもよくなります。そのため、出荷規格適用の見た目のいいきゅうりが作りやすく、出荷額も期待できます。また、露地栽培と比較すると、労働生産性が高く、土地が狭くても利益を上げることが可能です。

デメリットは、露地栽培に比べて、ハウス設置や排水設備などに初期費用がかかり、管理に手間がかかる点です。また、電気代や定期的なメンテナンス代などのランニングコストもかかります。

さらに、きゅうりは「連作障害」という同じほ場で同じ作物を植え続けると土壌の質が下がっていくリスクがある野菜です。そのため、栽培期間を2~3年あける、接ぎ木苗を導入するなどの対策が必要になります。

ハウスでのきゅうり栽培の流れ

きゅうり 施設栽培

Ranoviqo / PIXTA(ピクスタ)

ここからはハウスでのきゅうり栽培の流れをご紹介します。

ほ場の準備

まずはきゅうりを育てるほ場(土壌)が栽培するうえで好ましい状態となるよう、土壌診断に基づき定植の1ヵ月前までに、ほ場の準備を行いましょう。

方法としては、苦土石灰を全面散布し、しっかり耕して土壌改善を施します。そして畝(ベッド)を築く前には、土に水を十分含ませましょう。

定植の1週間前になったら畝にビニールなどを覆うマルチングをします。マルチングの種類は、地熱確保のために黒のポリエチレンフィルムを選ぶと良いでしょう。

定植~整枝

ほ場が整ったら、いざ定植です。ポットへ播種したあと、呼び接ぎした苗を天候の良い日に畝へ植えていきます。

1条植えをするなら、3. 3平方メートルあたり3.5~4本ほどを目安に。そして株もとに水をやり、株が動かないよう固定します。
きゅうりの生育にはやや高い温度が望ましいため、日中28~30度、夜間17~18度に温度調整します。活着後は夜間温度を20~25度まで上げましょう。

しばらくすると、本葉が12~13枚ほど生えてきます。そのままだと養分が失われるため、下から5~6節(高さ30cm以下)を目安に側枝を摘除します。主枝も約150cmの高さで摘心するのがコツです。下方の側枝の実が大きくなってきたら、肥料を足しましょう。

~収穫まで

1日の天候のサイクルに合わせて日没までに、ハウス内を30度から24度前後になるようだんだんと温度を下げていき、夜間は18度ほどにキープします。夜の急激な温度上昇は、病害の原因になりかねないので注意しましょう。天候の悪い日はやや温度を低くするのもポイントです。

そして葉が増えてきたら摘葉を行います。古い葉や日の当たらない葉は落とし、新葉や新芽にも日光がすき間なく当たるようにします。

この時期の追肥は潅水(水やり)を兼ねて10aあたり窒素成分0.5~1kgの液肥を与えましょう。トラブルなくきゅうりが育てば、この方法で10aあたり15,000~18,000kgの収穫が望めます。

ハウスで促成栽培する場合の栽培時期・ポイント

きゅうり 出荷 計量

YUMIK / PIXTA(ピクスタ)

促成栽培では、11月中~6月頃まで収穫が可能です。定植は10月~12月上旬までに行いましょう。

主な流れは通常の栽培と変わらないものの、温度は午前「25~28度」、午後「25~20度」を意識して行いましょう。地温は18度前後確保が理想です。曇天や雨天時にはやや低い温度設定を心がけましょう。
ちなみに促成栽培は、温暖な気候の宮崎県や高知県などで多く見られます。

ハウスで抑制栽培をする場合の栽培時期・ポイント

抑制栽培では、9~12月頃まで収穫可能です。定植は7月中旬~9月上旬を目安に行いましょう。

温度調整は、促成栽培と大きく変わりません。ただし、10月中旬からは保温のために内張りカーテンなどで気温低下を防ぎましょう。ちなみに、このような加温抑制栽培は北関東などで盛んです。

きゅうりのハウス栽培で特に気を付けたい病害虫

大きな被害をもたらす、土壌病害虫のネコブセンチュウやホモプシス根腐病には、農薬や太陽熱による土壌消毒が不可欠です。

また、乾燥した状態で葉が茂っていると「うどんこ病」の発生率が高まり、葉が長時間濡れたままだと「べと病」になりやすいので、適度な潅水(水やり)と整枝・摘葉に努めましょう。

「褐斑病」は、窒素過多になりやすいハウス栽培で多く発生しがちです。そのため、ハウス内の換気と、土壌が窒素過多にならないように注意する必要があります。

そして、アブラムシなどの害虫は、定植する直前に土壌へ殺虫剤をまいたり、ハウスの換気部・開閉口を防虫ネットで覆い予防しましょう。

本記事ではきゅうりのハウス栽培について解説しました。促成栽培や抑制栽培を上手にコントロールしてハウス栽培すれば、その年の天候に左右されることなく、安定した出荷量を確保できます。
初期費用やランニングコストはかかりますが、長期的な視野で利益をより上げられる栽培方法について、ぜひ検討してみてください。

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石塚就一

石塚就一

1984年京都府生まれ。会社員を経て、フリーライターに。京都府内でイベント運営や執筆活動する一方で、実家の農業にも従事している。主な生産物は米、ナス、京野菜。実践をともなった見地から、リアルな農業事情を伝えている。なお、京都市の町興しにも参加。目標は「全国区の知名度を誇るイベントを立ち上げて、京都の新しい魅力を広めること」。

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