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ウリハムシは“ネギの植え付け”で防除?! ウリ科野菜を守る効果的な対策方法

ウリハムシは“ネギの植え付け”で防除?! ウリ科野菜を守る効果的な対策方法
出典 : fox☆fox/PIXTA(ピクスタ)

ウリハムシは、主にきゅうりやスイカ、メロンなどウリ類の葉や根を食害する害虫で、株を弱らせ、多発すると枯死させることもあります。決定的な防除方法がない難防除害虫ですが、コンパニオンプランツとしてネギを植え付けると効果的といわれています。

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きゅうりなどウリ科の作物を栽培する農家にとって、ウリハムシは収量の大幅減につながる厄介な害虫です。そこで、この記事では効果的に防除するため、ウリハムシの生態や有効な防除対策について解説するとともに、特にネギの植え付けによる防除効果にスポットを当てて紹介します。

ウリ科野菜の天敵、「ウリハムシ(ウリバエ)」とは?

きゅうり ウリハムシの食害

fox☆fox /PIXTA(ピクスタ)

ウリハムシは、きゅうりやカボチャ、スイカなどウリ科の作物にとって天敵ともいえる、防除の難しい害虫です。しかし、生態を把握し、効果的な時期に的確な対策をすることで被害を抑えられます。

まずは、ウリハムシの生態や食害の特徴について、詳しく解説します。

ウリハムシの基本生態

ウリハムシは別名ウリバエとも呼ばれますが、ハエの仲間ではありません。成虫は体長7~9mmでくすんだ黄褐色~橙黄色の小さな甲虫です。

ウリハムシ成虫(体長8mm)

ウリハムシ成虫(体長8mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

成虫態で石垣や建物の隙間、草むらなどに集まって越冬し、暖かくなると活動を始めます。活動初期にはインゲンや大根、白菜などを食害することもあります。

ウリハムシ成虫による大根の葉の食害

ウリハムシ成虫による大根の葉の食害
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

その後、成虫は4月下旬~5月頃にウリ科の作物に飛来し、食害するとともに株元の土中に産卵します。幼虫は白いウジ虫のような形をしており、ふ化したばかりの頃は細根のみを食害しますが、成長すると太い根を食害し、ときには茎にまで潜り込むこともあります。

ウリハムシの蛹

ウリハムシの蛹
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

幼虫は約3~5週間かけて3齢を経たのち、土中で繭を作って蛹になり、1~2週間後に羽化します。新成虫が発生するのは7~8月で、葉や果実への成虫による被害は、越冬を終えた成虫が活動を始める5月頃と8月頃がピークです。

なお、本州のほとんどの地域では、ウリハムシの発生は年に1回で、9月下旬には成虫が越冬場所に移動します。ただし、温暖な地域では9~10月に2世代目の成虫が発生することもあります。

ウリハムシ被害の特徴

ウリハムシの成虫と輪っか状の食害痕(メロン)

ウリハムシの成虫と輪っか状の食害痕(メロン)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ウリハムシの成虫は、主にウリ科植物の葉を不規則な円形や網の目状に食害します。葉の中程に輪っか状の穴があいていたら、ウリハムシの食害痕を疑ってみてください。結実後は、果実の表面を食害することもあります。

株が十分に大きくなっていればそれほど深刻な被害にはなりませんが、果実を食害されると見た目が悪くなるため、商品価値が下がります。また、幼苗期に多発すると生育不良になったり食い尽くされたりして、甚大な被害になることも少なくありません。

ウリハムシ成虫による被害果(スイカ)

ウリハムシ成虫による被害果(スイカ)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

特に露地栽培では、春から初夏にかけて直播した場合の発芽期や、トンネル栽培の被覆資材を除去した直後の被害が目立ちます。また、施設栽培においては、新成虫が発生する8月頃に定植する作型で若い葉が食害にあわないように注意する必要があります。

ウリハムシの幼虫は根を食害し、茎に侵入することもあるため、被害はより深刻です。露地栽培で特に被害が多く、被害株は梅雨明けの頃に日中萎れるようになり、次第に萎凋したり枯死したりします。

幼虫は土中にいて被害が目に見えず、発見が困難なため、知らない間に食害が進み、気づいた時には手遅れで一気に枯死するといった被害も少なからずみられます。

幼苗が全滅して植え替えが必要になったり、株が弱って全体の収量が減ったりして、収入の大幅減につながることもあるので、予防と早期の防除によって被害を防ぐことが重要です。

ウリハムシ対策には“ネギの植え付け”がいいって本当?

ほ場の周縁に植えられた青ネギ

つくし /PIXTA(ピクスタ)

きゅうり栽培でのウリハムシの防除対策の1つとして、コンパニオンプランツのネギを近くに植え付けるとよいといわれます。その理由や期待できる効果、具体的な方法について解説します。

コンパニオンプランツとしての「ネギ科植物」に期待できる効果

コンパニオンプランツとは、日本語で「共栄作物」ともいいます。異なる種類の作物を一緒に栽培することで、互いに、またはどちらか一方の病害虫を抑制したり、生育を促進したりといった効果が期待できる植物のことを指します。

植物には、特定の虫や微生物を集める性質や、反対に忌避する性質を持つものがあります。コンパニオンプランツでは、そのような性質を踏まえ、相性のよい作物同士をうまく組み合わせることが大切です。

ウリ科植物はネギ類との相性がよく、ネギ類特有のにおいでウリハムシの飛来を抑制できます。また、ネギ類の根に共生する「拮抗菌」が抗生物質を分泌して土壌中の病原菌を減らし、きゅうりの代表的な連作障害である「つる割れ病」などの病害を予防する効果も期待できます。

植え付け方法の工夫で病害対策にも

好相性の特性を持つコンパニオンプランツであっても、適切に植え付けないと十分な効果を発揮できません。

例えば、きゅうりの栽培にネギのにおいを利用してウリハムシを忌避するのであれば、隣の畝に植え付けるだけでも効果は期待できるでしょう。一方、ネギの根に共生する拮抗菌の効果を利用して病害を予防したい場合は、双方の植物の根が同じ根域にある必要があります。

きゅうりやスイカなどはウリ科の中でも根が浅いので、同じく根が浅い長ネギがコンパニオンプランツとして適しています。さらに確実に拮抗菌の効果を得るためには、根が絡み合うように混植します。

移植の際、植え穴を掘ったら先にネギの根を穴に広げ、その上にポットの土ごときゅうりを直接置いて植え付けるとよいでしょう。

併用で効果アップ! ウリハムシに有効なその他の防除対策

ウリハムシは、幼虫の間は土中に潜り、根や茎の中に入り込むためわかりにくく、成虫になると飛んで逃げるので、防除が困難です。そこで、複数の防除対策を併用することで効果を上げるのがおすすめです。

コンパニオンプランツ以外に有効な防除対策を以下の項で解説します。

シルバーマルチや防虫ネットで飛来・侵入を防止

きゅうり幼苗期 シルバーマルチ

hideyan /PIXTA(ピクスタ)

特に注意が必要な幼苗期には、防虫ネットや寒冷紗などで畝を覆い、成虫の侵入を防ぎましょう。また、ウリハムシはアブラムシやアザミウマと同様に、銀色や白色の反射光に強い忌避反応を示すため、シルバーマルチをすると成虫の飛来防止に効果があります。

ただし、株が生長しシルバーマルチの面積の半分以上が隠れるようになると忌避効果が落ちるので注意しましょう。

成虫を見つけたらすぐに「農薬のローテーション散布」を

成虫を見つけたら、まずは速やかに捕殺することが大切です。温度の低い朝は虫の動きが鈍いので、その時間帯を狙うとよいでしょう。

また、成虫を複数確認したら、農薬散布による防除が有効です。5~7日間隔で数回、耐性を付けるのを防ぐために農薬を替えてローテーション散布します。

有効な農薬には、「コテツフロアブル」「アディオン乳剤」「モスピラン水溶剤」「マラソン乳剤」などがあります。それぞれの農薬の使用間隔や使用回数に従って、異なる種類の農薬をローテーションして使用しましょう。

幼虫の発生を予防するには、播種または定植の際に「ダイアジノン粒剤」を土壌混和すると効果的です。

なお、ここで紹介した農薬は、2022年5月現在きゅうりとウリハムシに登録のあるものです。実際の使用にあたっては、必ず最新の登録情報を確認してください。また、ラベルをよく読み、用法と用量を守って使用しましょう。

きゅうりのハウス栽培 開口部にネットを張って害虫の飛来を防ぐ

yukiotoko / PIXTA(ピクスタ)

ウリハムシは、露地・施設栽培どちらの場合でも、きゅうり栽培にあたって注意すべき難防除害虫です。しかし、コンパニオンプランツの活用など、有効な対策をいくつか併用することで、被害を防げます。また、きゅうりと青ネギを一緒に植え付けることで、つる割れ病などの病害の防除にも効果が期待できます。

コンパニオンプランツの活用は農薬の効率的な利用や低減にもつながるので、積極的に取り入れてみましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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