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収益を最大化するきゅうりの仕立て方|品種・作型に合った方法を選ぼう

収益を最大化するきゅうりの仕立て方|品種・作型に合った方法を選ぼう
出典 : TAK067 / PIXTA(ピクスタ)

従来のきゅうり栽培は「摘芯栽培」が慣行でしたが、近年では「つり下げ栽培」が主流になりつつあります。この記事では、つり下げ栽培の整枝方法やメリット・デメリットだけでなく、より収量向上や作業時間短縮をめざせる新しい栽培方法も紹介します。

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これまできゅうり栽培は一般的に「摘芯栽培」で行われてきました。しかし、摘芯栽培にはいくつかの問題点が指摘されているため、収量アップや省力化を実現できる方法が他にないか検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では慣行の摘芯栽培について解説したあとで、摘芯栽培の課題を解決できる方法として近年普及しつつある「つり下げ栽培」の整枝方法やメリット・デメリットを紹介します。

また、より効率のよい栽培方法として注目を集めている「つり上げ栽培」と「育苗時摘芯2本誘引仕立て法」についても紹介しますので参考にしてください。

きゅうりの仕立て法の慣行は「摘芯栽培」

定植後、誘引したばかりのきゅうり

kaka / PIXTA(ピクスタ)

きゅうりの摘芯栽培とは

摘芯栽培とは、生長点である芽の先端を適当な場所で摘み取ることで多くの果実を収穫する栽培方法です。

具体的には20節程度を目安に親づるを摘芯して、そこから発生する子づるや孫づるを2節程度で摘芯します。多くの側枝を発生させることで、節数および収量を確保するのが特徴です。

節間を短くし、枝ぶりをコンパクトにすることで消耗が少なくなるうえに、それぞれの株に日光が届きやすくなります。また、節間の短い枝には葉や花芽が多くつくため同化養分による生産が多くなり、収量が増える点もメリットです。

摘芯栽培はこうしたメリットによって、特に1960年代後半から日本のきゅうり栽培の主流になってきました。

きゅうりの摘芯栽培における課題

摘芯栽培には前述したようなメリットがありますが、熟練したスキルを求められるために作業負担が大きくなるというデメリットがあります。

節間の目安はありますが、実際にどの時点で摘芯するかは草勢を見て判断しなければいけません。そのため、経営者などの経験豊富な人に負担が集中するケースが多く、従業員や家族などそのほかの人に作業を頼みにくいのが課題となっています。

また、作業負担の大きさに比して秀品率がそれほど高くないのも問題で、特に栽培期間後半において品質低下がよく見られます。収量はそれなりに確保できますが、花芽の位置がバラバラなので収穫時期を見逃してしまう果実も少なくありません。

そうした問題点を解決する栽培方法として、近年注目を集めているのが「つり下げ栽培(垂直整枝)」です。

近年主流となりつつある「つり下げ栽培(垂直整枝)」とは

誘引ピンチを使って整枝されたきゅうり

リョウ / PIXTA(ピクスタ)

つり下げ栽培(垂直整枝)とは

つり下げ栽培とは、簡単にいうと「特定の子づるだけを伸ばしていく栽培方法」です。摘芯栽培のように、孫づるを伸ばす必要はありません。

具体的には、親づるの6~10節にある子づるを4本だけ生長させ、そこから発生する孫づるは全て摘芯します。そのほかの子づるは1節だけ伸ばして果実を収穫したら切り戻し、すべて収穫したあとは親づるも含めて不要な部分を摘除します。

上に向かって伸びていく子づるはある程度の高さまで生長したら誘引ピンチを外して下ろし、花芽の位置が肩の高さになる程度に調整して横に伸ばします。再度つり下げたときに地面に着いてしまう葉があればすべて摘葉して問題ありません。

栽培期間にもよりますが、伸ばした子づるは最大で10メートル程度まで伸びるので、畝の端まで到達したら株を巻くように逆方向に移動させます。

つり下げ栽培(垂直整枝)のメリット・デメリット

つり下げ栽培の大きなメリットは、「知識や経験を必要とせず誰でも作業ができる」ことです。伸ばす側枝を限定するため生長点がわかりやすく、家族や従業員とも作業を分担しやすくなっています。

また、つり下げる花芽を肩の位置にすれば、ひざの高さに果実が実るため収穫しやすくなり、見逃しによるロスも発生しにくいのが特徴です。収量増と側枝の草勢維持による秀品率の高さもあり、農業所得向上が期待できます。

一方、デメリットは「つる下ろし作業が必要になる」ことです。管理だけを考えると摘芯栽培より合計の作業時間は長くなる傾向にあります。ただし、作業分担の調整が容易であることや、秀品率に対する作業時間で見れば省力化されるケースが多いことから、慣行の摘芯栽培よりも効率のよい栽培方法として普及しつつあります。

出典:ホクレンの営農情報誌アグリポート2019年2-3月号「つる下ろし栽培できゅうり農家の働き方が変わる(道総研上川農業試験場)」

さらなる収量アップ・省力化を目指す新しいきゅうりの仕立て法

きゅうりの収穫

kaka / PIXTA(ピクスタ)

摘芯栽培の問題点を解決できるとして、つり下げ栽培に注目が集まっていますが、さらなる収量アップや省力化をめざした新しい栽培方法もいくつか考案されています。ここでは、より効率的な栽培方法として期待されている「つり上げ栽培」と「育苗時摘芯2本誘因仕立て法」の2つを紹介します。

つり上げ栽培

つり上げ栽培は、「摘芯栽培とつり下げ栽培の両方の課題を解決できる栽培方法」です。具体的には、主枝の下段(7~10節)にある側枝1~2本をつり上げ、主枝と同じ高さで摘芯し、そのほかの側枝は摘芯栽培と同じように1節程度で摘芯します。

側枝を横にはわせていく労力がかからないため、つり下げ栽培の課題である「作業時間の長さ」を摘芯栽培と同程度まで短くできると見込まれています。

また、つり上げ栽培では秀品率が向上するうえ、摘芯栽培の課題となる栽培期間後半の品質低下が起きにくいとされているのもメリットです。

注意点としては、摘芯栽培に比べて枝の本数が多くなるため、特に上部で過繁茂になりやすい点が挙げられます。この場合、摘芯や摘葉を適宜行うほか、つり上げる側枝を1本にすることで解決できる場合があります。

出典:群馬県農業技術センター 東部地域研究センター
「施設キュウリの整枝法による収量・作業時間の比較」
「施設栽培におけるキュウリの子づるつり上げ整枝法」(農研機構ホームページ所収)

育苗時摘芯2本誘引仕立て法

育苗時摘芯2本誘引仕立て法のメリットは、つり下げ栽培に比べて「収穫時期がやや早くなり、初期収量が増加する」「管理や収穫作業の省力化につながる」の2つです。

育苗時摘芯2本誘引仕立て法では、まず3.5葉期に主枝を第3節で摘芯し、第2節または第3節で発生した側枝2本を誘引して生長させます。育苗期に主枝を摘芯するため、定植後の管理は誘引する側枝のみでよくなり、作業時間の大幅な省力化につながります。

また、この栽培方法を試した高知県農業技術センターによると、特に収穫初期において秀品量が増加する結果が出ているとのことです。つり下げ栽培に比べて栽培期間全体を通しての秀品量が増加しているケースもあり、新しい栽培方法として期待されています。

出典:研機構西日本農業研究センター1999年度(平成11年度)四国農業研究成果情報「ハウスキュウリにおける育苗時摘芯2本誘引仕立て法」

きゅうりの仕立て法は品種・作型に合わせて選ぶのがポイント

熊本県農業研究センターが実施した摘芯栽培とつり下げ栽培を比べた試験によると、抑制・半促成の場合は、収量・秀品率・作業の省力化といった面でいずれもつり下げ栽培のほうが優れているという結果が出ています。

一方で、雨よけ栽培を行う場合には、「梅雨明け後の草勢低下」「側枝の生長が早いことによる整枝・誘引作業時間の大幅な増加」によるデメリットが大きいことから、摘芯・振り分け栽培のほうが向いているとされています。

このように作型によって適した仕立て方は異なり、摘芯栽培とつり下げ栽培のどちらが優れているかを一概にいうことはできません。

また、「抑制栽培の場合は雌花着生率が高く、側枝発生が緩やかな品種を選ぶ」など、状況に応じた品種の選定を行うことも仕立て方を考えるうえで大切なポイントです。

出典:熊本県農業研究センター「施設キュウリ栽培の作業を単純化できる整枝方法」

きゅうりの露地栽培

kaka / PIXTA(ピクスタ)

この記事では、きゅうりの仕立て方について解説してきました。

これまでの慣行だった摘芯栽培と近年の主流になりつつあるつり下げ栽培には、それぞれ長所と短所があります。

また、より秀品率が高くなったり、省力化に貢献したりする新しい栽培方法も登場していますが、品種や作型によって適した栽培方法は異なるため、どれが最適かは状況によって判断する必要があります。

今一度「品種や作型に合った仕立て方をしているか」を考えたうえで、必要に応じて新しい栽培方法にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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中原尚樹

中原尚樹

4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。

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