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【きゅうりの施肥設計】作型に応じた施肥の時期や施肥量、栽培管理のポイントを解説

【きゅうりの施肥設計】作型に応じた施肥の時期や施肥量、栽培管理のポイントを解説
出典 : muku / PIXTA(ピクスタ)

きゅうりは栽培方法を組み合わせることで年に何度も収穫できますが、収量の最大化をめざすには水分や肥料の量や、ほ場の温度などを適切に管理することが大切です。この記事ではきゅうりの作型・栽培歴を踏まえて、施肥管理・栽培管理の方法について解説します。

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きゅうりの作型は多様で、ハウス栽培と露地栽培を組み合わせることで、年間を通じて収穫ができます。生育スピードに合わせた栽培管理を実践して、収量の最大化をめざしましょう。まずは、きゅうりの作物としての特性と施肥管理・栽培管理の重要性について解説します。

適切な施肥管理・栽培管理がきゅうりの収量向上の鍵

きゅうりの収穫作業

hamahiro / PIXTA(ピクスタ)

きゅうりは播種から60~70日で収穫でき、果菜類のなかでも生育スピードが早いのが特徴です。収穫後もある程度の期間は次々と果実が実る特性も持っており、1株で30~40本以上の収穫が見込めます。しかし、収量を向上させるには、適切な施肥管理と水分・温度といった栽培環境の管理が欠かせません。

肥料切れを起こすと果実の生育が止まり、1株当たりの収量が低下します。大量に施肥しても根焼けの原因になるため、生育状況を観察しながら少量の肥料を頻繁に追肥することが大切です。

また、果実の肥大期に水分が不足すると樹勢が衰え、果実の曲がり・尻細りの原因になります。水分が多すぎても、土壌中の養分が流出して生育不良につながるので、適量を灌水するようにしましょう。

定植前に目標収量に応じて施肥設計を行い、促成栽培と抑制栽培を組み合わせることで、時期をずらしながら長期にわたって収穫できるようになります。その結果、ほ場全体としての収量が向上し、高収益化も実現できるのです。

きゅうりの基本的な作型・栽培歴

きゅうりの作型は、主に露地栽培と施設栽培の2通りに分けられます。生育適温は昼間が25~28℃、夜間が13~16℃なので、夏期以外は施設栽培が主流です。

ここから、作型ごとの特徴や栽培歴を紹介します。

【露地栽培】

きゅうり 露地栽培

tamu1500 / PIXTA(ピクスタ)

きゅうり露地栽培の栽培暦(例)

作型播種定植収穫期
露地栽培
(温暖地)
4月上旬5月上旬6月上旬~8月上旬
露地栽培
(寒冷地)
5月上旬5月下旬6月下旬~9月下旬
トンネル早熟栽培3月上旬4月中旬5月中旬~7月上旬
露地抑制栽培
(温暖地)
7月上旬7月中旬8月上旬~9月下旬

出典:株式会社サカタのタネ「園芸通信 詳しく知りたい、取り入れたい 自然の力・有機の力 〜実践編〜 第3回 キュウリ」

露地栽培は保温環境で育苗した苗を露地に定植し、収穫する作型です。寒冷地では温暖地と比べて1ヶ月ほど育苗期が遅くなりますが、その分だけ遅い時期まで収穫できます。

温暖地では、苗をトンネル内に定植するトンネル早熟栽培や、夏に苗を定植する露地抑制栽培も取り入れられています。高温や病害虫の影響を受けて収穫期間は2ヶ月前後に限られますが、作型を組み合わせれば最長で5月中旬~9月下旬の収穫が可能です。

【施設栽培】

きゅうり 促成栽培

hamahiro / PIXTA(ピクスタ)

きゅうり施設栽培の栽培暦(例)

作型播種定植収穫期
促成栽培9月中旬~11月上旬10月中旬~12月上旬11月中旬~6月中旬
半促成栽培
(収穫期の加湿なし)
1月下旬~2月下旬3月上旬~3月下旬4月上旬~7月上旬
半促成栽培
(収穫期の加湿あり)
12月下旬~1月下旬1月下旬~2月下旬3月上旬~7月上旬
ハウス抑制栽培7月中旬~8月中旬8月中旬~9月上旬9月上旬~12月下旬

出典:株式会社サカタのタネ「園芸通信 詳しく知りたい、取り入れたい 自然の力・有機の力 〜実践編〜 第3回 キュウリ」

きゅうりの施設栽培では、すこしずつ収穫期をずらす様々な作型があります。促成栽培は定植後の全期間で施設内の加温が必要なので、主に暖地で実施されています。

半促成栽培の場合、収穫期に加温する作型では収穫可能時期が1ヶ月程度長くなります。また、露地抑制栽培と同時期に定植し、11月移行に施設内を加温して収穫を続けるハウス抑制栽培も可能です。

きゅうりの作型別の施肥設計(施肥量・追肥回数)

生育期のキュウリ 露地

hideyan / PIXTA(ピクスタ)

きゅうり栽培に必要な施肥量は作型によって異なりますが、収穫量1t当たりの量は窒素:リン酸:カリウム=2.4kg:0.9kg:4.0kgが目安です。露地栽培の場合は畝作りの際に基肥として施用しますが、窒素の30~40%を緩効性肥料にすると追肥作業を省力化できます。

また、施設栽培の場合は定植の15日前までを目安にハウス全面に施用して土壌に混合しておきます。施肥時期が早すぎると窒素が流亡するため、施肥時期の設定には注意が必要です。あわせて、土壌診断の結果と目標収量を考慮したうえで、施肥量を調整します。

作型ごとに異なる施肥量目安として宮崎県の施肥基準を紹介します。地域によって施肥基準は異なりますので、自治体の農政部署や農業試験場、JAなどに確認しましょう。

10a当たりの目標収量と施肥量(例)

作型目標収量窒素リン酸カリウム
露地栽培8,000kg30kg30kg15kg
露地抑制栽培4,000kg25kg30kg15kg
促成栽培12,000kg30kg30kg15kg
半促成栽培8,000kg0~5kg0~5kg0~5kg
ハウス抑制栽培6,000kg30kg30kg20kg

出典:農林水産省「主要作物の施肥基準」掲載の「宮崎県 主要作物の施肥基準」所収「3 野菜」の2ページ目

追肥は作物の生育状況を観察しながら、2~3週間ごとに施用します。1回目の追肥は根が張る前に、株元に施用します。それ以降は畝に施用して周りの土壌と混合します。灌水と同時に液肥を施用しても差し支えありません。

生長による養分の消費だけでなく、降雨による肥料成分の流亡も見られる時期なので、降水量によって追肥をやり直したり次回の追肥時期を早めたりするとよいでしょう。

ただし、追肥量が多すぎると根が脱水状態となり、養分や水分の吸収に支障をきたすので注意が必要です。

きゅうりの栽培管理のポイント

きゅうりの栽培にあたっては施肥管理だけでなく、ほ場の温度や水分といった栽培環境の管理も大切なポイントです。

施設栽培の場合、定植後から収穫期までの温度を日中は28~30℃、夜間は17~18℃になるように管理します。株元に灌水する際は地温を下げないように、20~30℃のぬるま湯で毎日行うと苗の活着がスムーズです。苗の活着後は、灌水を控えめにしつつ午後の温度を20~25℃に下げて生育させ、節間の伸長度合いを確認しながら夜間の気温を13℃~16℃に下げていきます。

収穫期を迎えたら、晴天の日の午前中は25~30℃前後、午後は22~24℃になるように換気やカーテンの開閉で調整します。17~18℃になったら換気を止めますが、夜間に気温が再び上昇しないように注意が必要です。

曇天の日は地温が低下しないよう、午前中は20℃前後、午後は14~15℃で管理するようにします。着果数や天候に応じて灌水を行い、光合成がスムーズに行えるよう摘葉も実施しましょう。

きゅうりの施設栽培 循環扇や天窓開閉による温度管理

kaka / PIXTA(ピクスタ)

きゅうりは播種から70日前後で収穫期を迎え、2~3ヶ月にわたって次々と果実が実るのが特徴です。しかし、肥料や水分が不足すると生育が止まったり果実が変形したりするため、生育状況を観察しながら適切な肥培管理を実践することが収量の最大化につながります。

地温が低下すると生育に影響が生じるため、施設栽培の場合は換気や暖房を調整して適温を保つようにしましょう。

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舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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