白菜の葉が巻かないのはなぜ?栽培方法の基本とよくある失敗原因

白菜の栽培を成功させるためにはどうすればよいのでしょうか? 白菜の播種にもっとも適した時期や、白菜の生育から収穫までによくある失敗とその対策など、栽培前に知っておいたほうがよいことや注意点を解説します。
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害虫被害や葉がうまく巻かず結球しないなど、さまざまな要因で白菜の生育が阻害されると、売り物にならないという事態にもなりかねません。そこで、白菜の正しい栽培法から害虫対策、白菜を結球させるためのコツまで順を追ってご紹介します。
白菜の栽培暦(播種・収穫の時期)
白菜の栽培時期には、大きく分けて「夏〜秋まき」と「春まき」の2種類があります。その中でも今回は、特にもっとも生育に適している「夏~秋まき、秋冬どり栽培」について詳しくご紹介します。
【夏〜秋まき・秋冬どり栽培の栽培暦】
播種(種まき):7月下旬〜10月上旬
収穫:9月中旬〜12月
※地域差があります。寒いところほど早く、暖かいところほど遅くなります。
作期は上記のとおりですが、作付け計画は連作障害に留意して行います。白菜はもちろんのこと、同じアブラナ科に属しているキャベツ、大根なども白菜と同じほ場で作り続けていると連作障害を起こします。特に根こぶ病などの病気が発症しやすくなるため、連作を避け、土壌消毒を行うなどの対策を講じましょう。
主な白菜の品種と特徴
代表的な白菜の品種として3種類を例にあげます。それぞれの特徴は以下のとおりです。
【黄ごころ65】
早生品種であり、適期栽培であれば定植後約60日前後という早さで収穫が可能です。外側が濃緑なのに対して、球内の色は濃黄です。浅漬けなどによく使われます。熟してからでも色落ちのスピードが遅いので、収穫時期に幅を持たせることが可能です。
【CRかなめ】
黄ごころよりも収穫は少々遅いのですが、播種後約65〜75日前後で収穫できる中早生品種にあたります。軟腐病(なんぷびょう)とべと病に強いのが特徴です。
【CRオリンピア】
3種類の中ではもっとも栽培期間が長い晩生型で、播種後約80〜85日前後で収穫できる中晩生品種です。耐寒性や貯蔵性が高いため、囲い用としても向いています。
早生品種はCR品種に比べて育てやすいのが特徴です。一方CR品種は、根こぶ病について抵抗性があり、根こぶ病発生地域でも栽培しやすいといえます。
白菜の栽培方法と失敗しないためのコツ

Yoshi / PIXTA(ピクスタ)
白菜栽培の失敗をできる限り避けるため、基本的な栽培方法と、各時期の注意点やコツなどを紹介します。
適した土壌選び~畑づくり
まずは白菜を栽培するにあたり、土壌選びと畑づくりをする必要があります。
【土壌選び】
必要最低限の水分は必要ですが、反対に水分が多すぎると軟腐病などの病気にかかりやすくなってしまうため、水はけのよい土壌を選びましょう。
【畑づくり】
酸性土壌や地下水位が高い場合は、根こぶ病を発症する可能性があるので、それらを防ぐためには土壌の酸性度をpH6.0〜6.5に保つことが大切です。pHが低い場合は石灰を、高い場合は硫黄華(硫黄末)を用いることで酸性度を調節することが可能です。
また、作付けの1週間前までに基肥を行い、窒素・リン酸・カリを同じくらいの割合でバランスよく投入します。白菜は成長につれて根が地中深くまで伸びるため、必ず20cm以上耕しましょう。加えて、通気性を上げるためにも高畝にして、軟腐病の防止に努めることも重要です。
播種~育苗~定植
白菜の播種(種まき)には、ほ場に直接種をまく「直まき」と、ポットやセルトレイなどに播種し育苗する「移植」の2種類があります。
白菜は根が細く繊細なため移植を避ける直まきも行われていますが、温度管理がしやすく低温期の抽苔をふせげること、病害虫防除がしやすいこと、広面積の間引き作業を行わなくてよいことなどから、セルトレイによる移植栽培が一般的です。
直まきと移植を組み合わせることで連続的な収穫を可能にしている産地もありますが、この記事ではセルトレイ育苗を紹介します。
播種準備

Yoshi / PIXTA(ピクスタ)
春まきでは、本葉6~7枚まで育苗するため72穴程度、それ以外の作期では幼苗移植になるため128穴程度のセルトレイを用意します。培土は窒素150mg/リットル程度の含水タイプのセル育苗用の培土がよいでしょう。
セルトレイに培土をいれ均等にいれならし、5cm程度の高さからトレイを2~3回落とし土をしめます。凹凸の生じたところに培土を足しさらに均等になるようならします。
次にトレイの底から水分がにじむ程度十分に潅水します。この時点で十分潅水し播種後の潅水をおさえることで、苗が徒長するリスクを減らせます。
播種
5ミリ程度の播種穴をあけていきます。均一に播種穴をつくるための播種板をつかってもよいでしょう。
発芽率の高いコート種子の場合は各セルに1粒、裸種子場合は各セルに3粒を目安に種をまき、バーミキュライトで種子が見えなくなる程度に覆土し、覆土がしめる程度の潅水を行います。
育苗環境と育苗期間
発芽が確認できたらすぐに育苗床に移し日にあてることで徒長を防ぎます。
高さのある台を用意しセルトレイの底を空気にさらす「エアプルーニング」が推奨されます。セルトレイの底を空気にあてることでセルの外に根が出ず、セル内でしっかり根が巻くため定植の際の根の傷みを避けられます。
育苗日数は秋まきでは14~15日で本葉3~4枚が目安です。冬まき・春まきでは、できるだけ低温に遭う時期を遅らせ抽苔を防ぐため、ハウス内で約30日、本葉6~7枚まで育てます。
温度管理
育苗に適した温度は15~20度で、日中も25度以上にならないように気をつけます。
冬まき・春まきではハウス内での加温栽培が基本になります。また、夏まきでは寒冷紗による日よけを行うなどして高温を避けます。
潅水管理
本葉がでるまでの潅水は、苗の徒長を防ぐために特に留意します。朝に潅水を行い夕方には覆土が軽く乾いている状態を目安にしましょう。
本葉1~2枚までは、生育のばらつきが出やすい時期なので、生育のおそいセルや乾きやすいセルのみに多く潅水するなどして生育が揃うようコントロールします。
本葉3枚以降は、生育が旺盛になり蒸散量が多くなるので潅水はたっぷり行います。
定植
苗は定植の3日程度前に外に移し、外の気候に順化させておきます。定植当日にはたっぷり潅水し、セルトレイからだしたとききに培土が崩れないようにします。
定植作業は天気が良い日がのぞましく、盛夏など高温期は夕方に行います。セルトレイからだした鉢土が隠れる程度に覆土し、苗の株元を軽くおさえます。
結球前の栽培管理&病害虫対策
定植後2週間程度から、化成肥料の追肥と中耕を行います。
追肥は1平方mあたり50g程度の化成肥料を2週間おきに2〜3回繰り返します。必ず結球し始める前に行いましょう。雨が続くとべと病が発生しやすくなるため、農薬散布も忘れずに行います。
中耕は、追肥とセットで行うことが多いですが、白菜の生育につれ地中では根が広く張ってくるため、根を傷めないよう気をつけます。
害虫対策は早期に行うことが大切です。
特にコナガ、アオムシ、アブラムシなどが発生しやすいので、農薬散布を行いましょう。
結球~収穫
収穫する際は露が乾いた晴天の日に収穫するようにしましょう。
コツとしては、白菜の頭を触ってみて、硬くしっかりとしまっているものから収穫することです。収穫を終えたら必ず茎葉を畑に残さず取り除きましょう。茎葉を取り除くことで、ほ場内の病原菌の越冬を防ぐことができます。
中生や晩生型など越冬する場合は、霜を避けるために12月ごろに外葉を紐で縛っておきます。この作業により2月ごろまで畑での長期保存が可能となります。寒さで外葉が枯れてしまいますが、中は守られているので心配はありません。
白菜が巻かない(結球しない)主な原因と対策

rogue/ PIXTA(ピクスタ)
白菜を栽培していると、「白菜が巻かない(結球しない)」という現象が時折見られます。白菜が巻かなくなる原因は何なのでしょうか? また、対策についても紹介します。
原因1:播種の時期が遅かった
播種の時期が遅いと結球しません。結球する温度は15度までといわれており、15度以下になると結球できなくなります。
さらに、夏の終わりから秋にかけて気温が低かった場合も、苗が十分に育たず結球しない原因にもなるので、地域ごとの播種時期を確認したうえでタイミングを逃さないようにすることが大切です。
原因2:肥料不足・害虫被害による生育不良
白菜が巻かない原因には、「外葉の成長不足」「害虫による成長の阻害」が原因として挙げられます。
成長期の肥料不足や害虫の被害によって、外葉の生育不足・枚数不足になると十分に光合成をすることができません。外葉が光合成をすることによって結球するための栄養を得ているため、外葉がうまく育たずに光合成が不足すると、結球できなくなるのです。
害虫では、夏から初秋にかけての「ハイマダラノメイガ」への対策が重要です。ハイマダラノメイガの幼虫は、作物の生長点である芯を好んで食害するため、著しく生育が阻害され、結球にいたらないことがあります。
結球・収穫・出荷まで十分に育てるためには、以下のことに注意しましょう。
・基肥
・適切なタイミングでの追肥
・農薬やネットを利用した害虫防除
これらをしっかりと行うことで、結球までの生育を促すことができます。
結球しなかった白菜の使い道
結球しなかった白菜はそのままほ場においておけば、春に「とう立ち菜」としての収穫が可能です。「とう立ち菜」は食べごろがつぼみのうちだけと短く、一般的な流通ルートにはのりにくいため、多くのところでは自家消費、もしくは直売所へ卸すことが多いようです。
白菜の基本的な栽培方法から害虫対策、白菜が巻かない原因までを解説しました。栽培前に、栽培方法やコツ、害虫対策をしっかりと練ってから取り組むことで、計画した生産量を確保できるようにしましょう。
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鎌上織愛(かまがみおりえ)
北海道出身。両親は北海道で農業を営む現役の農業者で、自身も幼少期より農作業を行う。農作物はもち米・人参・アスパラガス・とうもろこしを中心に、ハウス一棟を自家菜園として様々な種類の野菜を育成する。現在は食生活アドバイザーとして、ライターなどの執筆活動の傍ら、こどもの食育などに力を入れている。