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特別栽培農産物とは?定義や減農薬・減肥料の基準を解説

特別栽培農産物とは?定義や減農薬・減肥料の基準を解説
出典 : 川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

特別栽培農産物とは、農林水産省ガイドラインに定められた農薬や化学肥料についての特定の基準をクリアした作物のことをいいます。この記事では、特別栽培農産物の基準を具体的に説明したうえで、対象となる農産物や表示に関するガイドラインをわかりやすく解説します。

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農産物の栽培中の使用農薬等に関心を持つ消費者が農産物を購入する際の目安にするために生まれた基準が、農林水産省の『特別栽培農産物に係る表示ガイドライン』です。

特別栽培農産物の表示ができれば、作物に付加価値をつけて販売できます。そこで本記事では、特別栽培農産物に該当する作物や表示例を紹介しましょう。

減農薬や減化学肥料で作られたことを示す特別栽培農産物とは

特別栽培農産物

優/PIXTA(ピクスタ)

農業の世界では、農産物を消費者に安心して買ってもらうために、減農薬栽培や減化学肥料栽培とその表示が注目されています。減農薬栽培と減化学肥料栽培の農産物のうち、農林水産省が定めた基準をクリアし「特別栽培」表示が可能なものが「特別栽培農産物」です。

特別栽培の定義

特別栽培農産物

優/PIXTA(ピクスタ)

「特別栽培」とは、節減対象農薬と化学肥料の両方を規定量減らして作物を栽培することをいいます。

よく似た言葉に、減農薬栽培(減化学肥料栽培)や無農薬栽培(無化学肥料栽培)があります。

「減農薬栽培(減化学肥料栽培)」は、通常よりも栽培時の農薬(化学肥料)を減らして作物を育てることを指します。まったく農薬(化学肥料)を使用しない栽培方法が「無農薬栽培(無化学肥料栽培)」です。

ただし、定義が曖昧で消費者が誤解しかねないとの理由から、現在はこれらの言葉の使用は禁止されており、「特別栽培」のみ使用可能です。

ちなみに、特別栽培には該当せず、農薬と化学肥料どちらかを減らして、または使わないで作られた作物は、「農薬(化学肥料):当地比○割減」または「農薬(化学肥料):栽培期間中不使用」などと記載します。

特別栽培の基準

特別栽培農産物と表示するには、農産物の生産地域ごとに定められた基準値に対して、節減対象農薬の使用回数、化学肥料に含まれる窒素成分がともに50%以下でなくてはなりません。

例えば、高知県では米を栽培する際、節減対象農薬使用の慣行基準は20回で、化学肥料に含まれる窒素成分の慣行基準は10kg/10aです。つまり、節減対象農薬の使用を10回、化学肥料に含まれる窒素成分を5kg/10aに抑えれば、特別栽培米と表示することができます。

出典:高知県農作物栽培慣行基準

特別栽培農産物ガイドラインのポイント

登米市の環境保全米特別栽培農産物生産ほ場

masy/PIXTA(ピクスタ)

実際に特別栽培の基準で作物を育てた場合は、「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」で表示の仕方を確認しましょう。生産から販売まで、農業に関わる全ての分野において守られるべき基準が記載されています。ここでは、特別栽培農産物ガイドラインにおいて、特にチェックすべきポイントと記載内容を解説します。

適用される対象

特別栽培農産物の対象は、未加工の野菜または果実、乾燥調整した穀類、豆類、茶などです。野菜と果実は、流通プロセスの中で着色されたり、調理されたりすれば特別栽培農産物を名乗れません。そして、不特定多数の消費者に向けて販売されることが大前提です。

生産の原則

特別栽培農産物の原則では、農業の自然循環機能の促進を図るため、節減対象農薬や化学肥料の低減を基本としています。また、生産において農地の生産力の発揮、環境への負荷軽減もガイドラインに含まれます。

特別栽培農産物の意味

すでに説明したように、特別栽培農産物は地域の基準値に対して、節減対象農薬使用回数と化学肥料内の窒素成分を50%以下に抑えて生産しなければなりません。ガイドラインでは、特別栽培農産物を正しく規定するために「農薬」と「肥料」についても規定があります。

まず農薬には、『化学合成農薬』『天然由来物質』『生物農薬』などがあります。農薬とは、農薬取締法(昭和23年法律第82号)第1条の2第1項に規定されるものをいい、「化学合成農薬」は農薬のうち、化学合成された有効成分を含むものをいいます。

化学合成農薬のうち、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律施行令第10条第1号」で定めたれた農薬、肥料及び土壌改良資材(平成12年7月14日農林水産省告示第1005号)の1に掲げる農薬を除くものを「節減対象農薬」といいます。

節減対象農薬の詳細は、「特別栽培農産物に係る表示ガイドラインQ&A」のQ11も参照してください。

出典:「特別栽培農産物に係る表示ガイドラインQ&A」

また肥料も「肥料」と「化学肥料」の2種類に分けられます。「肥料」は肥料取締法(昭和25年法律第127号)第2条第1項に規定されているものをいい、「化学肥料」は化学合成された肥料です。これらはすべて分けて記載することが義務付けられています。

表示のルール

特別栽培農産物の表示に関わるルールは、ガイドラインの「第4 特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」に詳しい記載があります。なかでも代表的なルールが「表示票」です。これは、特別栽培農産物の情報を示しているラベルであり、絶対に貼り付けなければなりません。

表示票には「栽培責任者」と「確認責任者」の名前が記載されます。実際に作物を育てた「栽培責任者」だけでなく、基準を満たしていると認めた「確認責任者」の名前も記載する必要があります。米の場合は「精米責任者」「精米確認者」の名前が載ります。

表示の例

以下に表示票の例を紹介します。

「農林水産省新ガイドラインによる表示」
「特別栽培農産物」
(この2点は必ず上部に記載します。)

節減対象農薬:栽培期間中、「〇〇地域」にて6割減
(使用の有無、使用時の減少率を示します。)

化学肥料(窒素成分):当地比6割減
(同じく使用の有無、使用時の減少率を示します。)

栽培責任者:~~~~
住所:~~県~~郡~~村32-1
連絡先:電話番号1111-11-1111

確認責任者:~~~~
住所:~~県~~郡~~村5-1
連絡先:電話番号2222-22-2222

(栽培責任者も確認責任者も氏名と住所、連絡先を示します。)

なお、より安全性を証明したいときは、ホームページのURLを載せるなどして農薬、費用の使用状況を閲覧できるようにします。もしも輸入品を出荷するのであれば、輸入業者の連絡先を書くなど、ケースバイケースで記入事項が変わります。実際に特別栽培農産物の表示を記すときは、作物を育てている段階から情報を記録し、正確な内容を伝えられるようにしましょう。

本記事では「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」についてまとめました。

特別栽培農産物の基準を満たして表示できれば、安全な農産物という大きな付加価値をつけて販売することができます。

厳しいルールではありますが、メリットも大きいので、減農薬や減肥料で作物を栽培するなら、特別栽培農産物として表示できるようにし、販路拡大を目指しましょう。

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石塚就一

石塚就一

1984年京都府生まれ。会社員を経て、フリーライターに。京都府内でイベント運営や執筆活動する一方で、実家の農業にも従事している。主な生産物は米、ナス、京野菜。実践をともなった見地から、リアルな農業事情を伝えている。なお、京都市の町興しにも参加。目標は「全国区の知名度を誇るイベントを立ち上げて、京都の新しい魅力を広めること」。

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