アシストスーツを農業で活用!期待できる効果や導入価格の目安は?
農作業では、重たい荷物の持ち上げや、前かがみや中腰の姿勢を継続しての作業があり、慢性腰痛に悩まされる農家は後を絶ちません。そういった農作業時に体へかかる負担を軽減することができるツールとして、最近、アシストスーツが注目されるようになってきました。ここでは、アシストスーツを導入するにあたっての予備知識を詳しく解説します。
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体力を使う仕事に従事している人の中には、作業負担を少しでも軽減したいと考えている人もいるでしょう。製造業や介護業界で導入され始めているアシストスーツは、農作業でも活用できます。
そこで今回は、アシストスーツを導入するにあたってのメリットや、レンタル・購入時の費用の相場、補助金の有無を説明します。現在市販されているアシストスーツも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
アシストスーツとは
農業は体に負担がかかる作業が多い職種です。消費者へ直接販売ができるなど、やりがいはありますが、体に負担がかかりっぱなしでは長く続けられません。そこで最近では、農作業の負担軽減のためにアシストスーツが注目されはじめています。
アシストスーツとは、重たい荷物の荷下ろしや、重たい物を持った状態での作業などの際に、体への負担を軽減してくれる「着る」機械装置です。「パワースーツ」あるいは「パワーアシストスーツ」とも呼ばれます。
農業におけるアシストスーツの効果
eishin.tak / PIXTA(ピクスタ)
農業では、収穫した野菜や果実、米などの重い荷物を運んだり、荷下ろししたりする作業が必要です。そのため、肩や足腰には、常に大きな負担がかかります。高齢者となれば、その負担はさらに過酷で、腰痛やひざ痛に悩まされている人も多いでしょう。
例えば、みかんの栽培は山の傾斜で行われることが多いのですが、傾斜地での収穫は、足腰に負担がかかります。また、りんごの収穫であれば、梯子に登り、傷を付けないよう丁寧に収穫する必要があるため、腕や足腰に負担がかかるのは必至です。そういった農作業の際にアシストスーツを身に付けることで、体への負担を軽減し、作業効率を保つことができるのです。
近年ではさまざまな企業が、アシストスーツの開発に乗り出しています。中でも、和歌山大学の八木栄一教授は、農林水産省からの委託を受けて、主に農作業用のアシストスーツを開発したことで注目されています。
このアシストスーツは、腰の動きをセンサーが感知すると電動モーターが作動し、荷物の持ち上げや運搬、傾斜地での歩行や作業をサポートしてくれるというものです。荷物の持ち上げの際に、10~15kg分の腰への荷重をアシストしてくれます。スーツ自体は4.7kgと軽量で、リュックのようにして背負い、腹部・胸・脇・肩・太もものベルトを巻くだけで着用可能です。
農業用アシストスーツの購入・レンタル価格
Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)
アシストスーツの価格は幅が広く、数万円のものから数十万円のものまで様々です。
購入することを考えるとそれなりに高額ですが、レンタルならば比較的低コストで試すことができます。レンタル会社によって異なりますが、月額1万〜2万円以内で借りられるものや、日額1,000円からレンタルできるものもあります。購入を迷う場合は、まずはレンタルで使用感を試してから導入を検討するのも1つの手といえます。
農業へのアシストスーツ導入に関連した補助金
農作業の負担軽減にアシストスーツは便利ですが、購入にせよレンタルにせよ金銭的な負担は無視できません。そこで助けとなるのが、地方自治体による農業のスマート化に関連した補助金です。
例えば秋田県横手市では、パワーアシストスーツの購入費用を最大50%まで補助しています。助成対象者は、市町村の認定農業者や、3戸以上の機械利用組合など。横手市の定める農作物を栽培していることも条件となっています。
このほかの地方自治体でもスマート農業推進の一環としてアシストスーツに補助金を交付しています。アシストスーツの導入を検討している人は、一度地方自治体のホームページを確認してみるとよいでしょう。
農業用アシストスーツの事例
農業専用として市販されているアシストスーツや、農作業にも使用できるサポート機器を紹介します。導入を検討している人は、参考にしてください。
ラクベスト(クボタ)
株式会社クボタが開発したアシストスーツ「ラクベスト」は、腕を上げたままでの作業を支える機具です。ぶどう農園やりんご農園での棚上げ作業では、腕を上げた姿勢が続きます。人の腕の重さは3〜4キロあるので、腕を上げたままでいると肩にも大きな負担がかかります。
ラクベストはひじを支えることで腕の重みを支え、長時間腕を上げての作業が軽減されます。またリュックサック感覚で装着できるので、高齢者でも着脱が容易です。メーカー希望小売価格は132,000円です。
マッスルスーツ(イノフィス)
株式会社イノフィスの「マッスルスーツ」シリーズは、腰の補助に特化した製品です。農業には必ず収穫作業があり、短期集中的に腰を酷使します。
「マッスルスーツ」はリュックサックのように背負うスタイルの人工筋肉で、最大25.5㎏分の重量を補助することができ、収穫物が入ったコンテナを持ち上げる作業や中腰での作業における負担が軽減されます。
電力不要かつ防水仕様なので、野外での使用が多い農業利用にも安心です。約10秒で装着ができ、サイズは、S-M、M-Lの2展開。
従来は数十万円以上の価格でしたが、2019年11月に発売された「マッスルスーツ Every」は
メーカー希望小売価格149,600円という価格を実現しています。2年間のメーカー保証付きです。
サポートジャケット(ユーピーアール)
職場で発生する病気やケガのうち、腰痛は全体の約60%を占めるとされています。
ユーピーアール株式会社は、農業や物流、製造業などさまざまな業種での作業シーンのうち、特に腰への負担を軽減した数種のサポートジャケットを開発しています。
中でも「サポートジャケットEp+FIT(SLIM)」は重量わずか0.5㎏。前かがみでの作業が多く、腰に負担がかかりやすい農作業において、力を発揮してくれるでしょう。サイズは、S~LLまでの4サイズ展開。販売価格は27,500円となっています。
体が資本の農業にとって、体への負担を軽減できるアシストスーツは、長期的に農業経営を持続していくうえで見逃せません。本記事で紹介したメリットや事例、補助金などについての情報を参考にぜひ検討してみてください。
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杉山麻佑
高校卒業後、農業系の短大に進学。果樹について学び、短大卒業後は苗や種を扱う企業に就職。 現在は、お茶農家でもあるパートナーの仕事を手伝いつつ、フリーランスのWebライターとして活動中。また、自身もハーブ畑を管理するなど、精力的に農業に携わっている。