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台風対策!ビニールハウス(パイプハウス)の被害を抑える補強と保険

台風対策!ビニールハウス(パイプハウス)の被害を抑える補強と保険
出典 : 瑞鳳 / PIXTA(ピクスタ)

ビニールハウス(パイプハウス)の台風被害対策について紹介する記事です。ビニールハウスの構造から台風被害を抑える方法までを細かく解説しています。ビニールハウスの補強方法や、もしものときに役立つ保険の情報をお伝えします。

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日本の農業でさかんに使われている作物栽培のための施設がビニールハウスです。作物の育つ環境を調整し、風雨から守るために重要な役割を果たしています。

しかし、ビニールハウスも大型台風などが来ればダメージを受け破損する可能性もあり、その場合作物を守れなくなるだけでなく、修復するのに莫大なコストがかかってしまいます。

ビニールハウスの構造を正しく理解したうえで、災害から守る方法や適切な保険制度などを知っておきましょう。

一般的なビニールハウス(パイプハウス)の構造

ビニールハウスのアーチパイプと直線パイプ

austro / PIXTA(ピクスタ)

ビニールハウスは主に側面、妻面(つまめん)、ビニールによって構成されています。アーチパイプと直線パイプによって構成されている部分が側面、扉や換気扇を設けるための部分が妻面です。そして、これらの面をビニールで覆ったものがビニールハウスです。

そのほか、妻柱(つまばしら)、側梁(がわばり、そくばり)、妻梁(つまばり)などと呼ばれるパイプを各所に配置して、ハウスを補強しています。そのため、ビニールハウスは「パイプハウス」と呼ばれることもあります。

台風に強いビニールハウスの選び方

ビニールハウスを選ぶ際には「台風対策」を考えましょう。日本は台風が上陸しやすく、無策のままだと畑やハウス自体に甚大な被害が及んでしまいます。

まず、最大瞬間風速に対する強度が重要です。パイプの強さ、ビニールの質などをチェックし、より耐風性の高いハウスを建てなければなりません。ただし、高性能のハウスはコストも高くなります。台風がどれほど頻繁に訪れる地域なのかを踏まえたうえで、費用対効果を計算しましょう。

また、10年以上の長期間にわたるハウス利用を考えるのであれば、当初から耐久性の高いハウスにするのも方法の1つです。超大型台風の上陸に耐える仕様のハウスがこれにあたります。反対に、10年程度の使用期間を想定しているなら通常の台風をしのげれば十分、とも考えられます。

台風被害を抑える事前の補強方法

ビニールハウスにとって、台風被害は死活問題です。さまざまな方法を検討し、ダメージを最小限に抑えましょう。

タイバー・クロスを用いた肩部の補強

アーチパイプが変形してしまうとハウスは重みを支えきれず倒壊してしまいます。補強用パイプのタイバー、クロスバーをそれぞれ逆T字、Xの形に組み込んで、ハウスの構造を強化します。いずれも横風によるアーチパイプのゆがみを防ぐための補強手段です。

筋交い直管を用いた妻面の補強

台風では妻面が受ける風にも注意しなければなりません。激しい風が吹けば縦方向へドミノ倒しのように変形してしまうからです。そこで、妻面の棟からアーチパイプ沿いに、鋭い角度から直管を組み込みます。なお、管の端は地面の下に深く埋めるのがコツです。

被覆資材の劣化箇所の補強

被覆資材が破れていると風がハウス内に侵入してしまいます。その部分から破れ目がどんどん拡大していくこともあるため、迅速に補修しなければなりません。補修はテープを用いることが大半です。農業用品店、ホームセンターなどで販売しているビニールハウス補修テープを用いるとよいでしょう。

防風ネットなどを用いた浮きあがりに対する補強

吹き込んできた風でビニールが浮き上がってしまうと作物は危険にさらされます。対策としては、基礎部分を補強してビニールハウスの構造自体を固めていくことです。また、ビニールシートを支柱などに固定するスプリングやパッカーなどでビニールを固定するのも選択肢に加えておきましょう。

台風予報が出てから行う対策

ビニールハウスの台風対策では開口部を全て閉めることが基本

sammy_55 / PIXTA(ピクスタ)

ニュースなどで台風予報を確認してからでも行える対策があります。わずかな工夫が被害を食い止めることもあるので、できる限りの対策をとりましょう。

戸締まりをしっかり行う

基本でありながら、効果の大きい対策です。少しの隙間も残さないよう、ハウス全域を点検して風の侵入を防いでください。

ハウス内の作物の状況によりますが、ビニールをはがしてしまうのも、時として防風対策になりえます。古い資材を使っていると、そこから被害が拡大することも珍しくありません。そうした場合には、ビニールを除去しておいたほうがダメージを抑えられます。

周辺の飛散物を整理する

強風による飛散物がビニールを傷つけることも少なくありません。ハウスの周囲に設置されている作業道具や石、ゴミなど、危険なものがないか確認しておきましょう。見つけたら徹底的に遠ざけておきます。

また、ハウスの基礎(床部分)に浸水しないよう、排水溝が詰まっていないかも確認しておきます。排水が上手くいかないと、ハウス内が水浸しになり作物にダメージを与えかねません。

空調設備を確認する

ヒートポンプエアコンは止めておいたほうが安全です。強風下で稼働させているとファン部分に負荷がかかりトラブルを招きます。

また、室外機は風で吹き飛ばされると大きな被害をもたらすので、ブルーシートで巻くなどして固定するのが得策です。

一方、換気扇は稼働しておくとビニールハウス内の気圧を下げて浮き上がりを避けられます。

知っておきたい保険と補助金について

ビニールハウスの前に立つ農家の女性

YUMIK / PIXTA(ピクスタ)

共済制度や保険制度によっては、台風などの自然災害にも対応しています。
例えば、「園芸施設共済」ではビニールハウスも共済の対象としています。農業用施設を所有、管理している人なら誰でも加入が許されている制度です。また、民間の火災保険などでビニールハウスが適用されることもあります。

「収入保険」もチェックしておきましょう。確定申告の際、青色申告を選ぶことで加入が認められる保険です。台風などの災害のほか、価格が下落して農業の収入が激減したときも補てんしてもらえます。農産物の市場は変動しやすいので、加入しておいたほうが無難といえるでしょう。

なお、園芸施設共済や収入保険制度は農業共済組合が案内しているので、興味のある人は窓口に相談してください。

加えて、農業に関係する交付金や事業も積極的に利用してみましょう。耐風など、自然災害に強いビニールハウスを作るには、費用を一部助成してくれる「強い農業づくり交付金」などが要注目の交付金です。

また、ビニールハウスが倒壊した場合に、撤去費用を支援するのが「災害復旧事業」です。これらの制度は自治体が窓口になっています。まずは役所に相談して、担当者を紹介してもらいましょう。

※各制度の詳細は以下のページをご覧ください。
農林水産省「農業共済|園芸施設共済」所収「園芸施設共済の概要(令和3年4月)」
農林水産省「農業共済|農業経営の収入保険」
農林水産省「災害復旧事業」

近年、台風は大型化傾向にあります。本格的な台風シーズンを迎える前に、ビニールハウス(パイプハウス)の補強に加え共済制度や保険制度の活用も積極的に検討しておきましょう。

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石塚就一

石塚就一

1984年京都府生まれ。会社員を経て、フリーライターに。京都府内でイベント運営や執筆活動する一方で、実家の農業にも従事している。主な生産物は米、ナス、京野菜。実践をともなった見地から、リアルな農業事情を伝えている。なお、京都市の町興しにも参加。目標は「全国区の知名度を誇るイベントを立ち上げて、京都の新しい魅力を広めること」。

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