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企業参入は進んでいる?植物工場の現状とこれからの展望
出典 : YNS / PIXTA(ピクスタ)
  • 農業経営

企業参入は進んでいる?植物工場の現状とこれからの展望

植物工場は天候に関わらず年間を通して均質な作物を安定供給できることから需要が高まりつつあります。近年のLEDの普及や遊休施設の利用によって導入コストが下がり、政府の支援も厚いため新規参入も活発化しています。今後どのような展望が見込まれるのでしょうか。

太陽と土の中で自然に向き合い命を育むのが農業なら、自然から遮断され人間によって制御された環境で物を作るのが工場です。その両方の要素を持つ植物工場は、この30年余りでどのような進化を遂げているのでしょうか。その現状と将来性について解説します。

植物工場とは

施設園芸農業では、光、温湿度、二酸化炭素濃度、養分などを制御して作物を栽培します。

ここでいう植物工場とは、施設の気密性を保ち、環境や生育のモニタリングに基づいた高度な環境制御を行うことで、天候の影響を受けず野菜などの作物を計画的に周年生産できる施設をいいます。収穫量や規模による定義はありません。

植物工場はさらに、大きく3種に分けることができます。

1. 温室などの半閉鎖的な環境で太陽光のみを利用する「太陽光型
2. 太陽光の届かない閉鎖された環境で人工光のみを利用する「人工光型
3. 温室などで太陽光を利用しながら夜間などに人工光で補光も行う「太陽光・人工光併用型

LED型の植物工場で栽培されるレタス

YNS / PIXTA(ピクスタ)

日本における植物工場の現状

日本で植物工場が注目され始めてからおよそ30年が経ちました。その間に植物工場はどのように発展し、企業参入はどれくらい進んでいるのでしょうか。

思うように普及が進まないながらも着実に進化を遂げてきた植物工場の動向をたどりましょう。

企業の参入状況とこれまでの動向

日本ではこれまでほぼ10年おきに植物工場が大きく進展し、注目されてきました。

1980年代

初めて注目されたのは1980年代半ば頃です。1985年につくば科学万博で株式会社日立製作所が公開した人工光型モデルプラントなどが代表的な施設です。

この頃の光源はナトリウムランプで、一段棚の平面栽培でした。ショッピングセンターやモールで食品売り場に小さな植物工場を併設し、工場見学や野菜直売といった消費者への積極的なアピールが話題となりました。

1990年代

1990年代の大きな進展は、キューピー株式会社がマヨネーズ拡販戦略として植物工場のユニット販売を開始したことにはじまります。光源はまだナトリウムランプで、栽培ベッドをV字型に配置することで管理を簡易化し生産性を大きく向上させました。

同時期に農林水産省が植物工場の普及を支援し始めたことで、現在も生産を続ける川鉄ライフ株式会社(現JFEライフ株式会社)がアメリカから技術導入した施設で販売開始するなど、企業の参入が相次ぎました。

残念ながら、当時はコストがかかりすぎて採算ベースに乗せることができず、ほとんどの企業が撤退しています。その後、技術的には蛍光灯を利用した多段式の設備が主流となり、生産性が飛躍的に向上しました。

2000年代以降

2009年には、農林水産省と経済産業省が共同で、大学や企業を集めて植物工場の普及・拡大に向けた「植物工場ワーキンググループ」を設置。研究開発が一気に進み新規参入が増えました。

一般社団法人日本施設園芸協会 「平成31年度次世代施設園芸地域展開促進事業報告書」によると、参考値(注)ですが2016年2月時点の施設数は306ヵ所、2019年2月時点の施設数は392ヵ所で、最近3年で80ヵ所以上増加しています。

(注)同報告書では、太陽光型は必ずしも網羅的に把握できていない可能性があること、設面積が概ね 1ha 以上で養液栽培装置を有する施設に限定しており、施設の規模などが確認できない場合はリストに掲載していないことから、参考値としています。

植物工場 施設数の推移グラフ

出典:一般社団法人日本施設園芸協会 「平成31年度次世代施設園芸地域展開促進事業報告書(別冊1)」よりminorasu編集部作成

農林水産省などの積極的な普及促進もありますが、LEDの普及により、多段式の設備の性能が飛躍的に上がり、省エネ化が進むなど、コスト問題が解決しつつあることも増加の要因と考えられます。

植物工場で栽培されている主な作物の種類と生産量

植物工場での栽培に向くのは、ある程度の品種に限られます。

太陽光型は果菜類に向き、中でも周年安定した需要があり比較的栽培しやすいトマト類が72%を占めており、イチゴやパプリカなどのそのほかの果菜類が13%と続きます。

人工光型では水耕栽培が可能で光の要求量が少なく、比較的栽培しやすいレタス類が92%と圧倒的多数を占めています。

併用型ではトマト類、そのほかの果菜類、花き類の3つが22%と並んでいます。

出典:一般社団法人日本施設園芸協会 「平成31年度次世代施設園芸地域展開促進事業報告書(別冊1)」

植物工場産作物の主な出荷先

植物工場で生産された作物の出荷先は、量販店や外食産業、加工業者などと直接契約を結んで販売する「市場外出荷」が大半を占めています。

この傾向は太陽光型、人工光型で90%以上と特に高く、併用型では54%にとどまる反面、市場出荷を利用する事業者が77%に上ります。これは、併用型の事業者は大半が農家や農地所有適格法人であり、もともと市場出荷率が高いためと考えられます。

販売額で見ても、市場出荷額が占める割合が2割未満という事業者が57%と半数を超え、8割以上という事業者は22%にとどまり、市場外出荷が主流を占めていることがわかります。また、直接契約が多いため、取引先件数は各栽培形態とも数件から数十件と分散傾向が見られます。

出典:一般社団法人日本施設園芸協会 「平成31年度次世代施設園芸地域展開促進事業報告書(別冊1)」

太陽光型の植物工場の栽培作物の7割をトマトが占める

hamahiro / PIXTA(ピクスタ)

出荷額からみる市場規模の推移と予測

植物工場野菜は「雑菌が少なく日持ちがいい」「品質が均一」といった点や、葉菜類に限られますが減農薬栽培ができる点などが評価され、人気が高まっています。

また、近年の異常気象によって露地栽培野菜の相場が乱高下することから、周年安定した価格での提供が可能な植物工場の野菜は、スーパーのブランド野菜や外食・中食などの業務用途の需要が急増しています。

工場の機能も飛躍的に向上し、大規模な工場では1日にレタス類を数千株から2万株もの生産力を備えるところも出現しています。需要の増加に応えられる生産体制が整うことから、今後ますます工場生産野菜の市場規模が拡大していくことが予想されます。

矢野経済研究所による推計では、植物工場のうち人工光型に限った場合の運営市場規模(生産者出荷金額ベース)は2018年度以降、前年度比130~160%の成長を見込んでおり、2022年度には277億円にもなると予測しています。2017年度は54億円だったので、5年間でおよそ5倍もの伸長が予測されています。

出典:株式会社矢野経済研究所プレスリリース「異常気象による露地野菜調達相場の乱高下のなか、業務用途を中心に植物工場野菜需要が拡大、2017年度は前年度比111.0%に」

植物工場が抱える課題と将来の展望

植物工場の市場規模拡大において一番の課題は、設置・運営にかかるコストです。工場の規模、太陽光型か人工光型か併用型か、光源、栽培品目などの条件によって必要な建屋や関連資材などが大きく異なるため、一概に平均コストを出すことはできません。

参考までに、1日あたり5,000株クラスのレタス類を生産する人工光型の植物工場を例にすると、建屋と栽培施設の建設にかかる初期投資は大雑把に見積もって5~6億円。これは一から工場を建設する場合で、廃校の体育館やほかの工場跡地などの遊休施設を利用すれば半分近くまでコストを抑えることも可能です。

出典:ビジネス+IT「足掛け30年、植物工場がようやく「もうかる事業」になれたワケ」

こうした初期投資の負担を少しでも軽減するため、農林水産省では「強い農業づくり交付金」など植物工場の普及を促進するための補助制度を設けています。その一つである6次産業化支援ファンドを利用して成功した「ベルグ福島株式会社」の事例により、植物工場が、1次産業(生産)・2次産業(加工)・3次産業(販売)のすべてを一体的に行う6次産業化にも対応できることがわかります。

参考記事:「ベルグ福島の野菜苗生産はなぜ成功したのか?6次化ファンドの活用事例」

太陽光型植物工場の外観

YNS / PIXTA(ピクスタ)

植物工場による野菜の生産は、多くの需要がありながらコストがかかりすぎるために普及が進みませんでした。

しかし、遊休施設の利用やLEDの普及に伴いコストダウンが可能となったことや、政府による多くの支援策が用意されたことにより、最近では新規参入が急増しています。

6次産業化の波にも乗って、将来的には、植物工場が日本の食糧生産にを貢献していく可能性もあるでしょう。

大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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