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高所作業車の運転に資格は必要? 果樹栽培を効率化する導入事例

高所作業車の運転に資格は必要? 果樹栽培を効率化する導入事例
出典 : ヨシヒロ / PIXTA(ピクスタ)

果樹栽培では、高い位置でのさまざまな作業が、農家に大きな負担をかけてきました。高齢化が進む農家にとっても、若い担い手にとっても、高所作業車の導入による省力化は、果樹栽培を継続するうえで大きな助けとなるでしょう。そこで果樹栽培への高所作業車の導入について、基礎から具体的な事例まで含めて詳しく解説します。

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果樹栽培での受粉・摘果・剪定・収穫などの高所での作業は、それぞれの作業適期が短く、1日の作業時間が長くなることもあり、果樹農家の働き手に大きな負担をかけてきました。

購入費はかかりますが、高所作業車を導入すれば、身体への負担が軽減され、作業時間も短縮できます。

この記事では、高所作業車の導入を検討する果樹農家のために、高所作業車を使うメリットと、具体的な導入事例や機種の選択方法について紹介します。

果樹の手入れや収穫で効率化を目指せる「高所作業車・高所作業機」

桃の受粉作業

taki / PIXTA(ピクスタ)

高所作業車は、作業台の最大高が2m程度の小型タイプから、10m程度の大型タイプまでさまざまなタイプがあります。動力源には、エンジンとバッテリーとの2つのタイプがあります。

農業で使われる高所作業車は、タイヤ式よりもクローラ式(一般的にキャタピラ式と呼ばれるタイプ)が多く、特に果樹園のように起伏のある土地では、地形にかかわらず安定的に走行できるクローラ式が一般的です。

作業車には通常、1人の運転者が搭乗します。作業台が垂直に昇降するリフト式と、クレーンのように旋回可能なブーム式とがあるので、農作業に合ったタイプを選ぶとよいでしょう。

果樹園で高所作業車を導入するメリット

りんごのように高木性の果樹では、果樹上部での作業には脚立を使う必要があります。1本の樹で作業が終わると、その都度、脚立を移動させて次の樹の作業に取りかからなければなりません。
脚立を持って移動しながら、果樹の下部から上部までの広い空間で作業を進めることは、肉体的にかなりの負担を伴うため、特に高齢者が多い農家にとっては大変な重労働です。

一方で、高所作業車は作業台に乗ったまま、果樹下部から上部までを一連の流れとして作業することができます。1本の樹の作業が終われば、搭乗したまま別の樹に移動することも可能です。また、ブーム式(クレーンタイプの作業機)の場合は、一定の位置からブームを旋回させながら、周辺の果樹で自由に作業ができます。

ほかにも、高所作業車を作物や資材の運搬車として使うことも可能です。

高所作業車の導入によって、受粉・摘花・摘果・剪定といった繊細な作業においても、収穫・運搬といったパワーの必要な作業においても、身体への負担軽減と、作業時間の短縮というメリットが得られます。

高齢化が進む農家にとって大きな助けとなり、また、大規模経営における生産効率アップにもつながることでしょう。

高所作業車を運転するのに必要な免許・資格

高所での作業は危険を伴うため、高所作業車を扱うには専門の資格を取得する必要があります。資格の種類は大きく分けて2つあり、作業台の到達点の高さによって分類されています。

1つ目が、「高所作業車運転技能講習」です。作業台の高さが10m以上に達する高所作業車を扱うには、「高所作業車運転技能講習」の修了が必要です。もちろんこの技能講習を修了すれば、作業台の高さが10m未満の作業車も扱うことができます。

2つ目が、「高所作業車特別教育」です。「高所作業車特別教育」を修了すると、作業台の高さが10m未満の高所作業車を扱うことができるようになります。

特別教育は技能講習に比べて、修了にかかる時間と費用が抑えられます。農業で使用する作業車のほとんどは作業台の到達点が高くても3m程度であるため、技能講習ではなく特別教育の修了で十分であることが多いでしょう。なお特別教育の修了のみでは、作業台の高さが10mを超える作業車は扱うことができないため注意が必要です。

以上の技能講習や特別教育、危険再認識教育は、高所作業車運転技能に係る教育機関として登録されている教習所で受講することができます。

また厚生労働省は、技能講習または特別教育の修了から10年以上経過した人に対して、危険再認識教育の受講を推奨しています。

高所作業車を扱う際には必ず資格を取得し、また資格取得後も定期的に講習を受けて、安全に作業を行えるように心掛けましょう。

高所作業車で果樹栽培を効率化した活用事例とその効果

りんご 摘果作業

dr30 / PIXTA(ピクスタ)

ここからは、果樹栽培に高所作業車を導入した場合、どのようなメリットが生まれるのか、実例をもとに紹介しましょう。

りんご栽培での作業時間短縮効果

秋田県のあるりんご農家では、クローラ式の高所作業車を導入したところ、作業効率が大幅にアップしました。収穫作業にかかる日数は今までの2分の1ですみ、摘花・摘果作業も、約70日かかっていたものが約50日に短縮されました。
出典:現代農業用語集「高所作業車」 

りんご栽培では、作業負担軽減のために、わい性台木と整枝技術を組み合わせた低樹高栽培という技術も開発されていますが、適用できる品種などの制約が残ります。

高所作業車には、栽培方法や品種による違いにかかわらず、りんご栽培の生産性をあげることができるというメリットがあります。

みかん栽培での作業負担の軽減効果

長崎県では、果樹栽培に高所作業車を導入した場合、作業者への肉体的な負担がどれくらい軽減されるか、実作業と比較した実証実験を行いました。比較対象は、高所作業車を使わない作業と、使った作業との2つで行いました。

その結果、みかん園での肥料運搬で高所作業車を使った場合、作業後の心拍数上昇が、男性では約12%、女性では約55%抑えられました。剪定作業でも、心拍数上昇が約10~20%抑えられました。
出典:農林水産省 普及活動事例

農業用高所作業車の参考価格と製品例

桃の摘花作業

ノリさん / PIXTA(ピクスタ)

最後に、農業用の高所作業車を導入するうえで、気になる価格と車両の選び方について解説します。

高所作業車の一般的な相場は、メーカーによる違いはあるものの、新品の場合70万~200万円程度です。その中で最もラインナップが充実しているのは、100万円前後のタイプです。

設備投資を抑えたい場合は、中古の高所作業車を探してみるか、短期間から借りられるレンタルを利用することも1つの方法です。

【製品例1】丸山製作所 ブーム式高所作業機 MFH-G353

丸山製作所のMFH-G353はブーム式の高所作業車で、作業台の床面高さは300~3,500mm、出力3.1kW(4.2PS)のエンジンに、油圧ブームを採用しています。

安全性の高いWロック機構の作業台と、メンテナンスが容易なフルオープンタイプのエンジンを搭載しています。メーカー希望小売価格は、897,600円(税込み)で、コンテナ台やイスなどはオプションとして用意されています。

【製品例2】やまびこ 共立農用高所作業機 KCGL20A

共立のKCGL20Aはリフト式の高所作業車で、作業台の床面高さが425~1,990mmの小型タイプです。エンジン出力は3.0kW(4.1PS)、作業台の左右には幅30cmの補助ステップがついています。

運搬車としても200kgまで積載でき、安全性と操作性を高めた高所作業車です。メーカー希望小売価格は、715,000円(税込み)です。

果樹栽培においても農家の高齢化が進む中、高所作業車の導入による作業負担の軽減は、事業継続の大きな助けになるでしょう。また、若い担い手にとっても、高所作業車の導入を含め、省力化を進めることは、将来の経営規模拡大につながります。今回の記事が高所作業車導入の検討に役立てば幸いです。

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大澤秀城

大澤秀城

福島県で農産物直売所を立ち上げ、店長として徹底的に品質にこだわった店づくりを行い、多くの優れた農家との交流を通じて、農業の奥深さを学ぶ。 人気店へと成長を遂げ始めたさなかに東日本大震災によって被災。泣く泣く直売所をあきらめ、故郷の茨城県で白菜農家に弟子入りし、畑仕事の厳しさを身をもって体験する。 現在は農業に関する知識と体験を活かしながら、ライターと塾講師という2足のわらじで日々歩みを進めている。

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