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花き農家がフルーツビジネスに挑戦 ~後編:次世代が拓く新しいイチゴ狩りビジネス~
出典 : やすださん家のスィーツ園ホームページ
  • 農業経営

花き農家がフルーツビジネスに挑戦 ~後編:次世代が拓く新しいイチゴ狩りビジネス~

前編では、保田花香園の創業者である保田幸雄さんに、マンゴー栽培への挑戦と農業経営の秘訣を聞きました。後編ではご子息であり現在の代表である保田健一さんに、乳酸菌入りイチゴという新たな技術とイチゴ狩りビジネスを組み合わせた新たな挑戦についてお聞きします。

創業者の保田幸雄さんの研究者肌の気質は、ご子息の保田健一〈以下、保田(健)〉さんにもしっかりと次の代に 引き継がれています。

保田(健)さんは現在、イチゴ狩りビジネスと乳酸菌入りイチゴという新技術を組み合わせ た事業に取り組んでいます。早速お話しを伺いました。

やすださん家のスィーツ園(保田花香園)プロフィール

創業者の保田幸雄(やすだゆきお)さんは、茨城県内でまだ花き栽培が本格化する前に、ポットマム(洋菊)の栽培に挑戦。さらに10年前からフルーツマンゴーの生産に挑み、本場沖縄・宮崎よりも平均糖度が高いマンゴーを生産する農園として各種メディアで紹介され注目を集めている。

経営を引き継いだ現代表の保田健一(やすだけんいち)さんは、「お客様と共に収穫の歓びを楽しめる農園」をめざし、「やすださん家のスィーツ園」としてイチゴ狩りビジネスを展開。現在は、日本初 となる乳酸菌入りイチゴの生産に取り組んでいる。

創業者:保田幸雄さん
代表:保田健一さん

代表の保田健一さん。2021年にオープン予定の乳酸菌イチゴ狩り用施設にて

代表の保田健一さん。2021年にオープン予定の乳酸菌イチゴ狩り用施設にて

経営者となる覚悟で実践から学ぶ日々

保田(健)さんは大学卒業後に東京大田市場へ就職し、農産物の流通についてノウハウを得たのち、両親が経営する農園に就農しました。

研修は「社長として農場を経営する」ためのもの

保田(健) しばらく父のもとで研修を受けたのち、ビニールハウスの1区画を与えられ「そこで花き農業を自分で経営してみろ」といわれました。

父はよくほかの研修生たちに「君たちは研修が終わったら、もう社長としてそれぞれの農場を経営していかなければならない。もっと真剣に学びなさい」といっていました。その言葉は息子の私に対しても同じように向けられ、私は実践の中で農業経営を学ぶことになったのです。

一見厳しいようにも見えますが、それによって経営者としての自覚と覚悟が生まれ、花き農業をビジネスとして捉える視点が身についたと思います。

1棟のビニールハウスの運営から経営を学ぶ

保田(健) 1棟のビニールハウスを建てるのにどのくらいの費用がかかり、肥料や農薬のコスト配分をどのように考えれば、花きの品質が向上し、どのくらいの収益が見込めるのか。そういったことを常に考えながら仕事に取り組むようになりました。

全てをノートに記録し研究する姿勢は親譲り

保田(健) また、父が常にノートに書き記す習慣を目にしていたので、私も花き栽培の過程や今後の改良点などを常にメモに残す癖が身についていきました。大学でさんざん書いたレポートや研究論文と同じです。よりよい品質にしようという探究心は、親譲りだと思います。

それと、父から教わったことを2度聞かないようにしようという負けん気もありました。今思えば、そうした探究心と負けん気が、まだ誰も実現していないイチゴ栽培の挑戦につながったといえます。

乳酸菌入りイチゴという、新しい領域への挑戦のチャンスをつかむ

その挑戦とは、おそらく日本初 となる「乳酸菌入りイチゴ」栽培をビジネスとして実践するという前例のないプロジェクトです。どのような経緯で、そうした試みを始めることになったのでしょうか?

保田(健) 野菜や果物に乳酸菌を入れると、味にコクが出たり、日持ちがよくなったりすることが、群馬県にある酵素販売会社の研究で明らかとなっていました。

その酵素販売会社の経営者と、私がイチゴ農業を始めるに当たってパートナーシップを組んだ会社の経営者が知り合いで、私を含め3者でお会いする機会に恵まれたのです。

それで、さまざまな話を伺ううち、イチゴにはまだ乳酸菌入りの農法は応用していないことが分かりました。しかも、そのノウハウを提供するのは、1品目1農家のみという話でした。

「誰も実現したことのない農業分野があるなら、実現させてみたい」。そして、「父も新たな農業に挑戦している。ならば自分も、父に負けずに挑戦してみよう」と思ったことが、チャレンジのきっかけとなりました。

イチゴ狩りビジネスへの展開

保田(健)さんは、約3,000万円の投資をして、イチゴ狩り専用のビニールハウスも建てました。 通常栽培のイチゴと、乳酸菌入りのイチゴを食べ比べることのできる工夫がなされているそうです。

保田(健) ハウスの中には栽培ベンチが20設けてあり、通常栽培のものと乳酸菌入り栽培のものを10ベンチずつエリア分けしています。そして、それぞれに「紅ほっぺ」「章姫(あきひめ)」「恋みのり」「いばらキッス」の4品種を栽培しています。

つまり、合計8種類のおいしさを自由に食べ比べることができる仕組みになっています。

父の「小美玉SUNマンゴー」ビジネスで農園内に集客が見込めることは分かっているので、その追い風を利用して、このイチゴ狩りビジネスも成功させたいと考えています。

今年はコロナ禍で中断を余儀なくされましたが、2021年1月初旬からオープンさせたいと保田(健) さんは語ります。

やすださん家のスィーツ園 イチゴの品種紹介パネル

イチゴへの興味をもっていただく工夫として品種毎の特徴を詳しく紹介

「目配り、気配り、心配り」が農業経営の秘訣

そうした新しい農業にチャレンジし、成功させるには、研究心のほかに何が必要なのでしょう?  保田(健)さんに秘訣を伺うと、「これも、父が常に口にしていた言葉ですが」と前置きして教えてくださいました。

保田(健) 父からは「目配り、気配り、心配りがなくては、農業もほかの仕事も成功しないし、絶対に続かない」と教えられました。

【目配り】作物を見る観察眼を磨く

保田(健) 「目配り」とは、観察眼です。

農作物がどのような状態で育っているか、葉の色は大丈夫か、触感やにおいに異常はないか、肥料や農薬を散布するタイミングはどうかなど、観察しようと思えばいくらでも観察できます。

親が自分の子の健やかな成長を見守るように見る目が、農業には必要なのだと思います。

【気配り】栽培環境の変化にいち早く気づく

保田(健) 「気配り」とは、周りの環境の変化に気をめぐらすことです。

例えば、風で苗が倒れている、今年は例年より冬が続きそうだ、土の乾きが少し早いかもしれない、などです。ただ漫然と農園内や天候、社会情勢を眺めているだけでは気づかない変化にいち早く気づき、いち早く対応する日ごろの気配りが、農作物の品質に大きく影響してきます。

【心配り】農園にかかわるすべての人への感謝と配慮

保田(健) 「心配り」とは、人に対する心配りです。例えば、父は人に教えを乞うときは、どんなに近しい友人でも手土産を用意し、頭を下げ、相手が「もういいよ」と遠慮しても礼儀をつくします。

もともと経営者としてこの農園を切り盛りしてきただけに、父は忙しい相手の貴重な時間を使ってしまう申し訳なさを誰よりも理解しているからです。

自分を導いてくれた人、仕事を手伝ってくれた人、育てた農作物を買いに来てくれた人に「ありがとう」の感謝を伝える気持ちと配慮があれば、ビジネスを成功に導く人間関係は自然に広がっていくと思います。

その心配りは、実際に、マンゴーをもっと多くの人に楽しんでもらおうと保田幸雄 さんが企画した、さまざまな商品にも表れています。

保田(健) 父は、ただ来客を待っているだけでなく、自ら動いて宣伝しようとキッチンカーまで企画して、多くの人を楽しませてきました。そうした心配りを、乳酸菌入りイチゴという新規ビジネスにも大いに活かしていきたいと思います。

やすださん家のスィーツ園 さまざまなマンゴースィーツ

お客様に楽しんでもらおうという心配りから始まった、さまざまなマンゴースィーツ

わが子のように思う農作物への愛情や、人への感謝の気持ち。そしてあくなき好奇心と研究心。そうした心の力が、新しい農業を切り拓いていく力になるのだと感じるインタビューでした。


「やすださん家のスィーツ園」の詳細、イチゴ狩りの案内などはホームページをご覧ください。

【前編】「茨城県の高糖度マンゴーはこうして生まれた!」はこちら

松崎博海

松崎博海

2000年より執筆に携わり、2010年からフリーランスのコピーライターとして活動を開始。メーカー・教育・新卒採用・不動産等の分野を中心に、企業や大学の広報ツールの執筆、ブランディングコミュニケーション開発に従事する。宣伝会議協賛企業賞、オレンジページ広告大賞を受賞。

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