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きゅうりの播種(種まき)時期を見極める! 長期間収穫を狙うコツとは

きゅうりの播種(種まき)時期を見極める! 長期間収穫を狙うコツとは
出典 : 田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)

きゅうりの代表的作型には半促成栽培・促成栽培・抑制栽培があり、1年を通して栽培が可能です。ここでは作型に沿った播種時期や接ぎ木といった栽培管理のポイント、つる下ろし栽培という新たな整枝技術や注意すべき病害虫など、きゅうり栽培について多角的に解説します。

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夏野菜としてのイメージが強いきゅうりですが、施設栽培の普及により半促成栽培・促成栽培・抑制栽培といった作型が一般的になり、周年栽培ができるようになりました。

この記事では、播種時期を中心に、作型ごとのきゅうり栽培のポイントや注意点、つる下ろし栽培についても解説します。

きゅうりの播種(種まき)に適した時期

きゅうりの発芽

allexxandarx- stock.adobe.com

きゅうりは生育が早く、播種から収穫までおよそ60日と短期間で出荷できます。比較的栽培しやすい野菜ですが、短期決戦となるため事前にしっかりと播種から収穫までのプランを組み、適期作業を心がけましょう。

まず、播種の時期は定植(植え付け)予定日を決め、そこから遡って決めるとよいでしょう。

きゅうりは土壌病害に弱いため、病害の防止や生育促進のために、かぼちゃなどとの接ぎ木苗を使うのが主流です。自家育苗の場合、台木と穂木の播種は同時に行いましょう。

続いては、作型ごとに目安となる播種時期や播種・育苗から定植前後の注意点について解説します。

施設栽培のきゅうり

リョウ / PIXTA(ピクスタ)

半促成栽培

冬から初夏にかけて栽培する作型を半促成栽培と呼びます。温度調整により低温期の成長を促進することで、出荷時期を早めることができます。ただ、収穫後半には気温が上がり生育速度が早まるので、栽培管理や収穫が遅れないように計画的に収穫しましょう。

播種時期は初冬で、地域にもよりますが、暖地(年平均気温が15〜18℃)だと11月後半が目安です。作型や栽培方法に関わらず育苗には30日ほどかかるので、先に定植の予定を決め、そこから30日遡って播種日を決めるとよいでしょう。

きゅうりの発芽適温は25~30℃、根の生育適温は16~25℃ですが、半促成栽培では播種、育苗、定植の時期が低温期なので、地温を適温に保つことが非常に重要です。きゅうりの栽培においては、温度管理が鍵を握ります。

促成栽培

施設を利用して秋から春にかけて長く栽培する作型を促成栽培と呼びます。栽培期間のほとんどが真冬になるため、湿度や生育適温を保つことが重要です。

温度管理に気を取られると換気が悪くなり、ハウス内の炭酸ガス濃度が低下しやすくなります。
炭酸ガスが不足すると草勢の維持がしにくく果実の肥大が悪くなるため、外気と同程度(400ppm)に濃度を維持できるよう炭酸ガスを施用します。

播種は9月半ば頃に行い、30日後の10月半ばに定植します。残暑もあり病害虫の多い季節なので、高温対策と病害虫防除を確実に行いましょう。

抑制栽培

抑制栽培は晩夏から冬にかけて、施設を利用して生長を抑制しながら栽培する作型です。促成栽培とは逆に、作物の生長を抑制することで長く出荷することができます。なお、収穫後半には気温が下がるため、温度調整による生長抑制の必要はなくなります。

播種の時期は定植予定から30日ほど遡った日に設定します。育苗は、発芽適温となる8月頃に行うため比較的容易ですが、高温になりすぎないように育苗ハウスの通気・換気をよくすること、防虫ネットを張ってアブラムシ類やアザミウマ類の侵入を防ぐことがポイントです。

定植後も高温対策として寒冷紗などの遮光資材の被覆や換気が欠かせません。また、涼しくなると野外の害虫がハウス内に入り込むので開口部などに防虫ネットを設置し防虫対策を万全にしましょう。害虫の侵入・越冬を許すと、春先に被害を受けてしまいます。

きゅうり栽培管理のポイント

続いて生育段階に沿ってきゅうり栽培管理のポイントを紹介します。

育苗管理

きゅうりのセルトレイ育苗

tortoon / PIXTA(ピクスタ)

作型ごとの播種・育苗期の注意点は前述しましたが、共通の注意点としては、以下が挙げられます。

・育苗専用ハウスを用意する

適温管理し、健全で質のよい苗を生育するため、10a当たり150平方mの育苗専用のハウスを用意するのが理想です。病害虫の発生防止のため、ハウス内の通気性・排水性をよくし、換気には十分注意しましょう。

・穂木移植床を準備する

発芽後、5日ほどで穂木を台木に接ぎ木します。そのための移植床は、移植の40~30日前に準備し始めます。堆肥や石灰、基肥などを施用したうえで、土壌消毒を行います。十分なガス抜きの期間をとるため移植の5~7日前には土壌消毒を実施する必要があります。

・きゅうりの第1本葉が約3cmに発育したら接ぎ木する

穂木となるきゅうりは第1本葉が約3cmに発育した頃、台木は第1本葉の出始めの頃が接ぎ木の適期です。

きゅうりの接ぎ木は、呼び接ぎ法が主流です。第1本葉の直下を約45度に切り上げ、台木は双葉の直下を約45度に切り下げます。その後ただちに、穂木と台木の切込み部分を合わせて接ぎ木クリップで固定します。

接ぎ木から7日ほど経ったら胚軸(注)を切断します。萎れることがあるのでまず10個ほど切断し、その結果を見てあまり遅くならないうちにすべて切断しましょう。播種から30日ほど経ち、苗が本葉2.5~3枚程度になったら、定植を行います。

(注)種子が発芽して胚から芽生えとなったときの子葉から直根までの部分のことをいいます。

定植後の管理

ハウス栽培のきゅうり 定植後の誘引

kaka / PIXTA(ピクスタ)

苗を定植したあとは、活着を促すために十分に灌水(かん水)しましょう。7~8枚展葉するくらいまで土壌水分や湿度を十分に確保し、完全に活着させます。

そのあとは、根を深く伸ばすため、最低限の湿度を守りつつ灌水は極力控えます。着果が始まったら、乾燥しないよう少量多回数の灌水を行います。

定植後は、直ちに支柱を立て針金を張りテープを結んで畦上にたらします。巻ひげが出る前に主枝をテープに誘引します。灌水と温度管理を徹底し、主枝が16~18節で1.4mほどに伸びたら摘芯します。定植後30日で摘芯できるように管理しましょう。

摘芯栽培を行う場合は、主枝の摘芯後、側枝が1~2節伸びたら順次摘芯します。ただ、主枝の中~上位節辺りの側枝は3本ほど放任し、これを力枝とします。

そのあとは、気候や着果状況、草勢を見ながら適宜摘芯や適葉を行います。本葉が15~16枚になると力枝付近の葉が混みあうので、1日2枚を限度に摘葉しましょう。追肥は、速効性肥料を主体に、7~10日おきに施用します。

つる下ろし栽培

日本では従来、摘芯栽培が主流でしたが、収穫期後半になると品質が低下することが問題視されてきました。そこで注目されているのが、「つる下ろし栽培」です。

具体的には、親づるを摘芯せずに伸ばして決まった高さで留めてその先を下す方法と、子づるまたは孫づるを下す方法があります。つるが伸びるに従い、定期的にずらしてつる下ろしをし直すことで同じ高さに実がなるため、収穫などの作業が省力化されます。

上物率が高い、収穫期後半になっても草勢が衰えないなどといったメリットがあり、近年各地で研究や導入が進み、品質・収量ともに優秀な結果を収めています。

ハウス栽培のきゅうり 収穫期

Carbondale / PIXTA(ピクスタ)

特に注意したい病害虫

きゅうりにはさまざまな病害虫が発生しますが、その中でも特に気を付けたい病害虫について解説します。

なお、紹介する農薬は、2021年1月18日現在登録されているものです。使用の際は必ずよくラベルを読み、使用方法を守るようにしてください。

コナジラミ類

コナジラミ類はハウス栽培で一年中よく発生する害虫で、成虫・幼虫ともに葉から吸汁します。多発すると株が弱るだけでなく、ウイルス病を媒介することがあるので早期の防除が必要です。

農薬による防除が一般的ですが、2005年以降、多くの農薬に耐性を持つコナジラミ類(タバココナジラミ・バイオタイプQ、バイオタイプB)が確認されており、農薬による防除が難しい状態です。まずは、コナジラミ類の侵入を防ぐこと、早期に発見し被害株を除去するなど耕種的防除を行うことが大切です。

きゅうりのコナジラミ類に登録がある農薬が多数ありますので、地域で発生しているコナジラミ種に適した農薬を最寄のJAなどに相談してください。

また、スワルスキーカブリダニ剤などの生物農薬と化学農薬、耕種的防除を組み合わせた総合的病害虫管理について、各都道府県の営農情報などで試験結果が報告されているので調べてみるとよいでしょう。

オンシツコナジラミが寄生したきゅうりの葉裏

オンシツコナジラミが寄生したきゅうりの葉裏
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

うどんこ病

うどんこ病とは、うどん粉のような白いカビが作物の葉に付着する病気で、梅雨の時期に多く見られます。果実にも発生し、悪化すると葉が黄化して枯れてしまいます。

うどんこ病はやや乾燥した条件で発生するので、風通しをよくしながらも湿度を保つ工夫をしたり、適用農薬を散布することで対処しましょう。農薬はラミック顆粒水和剤、ベジセイバー、ガッテン乳剤などが有効です。

きゅうりのうどんこ病 発病中期葉

きゅうりのうどんこ病 発病中期葉
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

きゅうりは比較的丈夫で栽培周期が短く栽培しやすい野菜です。時期ごとの作型が確立され、周年栽培も可能となりました。また、つる下ろしという新たな栽培方法も開発され、より一層高品質かつ多収穫の道が拓けています。今後もきゅうり栽培の進化から目が離せません。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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