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ブロッコリー農家は儲かる?ブロッコリー専作農家の秘訣を知る
出典 : 大久保翔太 / PIXTA(ピクスタ)
  • 農業経営

ブロッコリー農家は儲かる?ブロッコリー専作農家の秘訣を知る

ブロッコリーは栄養豊富で「映(ば)える」野菜として消費者に人気があり、周年で需要が高いため栽培すれば安定した収入が見込めます。水稲やほかの野菜類との複合経営としてだけでなく、専作農家も多いブロッコリー栽培の収入の目安や、注目の新品種などについて解説します。

ブロッコリーは形や彩りがよく、おいしくて栄養も豊富なため消費者に人気があり周年で需要の高い作物の1つです。

産地の環境にあった品種を選べば比較的栽培しやすいため、ブロッコリーを経営の柱としている農家も多く、生産量も年々増え続けています。

そこで今回は、作況や栽培農家の実態に触れながら、ブロッコリー栽培の魅力をご紹介します。

ブロッコリー栽培の需要と収入

北海道乙部町のブロッコリーのほ場

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

まずは、日本におけるブロッコリー生産の現状と、栽培農家の収入について見ていきましょう。

ブロッコリーの栽培状況

収穫量・作付面積の推移

農林水産省の作物統計調査・野菜生産出荷統計で2019年産のブロッコリーの生産状況について見てみましょう。

全国の作付面積:16,000ha(前年比+3.9%)
収穫量:169,500t(前年比+10.2%)
出荷量:153,700t(前年比+10.7%)

それぞれ前年比で増加していることがわかります。

ブロッコリーの収穫量・作付け面積の推移

出典:農林水産省「作物統計調査・野菜生産出荷統計」よりminorasu編集部作成

一方、生鮮ブロッコリーの輸入量は2012年をピークに減少し続け、それに反比例するように国産ブロッコリーの出荷量は増加傾向にあります。この点からも国産ブロッコリーに対する需要の高さがうかがえます。

国内生産ブロッコリーの出荷量・生鮮ブロッコリーの輸入数量の推移

出典:農林水産省「作物統計調査・野菜生産出荷統計」、財務省「貿易統計」よりminorasu編集部作成

都道府県別の収穫量・作付面積・10a当たり収穫量

農林水産省の作物統計・野菜生産出荷統計で、ブロッコリーの都道府県別の収穫量・作付面積を見ると、上位10県の中でも、北海道は収穫量 26,700t・作付面積 2,700ha・と、収穫量・作付面積とも群を抜いています。

愛知は作付面積が955haと小規模ながら、10a当たりの収量は1,640kgと全国一を誇り、収穫量も15,700tと北海道に次いでいます。

ブロッコリーは冷涼な気候を好みますが、多くの品種が生まれたことで、温暖な地域でも安定した栽培ができるようになったため、産地が拡大しています。

2019年産 ブロッコリーの収穫量 都道府県別ランキング

出典:農林水産省「作物統計調査(確報)令和元年産野菜生産出荷統計」よりminorasu編集部作成

ブロッコリー農家の年収

ブロッコリー農家の年収は経営規模や形態によるため、一概には言えません。

高収益が見込める作物の中でも、ブロッコリーは比較的安定して収入が得られることと、作業負担が相対的に小さいことから、水稲やほかの野菜類との複合経営として栽培するケースも多く見られます。

参考までに、試算を2点ご紹介します。

まず、JAあわじ島の経営試算によれば、作付面積は不明ですが、ブロッコリー(1~2月収穫)の粗収入は336,000円、経営費は157,897円、所得は178,103円、1時間当たり労賃は1,680円とされています。

出典:JAあわじ島「もうかる農業 作物別経営資産一覧表」

また、青森県の西北地域県民局地域農林水産部の試算では、6~7月収穫の場合、10a当たりの経営収支は収穫量750kg、粗収益365,000円、期待される所得122,561円、年間労働時間は94時間、1時間当たり所得は1,304円とされています。

青森県西北地域県民局地域農林水産部「複合経営に取り組む農家のための野菜栽培の手引き」

出典:青森県西北地域県民局地域農林水産部「複合経営に取り組む農家のための野菜栽培の手引き」

ただし新たに栽培する場合、ブロッコリーの出荷に欠かせない予冷庫などの設備が必要です。自治体の営農部署やJAでよくリサーチすることをおすすめします。

また、ブロッコリーは品種によって産地の気候との適性が問われ、それによって歩留まり率も変わってきます。品種選定にあたっては試験栽培を行うなどして慎重に検討することが必要です。

ブロッコリーの強みである周年栽培

ブロッコリーのセルトレイ育苗

茶華月 / PIXTA(ピクスタ)

多様な品種のあるブロッコリーは、品種や作型を変えることで春どり、夏穫り、秋・冬穫りができ、周年栽培も可能です。そのため、ブロッコリーを専作にする農家もあります。

以下では、安定的にブロッコリー専作の経営を確立した事例を「みんなの農業広場」(注)のインタビュー記事から紹介します。なお、内容は2011年取材時のものです。

(注)みんなの農業広場:一般社団法人全国農業改良普及支援協会と株式会社クボタとが共同で運営する農業情報メディア

長崎県雲仙市吾妻町は、西日本有数のブロッコリー産地です。吹原繁男さんはここで、ブロッコリー専作の農業を家族で営んでいます。

地域の後継ぎがいない農家の土地も預かり、町内に点在する農地は合計6.9ha。陽当たりや土壌の条件によって、二作するほ場と一作のみのほ場があり、延べ面積は約10.5haです。

吹原さんは、ここで7種の品種を作付けし、10月中旬~6月まで出荷する周年栽培体系を確立しました。以前は全国的にも4月どりが難しく、端境期となっていましたが、今では一般的となったべた掛け+マルチ栽培で4月どりも安定しています。

吹原さんは確立した技術を地域で共有し、「吾妻洋菜研究会」という生産者グループを作りました。グループで出荷量の確保と販路の安定を図るほか、大型農機・施設・冷蔵庫の共有や、相互チェックによる品質の安定などに役立てています。

こうして安定的な経営体制を確立したことで、生産者グループの3戸すべてで後継者が育っているそうです。

出典:みんなの農業広場 農業経営者の横顔「家族経営でもできる大規模ブロッコリー専作。生産から販売まで、人任せにせず工夫することから。」

ブロッコリー栽培は水田転作としても最適

収穫間近のブロッコリー

MATSUE / PIXTA(ピクスタ)

ブロッコリーは「栽培にかかる負担が少ない」「野菜類の中でも軽量で扱いやすい」「生育期間が短く、露地栽培で安定した収量が望める」などの点から、水田転作の野菜として適しています。

例えば、茨城県のJA稲敷では、1980年代から水田転作作物として「あずまブロッコリー」の生産を進めてきました。陽当たりもよく、Lサイズのブロッコリーがよく育つため、現在では県内の主要産地になっています。

ただし、ブロッコリーは多湿に弱いため、安定して水田転作するためには、ほ場の排水性が重要なポイントとなります。降雨時にもすぐ排水できるように畝を高くしたり、明渠・暗渠(注)を設置するなどの工夫が求められるでしょう。


(注)明渠(めいきょ):ほ場の周囲に沿って掘る排水溝
(注)暗渠(あんきょ):ほ場内に透水管を敷設し余剰水を排出する

今注目の茎ブロッコリーとは

山口県のオリジナルのスティックブロッコリー「はなっこりー」

Rina / PIXTA(ピクスタ)

従来のブロッコリーは、茎の頭にできる花蕾だけを収穫する「頂花蕾型」が主流でしたが、最近では「スティックタイプ」と呼ばれる「側花蕾型」のブロッコリーが注目を集めています。

通常のブロッコリーと違い、1株から100本近く収穫でき生産性が高いので、産地化に取り組んでいる地域が増えています。

主な品種としては、株式会社サカタのタネがブロッコリーと中国野菜の芥藍(かいらん)を掛け合わせて開発した「スティックセニョール」や、山口県農林総合技術センター(旧:山口県農業試験場)で育成された「はなっこりー」があります。

ブロッコリーの栽培を検討されるのであれば、こうした栽培体系が異なる新品種への挑戦も選択肢となるでしょう。

スティックブロッコリーの品種「スティックセニョール」

KY / PIXTA(ピクスタ)

ブロッコリーは栽培にかかる負担が比較的小さく取り組みやすい作物です。近年の需要の高まりから、新品種も数多く登場しており、地域ブランド化も期待できます。将来有望なブロッコリーの栽培をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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