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温室メロン栽培の特徴は? 高度な栽培管理が求められる高収益作物
出典 : sanpom / PIXTA(ピクスタ)
  • 生産技術

温室メロン栽培の特徴は? 高度な栽培管理が求められる高収益作物

温室メロンの栽培には高度な技術が求められます。今回は、高品質の温室メロンを収穫するために押さえておきたいポイントを解説し、併せて栽培の効率化につながる最新技術も紹介します。

温室メロン栽培には、繊細な温度管理や灌水量の調整が必要なことから、高度な栽培管理が求められるといわれています。かかりやすい病害も多く、土壌消毒や種子消毒、接ぎ木などによる予防策も不可欠です。収穫を成功に導くポイントを紹介します。

温室メロンの代表品種は「アールスフェボリット」

網目模様が特徴のアールス系メロン

taka / PIXTA(ピクスタ)

温室メロンの代表品種は、アールスフェボリット。1925年に英国から輸入され、日本で初めて栽培されたメロンの品種です。網目模様ができるネット系メロンで、甘みが強く、熟すと滑らかな食感になる特徴を持っています。

栽培はガラス温室で行い、1株に1果だけを収穫するのが一般的です。代表産地の静岡県をはじめ、東北や九州でも作られており、栽培環境を整えれば全国各地で生産することが可能です。

温室メロンの栽培管理

温室メロンは1本仕立ての1果採り

出典:株式会社 PR TIMES(静岡県温室農業協同組合クラウンメロン支所)

温室メロン栽培は、温度管理や灌水管理が難しく、熟練した技術や勘が必要といわれます。具体的にどんな点に気をつければいいのでしょうか。栽培管理のポイントを解説します。

作型|年間通して栽培できる

温室メロンは年間を通して栽培することが可能です。四季ごとに作型があり、春作・夏作・秋作・冬作と呼ばれています。

最も栽培しやすいのは春作です。日照に恵まれる時期なので、夏や秋冬に比べて温度管理がしやすいといえます。

夏作は高温により、しおれや糖度の低下、ネットの形成不良などのトラブルが起きやすく、1年の中でも栽培が難しい作型です。高温に強く、日持ちしやすい品種を選ぶことが大切です。

秋作・冬作は、少ない日照や低温下でも、肥大化しやすい品種を選びます。冬にかけてメロンは生産量が減り、高値で取引されるため、高収益をめざすなら冬場の作型を選ぶといいでしょう。

温室は太陽光を取り込みやすいスリークォーター式

温室メロン栽培に用いられる温室は、スリークォーター式と呼ばれるタイプが一般的です。

南側の屋根の面積を大きく取っていることが特徴です。室内ではメロンの苗を階段状に設置し、まんべんなく日光を浴びさせます。温度管理は窓の開閉や、地面に敷設した温水パイプを温めるなどして調節します。

土壌消毒と種子消毒

温室メロンがかかりやすい病害は、メロンえそ斑点病や、つる割病、モザイク病など、数多くあります。対策には播種前の土壌消毒と種子消毒が重要です。

土壌は、蒸気または農薬で消毒します。蒸気消毒はボイラーなどの専用機を利用し、75℃以上の蒸気を30分以上土壌へ送り込みます。

農薬を使う場合は、「クロルピクリン・D-Dくん蒸剤」を土壌に注入します。消毒の際は保護具を身につけ、注入後は速やかに被膜をしましょう。

種子は乾熱消毒をしておきましょう。乾熱装置に種子を設置し、40~50℃で6~12時間予備乾燥した後、70℃の熱で3日間消毒します。

播種は催芽播き

消毒処理した種子は、播種する前に催芽という処理を行います。催芽は、種子を一定時間水に漬け置くなどして、発芽率を高めるための作業です。

温室メロンの場合は、種子を約2時間浸水処理をし、その後、濡れタオルを敷いた平容器に並べ、さらに濡れタオルとビニールなどで覆い、28~30℃で一昼夜置きます。根が0.5~1㎝ほど伸びてきたら、ポリ鉢などに移して播種しましょう。

徹底した温度管理で育苗

本葉がでたメロンの苗

トマト大好き / PIXTA(ピクスタ)

播種を終えた後は、温度管理を徹底しながら育苗します。

発芽するまでの地温は27~28℃を維持し、発芽したら23~25℃に下げます。温室内の温度は日中28~30℃、夜間は20~22℃をキープしましょう。温室内の温度が高すぎたり低すぎたりすると、生育不良を起こしやすくなります。

子葉がしっかり見え始めたら、灌水の量を調整します。晴天時は1日灌水を控え、根の伸長を促しましょう。ただし、暑い時期の場合は灌水不足でしおれないよう注意し、水量を調節してください。本葉1枚が確認できたら、鉢同士を離し、日当たりや風通しのよい状態を保ちましょう。

接ぎ木は呼び接ぎ

発芽した苗は接ぎ木を行います。接ぎ木は、つる割病などの病害を予防する効果があります。

接ぎ木には差し接ぎ、割り接ぎなどいくつかの方法がありますが、温室メロンでは呼び接ぎを行うのが一般的です。

接ぎ木は、苗が本葉0.5枚ほどになった頃のタイミングで行います。台木には、つる割病やえそ斑点病に耐性のあるダブルガードなどの台木用品種を用意しましょう。

接ぎ木のやり方は、まず、台木と接ぎ木する穂木のそれぞれにカミソリで切り口を入れ、かみ合わせてクリップで固定します。切り口の角度は斜め30度が目安です。

コツは手早く作業することです。切り口や接ぎ木する部分は濡れないように注意します。接合までには1週間ほどかかります。

隔離床の準備と定植

温室メロンの立体栽培

Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)

温室メロンは、地面からかさ上げした隔離床に定植し、立体的に仕立てていきます。隔離床と温室地面とを切り離すことでメロンが地中から水分を吸い上げすぎるのを防ぎ、水分量をコントロールしやすくなります。

隔離床の施肥量は、10a当たり窒素(N)10~12㎏、リン酸(P)15~18㎏、カリウム(K)12~15㎏が目安です。

過剰施肥は葉の白化や斑点の発症を引き起こす恐れがあるため、適量を施用するようにしましょう。

定植後は支柱を立て、支柱に沿ってつるを伸長させていきます。最終的に親づる1本仕立ての1果採りとするため、葉やつるの生育を見ながら、摘芯・整枝を行いましょう。

生育段階に合わせて灌水・温度管理

定植後の苗は、生育状態を注意深く見ながら灌水・温度管理を行います。

灌水管理

灌水のポイントはメリハリです。定植直後はたっぷり灌水しますが、3~4日過ぎたら水量は控えめにします。

着果したら水量を増やして果実の肥大を促します。

ネットが確認出来たら再び灌水を減らします。灌水量が多すぎるとネットの大ワレを引き起こす場合があるため、注意しましょう。

横ネットが現れ始めたら、灌水量を増やし、果実を十分な大きさに成長させます。その後、収穫までは灌水量を徐々に減らし、糖度を高めて仕上げます。

温度管理

メロンの生育適温は昼25~30℃、夜18~23℃ですが、生育状況に合わせて微調整します。

特に夜間温の調整が重要です。灌水量を増やすタイミングで温度を上げながら、20℃台前半に設定します。

横ネットの出現後は、温度が高すぎたり低すぎたりすると、糖度が低下する原因になります。15℃以下、または35℃以上にならないように注意しましょう。

温室メロンの生産が減少する中での新技術開発

メロン全体の生産も温室メロンの生産も減少傾向にあります。マンゴーやマスカットなどの人気に押され、1990年代後半から収穫量は右肩下がりの状態で、消費は低迷しているといわれています。

メロン全体・温室メロンの収穫量推移

出典:農林水産省「作物統計調査 作況調査」よりminorasu編集部作成
※温室メロンの2000年~2006年の統計数値はない

今後、温室メロンで安定した収益を得ていくために、コスト削減する技術や面積当たりの収量を上げる技術、新たな高付加価値商品の開発が始まっています。

コスト削減に挑む静岡県

日本一の温室メロンの生産地・静岡県では、従来の生産コストを削減する設備や栽培技術の研究が進んでいます。

県内の温室メロン農家にとって、温室の建設費や維持費は経営の負担となっています。温室の建設費は10a当たり約4,500万円。光熱費は経営の3~4割を占めるといいます。

一方で、メロンの価格は下落傾向。持続的な経営のためには、効率的な栽培技術が求められています。

この状況を2010年には、ガラスの代わりに耐久性POフィルムを使用した低コスト温室や、温室の暖房効率を高める省エネ技術を開発しました。

出典:静岡県経済産業部
「フェンロー型温室を利用したメロン生産での温風暖房による省エネ技術(平成18年度)」(あたらしい農業技術 第467号)
「未来農業を志向した高級メロン超低コスト生産システムの開発」(あたらしい農業技術 第536号)

水耕栽培を取り入れた新技術が登場

まちだシルク農園の水耕栽培

まちだシルク農園の水耕栽培
出典:まちだシルクメロン 公式ホームページ

東京都町田市の株式会社まちだシルク農園では、「町田式新農法」(注)と呼ばれる栽培技術を導入し、面積当たりの収量アップを実現しています。

(注)町田式新農法:高付加価値の新しい農作物を創出することで地域の中小企業の生き残りを図るという目的のため、町田市商工会議所と地域の高い技術を持つ中小企業が連携して開発したメロンの新農法。2009年に開発が始まり、2015年に株式会社まちだシルク農園で初収穫。「まちだシルクメロン」として町田市の特産品になっている。

多収穫を可能にしているカギは、独自の水耕栽培槽にあり、メロンの根に水分や栄養分が効率よく行きわたるよう作られています。

町田式新農法の特徴は、1株から最大60個という収量の高さと、熟練が求められる摘芯や摘果作業が必要ないこと、病害虫リスクが低いことです。

従来の栽培方法に比べ、栽培管理が容易なため、農業分野以外の企業が新事業として始めるケースもあるそうです。普及すれば温室メロンの新規就農を広げる契機となるかもしれません。

ホームページ:まちだシルクメロン 公式ホームページ | 町田式新農法(特許技術と水耕栽培)

カリウムを減らしたメロンを開発

株式会社Happy Qualityの「DOCTOR MELON」

株式会社Happy Qualityの「DOCTOR MELON」
出典:株式会社 PR TIMES(株式会社Happy Quality ニュースリリース)

静岡県袋井市では、新開発のメロンで新たな消費者ニーズを掘り起こす挑戦が始まっています。

同市で農家のビジネス支援などを手掛ける株式会社Happy Qualityと静岡大学農学部の協力を得て、透析治療中の人が食べやすい低カリウムのメロンを開発しました。

メロンは果物の中でもカリウム含量が多く、カリウムの排泄が難しい腎臓疾患の人にとっては注意が必要な果物ですが、開発されたメロンは、カリウムを通常の半分まで抑え、腎臓疾患患者でも安心して食べられます。

現在は、関連企業の農業法人サンファーム中山株式会社と連携して安定生産をめざしており、8棟のスリークォーター型ハウスが稼働しています。

株式会社Happy Qualityのホームページ

日本透析医学会の統計調査では、全国の人工透析患者は30万人以上に上り、増加傾向にあります(2019年12月末時点)。低カリウムメロンのニーズは今後さらに高まっていくでしょう。

出典:日本透析医学会雑誌 53 巻 12 号「わが国の慢性透析療法の現況 」

温室メロン栽培は、水量や温度管理に注意を払いながら、各工程の栽培管理を丁寧に行うことが肝要です。

また、消費低迷の中で安定した収益を得ていくには、効率的な栽培方法や、これまでにない付加価値のある製品の開発や研究が必要とされます。

西岡日花李

西岡日花李

大学在学中より東京・多摩地域の特産・伝統文化などを取材し、街のローカルな魅力を発信するテレビ番組制作・記事を執筆。卒業後は大学院でジャーナリズムを学び、神奈川県のミニコミ紙記者として勤務。マスメディアでは取り上げない地域の課題を幅広く取り上げ、経験を積む。現在はフリーライターとして主に農業をテーマにした記事を執筆。農業の様々な話題を通して、地方都市の抱える問題や活性化への手立てを日々考察している。

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