【モザイク病対策】メロンの品質・収量を守る!プロ農家向け防除情報
モザイク病はメロンに発生しやすい病害の1つで、病原となるウイルスの種類は複数あります。感染すると果実の品質を著しく低下させ、収量や収益にも影響するため注意が必要です。この記事では、モザイク病に悩むメロン農家に向けて、ウイルス別に主な症状や原因、防除方法を紹介しますので、参考にしてください。
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モザイク病はウイルスによって発生する病害で、葉や茎、果実に緑色濃淡のモザイク症状が発生します。生育不良や果実の品質低下を招くことから、防除対策が重要です。この記事では、モザイク病の主な症状や原因、防除の具体的な方法について紹介します。
メロンの品質・収量に打撃! 警戒すべき病害「モザイク病」とは?
メロン モザイク病 葉の濃淡モザイク
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
モザイク病は、ウイルス感染によって発生する病害です。主な症状として、葉や茎、果実に緑色濃淡のモザイク症状が発生します。発生する部分は生長点付近で、葉は黄色に変色し、委縮などによって奇形となります。
生育の途中で感染した場合は、茎の中間から先端にかけて葉がモザイクとなるほか、節間が短くなって葉も委縮します。また果実にも緑色濃淡のモザイク症状の発生や凹凸、奇形の発生が見られます。症状が進むと葉や果実のところどころが褐色になるなど、えそ症状になることもあります。
メロン モザイク病 果実のモザイク
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
モザイク病になると生育不良や、果実の見た目が悪くなることで品質低下が起こります。収量や品質を維持するためにも、しっかりと防除対策を行うことが重要です。
【病原ウイルス別】 モザイク病の症状と伝染経路
モザイク病の具体的な症状や伝染経路は、病原となるウイルスによって異なります。病原となる主なウイルスは、キュウリ緑斑モザイクウイルス(CGMMV)、キュウリモザイクウイルス(CMV)、スカッシュモザイクウイルス(SqMV)、スイカモザイクウイルス(WMV)、パパイヤ輪点ウイルス(PRSV)の5種類です。
そこでウイルスごとの具体的な症状と、伝染経路について詳しく紹介します。以下のような症状がみられた場合は、すべてモザイク病を発症している恐れがあるため注意しましょう。
キュウリ緑斑モザイクウイルス(CGMMV)
キュウリ緑斑モザイクウイルス(CGMMV) きゅうりの発病葉
Марина Бакушева - stock.adobe.com
キュウリ緑斑モザイクウイルスの正式な学術名称は、Cucumber green mottle mosaic virus(CGMMV)です。上位や側枝などの若い葉に黄色い斑点やモザイクが発生するものの、成葉になると症状が不鮮明で、見た目からは発症がわかりにくくなります。
ただし、発病した株は生育が抑制されて委縮することから、健全な株との見分けが可能です。また果実の表面には緑色濃淡のモザイクや、緑斑玉えそというえそ斑点も発生します。ネットの異常が発生する場合もあるでしょう。
主な伝染経路は接触伝染や土壌伝染、種子伝染で、アブラムシ類による伝染はありません。第一次伝染源は、病害が発生した株から採種した汚染種子です。
伝染経路の中で特に注意が必要なのが接触伝染です。芽かき、接ぎ木、摘葉、摘心、交配といった栽培管理中の接触でも感染します。栽培終了後は土壌に残存し、次作への伝染源となります。
キュウリモザイクウイルス(CMV)
キュウリモザイクウイルスの正式な学術名称は、Cucumber mosaic virus(CMV)です。葉に黄色の症斑点が発生し、その後委縮を伴ったモザイク症状がみられます。発生する部位は先端の葉、芯どめ後はわき芽であり、症状としては軽いのが特徴です。
またラゲナリア系統のCMVでは、葉脈に沿って樹枝条にえそが発生することもあります。果実には緑色濃淡のモザイクが発生し、奇形や裂果、緑褐色のえそ斑が見られることもあるでしょう。
メロン ワタアブラムシ 寄生葉
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
伝染経路は主にワタアブラムシによる媒介で、CMVに感染したさまざまな植物が第一次伝染源となります。汁液感染であるため、栽培管理中の接触や種子伝染、土壌伝染はありません。
ただし、キュウリモザイクウイルスの中でもラゲナリア系統によるモザイク病は、接触伝染も起こります。
スカッシュモザイクウイルス(SqMV)
スカッシュモザイクウイルスの正式な学術名称は、Squash mosaic virus(SqMV)です。葉に明瞭なモザイクと、葉脈緑帯が発生します。また果実の場合は、表面にモザイク症状が発生するほかネットの形成が不良となり、症状が重い場合はネットがまったく形成されないケースも存在します。
主な伝染経路は種子伝染や接触伝染、害虫による媒介です。第一次伝染源は、感染した株から採種された汚染種子です。特に接触伝染しやすく、前述したような栽培管理中の接触によって、急速にほ場全体に蔓延する危険性があります。伝染の媒介となる害虫として、ウリハムシや、ニジュウヤホシテントウなどの甲虫類が知られています。
メロンに寄生したウリハムシ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
スイカモザイクウイルス(WMV)、パパイア輪点ウイルス(PRSV)
スイカモザイクウイルスの正式な学術名称は、Watermelon mosaic virus(WMV)、パパイア輪点ウイルスの正式な学術名称は、Papaya ringspot virus(PRSV)です。葉と果実の表面に濃淡のあるモザイクが発生し、果実の場合はネットの張りが悪くなる場合もあります。
WMVとCMVは症状から区別することが困難ですが、WMVはモザイクの症状が明瞭で葉が奇形になることがあり、黄色の斑点ができません。この点はCMVとは異なります。伝染経路は、主にワタアブラムシからの媒介です。ウリ科やマメ科の雑草、作物から伝染することが多く、ほ場内でも同じような伝染経路で広がっていきます。
くわえて栽培管理による接触感染もある程度発生しますが、土壌伝染や種子伝染は起こりません。
メロン農家が実施すべき対策は? モザイク病の防除マニュアル
実際にメロン農家がモザイク病を発見した場合や、予防として防除対策を行う場合はどのようにすればいいのでしょうか?最後に、モザイク病を防除するコツを3つに分けて紹介します。
1. 土壌消毒の実施&消毒種子の使用
トマト大好き / PIXTA(ピクスタ)
CGMMVなど土壌伝染や種子伝染を起こすウイルスの場合は、土壌消毒の実施と消毒種子の使用で対応します。作付け前であれば、臭化メチル剤などのくん蒸剤と遮光資材などを併用した土壌くん蒸で、ウイルスを不活化させることができます。
また、使用する種子は、乾熱処理などによって消毒されたものを入手しましょう。自家採種した種子から育苗する場合には、必ず健全株から採種した種子を用いてください。
2. アブラムシ類の飛来抑止
防除方法としては、モザイク病の媒介となるアブラムシ類の飛来を抑止するのが効果的です。施設栽培であれば、防虫ネットによる換気窓の被覆、開口部に寒冷紗を張る、UVカットフィルムの展張、シルバーポリフィルムによるマルチが有効です。
露地栽培であれば、施設栽培と同様にシルバーポリフィルムによる畝マルチや、シルバーテープを張り巡らせることでもアブラムシ類の飛来を抑制する効果が期待できるでしょう。また、ほ場周辺の除草をしっかりと行うことも重要です。
川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)
3. 農薬散布によるアブラムシ類のまん延阻止
アブラムシ類の発生が多いのであれば、農薬散布も実施していきましょう。アブラムシ類に効果のある農薬は、「トレボン乳剤」「ダントツ水溶剤」「ベストガード水溶剤」「アディオン乳剤」などです。定植時には、ニテンピラム粒剤や、ネオニコチノイド系剤(アクタラ粒剤5など)を処理すると、ワタアブラムシの発生を1ヵ月以上防止できます。
また6~7月になるとテントウムシやクサカゲロウ、露地栽培であれば4月に土着の寄生蜂などが活動を始めます。これらはすべてアブラムシ類の天敵であるため、うまく活用するのがおすすめです。
施設栽培では、「アフィパール」や「コレトップ」などの市販されるコレマンアブラバチ剤を、モザイク病が発生した株に集中放飼させると効果的です。
ここで紹介した農薬は、2022年4月14日現在、メロンのアブラムシ類に登録のあるものです。農薬を使用する前にラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく散布してください。また、地域によって農薬の使用について決まりが定められている場合があります。確認のうえ使用ましょう。
4. 資材や手指の消毒
モザイク病の発生が確認できた場合、周囲の伝染源植物を取り除き、その後資材や器具の消毒などをしっかりと行います。栽培期間中であれば、栽培管理による二次伝染を回避するため、病株に触れた手の洗浄と消毒を行うことも重要です。
tutayomi / PIXTA(ピクスタ)
この記事では、メロンに発生するモザイク病について、病原となるウイルス別に、主な症状や原因、伝染経路などについてに紹介しました。モザイク病は、症状から病原となるウイルスを見極めるのが難しい部分もあります。
しかしどのウイルスが病原だったとしても、防除についてはアブラムシ類への防除対策と土壌消毒の実施、消毒種子の使用などで対応することができます。この記事の内容を参考にモザイク病の発生を防ぎ、防除に努めてメロンの収量と品質を維持していきましょう。
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百田胡桃
県立農業高校を卒業し、国立大学農学部で畜産系の学科に進学。研究していた内容は食品加工だが、在学中に農業全般に関する知識を学び、実際に作物を育て収穫した経験もある。その後食品系の会社に就職したが夫の転勤に伴いライターに転身。現在は農業に限らず、幅広いジャンルで執筆活動を行っている。