メロンのべと病防除に使える農薬一覧! 収量を守る対策のポイントは?
メロンにべと病が発生すると、葉が枯死するため生育が抑制され、品質や収量に影響が生じることがあります。本記事では、べと病の原因や発生しやすい条件、早期発見するポイント、防除に活用できる農薬についても解説しますので、ご参考にしてください。
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目次
メロンに起こりがちな病害の1つ、べと病とはどのような病害かを詳しく解説します。また原因や発生しやすい条件、防除に活用できる農薬についてまとめました。べと病を回避するための環境づくりについても紹介します。
メロンの病害「べと病」とは? 主な被害症状
メロン べと病 発病葉
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
メロンに起こる病害の1つであるべと病とは、葉に黄色の円形斑点が生じ、徐々に斑点が円形や多角形の暗緑褐色に変化する病害です。病状が進行すると葉全体が枯死することもあります。また湿度が高いときには、葉の裏側にすすのようなかびが生じる点もべと病の特徴です。
葉が枯死すると、メロンの生育が抑制されます。品質が低下するだけではなく、収量に影響が出ることもあるため防除に努めましょう。
べと病は、施設栽培と露地栽培のいずれにおいても発生する病害です。病斑に形成された胞子が飛散することで、周囲のメロンにも影響を与えることがあります。
特に施設栽培では、多湿状態になりやすいため、施設内のメロンに胞子が付着し、被害が大きくなる傾向にあるので注意が必要です。
べと病の原因と、発生しやすい栽培条件
果実肥大期のメロン(6月中旬)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
べと病の原因である病原菌は糸状菌(かび)で、風によって飛散してメロンの葉に付着します。糸状菌は結露などの水滴が付くと発芽し、遊走子(ゆうそうし)を形成して感染を拡大します。葉に蔓延した糸状菌が卵胞子を形成して土壌などに残り、次年度の感染の原因になることも少なくありません。
べと病の病原菌は、温度が20~25℃で水滴が付くと発生しやすくなります。雨が多い季節やビニールハウス内が多湿になって結露が生じるときなどは、べと病が発生しやすいと考えられるでしょう。
気孔の多い葉の裏側から糸状菌が広がり、適温かつ水滴のある状態では、24時間以内に第2の感染が起こるとされています。特に肥料が不足して、メロン自体の生命力が弱いときは、被害が拡大しやすくなるので注意が必要です。
なお、メロンのべと病の病原菌は、メロン以外にも寄生すると考えられています。例えば、きゅうりやスイカ、シロウリ、かぼちゃなどにも伝染し、べと病を誘発する可能性があります。
早期診断が肝! メロンの症状からべと病を見極めるコツ
べと病は感染力が強く、適温かつ水滴がある状況では、短期間で増殖します。そのため、早期に気付いて対策することが、防除のポイントです。
しかし感染初期の時点では、べと病に類似した「褐斑細菌病(かっぱんさいきんびょう)」と間違えることがあるので注意しましょう。
褐斑細菌病の発病葉(スイカ)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
メロン べと病 発病葉
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
褐斑細菌病とは、葉や茎に斑点が生じる病害です。初期の時点では、黄褐色の斑点が見られ、拡大と融合を繰り返して大型の褐色斑点になります。葉が枯れるだけではなく、茎を取り巻くように褐色斑点が形成されることも特徴です。
褐斑細菌病は種子感染だけではなく、発病株から風雨によっても感染します。茎にも感染するという点がべと病とは異なりますが、感染初期には葉を中心に斑点が見られることもあるため、この時点ではべと病と間違えられることも少なくありません。
べと病と褐斑細菌病とでは、適用農薬が異なります。そのため、黄色や褐色の斑点が葉に表れたときは、早期にどちらの病害なのかを見極めることが重要です。
例えば、べと病は葉の裏面にかびが生えていることがあるため、セロハンテープでかびを写し取ることができます。また、べと病では病斑が古くなっても葉に穴が空きませんが、褐斑細菌病では穴が空くことがあります。細かくチェックし、早期に適切な農薬散布を行いましょう。
収量を守る対策は? べと病の防除方法と、メロンに使える農薬一覧
メロンの収量を守るためにも、早期に防除することが必要です。次の3つの方法で防除対策を進めていきましょう。
●多湿にならない栽培環境を整える
●適切な肥培管理で草勢を維持する
●農薬を早期にローテーション散布する
これらの防除対策をどのように進めていくのか、具体的に見ていきましょう。また実際に適用できる農薬についても紹介します。
多湿にならない栽培環境を整える
sammy_55 / PIXTA(ピクスタ)
べと病は胞子によって感染するため、密植を避けて風通しをよくすることが予防となります。
地這い栽培であれば、片方誘引の子づる2本仕立てのときは畝幅250cmで株間50~70cm、10a当たりの株数は600~800程度が目安です。親づる1本仕立ての立体栽培のときは、畝幅120cmで株間40~45cm、10a当たりの株数は1,800~2,100が目安となります。
多湿になりやすい施設栽培では、日中に換気を適切に行い、ビニールハウス内をやや乾燥した状態に保つことも大切です。一方の露地栽培では、水滴がつくことでべと病の病原菌が発芽しやすくなるため、雨除け栽培するようにしましょう。
敷きわらやマルチを活用することでも、土壌からの水滴の跳ね上がりを避け、べと病の病原菌が発芽しにくい環境を作ることができます。
STUDIO EST / PIXTA(ピクスタ)
適切な肥培管理で草勢を維持する
メロンの草勢が弱く、茎葉が軟弱なときは、べと病の病原菌が増殖しやすくなります。肥料切れを防ぎ、べと病の発生を回避しましょう。ただし、施肥量が多すぎると、つるぼけを起こし着果量が減るので、土壌の肥沃度や品種によって増減する必要があります。
参考に秋田県の野菜栽培技術指針に掲載されている施肥基準を紹介します。
成分量(10a当たり)
10a当たり 成分量 | 基肥 | 追肥 (砂地のみ) |
---|---|---|
窒素(N) | 10kg | 3kg |
リン酸(P) | 16kg | 3kg |
カリウム(K) | 5kg | 3kg |
施肥の設計例(10a当たり)
施肥例 (10a当たり) | 基肥 | 追肥 |
---|---|---|
完熟堆肥 | 10kg | |
苦土石灰 | 16kg | |
ようりん | 5kg | |
有機配合肥料 (砂地のみ) | 120g | 3kg |
出典:農林水産省「都道府県施肥基準施肥基準」掲載の「秋田県野菜栽培技術指針」所数「メロン地這い栽培(ハウス早熟・露地2重トンネル・露地1重トンネル)」
農薬を早期にローテーション散布する
べと病が多発してからでは防除が難しくなるため、基本的に農薬は予防的な散布に努めるようにしましょう。発病を確認したときは、できる限り早期に、防除効果を期待できる農薬を散布することも大切です。
またウリ科に発生するべと病菌は、耐性菌の発生リスクが高いため、同一系統の農薬は連用せず、ローテーション散布する必要があります。
【予防・発生後の防除】 メロンのべと病に適用のある主な農薬
メロンのべと病に適用のある主な農薬は以下のとおりです。
予防効果が期待できる農薬
リドミルゴールドMZ
ランマンフロアブル
発病初期での防除効果が期待できる農薬
ランマンフロアブル
ピシロックフロアブル
カーゼートPZ水和剤
べと病の予防効果が期待できる農薬を使用するだけではなく、発病初期に防除効果を期待できる農薬も活用します。いずれも希釈倍数や使用回数が異なるので、確認してから使用しましょう。
なお、ここで紹介した農薬は、すべて2022年4月10日現在、メロンのべと病に登録のあるものです。実際の使用に当たっては、必ず使用時点の登録を確認し、ラベルをよく読んで用法・用量を守りましょう。また、地域によって農薬の使用について決まりが定められている場合があります。確認の上で使用してください。
川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)
早期発見が必要ですが、褐斑細菌病のようにべと病の初期病状と似た病状を示す病害もあるので、注意が必要です。斑点が葉だけに広がっているのか、また葉の裏側にかびが発生しているのかなどを確認し、べと病の早期発見と防除を実践してください。
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林泉
医学部修士、看護学博士。医療や看護、介護を広く研究・執筆している。医療領域とは切っても切れないお金の問題に関心を持ち、ファイナンシャルプランナー2級とAFPを取得。