認定就農者になるには? デメリットはある? 新規就農時に使える制度を解説
これから農業を始めようとしている方は、さまざまな支援を受けられる認定新規就農者制度の活用を検討しましょう。ここでは認定就農者になるための具体的な手続きと流れについて解説していきます。また、新規就農時に使える補助金や助成金制度も併せて紹介します。
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新規就農をめざす人をサポートしてくれる制度が、「認定就農者(認定新規就農者)制度」です。認定就農者になるには、しっかりとした就農計画が必要です。そこで、この記事では認定新規就農者制度の概要と、認定された場合のメリット・デメリットについて解説します。
就農時、複数のメリットが受けられる「認定新規就農者」制度
cba / PIXTA(ピクスタ)
「認定新規就農者」として認められた経営体の数は年々増加しています。農林水産省の報告を見ると、2020年3月末の時点で11,397の経営体が全国で認定を受けています。
2016年の認定数6,140経営体から2倍近くまで増加しており、制度が普及していることが伺えます。まずは新規就農を考える人にとってメリットの多い本制度の概要を解説します。
出典:農林水産省「青年等就農計画制度について」のページ「認定新規就農者の認定状況」の項
認定新規就農者制度とは? 利用にデメリットはある?
認定新規就農者制度とは、農業経営基盤強化促進基本構想の一端として設立された制度です。この制度の主な目的は、新規就農者が将来に渡って安定した経営を続けられるようにし、農業が抱える問題を解決することです。
全国の市町村が認定し、さまざまな機関が新規就農者の支援を行います。例えば、就農時には補助金の対象になる、税制面で優遇される、といった支援が受けられます。
認定の条件が厳しいわけでもなく、認定を受けることによるデメリットもありません。新規就農を考える人は、積極的に活用すべき制度といえるでしょう。
認定農業者との違い
認定新規就農者制度と間違いやすい制度に、「認定農業者制度」があります。こちらは新規就農者を対象にしたものではなく、農業経営の改善をめざす既存の農家に対して支援していく制度です。
対象者は年齢や性別に関係なく、法人も対象です。新規就農を目指す非農家や兼業農家も対象になるなど、広く認定を受けられるといった違いがあります。このように制度によって対象や目的が大きく違うので注意が必要です。
新規就農者として認定されるための要件
ここで認定就農者の具体的な認定要件を確認します。まず、対象者は18歳以上45歳未満の青年と、65歳未満で特定の知識や技能を有する中高年齢者です。前述の要件にあてはまる者が役員の過半数を占める法人も対象です。
農業経営を始めてから5年以内であれば、新規就農者に限らず制度の対象になりますが、認定農業者は除外されます。
認定の要件としては、「市町村に提出する青年等就農計画が市町村の基本構想と適合しているか?」「計画の達成が十分に可能であると認められるか?」の2点が重視されます。事前の計画が非常に重要だといえるでしょう。
どうすれば認定新規就農者になれる? 手続きの流れ
ケイーゴ・K / PIXTA(ピクスタ)
認定新規就農者になるには、管轄の市町村に申請をして認定を受ける必要があります。しかし、決して難しい手続きではありません。ここでは申請の流れを順番に解説していきます。
1. 「青年等就農計画」の作成
認定に当たっては、計画が適切に立てられているかどうかが重視されます。そのため、「青年等就農計画」を作成しなければなりません。計画の書面に記載する事項は、ほ場の場所や栽培する作物などの基本情報と、将来の目標と今後の計画などです。
具体的には、就農形態や農業経営の構想、作付け規模や生産方式に関する目標、これらを達成するのに必要な措置などを記載します。
農林水産省のウェブサイト「青年等就農計画制度について」のページに青年等就農計画の記載イメージ と書式 が掲載されています。
要件などの確認が必要になるため、計画の書面を作成する前に地域の農業普及指導センターや、役所の営農課などに相談しておきましょう。
2. 認定新規就農者の認定
青年等就農計画ができたら、管轄の市町村に提出して申請を行います。市町村の審査を経て、計画の内容が適切であると判断されたら、認定新規就農者の認定通知書が手元に届きます。
以上で手続きは完了です。非常にシンプルな流れですが、計画性が重要なことを忘れないようにしましょう。
認定新規就農者になることで受けられる支援の一覧
認定新規就農者として認められれば、就農後も支援を受けられる以外にも、多くのメリットがあります。その中でも、以下に紹介する4つのメリットは特に重要です。
農業次世代人材投資事業、経営体育成支援事業により交付金が受け取れる
まずは就農に当たって、資金面のサポートとなる給付金を2つ紹介します。
「農業次世代人材投資資金(経営開始型)」
農業次世代人材投資資金(経営開始型)は、新規就農の準備や就農後の生活支援を目的とした給付金です。
経営開始型の受給条件は認定新規就農者であり、なおかつ独立・自営就農時に49歳以下の人です。最長5年間、最大で年間150万円が支給され、返済の必要はありません。
出典:農林水産省「農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)」のページの「経営開始型」の項
「強い農業・担い手づくり総合支援交付金」
農業機械や設備の導入を支援するのが、経営体育成支援事業の「強い農業・担い手づくり総合支援交付金」です。地域担い手育成支援タイプであれば、農業用機械や施設の導入に利用できる交付金が上限300万円の枠組みで支給されます。こちらも返済の必要はありません。
出典:農林水産省「経営体育成支援」のページ所収「強い農業・担い手づくり総合支援交付金」の各年度予算
青年等就農資金(無利子融資)が受けられる
融資なので返済の義務がありますが、まとまった資金が必要な場合に「青年等就農資金」を利用できます。借入限度額は3,700万円(特認限度額1億円)で、償還期限は17年以内です。
この融資制度の特徴は無利子で、なおかつ実質的に無担保、無保証人で利用できる点です。また、償還据置期間が5年間あるため利用のハードルは低いといえます。
農業経営に関することであれば、幅広い使途が認められているので、交付金と合わせて利用すると一気に経営体を拡大できるでしょう。
出典:日本政策金融公庫「青年等就農資金」
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経営所得安定対策の交付対象者になる
認定新規就農者は、経営所得安定対策の対象でもあります。経営所得安定対策の主な対策は2つあり、1つは、出荷する畑作物と、海外から輸入される作物との価格差分を補填してくれる「ゲタ対策」です。
もう1つは、米と畑作物を生産するうえで、収入が減少した分を補填してくれる「ナラシ対策」です。米や⻨、大豆といった特定の作物の収入が標準的収入額を下回った場合、その差額の9割を補塡してくれます。どちらの対策も交付金なので、返済の必要はありません。
出典:農林水産省「経営所得安定対策」
年金や税金面でも有利に
認定新規就農者になると、個人農家が国民年金に上乗せできる「農業者年金」の一部補助を受けることができます。補助の期間が最長20年と長く、返済の必要もありません。
また「農業経営基盤強化準備金制度」を利用すると、交付金を積み立てるなど条件を満たした場合、税制面での優遇措置を受けられるメリットもあります。
freeangle / PIXTA(ピクスタ)
新規就農には解決すべき問題が多々あり、将来についての不安もともないますが、それらを支援してくれるのが、認定新規就農者制度です。認定されれば多くのメリットがあり、資金面での支援も受けられるので、新規就農を考える人はぜひ検討してみてください。
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大澤秀城
福島県で農産物直売所を立ち上げ、店長として徹底的に品質にこだわった店づくりを行い、多くの優れた農家との交流を通じて、農業の奥深さを学ぶ。 人気店へと成長を遂げ始めたさなかに東日本大震災によって被災。泣く泣く直売所をあきらめ、故郷の茨城県で白菜農家に弟子入りし、畑仕事の厳しさを身をもって体験する。 現在は農業に関する知識と体験を活かしながら、ライターと塾講師という2足のわらじで日々歩みを進めている。