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【土作り】硫酸カルシウムの使い道とは? Ca資材の上手な選び方と利用方法

【土作り】硫酸カルシウムの使い道とは? Ca資材の上手な選び方と利用方法
出典 : RHJPhtotoandilustration/ Shutterstock

カルシウムは窒素・リン酸・カリウムに次いで植物の生育に不可欠な養分のため、不足した土壌には石灰や石膏類で補う必要があります。この記事では、カルシウム補強資材として使いやすい硫酸カルシウムについて、特徴や使い方を詳しく解説します。

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カルシウムは窒素・リン酸・カリウムに次いで植物の生育に不可欠な養分のため、不足した土壌には石灰や石膏類で補う必要があります。この記事では、カルシウム補強資材として使いやすい硫酸カルシウムについて、特徴や使い方を詳しく解説します。

農業用資材としての硫酸カルシウムの使い道とは? ほかのカルシウム資材との特徴比較

作物にとって必要不可欠なカルシウムの補強資材として、使いやすく有用性に優れている硫酸カルシウムについて、ほかのカルシウム資材と比較しながら解説します。

カルシウム資材の選択が土作りへ与える影響

作物の生長に欠かせない土壌中の成分13種類の分類

作物の生長に欠かせない土壌中の成分13種類の分類
出典:農林水産省、住友化学園芸株式会社、株式会社サカエグリーンの資料よりminorasu編集部作成

これらの養分は土壌中にも含まれていますが、作物の吸収する量が多いので収穫の際に失われ、土壌から不足してしまいます。そのため、土壌診断を行いながら適切に補充し、作物のカルシウム不足を防ぐ必要があります。

カルシウム資材を施用すれば土壌中のカルシウム成分は増えますが、水に溶けないタイプのものは植物が吸収できません。すると、土壌中にカルシウムが十分含まれているにもかかわらず、作物がカルシウム欠乏症を発症するという現象も起きてしまいます。

カルシウム資材には、アルカリ性の強い炭酸カルシウム系の石灰類と、中性の硫酸カルシウムや硝酸カルシウムがあります。前者は主に土壌pHをアルカリ性に傾け酸性土壌を中和させる目的で使用し、後者は土壌のカルシウム成分を強化する目的で使用します。

よい土作りのためには、適正な土壌pHや効果などを考えながら、こうしたカルシウム資材を選ばなければなりません。

pH調整には石灰類が向いている

苦土石灰の散布

PRock/ PIXTA(ピクスタ)

農業用カルシウム資材には多くの種類があります。石灰類では生石灰(酸化カルシウム)、消石灰(水酸化カルシウム)、炭酸カルシウム(炭カル)、苦土石灰(炭酸カルシウム&炭酸マグネシウム)、有機石灰(カキやホタテなどの貝殻や卵の殻の粉末)などが主に使われます。

石灰類はいずれも水に溶けにくいので、栄養素としてのカルシウム補強には向きません。

生石灰、消石灰、炭カルは特にアルカリ性が強く、酸性土壌の中和などpH調整が主な使用目的です。苦土石灰や有機石灰は効果が穏やかで使いやすく、苦土石灰にはマグネシウム、有機石灰には多種類の微量成分やミネラルが含まれるので肥料としての効果もあります。

※石灰資材の種類と使い方についてはこちらの記事もご覧ください。
「苦土石灰は土壌消毒に使える?石灰資材の種類と目的別の上手な使い方」

カルシウム補給には土によく馴染み、土壌pHに影響がない「硫酸カルシウム」

pHスケール

Baldezh / PIXTA(ピクスタ)

一方、硫酸カルシウムや硝酸カルシウムは石灰類とまったく性質が異なり、中性~弱酸性で水に溶けやすい性質を持ちます。そのため、作物のためのカルシウム補強に有効です。

アルカリ性の石灰類に対し、硫酸カルシウムが土壌中で呈するpHは中性で、散布しても土壌pHにほとんど影響がありません。また、水に溶けやすいため土によく馴染み、植物が吸収しやすいカルシウムです。

硫酸カルシウムは土壌pHを上げずにカルシウムを補給できるので、土壌のアルカリ性を高めたくない場合や、そうか病が心配なジャガイモ(馬鈴薯)にも安心して使えます。

硫酸カルシウムを主成分とした製品としては、「畑のカルシウム(南九州化学工業株式会社)」や「Caドクター(宝種苗株式会社)」、「ダーウィン1000(吉野石膏株式会社)」などが代表的です。

南九州化学工業株式会社「畑のカルシウム」製品ページ
宝種苗株式会社「Caドクター」製品ページ
吉野石膏株式会社「ダーウィン1000」製品ページ

硫酸カルシウムの施用量目安と上手な利用方法

カルシウムには茎葉を丈夫にする効果がある

LAONWORLD/ PIXTA(ピクスタ)

硫酸カルシウムを主成分とする肥料を使用する際は、袋に書かれている説明をよく読み、標準使用量を守りましょう。

例えば10a当たりの標準使用量について、「畑のカルシウム」は作物によりますがほとんどの場合100kg、「Caドクター」は野菜などで100~120kg、水稲で40~60kg、「ダーウィン1000」は野菜類の基肥として60~100kg、水稲には40~60kgが目安とされています。

カルシウムという養分自体、欠乏症はあっても過剰施用による症状はほぼありません。石灰の過剰施用で土壌が強アルカリ性になると、マンガン、鉄、亜鉛、ホウ素など微量要素の吸収が阻害されて欠乏症になりますが、pHに影響しない硫酸カルシウムはその心配がないのです。

また、硫酸カルシウムに含まれる硫黄には殺菌効果や、タンパク質やアミノ酸、ビタミンなどの合成を促進して茎葉を丈夫にする効果も期待できます。ただ、pHを調整する効果はないので、pHも同時に上げたい場合はほかのアルカリ資材との併用が必要です。

例えば、硫酸カルシウム60kgに炭カル40kgなど、カルシウム成分の総量が標準使用量に合うように配分するといいでしょう。

不足するとどうなる? カルシウムが作物の生育に与える影響

最後に、カルシウムが作物にもたらす効果と、欠乏したときの状態についてまとめます。

収量アップも?! カルシウムの施用で期待できる効果

カルシウムはいも類にとって重要な栄養素

dorry/ PIXTA(ピクスタ)

カルシウムには作物の細胞壁を強化する作用があります。カルシウムが十分に足りている作物は丈夫で、害虫や病原菌に対して強くなります。また、側根・根毛の発達を促し、根張りにも効果的です。

特に、ジャガイモ(馬鈴薯)やサツマイモ(甘藷)などのいも類にとってカルシウムは重要な栄養素で、収量増が期待できます。

石灰類では、カルシウムを増やしたくても土壌がアルカリ性に傾いてしまい、そうか病が発生する恐れがあります。そのため、pHを上げる心配もなくカルシウム強化できる硫酸カルシウムは、いも類にとって安心して使える肥料といえるでしょう。

病害虫被害に注意! カルシウムが欠乏した場合に起こり得る症状

細胞壁を作る成分であるカルシウムが欠乏すると、まずは生育不良が見られます。カルシウムは作物の体内であまり移動しないため、新芽から先に枯れ始めます。白菜やキャベツの内側の新芽が枯れる芯腐れや、トマトの尻腐れなども、カルシウム不足が一因になります。

ほかにも、花の奇形やいも類の肥大不足、さらに根に与える影響も大きいため、作物の根が短く太くなるなどの症状もよく見られます。

また、カルシウムは植物に吸収される量が多いので、土壌のカルシウム不足が起きやすく、連作障害につながることがあります。カルシウム不足により酸性に傾いた土壌ではセンチュウ類の被害が発生しやすくなるので、次の作付け前にカルシウム補強やpH調整を行うことが大切です。

カルシウム不足などで起きるトマトの尻腐れ

カルシウム不足などで起きるトマトの尻腐れ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

硫酸カルシウムは、土壌のpHバランスを崩すことなく植物に吸収しやすい形でカルシウムを強化でき、さらに硫黄も補強できる優れたカルシウム資材です。連作障害を防ぐためには、カルシウム強化だけでなくpH調整も必要なので、ほかのカルシウム資材である石灰などと組み合わせて効率的に活用しましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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