【中耕・培土(土寄せ)】管理のコツとおすすめ作業機まとめ
中耕・培土(土寄せ)は、多くの作物で品質や収量の向上に効果があるといわれます。作業の意味や目的を意識して適切に行えば、より高い効果を得られます。本記事では、中耕・培土のメリットや作業のコツを解説し、省力化を実現するおすすめの中耕除草機を紹介します。
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中耕・培土(土寄せ)の目的と効果
川村恵司/ PIXTA(ピクスタ)
中耕(中耕除草)とは
中耕とは、作物の生育途中に株間や畝間の表土を浅く耕す作業です。古くから水稲や大豆、野菜類など多くの作物の栽培で取り入れられており、雑草を埋め込む除草効果があるので「中耕除草」とも呼ばれます。
中耕(中耕除草)の目的や効果
中耕の主な目的の1つは、除草です。雑草を埋め込むことで、除草効果を発揮します。 土壌の通気性と排水性を向上させる効果もあります。土壌を柔らかくすることで根の発達が促進され、作物の根はより深く広がり、栄養と水分の吸収が効率的になります。
さらに、中耕は土壌微生物の活性化を促すため、肥料の効果が高まります。土壌微生物の活動が活発になることで、土壌の肥沃度が向上し、作物の栄養吸収が改善されるのです。
培土(土寄せ)とは
培土は「土寄せ」ともいわれ、作物の生長に合わせて土を株元に寄せる作業です。多くの場合、培土は中耕を兼ねた管理作業であることから、中耕と培土を一連の作業として「中耕培土」と呼ぶことがあります。
培土(土寄せ)の目的や効果
培土の目的の1つは、茎下部を土で覆うことで不定根を発生させ、根張りをよくすることです。 中耕と培土を同時に行うことで、地上部の生育がよくなり、収量の増加が期待できます。
大豆など倒伏しやすい作物では、倒伏防止に大きな効果を発揮します。そのほか、里芋やジャガイモ(馬鈴薯)など根菜類の場合、除草と塊茎の肥大場所の確保のために中耕培土を行います。
中耕培土のコツとやり方
川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)
中耕培土は手作業で行うと重労働で時間もかかるため、中規模以上のほ場を持つ農家の場合、テーラーや管理機、トラクターを用いた中耕除草機による機械化で対応します。
中耕除草機で中耕培土を行うコツについて解説します。
土の状態と適期を見極めて作業
中耕培土は作物の種類や生育段階に応じて、適切な時期と方法を選ぶことが重要です。
中耕培土の実施時期は、作物の種類や生育段階、雑草の発生状況などを考慮します。
水稲なら田植えの1週間から10日後に、苗が活着したら1回目を行います。その後、10日ごとに2回行います。
大豆の場合は播種後20~35日頃に1回行います。ただし、雑草の多い場合には回数を多くする必要があります。
野菜類の場合は、作物によって異なるものの、成育期間中に2~3回ほど行います。
実施時期は地域やその年の気候によって変動するので、あくまで目安としてください。
土壌の性質も、中耕培土に向くものと向かないものがあります。
例えば、水田転換畑や重粘土壌など通気性の悪いほ場の場合は、中耕培土により高い効果を発揮します。一方、もともと通気性がよく乾燥しやすい火山灰土壌の場合は、中耕培土による土壌改善の必要性が低いといえます。
土壌状態やタイミングによっては、中耕培土の効果が十分に得られないケースや逆効果になるケースもあるため、状況に応じて中耕培土の必要性を見極めることが重要です。
中耕培土後の畝の高さが効果にも影響
中耕培土を終えたあとは、畝の高さに注意します。例えば、大豆のコンバイン収穫を行う場合、土を高く盛りすぎると収穫時に土が多く入り込んでしまい、汚粒の発生が多くなり、収穫ロスが増える原因になります。
中耕培土の高さは、最下着莢高(地際から最も下に付いている莢の節の高さ)を越えないように注意します。
中耕培土は作物ごとの適切な畝の高さを確認し、高く土を盛りすぎないように気をつけましょう。例として、地域や環境特性によりますが、大豆の場合の畝の高さは15~20cmが目安です。
高さだけでなく、土の盛り方にも注意が必要です。茎元まで土がかからず、茎の周囲が凹んだ「M字型」の培土では、不定根が発生しないばかりか、茎元に水が溜まって病害が発生しやすくなります。
土を盛る際には、茎元を頂点とした山形になるように、しっかり土をかぶせるよう調整しながら進めましょう。
中耕・培土・施肥は同時に実施可能
従来、中耕・培土・施肥といった中間管理作業は別々の農機で行うのが主流でしたが、近年は各作業の一貫体系が構築されています。
乗用管理機に必要な器具を取り付けることで、中耕・培土・施肥を一度に行うなど、大幅な効率化・省力化が進められています。
【大規模農家向け】中耕作業を省力化する作業機おすすめ3選
川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)
中耕作業は時間と労力がかかるうえに、できるだけ作物の根を傷付けないように神経も使うため、心身ともに負担の大きい作業です。そのため、中耕除草機などの農機を導入して効率化することで、作業負担の大幅な軽減につながります。
中耕除草機には畑作用と水田用があります。畑作用の場合、多くの製品で中耕や培土が行えて、一部の製品では追肥も同時に可能なものがあり、作業効率がアップします。
中耕除草機の種類は、 歩行型と乗用型、ロータリ式とディスク式など多様です。 アタッチメントも豊富にあり、どのタイプを購入すべきか、機種選びに悩む方も多いと思います。
ここでは、大規模農家の中耕作業を省力化するおすすめの中耕除草機を3つピックアップして紹介します。
作業時間の短縮が期待できる高精度畑用 中耕除草機「エコ草とり君 H3-200」(井関農機株式会社)
1つめは、井関農機の「高精度畑用 中耕除草機(エコ草とり君 H3-200)」です。
こちらは大豆の中耕・培土に際し、同社提供の乗用管理機に装着して使用します。 前列300mm、後列348mmの大きなディスクが特徴で、対応条間は65~85cm、作業速度は約4~6km/hです。
ディスク式はロータリ式と比較して作業能率が高く、土の練り込みが少ないので、湿潤土壌や石・礫を含む土壌での重作業も粘り強くこなすという強みがあります。水田転換畑や輪作田での大豆栽培、梅雨期の湿潤土壌など、さまざまなほ場に対応します。
また、本機に対応する乗用管理機「愛さいか」シリーズも、作物の高さに合わせて車体の最低地上高を選べ、タイヤやリムを付け替えることで畝幅に合わせて幅を調節できるため、使い勝手がよくおすすめです。
井関農機株式会社
「高精度畑用 中耕除草機(エコ草と取り君 H3-200)」
「乗用管理機 愛さいか JKBシリーズ」
土壌条件に応じて調整しやすい「中耕ディスク」(小橋工業株式会社)
2つめは、小橋工業のトラクターに装着する「中耕ディスク」です。 前方への推進力で丸形ディスクが回転し、水分の多いほ場でも土を練らずに素早く中耕培土を行います。 作業位置をスライドすることで、条間はDC301・501シリーズでは60~85cm、DC201シリーズは65~85cmに対応可能です。
こちらもディスク式であり、同じ小橋工業製のローター式の従来品に比べて作業速度が向上し、燃料消費量を軽減できる点も魅力です。
小橋工業株式会社
「中耕ディスク」
幅広い用途で活躍する「S4カルチ」(株式会社キュウホー)
3つめは、オプション品を取り付けることで、中耕に加えて株間除草・培土・施肥など幅広く使えるキュウホーの「S4カルチ」です。トラクターや乗用管理機、田植機などさまざまな機械に取り付けられ、作業速度2~10km/hと高速作業が可能です。
条間除草用のレーキが付いており、雑草を引き抜いて枯らします。対応条間45~80cmで、カルチ本体の数を増やせば対応する条数も変えられます。
株式会社キュウホー
「S4カルチ」
農業技術の最先端!中耕培土の実施時期はシステムで見極めを
うっちー / PIXTA(ピクスタ)
前述の通り、中耕や培土の作業効果を高めるためには、作業適期の見極めが重要です。
ほ場の状況を詳細に把握し、適切な栽培管理を実現する方法として、栽培管理システムには「xarvio(ザルビオ)フィールドマネージャー」(以下、ザルビオ)の導入がおすすめです。
ザルビオは、水稲や大豆をはじめとする18の作物に対応しています。 作物やその品種情報、タイムリーな気象情報、人工衛星からの画像解析データといったさまざまな情報を人工知能(AI)によって解析することで、最適な栽培管理を提案します。
例えば、水稲・大豆栽培で活用できる機能「雑草管理プログラム」なら、雑草の発生リスクと防除作業の推奨時期をアラートで知らせます。
ほ場の気象状況などをもとに中耕培土の適切なタイミングを把握できるので、雑草被害を最小限に抑え、作業漏れの防止にも役立ちます。
▼大豆栽培で雑草防除の工数を”4分の1”まで削減した方法は、以下の記事でご紹介しています。
出典:BASFジャパン株式会社「xarvio® FIELD MANAGER」
中耕・培土は、多くの作物にとって生育や収量の向上につながる重要な作業です。作業適期を逃さず、作物やほ場の特徴に適した農機を導入して効率的に行いましょう。
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大曾根三緒
ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。