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いちじくの収穫時期はいつ? 年間作業や収穫量の目安&収益化のポイントを解説

いちじくの収穫時期はいつ? 年間作業や収穫量の目安&収益化のポイントを解説
出典 : Cybister/ PIXTA(ピクスタ)

生で食べるのはもちろん、ジャムなどの加工品としても人気のあるいちじくは、需要が高く価格が安定しています。利益率もよいので栽培を推進する自治体やJAも少なくありません。そこで、新たにいちじく栽培を始める際に役立つ情報を紹介します。

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いちじくは比較的少ない初期投資で始められ、収穫も軽作業中心で体への負担も少なく、約3年で安定した収量が確保できることから、水田転作などとして新規導入しやすい作物です。導入に当たって知りたい年間作業や収益アップのポイントなどを詳しく解説します。

収穫など作業負担が大きい時期はいつ? いちじくの栽培暦

いちじくの栽培暦

いちじくの栽培暦
出典:奈良県食と農の振興部、姫路市、千葉 県農林水産技術会議の資料よりminorasu編集部作成

いちじくは露地栽培も施設栽培も可能で、栽培に当たっては高所作業や高度な技術などが必要ないため、果樹の中でも比較的取り組みやすい樹種です。収穫期間は長く、多くの時間と労力を必要としますが、そのほかの時期は軽微な作業で済みます。

栽培暦は地域によって、また露地か施設栽培かによって異なりますが、ここでは温暖地における露地栽培を前提に、基本的ないちじくの栽培暦を紹介します。

いちじく栽培:1年目

いちじく栽培の1年目は収穫せず、しっかりと園地に定着させます。前年の秋から園地の土作りをして準備を整えましょう。苗は購入しても、挿し木をして養成してもよいでしょう。苗木の定植または挿し木は3月下旬に行います。

いちじくの植え付けには、主に一文字整枝と盃状形の2種類があります。盃状形の場合は畝幅3~4mで10a当たり約82本、一文字整枝は畝幅2.5mで10a当たり100本程度を目安に植え付けます。

いちじくは水分要求量が多く乾燥に弱いので、十分な灌水も必要です。梅雨明け1週間後くらいからは乾燥させないように灌水を行いましょう。ただし、湛水にすると根腐れを起こしやすいので、排水対策も欠かせません。

苗木は40~50cmで先端を切り返し、支柱を立てて結束します。敷き藁や黒マルチで乾燥や雑草を防ぎながら、生長に合わせて枝の誘引や芽かき、追肥を行います。

いちじく栽培:2年目以降

2年目以降は1年目の作業に加え、6~8月の間に、病害虫防除のため必要に応じて数回農薬を散布します。7月に入ったら、果実の肥大や着色をよくするため、15~20段を目安として摘芯を行いましょう。

栽培中、労力の大半を占めるのは収穫期の収穫作業と出荷調整のための処理作業です。収穫期は平均して8月初旬から10月半ばにかけて続き、主に栽培されている「夏秋兼用種」の場合、8月中旬から長ければ11月上旬まで収穫できます。

収穫後、冬の間は土作りをしながら、寒い地域では樹を藁で巻くなどの防寒対策をしましょう。

いちじく栽培で儲かるのは何年目から? かかる経費や流通価格の目安

一文字仕立て前のいちじく苗木

一文字仕立て前のいちじく苗木
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

いちじくは初期投資が比較的少なく、安定した収益が見込める点が大きな魅力です。それぞれ具体例を挙げながら、経費と流通価格について詳しく説明します。

初期投資額はいくら? いちじくの植え付けに必要な経費の目安

いちじくの植え付けまでにかかる1年目の費用の例として、JA・全農にいがたの試算を紹介しましょう。

それによると、露地栽培・10a当たりで苗木、肥料・土壌改良資材、棚や支柱・防風網などの施設費、農薬、諸経費などすべて含めて50万円弱としています。

そのほかのJAや自治体の試算では、施設費だけで約50万円とするものや、すべて込みで約100万円とする試算などがあります。

新規でいちじく栽培に取り組む場合は、1年目の予算としておよそ50万~100万円の間で、状況に合わせて試算するといいでしょう。

出典:JA・全農にいがた「営農レポートNiigata No.167」

参考資料:
JA・越後中央「稲作経営体の皆様へ いちじく はじめてみませんか?」
愛知県「愛知県果樹農業振興計画(平成28年3月策定」
姫路市「いちじくの栽培をはじめていませんか?」

いちじくの露地栽培栽培に必要な資材としては棚や支柱・防風網などがある

田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)

定植後、収量が安定するのは何年目?

いちじくは生長が早く、定植2年目から結実を開始し、少しずつ収穫できるようになります。3~4年目にはほぼ成園に近い収量が期待できるでしょう。

例えば、前述のJA・全農にいがたによる試算では、成園の収量を10a当たり2,100kgとし、定植2年目に3分の1弱ほどの630kg、3年目で1,580kg、4年目には2,000kgの収量を見込んでいます。そのほかの産地のJAなどでも、4年目以降は10a当たり2,000kg前後の収量を目安にしています。

なお、いちじくの経済樹齢は何年ほどかというと、水田転換園の場合は浅根となりやすいため10~15年程度が目安とされています。状態がよければ20年収穫が可能とするJAもあります。

いちじくの主な仕向け先と、参考流通価格について

市場出荷のいちじくの荷姿

blackie0335 / PIXTA(ピクスタ)

2018年の特産果樹生産動態等調査において、いちじくの収穫量・出荷量は和歌山県が1位、結果樹面積では愛知県が1位です。これらの主要産地をはじめ、ほとんどの産地で仕向け先は市場出荷が主流です。

出典:農林水産省「平成30年産特産果樹生産動態等調査(確報)」の「かんきつ類以外の果樹【落葉果樹】」の項

東京都中央卸売市場の「市場統計情報」では、2020年3~12月のいちじくの平均価格は1kg当たり1,060円、最高単価は3月の2,571円、最低単価は8月の885円でした。そのほかの月では、概ね1,000円台で推移していることから、いちじくは市場においても比較的価格が安定していることがわかります。

いちじくの取扱数量と1kg当たり平均価格(東京都中央卸売り市場)

出典:東京都中央卸売市場 市場統計(月報)よりminorasu編集部作成

品種や土作りも大切! 高品質ないちじく栽培のための、準備段階における3つのコツ

いちじくは単位面積当たりの所得が高いのが特長ですが、より品質の高いいちじくを栽培するために、栽培のコツを3点紹介します。

栽培のコツ1:品質や収穫時期にも影響! 重要な品種選び

しずく型の形状が特徴のいちじく「桝井ドーフィン」

しずく型の形状が特徴のいちじく「桝井ドーフィン」
tojiko / PIXTA(ピクスタ)

いちじくの品種には、収穫期別に大きく分けて「夏果専用種」と「秋果専用種」、「夏秋兼用種」の3種類があります。夏果専用種は前年の秋にできた花芽が成長して実になり、秋果専用種はその年の春に成長した枝にできた花芽が実になります。夏秋兼用種は、剪定の仕方でいつ収穫するかを選べます。

日本ではいちじくはほぼ生食用として消費されるため、果実が大きく糖度の高い豊産性の夏秋兼用種「桝井ドーフィン」がほとんどです。ほかに、夏果専用種の「コナドリア(白いちじく)」、秋果専用種である「蓬莱柿(ほうらいし)」や「ビオレソリエス(黒いちじく)」などがあります。

夏果専用種は収穫のタイミングが梅雨期に重なり、実が腐りやすいリスクがあります。また、寒冷な地域では比較的寒さに強い蓬莱柿が向いているかもしれません。

黒いちじく「ビオレソリエス」

黒いちじく「ビオレソリエス」
mOnks / PIXTA(ピクスタ)

栽培のコツ2:いちじく栽培に適したほ場と、センチュウ類による被害を避ける方法

いちじくのネコブセンチュウ被害株 早期に葉が黄化する

いちじくのネコブセンチュウ被害株 早期に葉が黄化する
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

いちじくは低温や過湿に弱いので、冬場に-8℃以下になる場所や冷気の溜まるくぼ地などを避け、よく日の当たる排水のよい土地を選びます。また、根の酸素要求量が多く根腐れを起こしやすいので、畝を高めにして排水路を準備し、明渠・暗渠も整備しましょう。

特に水田転換園では浅根になりやすく倒木することがあります。それを防ぐためには、秋に30cm程度深耕したり、10a当たり20t程度の客土を2~3年おきに実施したりして根の伸長を促すとよいでしょう。

このとき、土壌中に生息するセンチュウ類の被害を避けるため、管理機やトラクターを使用前に十分に洗浄することが大切です。センチュウ類が増加し全体に樹勢が衰えた場合は、一度水田に戻してから、その後、苗木を植え付けるのが有効です。

また、葉が大きく風を受けて実を傷つけるとスレによる品質低下を招くので、防風網を用いたり、杭を打って主幹を固定するなど、防風対策・台風対策も慎重にしましょう。

いちじくの風害

いちじくの風害
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

栽培のコツ3:肥料の量は?土作りと施肥のやり方について

いちじくは中性から弱アルカリ性の土壌を好むため、定植前にpH7.0を目安に苦土石灰などを施用し調整します。合わせて、完熟堆肥を10a当たり2t程度施用し、土作りを行います。

ただし水田転作園や排水の悪い園では浅根になり、多量の施肥によって根が濃度障害を起こしやすい傾向があります。そのため基肥は控え、追肥を数回に分けて行うのがよいでしょう。水田転作園では特に、はじめの1、2年は乾田効果で肥効が高まるので、過肥に注意し、様子を見ながら少しずつ施肥しましょう。

いちじく栽培の安定経営をめざすには? 収益性を確保するためのポイント

計画的な収穫と、作業の効率化を叶える「出荷調整」

いちじくの実は収穫後に日持ちがしないことから、計画的かつ効率的に収穫するために出荷調整が必須です。うまく収穫時期を調整できれば少ない人数でより多くの収穫作業が可能になるため、ほ場の大規模化による収益増も狙えます。

収穫時期の異なる複数の品種を栽培すれば、さまざまな品種を試しながら出荷時期をずらすこともできます。また、同じ品種でもホルモン剤を導入することで生育を調整し、収穫時期をずらす方法も有効です。

貯蔵性という弱点を克服する「加工品化」(6次産業化)

埼玉県川島町「KJ(かわじま)ブランド」の「いちじくジャム」

埼玉県川島町「KJ(かわじま)ブランド」の「いちじくジャム」
出典:株式会社 PR TIMES (凸版印刷株式会社 ニュースリリース 2020年7月1日)

生食のいちじくは日持ちがしませんが、生食用の品種でも、加工品に活用することができます。愛媛県では、いちじくをピューレとして冷凍保存し、加工原料とする場合は、0℃で10日間程度の保管が可能です。

さらに剥皮してピューレとすることで、果肉の風味や色調を損なわず食品素材として通年利用できる加工技術を開発しています。保存したピューレは、ジャムやゼリー、シャーベットや羊羹などの商品に加工が可能です。

出典:愛媛県工業技術センター・加工品室「ビワ及びイチジク利用した加工品の開発」

いちじく栽培の収益化のためには、あらかじめ具体的な売り方を検討しておく

いちじくは収穫期間中、毎日収穫があるうえに日持ちがしないので選果・袋詰めを急がなければならず、個人での出荷は非常に困難です。そのため、共同選果場を活用したり出荷組織に加入したりすることで効率的に出荷できます。

市場出荷以外にも、加工に向くいちじくは契約販売で一定の販売先を確保することも可能です。例えば地元のレストランや洋菓子店と直接契約するなど、ブランディングや販路開拓の工夫次第で、販売先は広げやすいといえるでしょう。自ら加工・販売も視野に入れた生産も可能です。

いちじく栽培を始めるなら、販売方法や販路についてもあらかじめ検討しておくことで品種や収穫時期も決まり、収益化の成功につながりやすくなります。

いちじくは収穫期間中、毎日収穫があるうえに日持ちがしないので選果・袋詰めを急がなければならず、個人での出荷は非常に困難です。そのため、共同選果場を活用したり出荷組織に加入したりすることで効率的に出荷できます。  市場出荷以外にも、加工に向くいちじくは契約販売で一定の販売先を確保することも可能です。例えば地元のレストランや洋菓子店と直接契約するなど、ブランディングや販路開拓の工夫次第で、販売先は広げやすいといえるでしょう。自ら加工・販売も視野に入れた生産も可能です。  いちじく栽培を始めるなら、販売方法や販路についてもあらかじめ検討しておくことで品種や収穫時期も決まり、収益化の成功につながりやすくなります。

「カフェコムサ」の福岡県内店舗で供される、福岡県産いちじく「とよみつひめ」と博多ピオーネのケーキ
出典:株式会社 PR TIMES(株式会社ファイブフォックス ニュースリリース 2018年9月10日)

いちじくは生食用としてだけでなく飲食店などからの需要もあり、安定した収益が見込めます。しかも、初期投資も抑えることができ、作業も軽微で収穫以外に比較的負担がかからず、収益性も高い優秀な作物です。

貯蔵性の低さや果肉の傷つきやすさ、根腐れや倒木のリスクなどいくつかの注意点に気を付け、機会があればぜひ栽培に挑戦してみましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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