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ネギ農家って儲かるの? 年収&経営収支、労働時間や成功事例を徹底分析!

ネギ農家って儲かるの? 年収&経営収支、労働時間や成功事例を徹底分析!
出典 : tamu1500 / PIXTA(ピクスタ)

ネギは幅広い料理に使われていることから年間を通じて需要が高く、安定して大量に栽培できれば儲かる作物といわれています。そこで今回は、本当にネギ農家が儲かるのか、農林水産省のデータなどを基に徹底分析を行います。

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ネギはその需要の高さから儲かる作物といわれています。そこで今回は農林水産省のデータを基に、年収や経営収支を算出しました。また労働時間や成功事例から、本当にネギ農家が儲かるのかを分析します。

ネギ農家は儲かる? データから見る年間農業所得額の目安

ネギの出荷

大地爽風 / PIXTA(ピクスタ)

ネギ農家が儲かるのか、農林水産省の作況調査などを基に算出を行った年間における農業所得額の目安を1つの例として紹介します。

ネギ栽培で期待できる単収と、最新の参考流通価格

作物の収益を算出するには、まずは10a当たりの収量(単収)と1kg当たりの流通価格の目安を調べる必要があります。農林水産省が公表している作況調査によれば、令和2年産ネギは収量が44万1,100t、作付面積が2万2,000haで、10a当たりの収量は2,010kgです。

また、東京都中央卸売市場の取扱実績から最新の令和2年8月~令和3年8月の調査結果を見てみると、平均価格は1kg当たり378円となっています。

ネギ農家における、10a当たりの経営収支の例

次に10a当たりの経営収支を計算してみます。平成19年における品目別の経営統計によれば、1戸当たりの農業所得率は最も低い夏どりで青ネギ、白ネギともに約50%、最も高い秋冬どりでは青ネギが約60%、白ネギが約62%です。

そこで最も低い50%を例として経営費の目算を算出してみました。まずは10a当たりの収量に平均価格をかけて収入を計算します。

2,010kg×378円=75万9,780円

つづいて収入に所得率をかけて10a当たりの所得金額を出します。

75万9,780円×0.5=37万9,890円

農業所得率が50%であることから、経営費も同様に37万9,890円がかかっています。もちろん収量や実際に買取られるネギの価格、農業所得率は作型や地域によっても変わるため、これらの数値はあくまでも参考として考えてください。

ネギ栽培の労働時間と、時間当たりの所得は?

ネギの定植作業

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

ネギ栽培が儲かるか儲からないかを判断するもう1つの指標としては、10a当たりの労働時間が挙げられます。こちらも先ほどと同様、平成19年品目別経営統計に記載されており、白ネギは約336時間、青ネギは約586時間です。

この労働時間は先ほど算出した所得で割ることにより、1時間当たりの所得、つまり時給に換算することが可能です。農業所得は37万9,890円であるため、それぞれ以下のように計算できます。

白ネギ 37万9,890円÷336時間=1,130.63円
青ネギ 37万9,890円÷586時間=648.28円


青ネギの栽培の場合は労働時間が長いため時給換算にすると低くなりますが、白ネギは時給にしても1,100円を超えていることから、比較的儲かる作物といえるでしょう。

ネギ農家の仕事内容と、収益を増やすポイント

ネギ栽培は比較的儲けやすいことが分かりましたが、そこで次に気になるのが実際はどのような作業を行っているのかということです。

以下に大まかな年間作業スケジュールと、作業を効率化させる方法について紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

ネギ農家の年間作業スケジュール

露地栽培で秋冬どりの白ネギを栽培する場合、3月に播種して5月に定植し、11月に収穫を行います。定植から収穫まで約5~6ヵ月と生育期間が長く、作業量は決して少なくありません。

育苗~定植

ネギ 育苗

kiki/ PIXTA(ピクスタ)

まずハウス内で育苗し、機械を使って定植作業を行います。育苗の期間中は朝と夕方に灌水と温度調整作業を行います。特に生育の後半は、湿度によって病害が発生することもあるため注意が必要です。

育苗と並行し、定植までにほ場の準備を行います。土壌消毒を行う場合は約1ヵ月前に行います。

定植では機械を使って1m間隔でうね立てを行い、そのうねの谷に定植します。手動式のネギ移植機を使用した場合、2人作業で10a当たり2~3時間程度で定植が完了します。

生育期間の栽培管理

ネギの土寄せ

kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)

定植後は約1ヵ月ごとに追肥を行い、収穫までに土寄せを5~6回行います。各地域のJA規格にもよりますが、白い部分が30cmほどになるまで土寄せします。雨などで流れないようにしっかりと固めることがポイントです。

並行して農薬による防除作業も行います。ネギは冷涼で乾燥した気候を好むことから、梅雨時期や夏などには湿度に特に注意し、病害の発生時期に合わせて予防散布をします。

収穫

ネギの機械収穫

kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)

地中深くに埋まっているネギは人の手では簡単に収穫できません。そのため小規模農家では鍬を使って土を掘りながら引き抜き、中規模農家では土崩しまでを機械で行って引き抜きは人力、大規模農家は自走式の収穫機ですべての作業を行います。

調整・出荷

ネギの調整・出荷作業

tamu1500 / PIXTA(ピクスタ)

ネギは出荷調整の作業が多く、根の切り落とし、外皮むき、出荷規格に合わせて青部を切り落としたのち2~4本に結束し、箱詰めを行います。2人作業であれば、1日最大30箱程度までつくることが可能です。

機械化・大規模化で安定的な大量生産を実現しよう

ネギの収量を増やして収益を上げるためには、栽培面積を拡大していくことが重要となります。特にネギは作業量が多いことから、作付面積の拡大には機械化による作業効率の向上が必須です。また、機械化による省力化には、疲労度の軽減という大きなメリットがあります。

小規模で行う場合の具体的な例としては、まずうね立てに歩行型の管理機を利用すれば10a当たり1.6時間に削減できます。疲労度の軽減はネギ栽培の中でも最大です。

定植では「ひっぱりくん」と呼ばれる機械があり、これを使うと10a当たり2時間で完了します。ただし、チェーンポット専用であることと、機械そのものが重い点がデメリットです。

製品ページ:日本甜菜製糖株式会社「チェーンポット簡易移植機『ひっぱりくん』」

ニッテンペーパーポット(日本甜菜製糖株式会社 紙筒事業部)Youtube公式チャンネル「ひっぱりくん HP-6」

本圃の準備や栽培管理には、同じく歩行型の管理機が利用できます。乗用の管理機よりもやや時間がかかりますが、規模にかかわらず実用性があります。例えば、防除作業の場合、動力噴霧機と組み合わせれば、2人で10a当たり2時間程度で完了できます。

調整作業では、皮むきを「ベストロボ」などで機械化できます。ベストロボは根と青部の切り落としもできるため、1台あれば5kgの箱を1日100個以上出荷できます。

製品ページ:株式会社マツモト「長ネギ用 半自動根葉切り皮剥き機」

株式会社マツモト Youtube公式チャンネル「長ネギ根葉切り皮剥き機『ベストロボ』」

作業量の多さをいかに省力化かつ軽労化できるかによって作付規模が決まるといっても過言ではないため、積極的な機械導入の検討がおすすめです。

経営のコツを学ぶ! 先輩ネギ農家の成功事例

ネギ ほ場

株式会社キタデザ(北村笑店)/ PIXTA(ピクスタ)

最後に、実際に栽培品目としてネギを選び、栽培や経営に成功した事例を2つ紹介します。作付面積などの経営状況はもちろん、売上を伸ばすための実際の取り組みや得られた成果などについても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

自治体の支援を有効活用! 新規参入から5年で年商1億円を達成した事例

大分県の「株式会社オーエス豊後大野ファーム」は、東京に本社を持つ人材派遣会社の福岡支店の後藤専務が始めた会社で、2008年から白ネギの栽培を始めました。

元は半導体関連の請負事業を行っていましたが、繁忙期と閑散期の差が激しいにもかかわらず専門性の高さから技術者を正社員として雇用し続けなければならず、閑散期に稼働率が極端に落ち込むことが問題となっていました。

そこで異業種への参入を検討した結果、安定した収益を確保できたのが白ネギ栽培だったのです。大分県は農業分野への企業誘致を積極的に行っており、農業がまったくの未経験者でもしっかりとサポートが受けられる体制が整っていることや、補助事業が充実していたことから栽培地に選びました。

これらの手厚いバックアップもあり、3年目に同社は農地を5haから10haに拡大し、5年目にはさらに15haまで広げた結果、年商1億円を達成しています。

現在は半導体業界の経験を活かし、農林水産省の「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」に大分県とともに取り組んでいます。

参考資料:農研機構「スマート農業実証プロジェクト 令和元年度スタート課題」 所収「株式会社オーエス豊後大野ファーム」

同社の事例は、大分県農林水産部新規就業・経営体支援課のYoutubeチャンネルでも紹介されています。

大分県農林水産部新規就業・経営体支援課 Youtube公式チャンネル「おんせん県おおいたで農業参入してみた」

九条ねぎに特化。生産~加工まで一括で行い販売単価をアップした事例

京都の農業生産法人「こと京都株式会社」の社長である山田敏之氏は、アパレル業界に勤めていましたが、32歳で脱サラして家業を継ぎました。しかし始めた当初は1haのほ場で幅広い野菜を栽培し、売上は年間で400万円ほどで、朝から晩まで働いても父親から支給される給料は月10万円ほどでした。

そこで山田氏は、周年栽培が可能な九条ねぎに品種の絞り込みを行い、3年目にして売上を1,600万円にまで上げました。京都ではネギを加工して店に卸す商売があったことから、これを自社で行うことで単価アップを図ろうと考え、自宅を改造して加工体制を構築したのです。

次に販売先として東京のラーメン店に着目し、売り込みを行ったところ2年で約300軒との成約を獲得しました。その後は有名チェーン店でも自社ネギが採用され、当該チェーン店が店舗を増やすたびに売上がアップし、7年目には年商1億円を達成したのです。

こと京都株式会社

その後、東日本大震災や厳冬などの影響もありましたが、食の安全に対する意識の向上やブランド価値が認められたことで2016年には約12億円の売上を達成しました。また九条ねぎの農家を守る活動により、こと京都は「第1回6次産業化推進シンポジウム」で農林水産大臣賞も受賞しています。

参考:農林水産省「6次産業化フリーペーパー」 vol.9 所収「特集:6次産業化を牽引する“成功モデルたち” こと京都(京都)」

日本青果物ブランドに認定された「こと九条ねぎ」

日本青果物ブランドに認定された「こと九条ねぎ」
出典:ソーシャルワイヤー株式会社(こと京都株式会社 ニュースリリース 2019年9月19日)

今回はネギ農家がどの程度儲かるのか、10a当たりの経営収支例や時間当たりの所得、年間を通じて実際にどのような作業を行っているのかなどを紹介しました。ネギは収穫までの期間が長く作業量も多い作物ですが、収益性は高い作物です。

先述したように年商1億円を稼ぐような事例もいくつかあります。水田転作などでネギを栽培品目として検討している方は参考にしてください。

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百田胡桃

百田胡桃

県立農業高校を卒業し、国立大学農学部で畜産系の学科に進学。研究していた内容は食品加工だが、在学中に農業全般に関する知識を学び、実際に作物を育て収穫した経験もある。その後食品系の会社に就職したが夫の転勤に伴いライターに転身。現在は農業に限らず、幅広いジャンルで執筆活動を行っている。

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