【ネギ白絹病】発生時期と症状、農薬・防除方法を紹介(写真付き)

ネギの白絹病は糸状菌(カビ)による土壌伝染性病害の1つです。高温多湿条件で発生しやすい白絹病は、近年の温暖化の影響を受けて発生しやすくなっており注意が必要です。この記事では白絹病の特徴や症状、効果的な農薬と防除方法を解説します。
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ネギの白絹病とは?特徴と症状(写真付き)

ネギ 白絹病 被害株
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ネギ白絹病は、糸状菌によって引き起こされる土壌伝染性の病害です。発病後の進行が速く、適切な初期対応を行わなければ、ほ場全体へ急速に拡大する可能性が高いため、早期発見が重要です。
ネギのほか、ウリ科やマメ科、ナス科といった幅広い品目の野菜類や花きなどに寄生するので、輪作を行っている農家の方も注意しなければいけません。
感染初期には、ネギの地際部、特に葉鞘基部に白色の綿状菌糸が出現し、その部分から褐変・軟化・腐敗が始まります。症状が進行すると下葉が黄化し、萎凋が発生します。さらに菌糸は葉鞘周辺部にも広がり、地際部に多数の淡褐色の菌核が形成されるようになり、最終的には株全体が枯死に至ることも珍しくありません。
地際部に形成された菌核は、乾燥した土壌の表層部ではおよそ5年間の長期にわたって生存可能で、次作への主要な感染源となります。一方、湛水条件や深層土壌では菌核の生存が困難であることが知られており、耕種的防除を検討する際の参考になります。

ネギ 白絹病 菌糸と菌核(直径1.5mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ネギの白絹病が発生しやすい時期と条件
ネギの白絹病を引き起こす糸状菌の生育適温は30℃程度で、「高温多湿」な環境を好みます。降雨量の多い季節や、排水性がよくないほ場で発生しやすくなります。
具体的には、暖かくて降雨量が増えてくる初夏から初秋にかけての発生が多く、露地栽培で冬期に感染が拡大することはほぼありません。
なお、ネギの白絹病が発生したほ場に敷きわらなどの糸状菌のエサとなる有機物を使用すると、土壌湿度の上昇と相まって被害拡大を助長する恐れがあるので気を付けましょう。
ネギの白絹病の防除方法とおすすめの農薬
白絹病の菌核は長期間にわたって土壌中で生存するため、ほ場で発生したら徹底的な防除が必要になります。ここからは白絹病の防除に有効な対策を3つ紹介します。
※ここで紹介する農薬は、2025年7月1日現在、ネギの白絹病に登録のあるものです。実際の使用に当たっては、使用時点での作物に対する農薬登録情報を確認し、ラベルをよく読み、使用方法や使用量を守ってください。
1. 耕種的防除
白絹病を引き起こす糸状菌は主に地表から10cm未満の浅い場所で繁殖しますが、地表10cm以上の深い場所では繁殖スピードは鈍り、発病リスクが低減します。
そのため、作付け前に天地返しを行って、地表に近い糸状菌の菌核を土壌深くに埋没させる方法が防除に効果的です。
また、土壌の多湿は糸状菌の繁殖に適した環境である一方、20日以上湛水状態が続くと菌核が死滅することがわかっており、作付前の湛水処理も白絹病の予防に有効です。
連作を避け、作付前の湛水状態をつくれる方法として、水稲と輪作することが挙げられます。水田輪換での栽培が可能か、是非検討してみてください。

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)
2. 土壌消毒
前述したように、白絹病の菌核は土壌の浅いところに留まって生存し続けます。白絹病が発生したことがあるほ場では、土壌消毒を行いましょう。
太陽熱消毒はその性質上、土壌深くにいる病原菌に対して効果が薄くなりますが、地表から10cm未満の深さに生息していることの多い白絹病の糸状菌に対しては比較的大きな防除効果が期待できます。
作型にもよるものの、夏の暑い時期に作付けの合間を見計らって実施するとよいでしょう。
土壌消毒剤については、「クロルピクリンくん蒸剤」や「バスアミド微粒剤」といった幅広い作物に使用される農薬で十分な効果があります。
農薬によっては白絹病以外にも、ネギ栽培で被害に遭いやすい萎凋病やセンチュウ類といった病害虫の防除効果もあるので、播種または定植前に実施しておいたほうが無難です。
ただし、ガス抜け期間を設けないと薬害につながる恐れもあることから、用法容量をしっかり守って実施してください。

satoaki / PIXTA(ピクスタ)
3. 発生したら早期対応が大事
白絹病は耕種的防除や土壌消毒によって、そもそも発病させないことが重要です。万が一発生した場合でも適切な初期対応さえ取れば、被害を最小限に抑えられます。
発病株を見つけた場合は、まず速やかにほ場外へ持ち出して処分し、病原菌の発生源を防除してください。
また、発生の初期段階であれば、土寄せの前か、土寄せ時に、「リゾレックス粉剤」や「モンガリット粒剤」、「モンカットフロアブル40」などの農薬を株元散布すると防除に効果的な場合があります。
ただし、モンカットフロアブル40については近年になって耐性菌の存在が確認されており、十分な効果が出ないケースもあるので気を付けましょう。

PHANTOM / PIXTA(ピクスタ)
白絹病が一度発生したほ場には、菌核の形で病原菌が生存し続けます。株元への農薬散布が有効な場合もありますが、作付け前の耕種的防除や土壌消毒による予防が基本です。今回紹介した防除方法を参考に、ネギの安定栽培に活かしてください。
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中原尚樹
4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。