【2025年】農業のスタートアップ企業を紹介!スマート農業・アグリテックの最前線とは

人手不足や高齢化が深刻化する日本の農業で、課題に挑むスタートアップ企業の最新動向を紹介します。AI、ロボット、センシング、ビッグデータなどを活用し、収穫作業や生産管理の効率化をめざすスマート農業の実例を参考にしてみてください。
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アグリテックに取り組むスタートアップ企業が急増中

bluepanda8 / PIXTA(ピクスタ)
昨今、新しい農業のシステムである「アグリテック(AgriTech)」に取り組むスタートアップ企業が増えています。ここでは、アグリテックの概要や日本の農業が抱える課題などを紹介します。また、拡大を続けるスマート農業の国内市場規模も確認しておきましょう。
アグリテック(AgriTech)とは?
アグリテック(農業テック)とは、Agriculture(農業)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語です。IoT、AIなどの最新のICT技術を活用したドローンや農機ロボットなどを導入し、就労人口が減少しつつある農業において、負担を減らしながら生産性の向上をめざします。「スマート農業」とも呼ばれる新しい農業への取り組みです。
拡大を続けるスマート農業の国内市場規模
株式会社矢野経済研究所の調査によると、2023年度のスマート農業市場規模は375億円に達し、その後も引き続き拡大傾向にあります。特に、自動操舵トラクターや農業用ドローン、ロボット農機といった農業機械の自動化ソリューション、および農業クラウドや複合環境制御装置などの営農支援ソリューションが市場成長をけん引しています。
同調査では、今後もセンシング技術やAI活用の高度化、無人化・省人化の進展を背景に、スマート農業市場は拡大を続け、2029年度には700億円規模に達する見通しとしています。
出典:株式会社矢野経済研究所「スマート農業市場に関する調査(2024年)」
【2025年最新】日本の農業スタートアップ企業一覧
ここでは、スマート農業やアグリテック普及に貢献している日本のスタートアップを紹介します。これからの農業経営に欠かせない画期的なテクノロジーを提供する企業ばかりなので、各企業の事業内容や提供するテクノロジーなどを押さえておきましょう。
スパイスキューブ株式会社
スパイスキューブ株式会社は2018年に大阪市浪速区で創業し、「世界中どこでも農業を実現する」を掲げるアグリテック型スタートアップです。都市部の居抜き物件を活用し、LED照明と養液による“小規模植物工場”を設計・開発しています。また、企業や個人のプラント導入から栽培指導、流通・販売までを一括支援し、6次産業化を加速するモデルを展開しています。
2025年6月、大阪産業局のTEQS「咲州テック・ラボ・プログラム」に採択され、商業施設ATCでの実証実験を開始しました。都市空間での植物工場やユーザー体験の社会実装に向け、ハンズオン支援を得ながら成果創出を目指しています。
参考:スパイスキューブ株式会社
AGRIST株式会社
AGRIST株式会社は、AI搭載の自動収穫ロボットと現場データを活用し、農業のDX化を進めるスタートアップ企業です。2025年5月、「みどりの食料システム戦略」に対応し、衛星データとロボット技術を融合した研究開発を開始しました。
また、同年6月から大手企業向けに、自社農場の生育や収穫・病害虫情報に基づくコンサルティングやスマート農業研修の提供をスタートし、耕作放棄地活用や人材育成を支援しています。さらに、インパクト投資の専門家と連携し、AIロボットによる農業の社会的成果の可視化にも取り組み中です。本社は宮崎県新富町、複数の自社農場を運営し、全国展開を視野に入れた農業プラットフォーム化を推進しています。
参考:AGRIST株式会社
株式会社ミライ菜園
株式会社ミライ菜園は、AIを活用した病害虫予測アプリ「TENRYO」や診断SNS「SCIBAI」を提供する農業DXスタートアップです。独自の病害虫発生履歴ビッグデータと気象解析で、AIが7日先まで発生リスクを予測します。
2024年10月にはJA豊橋での導入が決定し、ブロッコリー農家で収量15%増、キャベツ農家で4%増を実現しました 。また、2024年5月には全農群馬県本部との業務提携を開始し、現場実装とJA連携を強化しています。
参考:株式会社ミライ菜園
株式会社オプティム
株式会社オプティムは、農業用ドローンを用いてピンポイントに農薬を散布するテクノロジーを、世界で初めて開発した会社です。ドローンを活用して病害虫が発生した場所を見つけてAIで解析することにより、農薬使用量と労働時間の大幅な削減を実現しました。
2025年には、ピンポイント農薬散布の実運用面積が累計で2万6,000haを超え、スマート農業の本格普及に貢献しています。大豆や麦などを対象とした精密防除の実績が、全国で着実に広がりつつあります。
参考:株式会社オプティム「農業ソリューション」

兵庫県篠山市で「丹波黒 大豆・枝豆」のピンポイント農薬散布を用いた栽培を実施
出典:ソーシャルワイヤー株式会社(株式会社オプティム ニュースリリース 2018年10月17日)
クレバアグリ株式会社
クレバアグリ株式会社は、各種センサーとAIを活用し、栽培管理からGAP対応の生産管理、財務管理まで、農業経営全般をまとめて支援するソリューションを提供しています。
ほ場には、温湿度を始め、二酸化炭素濃度、感雨雨量、照度、土壌塩分(EC)、土壌温度、土壌水分量などを測定する各種センサーを設置し、リアルタイムでデータ収集を行います。
収集したデータはAIで解析され、成長度合いの評価や生育シナリオが導出されます。経営面ではスケジュール管理からリソース計画までを総合的に支援します。
参考:クレバアグリ株式会社
inaho株式会社
inaho株式会社は、AIを中核とした自律型収穫ロボットを開発・提供する企業です。2024年9月にはヨーロッパ子会社のinaho Europeが、オランダのトマト栽培農家において「スナックトマト収穫ロボット」の実証試験を実施し、同年11月より有料モデルでの試験稼働に移行しました。
単なる“収穫の自動化”にとどまらず、経験や熟練技術が必要な収穫適期の判断もAIが担うことで、人手不足の解消・農業経営の省力化・収量・品質安定化に寄与しています。
参考:inaho株式会社

inaho株式会社のアスパラガス自動収穫ロボット
出典:株式会社 PR TIMES(inaho株式会社 ニュースリリース 2020年6月23日)
株式会社セラク
株式会社セラクが提供する「みどりクラウド」は、IoTセンサーから得たハウス内の温度・湿度・CO₂濃度・日射量・土壌水分・EC値などの環境データを2分間隔で自動収集し、スマートフォンアプリ「みどりモニタ」やWebダッシュボードでリアルタイムに「見える化」します。
2025年1月にはJAえちご中越で「らくらく出荷」機能が導入されました。約100名の農家が参加し、西洋梨「ル レクチェ」1,000箱の出荷作業において、伝票・検品作業時間が77%削減されるなど、見える化による業務効率化が流通工程にも波及しています。
環境データの可視化にとどまらず、AIアラート・遠隔制御・出荷業務のDX化にも対応し、品質安定・作業負担軽減・生産性向上・流通現場の効率化を多面的に支援しています。
参考:株式会社セラク「みどりクラウド」
みどりクラウドについてはこちらの記事もご覧ください。
メビオール株式会社
メビオール株式会社は、医療用膜技術を応用し、「アイメック®(IMEC:Intelligent Membrane Culture)」として世界初のナノサイズ多孔質ハイドロゲルフィルム農法を開発した企業です。
2009年に国内でトマト栽培への適用が始まり、栽培面積は現在25エーカー(約10ha)を超えています。高糖度ミニトマトは、通常の農法の約3倍の取引価格で販売されており、メロン、イチゴ、パプリカ、レタスなど他の高付加価値作物への展開も進んでいます。
参考:メビオ―ル株式会社「アイメック®(フィルム農法)とは?」

アイメックシステムを開発した メビオール株式会社 代表取締役社長 森有一氏
出典:株式会社 PR TIMES(CNN ニュースリリース 2017年11月13日)
株式会社アグリゲート
株式会社アグリゲートは、生産から流通・販売までを一貫して統合管理する「SPFモデル(Specialty store retailer of Private‑label Food)」を核としたビジネスモデルを展開しています。アパレル業界の「SPA(製造小売業)」を食品に応用し、企画・調達・物流・小売を垂直統合することで、「旬八青果店」などの都市型青果店運営と卸売、PR、HR事業を通じ、本格的な食農のインフラ構築を図っています。
2024年3月にはオイシックス・ラ・大地株式会社との資本業務提携を実施し、連結子会社化されています。これにより、オンライン宅配サービスとの連携を強めてフードロス削減・仕入強化を推進、また店舗拡大・人材育成・教育強化などのリソースも共有し、事業基盤の強化を図っています。
参考:株式会社アグリゲート
農業スタートアップ企業の最新取り組み事例
アグリテックの普及に向けた企業の最新の取り組みとして、まずサグリ株式会社の事例が挙げられます。同社はAIと衛星リモートセンシングを活用して耕作放棄地や農地の活用状況を解析する「Sagri」や「デタバ」「アクタバ」などのソリューションを提供しています。2025年5月には福島県浪江町と連携協定を締結し、震災後の営農再開に衛星データ解析を活用する実証を始めています。
また、HarvestX株式会社 は、東京大学発のロボティクスベンチャーとして、植物工場向けにイチゴなど授粉を必要とする果菜類の自動栽培システムを開発しています。2024年3月には無人授粉・収穫ロボット「XV3」を搭載したパイロットプラント「浜松ファーム」を浜松で本格稼働させました。さらに、2025年3月には経産省の「J‑Startup」プログラムに選出され、国際展開と支援体制の強化にも乗り出しています。
これらの事例はいずれも、AI・衛星データ・ロボティクス・資金調達・自治体連携といった複数の要素を横断的に組み合わせており、アグリテック技術の普及・実装に向けた新たな地平を切り開く先進的な取り組みの代表例と言えます。
出典:
サグリ株式会社
HarvestX株式会社
PR TIMES「HarvestXは、経済産業省が運営するスタートアップ支援プログラム「J-Startup」の第5次選定企業に選出されたことをお知らせします。」
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光田直史
高校時代は化学を専攻し、農業に関する内容についても学んでいたことから、かねてより農業や地球環境に強い関心を持っていた。 卒業後は地元の運送業界や不動産業界に従事し、以後8年をIT企業の製造部門で勤務。事業部長と内部監査室長も兼任した。その経験を活かし、2020年よりライターとして活動開始。 ビジネス、金融、IT、マーケティング、不動産、農業など複数ジャンルでの記事執筆を手がけている。