畑のスギナ対策!厄介な雑草に負けない効率的な防除方法&おすすめ農薬紹介
スギナは地上部の葉を刈り取っても強靭な地下茎が残って繁殖を繰り返す、非常に防除の難しい雑草です。本記事では、スギナの生態や特性を知り、繁殖させない方法や根絶方法を解説します。また農用地でも使用でき、スギナを根絶できる農薬も紹介しています。
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農家にとって雑草の防除は多くの時間と労力を使う作業です。特にスギナは一度繁殖してしまうと何度防除しても再生してくる難防除雑草で、根絶が困難です。農家を悩ませるスギナを繁殖させないために、効果的な防除方法について解説します。
撮るねっと / PIXTA(ピクスタ)
スギナは古くから日本全国に生息する在来種で、胞子茎は春を告げるツクシとして親しまれています。スギナの葉も薬草やお茶として飲まれてきました。
とはいえ、農家にとっては、一度繁殖すると刈っても抜いても掘り返しても再生する、厄介な難防除雑草です。
スギナの被害を防ぐ方法を探るために、まずはスギナの生態を知りましょう。
スギナの生態
LEVIN / PIXTA(ピクスタ)
スギナは秋の終わりに枯れますが、地下茎や根は寒さに強く、越冬して春になるとまた地上に芽を出す多年生雑草です。
早春に土から顔を出すツクシは、スギナの地下茎から伸びる胞子茎です。1本の胞子茎から数万個の胞子が飛散し、湿気の多い条件下で発芽して繁殖します。
Kazakova Maryia - stock.adobe.com
スギナは3つの繁殖方法を持ち、そのうちの1つがこの胞子の飛散によるものです。胞子茎のあと、地下茎から栄養茎も芽を出し、地表に細い緑色の葉を繁殖させます。また、同時期に地下の根茎も伸び始めます。
根茎は地下30〜40cmの深さに張り巡らされ、2cm間隔で節を作りながら、夏から秋にかけて伸長を続けます。この根茎の伸長が、2つめの繁殖方法です。
根茎の節からは、地上に栄養茎と呼ばれる葉を伸ばし、光合成を行って養分を作ります。また、節ごとにコブ状の塊茎が形成されます。塊茎にはデンプンを主とした養分が含まれており、ここから横方向だけでなく垂直方向にも根茎を伸ばして勢力を広げます。
この塊茎による根茎の伸長が、3つめの繁殖方法です。スギナは、根茎が切断されたとしても、養分を蓄えた塊茎から新たな芽を出して繁殖します。
イヌスギナは胞子茎を作らず、栄養茎の先端に胞子のう穂を作る
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
なお、同じトクサ科のイヌスギナはスギナによく似ています。イヌスギナは、スギナよりも大型で、胞子茎を作らず、栄養茎の先端に胞子のう穂を作るので見分けられます。
スギナの防除が難しいのは「地上に出ていない地下茎」が潜んでいるから
スギナは繁殖力が非常に強いだけでなく、根絶が難しい点でも厄介です。根絶を諦め、次々に生えてくるスギナをそのたびに根気よく刈り取っている人もいるでしょう。
防除が困難な理由は、地下30cmから、ときには1mほどの深さで地下茎が繋がっているためです。一度繁殖してしまうと、この深さに張り巡らされた根を人力で抜き取ることは現実的ではありません。
milmed - stock.adobe.com
しかも、耕うん機を使って根を掘り起こすと、ちぎれた根茎を撒き散らしてしまうことになります。その断片からそれぞれ再生し、かえって広範囲に増殖させてしまうのです。
スギナをしっかり防除するには、作物の休閑期に地下茎も含めた根にまで効果のある対策をすることが必要です。
有効な手段はある?耕種的・物理的防除によるスギナ対策
繁殖方法が3つあり、防除が困難なスギナですが、有効な手段はあるのでしょうか。ここからはスギナに対する耕種的・物理的防除について解説します。
スギナ対策において「石灰の施用」は効果がないため注意!
スギナ対策として、石灰を撒いて土壌のpHをアルカリ性に傾けるという方法が、インターネットなどで見られるようです。作物が育ちにくい酸性土壌で、適応能力のあるスギナがよく繁茂するのを見て、「スギナは酸性土壌を好む」と勘違いしたために、このような情報が流れたと思われます。
しかし、スギナは基本的に中性を好み、アルカリ性が苦手というわけではありません。そのため、スギナ対策に石灰を施用するのは意味をなしません。
それよりも、大豆など雑草に対し競合力の強い作物を植え、その作物に最適な土壌環境にすることで、スギナの繁殖を抑えるほうが有効でしょう。
農薬を使わない有効な対策は、実質「防草シート」による物理的防除のみ
Mac / PIXTA(ピクスタ)
地下茎が残っていても、防草シートを敷くことで次にスギナが生えるのを予防することが可能です。織込布タイプや、不織布で厚みのない防草シートは、スギナが突き抜けてしまうため、高密度のものを選びましょう。
ただし、防草シートでは作物を植えつけることができないので、休耕畑以外では現実的な方法ではありません。
胞子によるスギナの発生直後であれば、定着する前に、こまめに若い栄養茎を地下茎ごと引き抜くことで、早期の根絶を図れます。また、定着前であれば、夏場の中耕も効果的です。
しかし、一度定着し強靭な地下茎を張られてしまうと、耕種的な方法ではその場しのぎにしかなりません。決定的な対策には農薬を使用するのがおすすめです。
スギナは化学的防除で効率的に対策を!おすすめの農薬と上手な使い方
いがぐり/ PIXTA(ピクスタ)
頑固なスギナにも効果的な農薬があります。スギナ対策におすすめの農薬と、その使用方法について解説します。
なお、ここで紹介する農薬は、2021年10月現在登録のあるものです。使用にあたっては、ラベルの記載内容をよく読み、使用方法を遵守しましょう。
さまざまな種類の問題雑草に効果が高い、グルホシネート系除草剤
頑固なスギナの防除には、グルホシネート系除草剤が高い効果を有します。その大きな特徴として速効性があり、また、グルホシネートは土壌中の微生物によって分解されやすいため、環境に優しい成分とされています。
グルホシネート系除草剤の代表的な農薬としては「バスタ液剤」があります。
バスタ液剤は90種以上の作物に登録があり、スギナはもちろん、イネ科、広葉、一年生、多年生などほとんどの雑草に有効です。
スギナには100倍に希釈し、草丈20~30cmの頃(5月頃または9月頃)に、全体にまんべんなく散布します。散布から2~5日ほどで効果が発現し始め、7~14日ほどで枯死させることができ、抑草期間は40~50日程度です1回の散布で根絶できない場合は、再生後に反復散布をすることで発生を抑えられます。
根まで枯らすタイプのグリホサート系除草剤
グリホサート系除草剤は、茎や葉に付着すると植物体内を移行し、直接届かない根茎まで枯れさせます。
代表的な農薬である「ラウンドアップマックスロード」は土への安全性を持ち、改良により吸収移行性が向上し、登録作物の数も増えました。また、雨に強く、散布後1時間経てば、降雨も問題ありません。
低温時や曇りが続いたときなどの条件下でも、確実な効果を発揮します。ただ、乾燥時のほうが枯殺率は高くなります。スギナに対しては、5月頃に25倍液を散布して根まで枯らします。
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強靭な生命力と繁殖力を誇るスギナは、一度定着してしまうと根絶が困難です。繰り返す除草に限界を感じたら、作物の休閑期を利用して農薬を使うことをおすすめします。根絶したあとは、再び繁殖しないように早期のこまめな除草や中耕による防除を心がけましょう。
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大曾根三緒
ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。