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イタリア農業の特徴とは? 現状と、コロナ禍で浮き彫りになった課題点

イタリア農業の特徴とは? 現状と、コロナ禍で浮き彫りになった課題点
出典 : ValerioMei - stock.adobe.com

長い歴史と伝統を受け継ぐイタリアは、ヨーロッパを代表する農業大国の1つです。有機農産物・有機食品の輸出で注目を集めるイタリア農業の最新の取り組みと課題を見ながら、日本の農業へのヒントを探ります。

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イタリアの農業は小規模経営の農家が中心で、山間の狭い農業地が多く、日本の農業に近い特徴を持つといわれています 。自国の農業の伝統と文化を愛し、それらを守りながら生産性を高め、高品質の農産物を多く輸出するイタリアの農業から、日本は何を学べるでしょうか。

GDP(国内総生産)はどのくらい? 数字で見る「イタリア農業」の特徴

イタリア地図

Peter Hermes Furian / PIXTA(ピクスタ)

イタリア農業の現状を知るために、まずは気候や風土、主要農産物、GDPなど、さまざまな視点からイタリア農業の概要を紹介します。

イタリアの気候と主要農産物、農業生産額について

イタリアは面積が30.1万平方kmで日本の約5分の4、2020年現在の人口は6,046万2,000人で日本の約2分の1です。南北に細長い地形のため南と北の地方で気候に差があり、それぞれ気候を生かした農業が発達しています。

出典:外務省「イタリア共和国」

イタリア北部(ロンバルディア州)の稲作地域

イタリア北部(ロンバルディア州)の稲作地域
kamillok - stock.adobe.com

アルプス山脈を持つ北部は大陸性気候で雨が多く、灌漑が発達しており水稲や軟質小麦、酪農が中心です。南部は温暖な地中海性気候で、夏季に雨が少ないため硬質小麦やオリーブ、柑橘などの地中海型農業が盛んです。

イタリア北部エミリア・ロマーニャ州の軟質小麦耕作地

イタリア北部エミリア・ロマーニャ州の軟質小麦耕作地
GiorgioMorara - stock.adobe.com

南部は温暖な地中海性気候で、夏季に雨が少ないため硬質小麦やオリーブ、柑橘などの地中海型農業が盛んです。

イタリア南部シシリー島のレモン園

イタリア南部シシリー島のレモン園
siculodoc - stock.adobe.com

統計的な主要農産物は小麦、トマト、オリーブや生乳、豚肉などで、ワイン用のブドウも全国で栽培されています。

国の規模はそれほど大きくないものの、農業生産額はフランス、ドイツに次ぐEU3位の農業大国です。

2019年のイタリアの名目GDPは2兆36億ドルで、うち農林水産業は383億ドル、全体の1.9%を占めます。なお、日本ではそれぞれ5兆825億ドル、593億ドルで、全体の1.2%です。

出典:農林水産省「海外農業情報」所収の「イタリアの農林水産業概況」

小規模農家が多いイタリアの農地面積および農家数の推移

農業大国であるイタリアの農地面積は国土の中では広く、2019年のFAO統計では国土面積3,021万haに対して農用地は1,312万ha、比率にして43.4%を占めます。

日本は、国土面積3,780万haに対して農用地は440万ha、わずか11.6%です。

イタリアの国土は約7割が山岳・丘陵地で、平地の割合は非常に小さいという点で日本と似ていますが、山地も農用地として利用されており、日本と比較して国土に対する農用地割合が非常に高いのが特徴です。

出典:農林水産省「海外農業情報」所収の「イタリアの農林水産業概況」

山間地のワインヤード 斜面で作業する農家

Maurizio Milanesio - stock.adobe.com

また、農業経営の実態を見ると、世界的な傾向に漏れず、EU全体で見ても農業経営体の数は減少傾向にあります。イタリアも1990年から2007年の間に37%も減少しています。これは、大規模経営体に農地が集積するという世界的な動きがイタリアでも進んでいるためです。

農地の集積による1経営体当たりの規模拡大が進んでいるものの、もともと日本と同様に家族による小規模経営の農家が主流であったイタリアでは、農地面積が5ha未満の小規模経営体が全体の70%ほどと、まだまだ多いのが現状です。

参考:石井圭一(東北大学)「共通農業政策の改革下における農業構造の変貌」

「有機農産物」と「ブランド化」! イタリア農業を表す2つのキーワード

フランスやドイツ、オランダなどのEU諸国に比べて農地の集約が遅れており、農地面積もそれほど広大とはいえないイタリアが、なぜヨーロッパのほかの農業大国と肩を並べているのでしょうか。そこには、イタリア独自の農業の発展があります。

※この記事でイタリアの農業について述べる「有機農業」「有機栽培」「有機農産物・有機食品」は、日本における「特別栽培農産物」「有機JAS認定を受けた生産者が行う有機栽培」の定義とは異なることにご留意ください。

ヨーロッパにおける有機農産物の需要の高まりで、注目されるイタリア農業

agricoltura biologica イメージ

HQuality/ Shutterstock.com

近年、世界的に農業の大規模化・集約化が進み、農薬を活用した均質で効率的な農業が盛んになる一方で、有機農産物を求める世界的な流れが広まっています。特にフランスやドイツなど、ヨーロッパで有機農産物への需要の高まりが見られます。

イタリアは、 かつて、有機農業の先進国にくらべその推進が遅れているといわれていました。そこで国を挙げて有機農業(イタリア語で「agricoltura biologica」)への転換と有機農産物・有機食品の普及に取り組んできました。

その背景には、90年代後半にEUが有機農業への転換を掲げ、1997年から5年間、島嶼部を中心に支援を行ったことがあります。その結果、イタリアでは、シチリアやサルディーニャなどの島嶼部を中心に、有機栽培での生産者数・作付面積(転換中も含む)が急増しました。

EUからの支援期間の終了後、有機栽培での生産者数・作付面積は減少に転じましたが、その後も若手生産者の有機農業転換への支援などが行われ、2000年代後半から再び増加しています。
2017年には、有機農業取組み面積の耕地面積に対する 割合は15.4%と、世界でもかなり高い水準に達しました。

注目すべき点は、有機農産物・有機食品の生産が国内需要を大きく上回っており、これを有機農産物を好むドイツやフランスなどのEU諸国に輸出している点です。

もともとワインやパスタは世界的に高い評価を得ており、原料を有機栽培の醸造用ブドウや小麦とすることで、有機農産物・有機食品という付加価値を上乗せして輸出できるようになったのです。

出典:
農林水産省「有機農業をめぐる事情(令和2年2月)」
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 グローバルレポート 2017年6月「欧州の有機農業大国イタリアを訪ねて」
酪農学園大学紀要. 人文・社会科学編 第33巻第2号「イタリア有機農業の動向」
株式会社農林中金総合研究所 農林金融2004年11月号(第57巻第11号通巻705号)「イタリアの有機農業,そして地域社会農業―ローカルからのグローバル化への対抗―」

「イタリア産」なら安心?高級路線のブランド戦略が大成功

収穫後ドライトマトに加工されるピエンノロトマト

収穫後ドライトマトに加工されるピエンノロトマト
laudibi - stock.adobe.com

イタリアは、なぜ諸外国から有機農産物・有機食品の価値を認められ、輸出量を伸ばすという成功を収めることができたのでしょうか。

先述のとおり、イタリアでは食品への有機認証を積極的に行ってきました。そのほか、EU法で規定されているPDO(Protected designation of origin、原産地名称保護制度)による、イタリア独自の表示であるDOP(Denominazione di Origine Protetta、保護指定原産地呼称)の認定なども多くの支持を得ています。

代表的なDOP取得食品としては、標高2,000mにあるアルプスの牧草地で育った牛から作るチーズ「カステルマーニョ」、エミリア・ロマーニャ州の伝統的な手法により育てられた黒豚から作るハム「クラテッロ・ディ・ジベッロ」、ベズビオ火山の火山灰を利用して有機栽培で栽培されたトマト「ピエンノロトマト」などがあります。

いずれも、もともとイタリアで作られてきた農産物や食品にDOP表示をすることで付加価値を付け、ブランド化と高級品として差別化を実現しました。

これらの表示が盛んに取得され、消費者に選ばれる理由は、イタリアの人々が自分たちの国の持つ長い歴史や文化に誇りを持っていることにほかなりません。

そうした文化的背景があるからこそ 、持続可能な農業や地域の農産物の特性や文化を証明できる各種表示の制度が社会的に受け容れられ、国際的なブランド化にも成功したといえるでしょう 。

DOP表示のあるカステルマーニョ・チーズ

DOP表示のあるカステルマーニョ・チーズ
Luigi Bertello Photo - stock.adobe.com

日本農業への応用に期待! 果樹栽培における「スマート農業技術」も発展中

イタリアは、温暖で雨の少ない地中海性気候の利点を生かした果樹の栽培が盛んで、EUの中でも果樹の主要生産国とされています。イタリアの果樹生産の農業経営面での特色は、全体に経営面積が小さく2ha未満の経営者も多いこと、高齢化が進んでいることなどで、日本と共通する点がたくさんあります。

しかし、イタリアではほとんどの品目の果樹で、日本の果樹の数倍~数十倍にも及ぶ生産量を誇っています。この生産性の高さは、日射量が多く、降水量は比較的少なく湿度も低いなど、果樹の栽培に非常に合った地中海性気候によるところが大きいようです。

もちろん気候の恩恵だけでなく、生産技術の高さが、イタリアの果樹栽培の生産量を支えています。例えば、世界トップクラスといわれる南チロルのリンゴ栽培では、苗木を生垣状に密植して植え付け、株にある側枝を誘引する「トールスピンドル樹形」による栽培方法が取られています。

南チロル地方のリンゴ園 トールスピンドル樹形による栽培

南チロル地方のリンゴ園 トールスピンドル樹形による栽培
patrykkosmider / PIXTA(ピクスタ)

そのほか、総合生産のガイドライン導入や、伝統的栽培・貯蔵技術など栽培に関する技術が総合的に高いことも、生産量の多い大きな理由です。

また、個々の農家や地域全体が、同じ作物を栽培する者共通のビジョンを確立しており、生産者、生産組合、指導員、公共機関、民間などが密接に連携を取りつつ課題解決をしてきたことも、品質の向上につながっているのでしょう。

イタリアでは、農業の集約化を進める一方、従来の小規模経営で人々の持つ高い生産技術を生かしながら、スマート農業を導入していく方法を模索しています。

南チロルの醸造用ブドウでも、気象や土壌の状態など多くのデータをもとに日射・気温のメッシュ解析が行われ、さまざまな評価をしています。また、地形や土壌条件によって品質にばらつきが出やすいブドウを、目標とするワインのグレードや種類に合致する品質で栽培・収穫するため、精密農業の研究が進められています。


このように、イタリアでは、畑作より小規模経営が多い果樹栽培でスマート農業の導入が進んでいます。日本の果樹栽培も小規模経営が多いため、イタリアの成功事例を生かせるのではないかという観点でその動向を注目する動きがあります。

南チロル地方のワインヤード

南チロル地方のワインヤード
lorenza62 - stock.adobe.com

※お役立ち情報:以下は日本のスマート農業の活用事例です。ご興味のある方はぜひご覧ください。

4ha米農家 スマート農業活用事例集落営農でも大活躍!収量アップ&書類作業時間を1/9に削減

眞木様
佐賀県 営農組合所属
米・麦・大豆4ha

導入の目的

営農組合で管理している農地全体の農作業の効率化を実現したい
適切な作業計画を策定・実行することで作物の品質の平準化+収量アップを図りたい

課題・悩み

所属している営農組合が高齢化により、オペレーターが不足していた
営農組合で管理している農地の他にも、自身の農地の管理やさまざまな役職を兼務していて多用のため、業務効率化が必要

成果

ザルビオの各種マップを作業員と共有することで、作業計画が立てやすくなった
生育ステージ予測を活用し、最適なタイミングで除草剤の散布や堆肥の施肥ができるようになった
ザルビオの作業記録を出力することで、農協提出用のGAPの書類作成時間が90%削減できた
地力の弱い場所に肥料を撒けるようになったため、収量が増加した

詳しくはザルビオサイトへ

一方で問題点も? コロナ禍で浮き彫りになった、イタリア農業の現状と課題

多く魅力を秘めたイタリア農業にも、課題はあります。イタリア農業では、これまで農作業を外国人労働者に頼っていました。日本と同様、国内の担い手がなく、外国人はとても貴重な働き手でした。

ところが、コロナ禍におけるロックダウンなどで外国人労働者が入国できなくなってしまったことにより、特に労働負担の大きい収穫などの作業が間に合わなくなる問題が浮き彫りになりました。政府がチャーター機を使い、なんとか労働者を迎え入れたものの、その前に自費で労働者を呼び寄せた生産者も多かったほど、事態は緊迫していました。

まだまだコロナ禍が続く今後、外国人労働者が担っていた労働力をどう確保していくかが大きな課題になっています。

オリーブの収穫作業をする労働者

Gregory Lee - stock.adobe.com

イタリアと日本は、縦長な国土とその面積、気候条件が似ており、小規模経営農家が多く集約化・効率化が進まないという農業の課題も通じる点があるといわれています。

イタリアの伝統農業のブランド化成功事例は、同様に長い歴史を持つ日本にとっても参考にできる部分が多くあるはずです。学ぶべきものを見極め、日本農業の美点を守りつつ取り入れてみるとよいかもしれません。

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※法人農家の従業員は専業/兼業農家の項目をお選びください。

ご回答ありがとうございました。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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